教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
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57 巻 , 2 号
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原著
  • 小林 寛子
    57 巻 (2009) 2 号 p. 131-142
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     本研究では, 観察・実験による科学的な法則や理論の発見過程において「仮説評価スキーマ」を教示した上で協同させる指導法を提案した。仮説評価スキーマとは, 仮説と実験結果を整合的に結びつけるために必要な手続きに関する知識である。提案した指導法の効果を, 運動の規則性を発見する授業を用いて検討した。実験1では, 中学2年生140名を対象に, 提案した指導法と他の3つの指導法の効果を比較した。3つの方法とは, 特別な働きかけをせずに協同させる指導法, 模範的な発見過程を教示した上で協同させる指導法および, 実験結果を予想するという活動を教示した上で協同させる指導法である。授業後に実施されたテスト成績から, 提案した指導法は, 他の指導法に比べて, 科学的な法則や理論の理解を深めることが明らかとなった。実験2では, 提案した指導法下での中学2年生17名の学習活動を分析した。結果, 仮説評価スキーマの教示によって, 仮説と実験結果を整合的に結びつけるための手続きがとられること, その手続きに協同であたらせることで, 観察・実験結果が適切に解釈されること, 結果として, 科学的な法則や理論が発見され, よりよく理解されることが示唆された。
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  • 田中 志帆
    57 巻 (2009) 2 号 p. 143-157
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     本研究は, 学校適応のアセスメントに関するKSD(動的学校画)の妥当性を検討すること, どのような描画特徴が, 描画者の心理を投影しているのかを調べることを目的とした。627名の小・中学生を対象に, 教員への親密性, 友達への親密性, 教室にいるときの気分(安心・リラックス), 学校への適応状態を測定する質問紙を実施し, その後動的学校画を全員に施行した。解析を行い, 以下のような結果を得た。(1) 教員への親密性, 友達への自発的親密性尺度の得点が高い児童・生徒は, 人物像を笑顔で描き, 自己像, 友達像, 教師像とも横向きあるいは正面向きで描く傾向にあった。(2) 教室での安心尺度と, リラックス尺度の得点が高かった児童・生徒は, 友達像の数を多く描く傾向にあり, 尺度得点が低かった被調査者よりも教員像を横向きに描いていた。(3)KSDに描かれた学校場面の物語(「この場面のあと, 何が起きると思いますか?」への回答)がポジティブな内容であることと, 描画内容の統合性の高さが, 描画者の学校適応が良好であることを示していた。以上の結果から, 描画者の学校適応のアセスメントに有効であるというKSDの妥当性が示された。
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  • 加藤 司, 谷口 弘一
    57 巻 (2009) 2 号 p. 158-167
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     許しとは“自身の感情を害することを知覚し, それに向けられた否定的な感情, 認知, 動機づけあるいは行動が, 中性あるいは肯定的に変化する個体内のプロセス”である。本研究では, 許しの個人差を測定する許し尺度を作成した。研究1では, 先行研究などから, 許し項目を作成し, 691名の大学生によるデータを用い因子分析を行った結果, 恨みと寛容の2因子が抽出された。192名の大学生のデータを用いた, 4週間の間隔をあけた再検査法による信頼性係数は, 許しの否定では0.72, 許しの肯定では0.82であった。研究2では, 331名の大学生を対象に, 攻撃性, 怒り, 共感性, ビックファイブとの関連性を検討し, 許し尺度の構成概念妥当性を検証した。さらに, 研究3では, 特定状況における許し単一項目と許し尺度との関連性が検証され, 結果は仮説と一致していた。これらの結果から, 許し尺度の妥当性が保証された。
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  • 楜澤 令子, 福本 俊, 岩立 志津夫
    57 巻 (2009) 2 号 p. 168-179
