教育心理学研究
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65 巻 , 1 号
教育心理学研究
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
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原著
  • 外山 美樹
    65 巻 (2017) 1 号 p. 1-11
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     Goal shielding理論(Shah, Friedman, & Kruglanski, 2002)では, “価値のある目標が活性化されると, 代替的な目標(その重要な目標とは無関連な目標)の活性化が自動的に抑制される”と提唱している。そして, この代替的な目標に対する抑制が, 目標達成のプロセスにおいて重要な役割を果たすと考えている。本研究では, 重要な目標が活性化されると, 代替的な目標の活性化が抑制されるというgoal shielding効果において, 楽観性が調整変数として働いているのかどうか検討することを目的とした。研究1では164名の大学生を対象にし, まず, 学業達成の目標を活性化させ, 学業達成の重要性を尋ねた。研究2では196名の大学生を, 目標へのコミットメントが高い条件(“達成したいと強く望む目標”を記述させる)と低い条件(“できれば達成したいとわずかに望む目標”を記述させる)にランダムに割り当てることによって, 目標へのコミットメントを操作した。目標を活性化させたのちに, 研究1, 研究2ともに, 代替的な目標の記述として, 今現在, したいと思っていること(ex. 行動, 活動)を思いつく限り自由記述してもらった。本研究の結果より, 楽観性の高い人は低い人に比べて, 重要な目標が活性化された際に, 代替的な目標の活性化がより抑制されることが示された。本研究の結果は, 楽観性の高い人が重要な目標に対して積極的に取り組むことができるのは, 代替的な目標の活性化の抑制が働いていることに起因している可能性を示唆するものである。
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  • 藤田 尚文, 福留 広大, 古口 高志, 小林 渚
    65 巻 (2017) 1 号 p. 12-25
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は自尊感情などのストレス防御因子と心理的ストレス反応の関係を説明することであった。ストレスの窓モデルと命名されたモデルは4つの仮定をもっている。(a)ひとはストレスを受け取る窓を1個以上もっており, ストレスはその窓を通して個人内に侵入してくる。(b)個々の窓の受け取るストレスの強度分布は, 認知的評価をした結果, 値が基準化され, 平均を0, 分散を1とする正規分布の右側半分である。(c)個々の窓は, それぞれ独立に機能し, 侵入してきたストレスを受け取り, ストレスの強度を2乗したものがストレス反応となり, 最終的に個人のストレス反応は各窓から受け取った総和となる。(d)ストレスの窓の個数は防御因子と密接に関連し, 防御因子が強ければストレスの窓が少なく, これが弱くなるにつれてストレスの窓が多くなる。これらの仮定の数学的帰結として, 防御因子の強弱によって層化された各群のストレス反応が, 窓の個数分の自由度をもつχ2分布となる。本モデルは防御因子として消極的自尊感情や楽観性を用いたときストレス反応の分布をよく近似できた。さらに素因ストレスモデルにおける交互作用は本モデルから数学的に導かれることが本論文で議論された。
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  • 伊藤 美奈子
    65 巻 (2017) 1 号 p. 26-36
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     昨今, 深刻化・複雑化するいじめについて, 小学生(3,720人), 中学生(3,302人), 高校生(2,146人)に調査をおこなった。いじめの被害・加害経験を尋ねた結果より, いじめの加害役割と被害役割が固定したものではないことが明らかになった。また, いじめの被害者は自尊感情が低く情緒不安定な特徴を有するが, それに加害経験が加わるとより一層, 自尊感情(とくに人間関係における自己肯定感)は低くなることが示唆された。また, クラスメートをからかうことを「悪くない」「おもしろい」と認知するものの割合は, 年齢とともに多くなること, その傾向は, とくにいじめ加害経験を有するものに多いこともわかった。いじめによる不登校や希死念慮は, ネット上のいじめ・集団無視・金品たかりといういじめでとくに強く経験される。またこれらの辛さは, 加害経験がなくいじめ被害のみのものに強く, 仕返し願望は, いじめ加害経験者により強い。いじめを見たときの反応(注意する・誰かに相談する・傍観する)も, 発達段階による違いが見られた。さらに, そうしたいじめに対する反応の背景にも, いじめ加害経験や自尊感情の低さが関与していることがうかがえた。
