教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
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59 巻 , 2 号
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原著
  • 鈴木 雅之
    59 巻 (2011) 2 号 p. 131-143
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究では, テストをフィードバックする際にルーブリックを提示し, 評価基準と評価目的を学習者に教示することの効果について, 中学2年生を対象とした数学の実験授業によって実証的に検討した。また, 返却された答案とルーブリックだけで, 自身の答案内容とルーブリックの記述内容との対応関係が理解できるのかを検討するために, ルーブリックを提示し具体的な添削をする群と, 添削をしない群を設けた。さらに, ルーブリックがなくても具体的な添削があれば, ルーブリックの提示と同等の効果が得られる可能性を考慮し, ルーブリックを提示せずに添削だけを施す群を設定した。その結果, ルーブリックを提示された2群は, 提示されなかった群と比較して, 「改善(自身の理解状態を把握し学習改善に活用するためのものであるという認識)」テスト観や内発的動機づけが高く, 理解を指向して授業を受ける傾向にあり, 最終日の総合テストでも高い成績をおさめた。また, パス解析を行った結果, 動機づけと学習方略, テスト成績への影響は, ルーブリックの提示によって直接引き起こされたのではなく, テスト観を媒介したものであることが示唆された。さらに本研究では, 添削の効果がみられないことが示された。
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  • 南 雅則, 浅川 潔司, 秋光 恵子, 西村 淳
    59 巻 (2011) 2 号 p. 144-154
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 小学6年生の予期不安に関する調査を実施し, 中学校入学後の学校適応感との関連を検討することであった。小学生の予期不安は, 16名の中学生を対象に実施された予備調査を経て開発された「中学校生活予期不安尺度」によって測定された。さらに学校適応感を測定するため, 浅川・尾崎・古川(2003)の「学校生活適応感尺度」が使用された。研究参加者は, 男子小学生195名, 女子小学生153名であった。学校生活適応感尺度の下位尺度において以下のような結果を得た。(1) 教師との関係得点に時期×予期不安水準×性別の2次の交互作用が見出され, 予期不安低群において4月末では男子よりも女子の方が高かったが, 5月末にはその差は見られなかった。また, 予期不安高群において4月末では男子と女子の得点に有意差は見られなかったが, 5月末では男子よりも女子の方が高かった。(2) 情緒的安定性得点は, 予期不安水準の「低群」, 「中群」, 「高群」の順に高かった。(3) 部活動への意欲得点は, 4月末から5月末にかけて低下していた。以上の結果をふまえ, 学校心理学における個人—社会的発達の支援の視点から考察がなされた。
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  • 櫻井 育夫
    59 巻 (2011) 2 号 p. 155-167
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究は, Kohlbergの道徳性認知発達理論の立場から, Defining Issues Testを用いて日本の青少年の道徳判断の発達について分析し, 6つの結果を得た。(1) 新たに設定した発達段階の評定基準に基づいて小学生から大学生を8段階に分類したところ, 年齢の上昇と共に判断の発達段階が高くなる事実が確認され, Kohlberg理論を支持する結果を得た。また, 発達の特徴として, (2) 小学校高学年の7割以上は「選択的道徳判断」において慣習的水準に達している。(3) 発達段階の認知構造モデルを作成することにより, 道徳判断の構造的変化および発達の道筋が示された。(4) 葛藤を解決するために複数の道徳的観点を選択する際は, 小・中学生は低い段階の観点から高い段階の観点へ, 高校・大学生はその逆の順序で観点を選択し, 異なる選択パターンの存在が示唆された。(5) 多くの年齢層で道徳判断の発達に性差が認められ, 男子に比べて女子の発達段階の方が有意に高い。また, 男子の方が段階3の道徳的観点への志向性が強い。(6) 発達水準が高くなると判断の発達的なずれは小さくなり, 安定した道徳的認知構造が構成されることが明らかになった。
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  • 狩野 武道, 津川 律子
    59 巻 (2011) 2 号 p. 168-178
