教育心理学研究
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67 巻 , 2 号
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原著
  • 山岡 明奈, 湯川 進太郎
    原稿種別: 原著
    2019 年 67 巻 2 号 p. 73-86
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     創造性を増進することは社会にとって有用であると考えられるが,しばしば創造性の高い人は精神的に不健康であると指摘されてきた。一方で,近年では創造性が高くても精神的に健康な人の存在も示唆されている。そこで本研究では,創造性と精神的健康の両方と関連深い概念として知られているマインドワンダリングという現象に着目し,創造性の高さや精神的健康さの違いによって,マインドワンダリングの特徴に違いかあるのかを実験的に検討した。まず,62名の参加者の創造性と抑うつ傾向およびワーキングメモリ容量を測定した。その後,思考プローブ法を用いて,映像視聴中のマインドワンダリングの思考内容,自覚の有無,話題数を測定した。分析の結果,創造性が高く精神的に健康な人は,マインドワンダリング中に過去のことを考える頻度が少ないことが示された。本研究の結果は,マインドワンダリングを用いて,精神的健康を維持しつつ創造性を増進するための基礎的知見を示したといえる。

  • 金綱 祐香, 濱口 佳和
    原稿種別: 原著
    2019 年 67 巻 2 号 p. 87-102
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     中学生のいじめ問題は深刻であり,学校現場における道徳的判断力の育成が求められている。本研究では,中学生に攻撃動機や形態の異なる四つの攻撃場面を提示し,場面の違いによって,加害者の悪さの程度の判断及びその判断理由がどのように異なるかをTurielの社会的領域理論に基づいて検討した。また,そうした善悪判断に影響を与えると考えられる個人要因・環境要因を取り上げ,善悪判断への影響を調査した。はじめに,中学生410名への予備調査をもとに判断理由尺度を作成し,その後,中学生1,022名を対象に,作成した判断理由尺度を用いて本調査を実施した。その結果,仕返しを動機とした攻撃は,慣習領域や個人領域の理由から加害行為が許容されやすいこと,言語的攻撃よりも関係性攻撃の方が道徳領域の理由が多く用いられ,より悪いと判断されることが明らかとなった。また,個人要因では,特に女子における罪悪感特性の高さが,環境要因では,教師の自信のある客観的な態度が,望ましい善悪判断を促進することが明らかとなった。以上の結果から,いじめ抑止に向けた指導や学級運営について議論された。

  • 福岡 未紗, 三輪 和久, 前東 晃礼
    原稿種別: 原著
    2019 年 67 巻 2 号 p. 103-117
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     グラフ理解は,ボトムアップ処理とトップダウン処理の両処理が相互に影響し合うことで行われる。グラフ理解におけるボトムアップ処理は,図的表象から主要な記号的情報が取り出される「抽出」の段階と,それらの記号的情報と長期記憶内にある宣言的知識とが照合される「解釈」の段階に分けられる。さらには,グラフ理解に基づいて「判断」を下すことが求められる場合がしばしばある。本研究では,「印象」や「態度」に基づくトップダウン処理が,これらの一連のボトムアップ処理の段階のどこに影響するのかという点について検討する。実験の結果,その場で一時的に形成される「印象」によるトップダウン処理は,グラフ理解における「抽出」と,それに続く「判断」の両方の段階に影響する一方,社会規範意識に基づき長い時間をかけて形成される「態度」によるトップダウン処理は,グラフ理解には影響せず,「判断」の段階のみに影響することが確認された。また,「態度」が「判断」に影響する場合,その「判断」はボトムアップ処理に依存することなく行われることが確認された。

  • 山岡 明奈, 湯川 進太郎
    原稿種別: 原著
    2019 年 67 巻 2 号 p. 118-131
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     近年,マインドワンダリングに関する研究が盛んに行われている中で,意図的に行うマインドワンダリングと非意図的に生じるマインドワンダリングを区別して扱うことの重要性が強調されている。そこで本研究は,意図的なマインドワンダリング傾向を測定するMind Wandering: Deliberate (MW-D) と非意図的なマインドワンダリング傾向を測定するMind Wandering: Spontaneous (MW-S) の日本語版の尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とする。総計357名の大学生を対象に質問紙調査を行い,翻訳した尺度の構造を確認したところ,原版と同様に2因子構造が妥当であることが示された。また,質問紙調査に加えて実験データ(総計N=60名)を用いて信頼性と妥当性の検討を行ったところ,十分な内的整合性と基準関連妥当性が示され,日本語版MW-DとMW-Sが一定の信頼性と妥当性を有することが確認された。

  • ―相手に教授する状況と自分の理解を確認する状況の比較―
    伊藤 貴昭, 垣花 真一郎
    原稿種別: 原著
    2019 年 67 巻 2 号 p. 132-141
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/12/14
    ジャーナル フリー

     説明の生成によって理解が促進するのは,聞き手の存在が影響を与えるからだとの指摘があるが,聞き手がいる説明状況の何が影響を及ぼしているのかは明確にされていない。本研究では,他者へ向けた説明において,説明目的および聞き手の知識状態の違いが理解促進効果に与える影響を検討した。統計学の「カイ二乗検定」を学習材料として,大学生を対象に,聞き手が内容を知らない状況で教えるために説明をする群(教授群:16名),聞き手も内容を知っており,自分自身の理解確認のために説明をする群(理解確認群:15名)を設定し,学習効果を比較した。その結果,事後テストにおいて教授群が理解確認群を上回っており,聞き手が内容を知らない状況で教えるために説明することが理解を促すことが示唆された。また,発話カテゴリーを分析した結果,「意味付与的説明」の中でも「式・手続きの意味づけ」が事後テストの得点と相関し,教授群では理解確認群よりもこの発言が多く生成されていた。本研究の結果から,聞き手が内容を知らない状況において説明する場面で「意味付与的説明」が生成されやすく,そのことによって理解促進効果が高められることが示唆された。

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