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  • 伊藤 拓
    65 巻 (2017) 1 号 p. 37-51
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピー(SFBT)の4つの質問(すなわちミラクル・クエスチョン, 例外探しの質問, スケーリング・クエスチョン, コーピング・クエスチョン)は解決構築のために効果的だと考えられているが, 失敗例が報告されている。SFBTの創始者達により, それらの質問を用いる指針が示されているが, その指針が十分でないことを創始者の1人は示唆している。本研究では, SFBTの熟練セラピストが留意するそれらの質問を用いる際のポイントを調べ, 創始者達や先行研究によって指摘されていないポイントを見出すことを目的とした。SFBTに熟練していると考えられる10名の日本人セラピストへの面接調査で収集したデータを修正版グラウンデッド・セオリーアプローチで分析した。その結果, ミラクル・クエスチョンや例外探しの質問前に, クライエントの問題の話を十分に聴くこと, 例外探しの質問の際に, 問題が存在することをセラピストが否定したとクライエントに思われないようにすることなどが見出された。最後に, 本研究で新たに示されたポイントを, 4つの質問に共通するポイントと個別の質問に特化したポイントに分けて論じた。
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  • 髙本 真寛
    65 巻 (2017) 1 号 p. 52-63
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     本研究は脅威性, コーピング, 感情というストレス・プロセスにおいて変量効果を仮定することで個人差を表現し, 諸変数間の関連を明らかにすることで対人ストレスを経験した後に生じる個人差をパーソナリティ特性とコーピング評価によって説明できるかを検討した。本研究では, 日誌法を用いて82名の大学生に調査を行い, 1週間にわたって1日2回, 日々の日常的出来事, 対人ストレス, コーピング, 半日の感情状態について回答を求めた。分析の結果, 積極的行動と回避的思考の行使はそれぞれ個人内水準において適応的な遅延効果と即時的効果を示し, 回避的行動の行使は不適応的な即自的効果を示した。また, 肯定的解釈の行使は個人内水準において, 直後には適応的効果をもつにもかかわらず, その後に不適応的効果を示すという逆転効果をもつことが示された。さらに, コーピング評価と神経症傾向では, 脅威性と回避型行動および回避的思考と抑うつ・不安との間でクロス水準交互作用が確認されたが, その効果はあくまでも限定的なものに留まった。最後に, 介入研究における個人内プロセスの個人差を変量効果として扱うことの重要性を議論した。
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  • 村山 恭朗, 伊藤 大幸, 高柳 伸哉, 上宮 愛, 中島 俊思, 片桐 正敏, 浜田 恵, 明翫 光宣, 辻井 正次
    65 巻 (2017) 1 号 p. 64-76
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     情動調整方略はメンタルヘルスに影響を及ぼす要因の1つである。国内では, 反すう, 問題解決, 気晴らし, 認知的再評価を同時に測定できる尺度がないため, 国内の小中学生における情動調整とメンタルヘルスの関連についての知見はあまり報告されていない。そこで, 本研究は単一市内の全小中学校に在籍する小学4年生から中学3年生までの5,321名を対象として, 既存の尺度に新たに認知的再評価の項目を加えた情動調整方略に関する尺度(Emotion Regulation Scale for Elementary and Middle School Students; ERS-EM)を作成した上で, 情動調整方略と抑うつおよび攻撃性の関連を検証した。因子分析の結果, ERS-EMは4因子構造であることが確認され, ERS-EMの構成概念妥当性が支持された。各方略と抑うつおよび攻撃性の関連については, 反すうが強い児童生徒ほど抑うつと攻撃性が高いこと, 問題解決の傾向が高い児童生徒ほど抑うつと攻撃性が低いこと, 気晴らしを行う児童生徒ほど抑うつが低いことが確認された。認知的再評価は抑うつと攻撃性のいずれとも有意な関連を示さなかった。
