教育心理学研究
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66 巻 , 1 号
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原著
  • 酒井 恵子, Takuya Yanagida, 松居 辰則, 戸田 有一
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,Sprangerの価値類型論に基づき6種の価値への志向性を測定する尺度である「価値志向性尺度」の尺度項目間にみられる順序関係を明らかにし,価値志向性というパーソナリティ特性の構造や成り立ちを解明することである。本研究ではそのための分析手法を新たに開発し「順序関係分析」と名付けた。順序関係分析では,尺度に含まれる2項目ごとに順序関係の有無が判定される。2項目間の相関係数および平均値の差が共に基準以上であれば「順序関係」,相関係数が基準以上で平均値の差が基準未満であれば「等価関係」と判定される。さらにこれらの順序関係および等価関係が樹状図で示される。この分析を,大学生320名(男子156名・女子164名/平均年齢20.0歳)の価値志向性尺度への回答データ(5件法)に適用し,6種の価値志向性(理論・経済・審美・宗教・社会・権力)を測定する6尺度それぞれについて樹状図を作成した結果,Sprangerの理論ともよく対応する特徴的な順序関係が各尺度において見出された。また,今後尺度の妥当性をより高めるべく改良していくための示唆が得られた。

  • 高本 真寛, 古村 健太郎
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 1 号 p. 14-27
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究は,大学生がアルバイトを行うことによって精神的健康と修学にどのような影響を受けるのかについて検討した。研究1では,大学生284名を対象に,アルバイト就労と抑うつとの関連を検討した。決定木分析の結果,心理的負荷のかかる出来事(職場での人間関係のトラブルやサポート源の消失)の方が深夜勤務よりも抑うつへのリスクが高いことが示された。研究2では,大学生324名を対象に,アルバイト就労と修学との関連について検討した。決定木分析の結果,アルバイト就労による授業等の欠席および期末試験期間中のアルバイト就労が修学困難に対するリスク要因となることが明らかとなった。本研究の結果から,大学生が修学に支障を来すにいたるまでのプロセスには,(a)アルバイト中に心理的負荷のかかる出来事を経験することで精神的不調になり修学困難に至る,(b)深夜勤務による睡眠不足や疲労の蓄積が大学への出席に支障を来すことで修学困難に至るという2つの存在が示唆された。

  • ―質問力,質問態度,クリティカルシンキング志向性に着目して―
    松本 明日香, 小川 一美
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 1 号 p. 28-41
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,大学で専攻する学問に対して,どのような価値を求めるのか,どのような価値評定をしているのかという専攻学問に対する価値と,大学教育を通じて培うべき力である批判的思考力との関連を探索的に検討することであった。批判的思考力として,質問力,質問態度,クリティカルシンキング志向性を測定した。専攻学問に対する価値を第1群,批判的思考力を第2群として正準相関分析を行った結果,以下の2点が示された。1点目は,専攻学問に対する4つの価値全てが高いと,質問態度やクリティカルシンキング志向性が高くなり,事実を問う質問数も多くなるという結果であった。2点目は,専攻学問の学びは他者から見て望ましいと思われているという価値である公的獲得価値は高いが,専攻学問は充実感や満足感を喚起する学問であると思うという興味価値が低いと,事実を問う質問数は多くなるが,クリティカルシンキング志向性および思考を刺激する質問数に負の影響を与えるという結果であった。専攻学問に対して価値を見出すことは,批判的思考力の獲得に有効な要素であることや,複数の価値を組み合わせて効果を検討することの意義などが考察された。

  • 海沼 亮, 櫻井 茂男
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 1 号 p. 42-53
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,社会的達成目標尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討すること,社会的達成目標と向社会的行動および攻撃行動との関連を検討すること,社会的遂行接近目標と攻撃行動との関連を調整する要因について検討することであった。中学生965名に対して調査を行った。因子分析の結果,社会的達成目標尺度は,社会的熟達接近目標,社会的熟達回避目標,社会的遂行接近目標,社会的遂行回避目標の4因子から構成された。また,社会的達成目標と向社会的行動および攻撃行動との関連を検討した結果,社会的熟達接近目標は,向社会的行動と正の関連を有し,攻撃行動と負の関連を有していた。社会的熟達回避目標は,向社会的行動と正の関連を有し,関係性攻撃と負の関連を有していた。社会的遂行接近目標は,向社会的行動および身体的攻撃と正の関連を有していた。社会的遂行回避目標は,向社会的行動と負の関連を有し,関係性攻撃と正の関連を有していた。さらに,社会的遂行接近目標と攻撃行動との関連は,社会的熟達接近目標の程度によって調整されるという結果も得られた。