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 第1に養護性(nurturance以下養護性)尺度を作成し, 第2にその尺度を使って養護性の規定要因及び過去の体験からの影響を調査することである。予備研究で作成した養護性尺度には, 相手の健全な発達を育成する「共感性と技能」に関する項目が含まれ, この尺度は, 共感性(9項目), 技能(7項目), 準備性(4項目), 非受容性(5項目)の4下位尺度から構成されている。予備研究でこの尺度の信頼性, 妥当性を確認した後, 本研究(N=239)では養護性の規定要因(性別・きょうだいの地位), 養護性形成の原因となる過去の体験の影響を検討した。その結果は次の通りだった。(1)女子は男子より養護性が高い, (2)きょうだいの地位(長子・中間子・末子・一人っ子の違い)に関する分析から, 女子の場合長子の「技能」が他のきょうだいの地位より有意傾向で高い, (3)過去の体験の影響では, 女子が男子より過去の体験の影響を受け, さらにきょうだいの立場(兄・姉・弟・妹による違い)により, 影響をうける体験の種類が異なる。その他, きょうだい同士や教師との関わり, ペットの飼育体験も養護性に影響することが示唆された。
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  • 麻柄 啓一
    57 巻 (2009) 2 号 p. 180-191
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     本研究では, 小学校5, 6年生が問題に数値が記載されていなくても公式を用いることができるか否かを調査した。具体的には底辺の長さが等しく高さが異なる2つの平行四辺形(あるいは2つの三角形)を提示して面積の大小判断とその理由の記述を求めた。正答者は平行四辺形の場合が49名中18名, 三角形の場合135名中80名に留まった。また底辺の長さが等しく高さが2倍である三角形の面積を「2倍」と答えることができたのは135名中62名に留まった(彼らは具体的な数値が与えられれば面積を算出することは可能であった)。公式の変数間の関係のみに着目して答の大小を導き出す操作を「関係操作」と名づけた上で, 関係操作ができない原因を分析した。その結果, (1)図形の大きさの違いを絶対把握ではなく相対把握しようとすること, (2)面積差は保存されないが面積比は保存される(差の非保存・関係保存)ことの理解が必要であることが示唆された。
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  • 及川 晴, 及川 昌典, 青林 唯
    57 巻 (2009) 2 号 p. 192-200
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     目標はポジティブな感情を活性化させる行動表象であるという視点に基づき(Bargh, 1990 ; Custers & Aarts, 2005a, b), 本研究では, 感情誤帰属手続き(AMP, Affect Misattribution Procedure ; Payne, Cheng, Govorun, & Stewart, 2005)が潜在目標の測定に応用できる可能性を検討するために, 日本人大学生62名を対象とした実験を行った。勉強目標や遊び目標に関連した画像をプライム刺激として用いたAMPは, 高い信頼性と中程度の効果サイズを示した。また, 潜在目標(AMP)と顕在目標(自己報告)は, 勉強に関しては中程度の相関を示したが, 遊びに関しては相関を示さなかった。さらに, 冬休み中の遊び行動は潜在指標と相関を示したが, 顕在指標とは相関を示さなかった。これらの結果は, 1)潜在指標と顕在指標は社会的望ましさが影響する程度に応じて一致・不一致を示し, また2)潜在指標は顕在指標よりも未統制の行動をよりよく予測するという, 潜在・顕在指標に関する一般的な仮説と整合していた。本研究では, 潜在目標の個人差が顕在目標とは独立して日常行動を予測することが示唆され, また, AMPの潜在目標指標としての妥当性が確認された。
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  • 高橋 登, 中村 知靖
    57 巻 (2009) 2 号 p. 201-211
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     本研究では, 主に学童期の子ども達を対象とした, 項目反応理論に基づく適応型言語能力検査を開発した。その際, 幼児期までとは異なる, 学童期に固有の言語能力である読み能力に焦点を当て, それと密接に関連する語彙と漢字の2種類の検査を作成した。語彙検査は幼稚園年中児~中学3年生まで計3,076名, 漢字検査は小学校1年生~中学3年生まで計4,463名の結果に基づいて作成された。困難度・識別力という2つの項目パラメータを持った項目群からなる項目プールを用意し, スタンドアロンのパソコン上, およびネットワークを介してWeb上で動作する適応型言語能力検査(ATLAN)を開発した。項目プール作成時に実施した紙版検査の受検者の解答パターンを利用してシミュレーションを行ったところ, 十分な再現性が得られ, ATLANが能力推定の面で問題がないことが示された。また, 既存の語彙, 漢字課題との間にも中程度の相関が見られ, 検査として妥当性があることが示された。さらに, 紙版の課題に比べ少ない問題数でありながら, 受検者ごとに異なる問題, 問題パターンが出題され, 受検者の解答に応じて出題する問題を変える適応型の検査として機能していることが確かめられた。最後に, 実用に向けた今後の課題について議論された。