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  • 芳賀 道匡, 高野 慶輔, 羽生 和紀, 坂本 真士
    65 巻 (2017) 1 号 p. 77-90
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 2つの研究を通して, 33項目から構成される大学生活における主観的ソーシャル・キャピタル尺度(SSCS-U)の開発と, 信頼性および妥当性を検討することにあった。本研究では2つの調査を通じて, SSCS-Uを構成する項目を選定し, 開発されたSSCS-Uの因子構造の再現可能性, 内的一貫性と再検査信頼性の検討, そして他の心理社会的要因との関連を検討した。その結果, SSCS-Uは, 仲間, クラス, 教員に関する主観的ソーシャル・キャピタルという3因子によって構成され, 因子構造の再現可能性があることが示された。また, 内的一貫性と再検査信頼性があること, ソーシャル・スキルおよび主観的ウェルビーイング, ソーシャル・キャピタル関連行動と関連があることが分かった。本尺度は, 学生が主観的に認知しているソーシャル・キャピタルを包括的に測定する尺度として, 大学生活のソーシャル・キャピタルに関する研究の更なる発展に寄与すると考えられる。
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  • 伊藤 亜矢子, 宇佐美 慧
    65 巻 (2017) 1 号 p. 91-105
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     学級の個別的・心理社会的性質を意味する学級風土は, 学習環境の基盤として重要であり, いじめ・暴力の予防や精神健康の向上, 特別支援教育などの側面から注目を集めている。本研究では, 学級風土質問紙(CCI; 伊藤・松井, 2001)を元に, 近年の子どもをめぐる社会や学校の変化を踏まえて, 新版の中学生用CCIの作成を試みた。首都圏・北海道・東北・北陸・東海・近畿・九州の計24中学校227学級にて回答データを収集し, 得点の経年変化を調べるとともに, マルチレベル因子分析の枠組みを通して尺度の再構成を行い新版のCCIを作成した。また, 基準関連妥当性に基づく妥当性検証を行い, さらに旧版と新版の両者を用いた教師コンサルテーションの結果から, 新版CCIの実践的有用性を例証し, 結果提示の方法・尺度構成の更なる見直しの可能性について検討した。
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  • 秋元 有子
    65 巻 (2017) 1 号 p. 106-119
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     医学的診断基準における算数能力の障害は算数障害として位置づけられ, 数処理システムや数的事実・手続き的知識からなる計算システムの問題から生じる計算障害がその中核と考えられている。算数数学の学習困難にはこれまでの研究から, 神経心理学的欠陥に基づく複数のサブタイプが提唱されてきた。本研究では数学的思考の手続き的知識と概念的理解の2つの区分を使って過去のサブタイプを分類し, 新たな知見も加えた基準を用いて算数のつまずきの具体的な症状の分析を行った。男19名, 女12名からなる対象児31名は1名を除きWISC-III, WISC-RでFIQ90以上で, 算数の評価, 治療教育を主に小学校高学年以降に行っている。日本の文部科学省の学習障害の定義にも照らし合わせて算数能力の障害と考えられる4つの群が得られた。計算手続きの問題が顕著な2つの群は明らかに算数障害と考えられたが, 具体物の配分・分割に著しいつまずきを示す群や, 操作の内化に重要なイメージが思い浮かばない群の対象児には数式の意味理解など概念的理解の問題が顕著に認められた。算数のつまずきを, 数学的思考の視点から概念的理解を含めて検討することの重要性が示唆された。
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原著[実践研究]
