教育心理学研究
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67 巻, 1 号
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原著
  • ―2種類の学級風土とグループ間の地位におけるヒエラルキーの調整効果に着目した検討―
    水野 君平, 日高 茂暢
    原稿種別: 原著
    2019 年 67 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は自己報告によって測定した友だちグループ間の学級内の地位と学校適応感の関連に関して,学級レベルの変数による調整効果を検討することであった。具体的に本研究が扱った学級レベルの変数は,自然な自己開示ができる学級風土と学級内の生徒間の不和を表す学級風土,さらにグループ間の地位におけるヒエラルキーの強さであった。公立中学校3校46学級の生徒1,417名を対象に質問紙調査をおこなった。分析の結果,学級風土はグループ間の地位と学校適応感の関連を調整しなかったが,ヒエラルキーの強さはグループ間の地位と学校適応感の「課題・目標の存在」との関連を調整した。単純傾斜検定の結果,ヒエラルキーが強い学級の場合,高地位グループの生徒ほど「課題・目標の存在」による充実感が高い傾向にあることがわかった。本研究の結果から,グループ間の地位と学校適応感との関連の学級間差やグループ間の地位におけるヒエラルキーの役割を考察した。

  • 森田 愛子, 髙橋 麻衣子
    原稿種別: 原著
    2019 年 67 巻 1 号 p. 12-25
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,文章の読解時に,音声化と内声化が文章理解や眼球運動にどのような影響を及ぼすかを検討することであった。黙読時に内声化を行う程度の個人差により,文章理解や眼球運動が異なるかを併せて検討した。実験1では,大学生24名に文章を読ませ,文章内容問題と逐語記憶問題に解答させた。音読,黙読,すべてを内声化する黙読(内声化強制),なるべく内声化しない黙読(内声化抑制)の4条件を設けた。内声化強制条件と内声化抑制条件を比較した結果,内声化によって逐語的な情報を保持しやすくなることが明らかになった。実験2では,大学生23名に,逐語記憶問題を課さずに同様の実験を行った結果,内声化を抑制すると文章内容問題の成績が低下し,内声化が文章理解に寄与することが示唆された。ただし,通常の黙読時に内声化を多く行う者とあまり行わない者に分けて成績や眼球運動のパターンを比較したところ,内声化をあまり行わない者の場合,内声化を抑制しても文章内容問題の成績の低下が比較的小さかった。また,このような読み手は内声化を多く行う者より黙読時の理解成績が高く,黙読時に視線を自由に動かす読み方を有効に利用できていることが示唆された。

原著[実践研究]
  • ―障害者の就職と定着を目指して―
    高橋 美保, 鈴木 悠平
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2019 年 67 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     障害者の就労については,支援が進められている一方で離職率も高く,障害者個人が就職をし,その後も職場で定着するための支援が必要とされている。就労継続に向け,障害者個人が就労移行支援段階で予防的に獲得すべきものの一つにライフキャリア・レジリエンスがある。本研究では,就労移行支援の中で,障害者がライフキャリア・レジリエンスを自覚しそれを活用できるようになることを目的にプログラムを開発,実施した。介入群46名,統制群48名を対象に,ライフキャリア・レジリエンスの5つの下位尺度(現実受容,多面的生活,長期的展望,楽観的思考,継続的対処)と就業効力感,精神健康度(GHQ12)を従属変数とし,時間(プレ対応,プログラム5終了後,フォローアップ2終了後)と群(介入群,統制群)の2要因の分散分析を行った結果,現実受容,長期的展望,多面的生活,継続的対処,就業効力感,精神健康度は有意差は見られなかったが,楽観的思考に交互作用が見られたことから,少なくともプログラムの参加によって楽観的思考が高まることが示唆された。今後は,リスクの回避などプログラムの更なる精緻化と長期的効果や障害者の就職や定着への影響の検証が求められる。

  • 住田 裕子, 森 敏昭
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2019 年 67 巻 1 号 p. 40-53
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     本研究では,小学校の算数科授業において個々の児童の深い概念理解を促すペア学習中の相互作用プロセスについて検討した。まず,小学4, 5年生の児童を算数問題解決のペア学習中になされた発話の種類に基づいて「自己中心性タイプ」「他者視点取得タイプ」「協調タイプ」の3タイプに分類した上で,ルール評価アプローチを援用したプレテストとポストテスト課題における平均得点を比較した。その結果,発話のタイプによって解決方略変容の生起に有意な差が見られ,調節的発話の発現を特徴とする協調タイプ群の児童が課題に対してより適応的な方略をとるようになり,調節的発話の生起が相互作用の効果を促進させることが示唆された。次に,それぞれのタイプ群の発話の推移を分析し,共同注意の観点に基づいて分類した3種類の発話(誘導的・未追跡的・追跡的)から次の3種類の発話(誘導的・未追跡的・追跡的)への推移確率を比較した。その結果,協調タイプ群は追跡的発話から追跡的発話への推移が他の2群に比べて有意に多く,相互作用プロセスにおいて追跡的発話の循環が概念理解を促すことが示唆された。

  • ―小学校低学年に対する実践から―
    豊沢 純子, 元吉 忠寛, 竹橋 洋毅, 野田 理世
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2019 年 67 巻 1 号 p. 54-67
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     本研究は,小学校低学年を対象に危険予測と対処行動を学ぶ防災教育を実施した。2つの小学校の2年生281名がマルチメディア教材を用いた授業に参加し,身近な生活場面(下校中,寝ている時等)で地震が発生する際の危険と身の守り方を具体的に考えるための学習を行った。また,保護者と一緒に通学路と寝室の危険を考える課題に取り組んだ。発達段階を考慮し,評価は数値による主観的な評定と自由記述に対して行った。その結果,概して学習効果が確認された。危険だけでなく行動の仕方を具体的に学ぶこと,保護者と連携した学習を行うことの重要性が示された。

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