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 大学生が示す無気力が, スチューデント・アパシー的無気力と抑うつ的無気力に分類可能かどうかを検討し, それぞれの特徴について考察することであった。大学生155名を分析対象とし, 全3回の縦断的質問紙調査を行った。用いた尺度は, 意欲低下領域尺度, 抑うつ気分を測定する項目, 抑うつの反応スタイル尺度の否定的考え込みと分析的考え込みであった。その結果, 持続的に学業に対して無気力を呈する群は, 持続的に抑うつを伴う群(抑うつ的無気力群)と伴わない群(スチューデント・アパシー的無気力群)に分類できることが示唆された。また, 抑うつ的になったときに否定的に考え込む傾向, 分析的に考え込む傾向において, 抑うつ的無気力群はともに高く, スチューデント・アパシー的無気力群はともに低いことが示された。これらの結果から, 無気力研究においてスチューデント・アパシー的無気力と抑うつ的無気力を区別する必要性が論じられ, また, 大学生の無気力に対する予防, 援助に関して考察された。
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  • 高橋 麻衣子, 田中 章浩
    59 巻 (2011) 2 号 p. 179-192
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究では, 音読における構音運動と音声情報という2つの要因が, 成人の文の読解過程においてどのような役割を担うのかを, 文中の語順の保持の観点から明らかにすることを目的とした。それぞれの要因を分けて検討するために, 構音運動と音声情報の有無を操作した, 構音無・音声無(黙読)条件, 構音無・音声有(読み聞かせ)条件, 構音有・音声無(つぶやき読み)条件, 構音有・音声有(音読)条件を設定した。実験参加者(成人)にはこれらの4条件において課題文を読ませ, その後に続く質問課題(動作主判断, 修飾語判断)と課題文中の語順を入れ替えて作成した再認課題を行わせた。その結果, 課題文提示直後の質問課題の成績においては音声情報による促進効果が生起した。一方で, 修飾語判断課題後の文の語順情報を入れ替えた再認課題においては, 構音運動が成績を促進した。これらの結果から, 構音運動は文中の語順の情報をある程度頑健に保持することで, その後の意味処理の基盤をつくることが考えられた。一方で音声情報は, 文が提示された直後に文中の局所的な語順を保持する役割を持つことが示唆された。
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原著[実践研究]
  • 道田 泰司
    59 巻 (2011) 2 号 p. 193-205
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 大学での半期の授業の中でさまざまな形で質問に触れる経験をすることが, 質問に対する態度や質問を考える力に効果を及ぼすかどうかを検討することであった。授業では毎回, グループで質問を作ること, 個人で質問書を書くことに加え, 半期に1回グループで発表させることで, 質問することが必要となる場面を作った。授業初回と学期の最後に, 質問に対する態度の自己評定と, 文章を読んで質問を出す課題を行った。2年度に渡る実践の両方において, 学期末の調査で質問に対する態度が全般的に向上しており, 質問量も増加していた。質問量の増加は, 事実を問う質問や意図不明の質問によるものではなく, 高次の質問の増加である可能性が示唆された。その変化がどのように生じたのかを知るために, 質問量と質問態度それぞれについて, 事前テストでの成績によって学生を4群に分けて事後テスト結果を検討した。その結果, 事前テスト上位群以外の学生の質問量および質問態度が向上していることが示された。以上の結果より, さまざまな形で質問に触れる経験をさせた本実践の効果が示された。
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  • 須藤 邦彦
    59 巻 (2011) 2 号 p. 206-218
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     10歳の自閉症スペクトラム障害の児童2名に, 援助事態を明確にする準備行動と, 準備行動によって明確になった援助行動の反応型をセットにして獲得させた。具体的には, いずれもピースが不足している2組のパズルを前に, 被援助者が「困ったな」と表出している援助事態(準備行動課題1), 何もない壁や机を前に被援助者が「困ったな」と表出している援助事態(準備行動課題2), ピースが不足している1組のパズルを前に, 被援助者が「困ったな」と表出している援助事態(統制課題)を提示した。そして, 例えば「どっちで困っていますか?」など, 援助事態を明確にする行動(準備行動)と, 被援助者の応答によって指定されたパズルのピースを持ってくる行動(援助行動の反応型)を標的行動とした。すると, 2名の対象児は全ての課題について標的行動を自発し, 1名は介入の対象となっていない課題や家庭における準備行動に効果が般化した。結果を受けて, 不明確な事態を明確にする準備行動が自閉性障害児の発達状況に合わせて適用できる可能性と, 準備行動が援助行動の効率を高め, 場合によっては不適切な援助行動の予防と強化機会を増加させる可能性について考察した。