  • 新原 将義
    65 巻 (2017) 1 号 p. 120-131
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     小学校をはじめとする教育現場において, 外部の専門家による授業の機会が増加しており, 特に音楽家が招かれて行われる「音楽アウトリーチ」が活発化している。こうした実践は「ワークショップ型」の形式で行われることが多いが, 教育的意義が不明確なまま同様の実践が乱発されており, 教育現場・専門家の双方で混乱が生じている。この問題に取り組むため, 本研究ではワークショップ型の音楽アウトリーチ実践における音楽家の能動的・即興的な教授行為を, 音楽家・児童間の対話のなかに位置づけて捉えることを目的とし, 小学校において行われた音楽アウトリーチを対象とした相互行為分析を行った。分析の結果, 音楽家の教授行為は(a)課題の単純化(b)集束的プロセスとしての対話の組織化, という2種のスキャフォールディング, 及び(c)拡散的プロセスとしての対話の組織化(d)児童の声の「読み替え」, という4種の形態として整理された。以上の結果を基に, 事前に設定したプログラムによって, そこでどのような対話を行い, 音楽家がどのような働きかけを行うのかが限定されていたことを指摘し, 音楽家・児童双方の即興性を阻害しないプログラムの可能性について考察した。
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  • 尾之上 高哉, 井口 豊, 丸野 俊一
    65 巻 (2017) 1 号 p. 132-144
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     本研究では, 計算スキルの流暢性を形成するための指導法として, タイムトライアルに目標設定と成績のグラフ化を組み合わせた指導(実験条件)に着目し, その効果を, タイムトライアルによる指導(統制条件)の効果と比較した。比較は, 2つの実験計画, (a)3年生の2学級を対象にした統制群法, (b)4年生の1学級を対象にした基準変更デザイン法, で行った。標的スキルは掛け算九九に設定し, 従属変数は2分間のタイムトライアルにおける正答数とした。各実験計画の分析結果は, 実験条件が, 統制条件よりも, 効果が高いことを示した。つまり, (a)では, 事前事後の得点を共分散分析で検定した結果, 実験条件の方が, 事後得点が有意に高かった。(b)では, 実験条件下の成績を, 統制条件下の最高値からの変化量として, 線形混合モデルで分析した結果, 実験条件下の成績は, 統制条件下の最高値よりも, 有意に高い状態で保たれていた。最後に, 各指導による流暢性の伸びと, 社会的妥当性の各得点との関連をSpearmanの順位相関を用いて検定した結果, どちらの実験計画でも, 実験条件においてのみ, 流暢性の伸びと, 成長実感得点の間に, 有意な正の相関が認められた。
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  • 野村 亮太, 丸野 俊一
    65 巻 (2017) 1 号 p. 145-159
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
     本研究では, 学校知や利用知識の性質についての信念が変容する条件が, 従前の授業観と学習活動から立ち現れる新たな世界観との間で生じる葛藤の解決であると想定した。授業を協同的活動の場として捉えるための利用知識に関する信念の促進を目指す2つの教育実践を実施した。研究1では心理学の入門科目を受講した70名の学生を対象とした。この授業は, 教員が学生に授業内容に関連した質問を考えさせディスカッションを行い, 翌週にフィードバックするというものであった。介入の結果, 3分の1の学生が利用知識をより状況依存的で幅広く適用可能だと捉えるようになったが, 残りの学生は, むしろ低く見積もるようになった。研究2では, 37名を対象にした。この授業では, 質問が知識獲得のきっかけになるだけではなく, 自他の考えを吟味・検討するための知的資源にもなるという質問の意義を明示した。その結果, 学生は学校知をより客観的で適用可能なものとして捉えるようになったが, 介入2か月後にはこの効果は見られなくなった。他者のものの見方・考え方を知る“楽しさ”は葛藤を解消していく上で重要だが, 単一の授業による介入の効果は限定的であることが示唆された。
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