保険償還されている植込型補助人工心臓(implantable ventricular assist device:iVAD)を2011/4~2016/12に装着した重症心不全患者109名を対象とし、機器の取り扱い上のミスを引き起こす要因について検討を行った。対象としたミスは、不注意もしくは誤った取り扱いによってポンプが停止した事例およびドライブラインを損傷させた事例とした。統計学的な検討ではFisherの正確検定を用い、p<0.05で有意差ありとした。
総発生件数は34件であった。デバイス別の発生件数(発生率)はEVAHEART ®、DuraHeart ®、HeartMate II ®、Jarvik2000 ®の順にそれぞれ0、5、8、21件(0、0.16、0.11、0.63件/患者・年)であった。このうち、患者自身が起こしたミスは28件(22名)で、21件(75.0%)は装着から1年未満のうちに発生していた。ミスを起こしやすい患者を判別することが可能かについて検討したところ、複数回にわたりテストを受け、かつ1回でもTrail making test-Bの結果がカットオフ値以上であった患者との間に関連性は認められたが(p=0.04)、その感度は13.6%であった。以上より、ミスを起こしやすい1年未満の時期に注視すべき人を見定めることは困難であり、ミスを減らすためにはフールプルーフ、フォールトトレラントを採用した機器の設計が必要である。
膜型人工肺は、血液中の水分を蒸泄し大気中に放出することが知られているが、その実態は必ずしも明らかではない。そこで、模擬体外循環回路を使い、膜型人工肺からの水分喪失量と吹送ガス流量、循環時間の関係を検討した。模擬体外循環回路は膜型人工肺(膜面積2.3m2)とローラーポンプから成り、生理食塩水334mLで充填した。水流量は4L/min、温度は37℃に維持した。今回用いた膜型人工肺では、吹送ガス流量を0L/min、4L/min、8L/minと変えて1時間循環させたときの水分喪失量は1.5±0.5mL/h/2.3m2、13.3±0.5mL/h/2.3m2、26.2±0.7mL/h/2.3m2で、吹送ガス流量と水分喪失量とに比例関係があり、1時間後の吹送ガス1Lあたりの水分喪失量は約3.1(mL/h/2.3m2)で表せることがわかった。また、この比例係数を用いた吹送ガス流量4L、24時間の推定水分喪失量は、実際の24時間循環させた場合の水分喪失量297.3mL/2.3m2と同等であった。