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  • 金田 茂裕
    57 巻 (2009) 2 号 p. 212-222
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 減法の求残・求補・求差の場面理解の認知過程について, 先行研究で使用された文章題に加え, 新たに作問課題を用いて調べ, それらの場面理解の難しさの程度と理由を明らかにすることであった。研究1(N=110)では, 式(6-2)と絵(求残・求補・求差の場面)を併せて提示し, 両方を考慮して適切な話を文章で記述することを小学1年生に求めた。その結果, 求残より求補, 求差の場面で正答率が低いことが示され, これらの場面理解は難しいという従来の研究の知見が確認された。さらに, 誤答内容を分析した結果, 場面間でその傾向が異なることが示され, 求補の場面では絵と対応しない誤答が多く, 一方, 求差の場面ではそれに加え, 式と対応しない誤答も多くみられた。同様の結果は, その4ヶ月後に実施した研究2(N=109)でも得られた。以上の結果から, 求補の場面では絵に表わされた全体集合と部分集合の包含関係を理解することが難しいこと, 求差の場面では式と絵の対応関係を考えることが求められる点が難しいことが示唆された。
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原著[実践研究]
  • 高垣 マユミ, 田爪 宏二, 中西 良文, 波 巌, 佐々木 昭弘
    57 巻 (2009) 2 号 p. 223-236
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     本研究では, Maehr & Midgley(1991)によって提案された動機づけ構造の各下位次元を, わが国の小学6年理科「水溶液の性質」の授業に適用した教授方略を考案した。授業実践を通して, 導入した教授方略が, 学習者の科学的概念の変化, 及び学習観・動機づけ・学習方略の変化に, どのような効果をもたらすのかを探索的に検討することを目的とした。単元前後における動機づけの質問紙調査に基づく数量的分析, 水溶液の性質の保持概念に基づく記述分析, 毎時間の授業過程における発話と行為に基づく解釈的分析の結果, 以下の3点が示唆された。1)本授業で考案した教授方略は, 水溶液の性質についての科学的な概念の獲得を促す。2)既有知識・日常経験と関連づける「課題」, 最適な選択・決定を自らが行う「権限」の教授方略の働きかけは, 学習観における「科学的手続きの重視」の上昇を導く。3)グループにおいて問題解決・意志決定を行う「グルーピング」, 自らが目標を設定し評価する「評価」の教授方略の働きかけは, メタ認知的方略における「プランニング」の上昇をもたらす。
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展望
  • 伊藤 貴昭
    57 巻 (2009) 2 号 p. 237-251
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
     学習者に言語化を促すと学習効果が促進されることがある。本稿では, そのような学習方略として言語化を活用することの効果を検討するため, 関連する3つの研究アプローチ(自己説明研究, Tutoring研究, 協同学習研究)を取り上げ, その理論と問題点を概観した。その結果, (1) 自己説明研究では言語化の目的が不明確であるため, 方法論の多様性という問題を抱えており, (2) Tutoring研究では, 知識陳述の言語化に留まってしまう学習者の存在が指摘され, (3) 協同学習研究では言語化の効果ではなく認知的葛藤の源泉としての他者の存在を指摘していること, の3点が明らかとなった。これらの問題を解決するため, 本稿ではTutoring研究において指摘された知識構築の言語化を取り上げ, 認知的葛藤を設定することで, 関連する研究アプローチを統合するモデル(目標達成モデル)を提案した。このモデルによって, これまでの研究によって拡散した理論を一定の方向へと収束可能となることが示唆された。
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