日本摂食障害学会雑誌
Online ISSN : 2436-0139
2 巻, 1 号
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目次
原著
  • 武部 匡也, 栗林 千聡, 荒井 弘和, 飯田 麻紗子, 上田 紗津貴, 竹森 啓子, 佐藤 寛
    2022 年 2 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2022/10/05
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    はじめに:大学生アスリートにおける摂食障害の有病率を推定することを目的とした。

    対象と方法:体育系部活動に所属する大学生442名を対象に,EDDS-DSM-5 version日本語版を用いて有病率を算出した。

    結果:何らかの摂食障害の診断に該当した者の比率は,全体で7.0%(男性で3.9%,女性で12.3%)となった。競技種目別では,男性が格技系(13.3%),球技系(3.5%),標的系(3.4%)の順で,女性では審美系(17.4%),標的系(14.3%),記録系(10.0%)の順で有病率が高かった。

    考察:本研究の意義は,本邦における男性アスリートの有病率を明らかにした点,リスクが高い競技種目を明らかにした点にある。

    結語:本研究は,本邦の大学生アスリートにおいて,男女ともに一定数の摂食障害を抱えている可能性のある者が存在すること,そしてリスクの高い競技種目の特性を踏まえた支援の必要性を示唆した。

特集企画~摂食障害の治療の考え方~
  • 永田 利彦
    2022 年 2 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2022/10/05
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    摂食障害の精神病理はゴールデンケージ(金の鳥籠)の子鳥から同級生間の競争へ普遍化した。その結果,熱心ではあるが金の鳥籠を形作る家族から複合家族,さらには家族崩壊へ,成績優秀・品行方正な良家の子女から,多衝動性,回避性パーソナリティ障害(全般性の社交不安症),神経発達症,複雑性心的外傷後ストレス障害-発達性トラウマ障害,アタッチメントの問題と多様化した。家族との隔離が必須でなくなったことで入院から外来治療へのパラダイムシフトが生じているが,異質性のため治療的困難さは増している。そこで従来のカテゴリー診断を超えて,摂食障害に直接関連する症状のみならず併存症を含めたプロトタイプを念頭に的確に診立て,傾聴・寄り添いを越えて,超純粋にvalidationし,人格の病理(生きづらさ)への積極的な治療介入が必要となった。

  • 作田 亮一
    2022 年 2 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2022/10/05
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    摂食障害患者の低年齢化が注目されている。さらにCOVID-19パンデミックの影響で世界的に小児・思春期患者が増加し,患者への対策が医学的,社会的問題としてクローズアップされている。小児科医の立場から,小児摂食障害の外来治療(身体治療と心理的治療)を論じる。初診時の患者の診療方針策定は重要である。小児期の身体管理の注意点,特に必要な検査について説明した。小児・思春期の心理治療に関する主な世界のガイドラインを解説した。FBTは小児の治療に重要であり概説した。治療に抵抗する患者の場合,症状の持続因子として発達障害の併存も考慮に入れる必要がある。小児・思春期の摂食障害の治療のゴールは,身体の危機を乗り越えるだけではなく,家族や友人とともに日常生活がストレスなく送れることであり,治療者は,食行動以外のサポートを考慮に入れることが必要である。

  • 関根 里恵
    2022 年 2 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2022/10/05
    公開日: 2022/10/14
    ジャーナル フリー

    摂食障害における栄養食事療法は,外来,救急外来,集中治療,入院のいずれかのレベルから開始される。早期から栄養指導を実施し,管理栄養士は,キーパーソンも含め患者との良い治療関係を構築し,低栄養の改善,体重回復に努めることが重要である。神経性やせ症患者は炭水化物を制限しており,このことが摂取エネルギー低下の要因となっている。炭水化物割合の下限値は慎重に検討する必要があり,控えた炭水化物を牛肉,豚肉,鶏肉などの動物性食品に置き換えると予後に大きく影響する可能性がある。過食症患者は,過食や自己誘発性嘔吐,下剤や利尿剤の誤用などといったパージングを抑えることに重点を置いているが,過度の食事制限はこれらの患者の過食や嘔吐を悪化させる可能性がある。従って,栄養指導では,患者が規則的かつ適切な食事量を守ることに焦点を当て,管理栄養士はこれらの患者の治療計画において役割を果たすことが重要である。

連載 文献紹介 第2回
連載 摂食障害治療の今 第2回
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