  • ―友人関係による居場所感の違い―
    永井 暁行
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 1 号 p. 54-66
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究は,友人関係で傷つきを回避しようとする傾向にあると分類されていた大学生の中にも,高いソーシャルスキルを持ち円滑な関係を築ける大学生と,そうではない大学生がいることを示し,それぞれの大学生の友人との付き合い方の特徴を明らかにする目的で行われた。そのため,友人関係で傷つくことを回避しようとするか否かという態度と,ソーシャルスキルによって大学生の友人との付き合い方を分類し,また,その分類ごとの居場所の実感について検討した。本研究では大学生357名(男性122名,女性235名)を対象とした質問紙調査を行った。分析の結果,態度とスキルによる友人関係の類型は5群に分類された。それぞれの類型はその特徴から配慮・スキル不足距離確保群,スキル標準傷つき無関心群,スキル成熟傷つき回避群,スキル不足傷つき回避群,スキル成熟親密関係群と命名された。この類型によって居場所の実感の違いを検討したところ,居場所を実感しやすいのはスキル成熟傷つき回避群,スキル成熟親密関係群であった。本研究から傷つきを避けるような気遣いをしてしまう大学生の中にもソーシャルスキルが高く,受容される関係を形成・維持できている大学生がいることが明らかになった。

  • ―ロールモデルとマネジメント経験に焦点をあてて―
    川崎 知已, 飯田 順子
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 1 号 p. 67-80
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,一般教員が学校管理職を志向する規定要因を探索的に検討することであった。まず,予備調査Ⅰで管理職候補者5名を対象にインタビュー調査を行い,過去の職務上での経験,教員として現在持っている効力感や職業観,認知,将来展望としての学校管理職志向に関連する要因が収集された。次に,予備調査Ⅱで,校長候補者68名に自由記述調査を行い,ロールモデルとなる管理職の人物像,公立学校教員職業観に関するより詳細な内容を収集した。それを踏まえ,本調査では,全国公立小・中学校の一般教員310名を対象にweb調査を実施し,学校管理職に影響を与える要因について,重回帰分析を用いて検討した。その結果,学校マネジメント経験から得た「職務達成感」と,「専門的識見・改革型リーダー機能」を有するロールモデルとの出会いが,「組織貢献効力感」「校長職に対する肯定的認知」の2変数を介して,学校管理職志向に間接的に影響を与えることが明らかになった。

原著[実践研究]
  • ―2年間のフォローアップ測定による標準群との比較―
    髙橋 高人, 松原 耕平, 中野 聡之, 佐藤 正二
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2018 年 66 巻 1 号 p. 81-94
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,中学生における認知行動的な抑うつ予防プログラムの効果を標準群との比較,さらに2年間のフォローアップ測定から検討することであった。介入群を構成した51名の中学1年生が,プログラムに参加した。標準群は,中学生1,817名から構成した。介入内容は,全6回の認知行動的プログラムから構成した。プログラムの効果を測定するために,子ども用抑うつ自己評定尺度,社会的スキル尺度,自動思考尺度が,介入前,介入後,フォローアップ測定1(1年後),2(2年後)で実施された。結果から,抑うつについて介入前と標準群1年生の比較では差が見られなかったのに対して,介入群のフォローアップ測定1と標準群2年生の比較では,有意に介入群の抑うつが低いことが示された。また,社会的スキルの中のやさしい言葉かけとあたたかい断り方,ポジティブな自動思考に関して,介入前よりも介入後,フォローアップ測定において向上することが示された。ユニバーサルレベルの抑うつ予防プログラムが,中学生に対して効果的な技法であることが示唆された。

  • ―ある私立大学生における自由記述データと捕獲率を用いた分析から―
    大橋 洸太郎, 高嶋 幸太
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 1 号 p. 95-106
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,大学教育における第二外国語に対して,学生が何を望んでいるのかの調査,分析をある私立大学内で行った。その際には,大学で中国語,ドイツ語,スペイン語,フランス語,朝鮮語といった第二外国語を履修する62 名の自由記述型の質問項目の回答を用いて,捕獲率による知見の収集率の確認と,得られた知見の吟味,考察を行った。その結果,(a)実用的な授業,(b)学習者にとって困難な点の把握,(c)コース設計に対する考慮の重要性が明らかになった。また,調査用紙のフェイス項目を用いて協力者をサブグループに分類し,より詳細な層ごとに捕獲率を計算した。この試みにより,留学や仕事で外国語の使用を志望していない学生でも実用性を求めていることが確認された。

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