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  • 清道 亜都子
    59 巻 (2011) 2 号 p. 219-230
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究では, 高校生が意見文を作成する際, 型指導(清道, 2010)だけでは効果が十分に現れなかった, 内容面での充実を図るために, 型指導に「紙上交流」を加えることの効果を検討した。高校2年生57名(交流群29名, 型指導群28名)が, 教科書教材を読んで意見文を書く際, 介入指導1回目は, 交流群には紙上交流(対象者の意見をまとめた「交流」プリントを与える), 型指導群には型提示(意見文の構成を示した「型」プリントを与える)を行った。その結果, 意見文の理由や予想される反論等に関する内容評価は, 両群で同程度の向上が見られた。介入指導2回目は, 両群に対して紙上交流と型指導を行ったところ, 理由に関する評価は型指導群の方が交流群より有意に高かった。また, 事後テストでは, 両群ともに介入指導時より内容評価は下がったが, 理由の評価は型指導群の方が交流群より高かった。以上より, 高校生の意見文を内容面で充実させる上で, 型指導に加えて紙上交流を行うことには一定の効果が認められ, さらに, 紙上交流を行ってから紙上交流と型指導を合わせて行うより, 型指導を行ってから紙上交流と型指導を合わせて行う方が効果的であることも示された。
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  • 三山 岳
    59 巻 (2011) 2 号 p. 231-243
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究は, 心理の専門家による巡回相談において, 子どもと保育に対する保育者の捉え方(概念)にどのような変容が生じるのか, さらにどのような要因がその概念変容に影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的としている。保育所と幼稚園の保育者20名にインタビュー調査を行い, その逐語記録をM-GTAによって分析し, 巡回相談における保育者の概念変容プロセスのモデル図を作成した。保育者は相談員による意見の提供をきっかけに, 複数の影響因の干渉を受けながら, 普段の保育での様子を検証的に振り返る体験をしていた。この振り返り体験が相談員の意見に対する最終的な保育者の受けとめを左右し, その結果に応じて子どもや保育の捉え方が具体的に変容していくことが分かった。概念変容の過程が明らかになったことで, 巡回相談のコンサルテーションでは, 相談時に普段の保育を保育者が豊かに振り返ることができたかどうか, 相談員の意見と保育者の実感の一致が見られたかどうかが相談員にとって重要な指標であることが示された。
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展望
  • 野村 亮太, 丸野 俊一
    59 巻 (2011) 2 号 p. 244-256
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     個人の認識論を説明するモデルの理論的な問題点を指摘した上で, 従来のモデルを時間スケールという観点から統合した多重時間スケールモデルを提唱する。このモデルは, 個人の認識論について以下のように想定している。(1) 人々にとって“知識”や“知ること”は, 脱文脈化された概念の体系としてではなく, 特定の認知的活動の文脈に埋め込まれた資源として表象されている, (2) 個人の認識論においては, 知識一般と使うものとしての知識とで異なる信念が形成されている, (3) 認知活動を行う場合には, 認識論と現実の課題との間の相互作用を通して, 仮説的世界観として典型的なメンタル・モデルが状況依存的に構築され, その枠組みの中で知識の管理・統制が行われる, (4) 仮説的世界観の範囲で課題解決が十分に行われない時, 世界観の再措定が動機づけられる, (5) 認知活動を繰り返すことを通して新たな認識論が構築され, 既存の仮説的世界観との間で葛藤が生まれ, かつ, 他者の視点や教育的介入によって仮説的世界観の背景となる認識論が対象化されたとき, 個人の認識論は新たな世界観における要求に適応する形で変容する。
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