てんかん研究
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1 巻, 2 号
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  • 大塚 頌子, 吉田 治美, 松田 都, 寺崎 智行, 伊予田 邦昭, 山磨 康子, 岡 〓次, 大田原 俊輔
    1983 年 1 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    従来記載されていない特異なnon-convulsive status epilepticusの1型について報告した。これは意識障害を伴わない短い脱力のエピソードの頻発を主徴とし, 脳波ではエピソードの頻発期には覚醒時は焦点性ながら広汎化する棘徐波複合が頻発するが, 上記のエピソードはこれと時間的に厳密な相関を示さず, てんかん発作そのものとは考え難かった。睡眠時には広汎性棘徐波複合が連続する特異なパターンを示し, この点ではsubclinical electrical status epilepticus induced by sleep (ESES) に類似していた。寛解期には焦点性発射が主となり上記のパターンは睡眠中にも見られなかった。なお頻発期に精神神経症状を示すことも注目された。以上によりこれら症例群はESESに近縁ながら別個の病態と考えられた。
  • 良性乳児けいれんを中心として
    杉浦 ミドリ, 松本 昭子, 渡辺 一功, 根来 民子, 高江洲 悦子, 岩瀬 勝彦
    1983 年 1 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    1歳未満発症の大発作103例を6歳以降まで追跡し, 発作, 知能, 身体の長期予後を検討した。3年以上発作消失率は63%であった。知能・身体的予後良好群は、55%であり, このうち3歳未満に発作が消失したきわめて予後良好なものが38例で全体の37%を占め, これは良性乳児けいれんとよびうると考えられた。知能・身体的予後良好群の特徴として, 1) 発症原因不明, 2) 発症前発達遅滞がない, 3) 神経学的異常がない, 4) 発作型の変化がない, 5) 脳波正常または正常化があげられた。特に1), 2), 3) は発症早期に予後を推測する鑑別点となると考えられた。しかし知能・身体的予後良好群中, 早期 (3歳未満) に発作が消失した群を鑑別する点は見い出せなかった。
  • 橋本 清, 釜萢 敏, 藤野 修, 植田 穰, 本多 忠典, 村田 愿, 十字 猛夫
    1983 年 1 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    てんかん患者257例と, てんかんおよび熱性痙攣の既往のない対照群110例についてHLA抗原の検索を行った。検索した抗原のうち, 対照群に比し, てんかん患者群で高頻度にみられたのはBw 60のみで, 対照群が11.8%なのに対し, てんかん患者群では35.4%で, X2検定により有意な相関を示した。てんかんの発作型別の中で, Bw 60か高頻度にみられたのは, 部分てんかんの2次性全汎化38.8%, 欠神発作40.7%, 点頭てんかん54.4%で, 相対危険率は, それぞれ4.72, 5.12, 8.95であった。HLAとてんかんとの相関は連鎖不平衡によるものと考えられるが, 今後はHLAのfamily studyを行えば, てんかんの遺伝素因の解明に役立つものと思われる。
  • 神経心理学的脳波賦活によって得られた所見を中心に
    松岡 洋夫, 高橋 剛夫, 大熊 輝雄
    1983 年 1 巻 2 号 p. 128-138
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    てんかん発作発現に関与する精神的緊張の役割を知る目的で読書, 書字, 計算, 構成行為などによる神経心理学的脳波賦活を施行した。本賦活によって突発波が賦活されたてんかん患者25例のうち, 9例に精神的緊張が賦活要因として関与していた。このうち3例では, 突発波が問題の説明中あるいは問題の解答に窮しているときなどに著明にみられ, 精神的緊張が賦活要因であった。日常気づかれている発作誘因を考慮して, これら3例は “精神的緊張によって誘発される反射てんかん” と診断された。残りの6例では, 書字や計算などの特定の精神活動に加えて, 精神的緊張も同時ないしは独立して賦活要因になっていることが推測された。
  • 高畑 直彦, 石川 幹雄, 高柳 英夫, 斉藤 利和, 世良 洋
    1983 年 1 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    運動失調, 舞踏病様不随意運動, ミオクローヌス, 強直-間代発作, 痴呆などさまざまな症状の組み合わせで発症する特異な神経変性疾患-dentatorubropallidoluysian atrophy (DRPLA), あるいはfamilial chorea and myoclonus epilepsy-の病態については不明な点が多い。本疾患に罹患したとみられる1症例 (40歳男) を病初期に見い出し, 睡眠脳波, 聴覚誘発電位などによる脳幹機能の異常と, 髄液内homovanillic acid (HVA) と5-hydroxyindol acetic acid (5 HIAA) の高値, r-aminobutylic acid (GABA) の低値を認めた。本例の経験より, 運動失調とてんかん大発作との合併は, 本疾患の早期診断上参考になるものとして注目した。
  • 大塚 頌子, 須貝 聖一, 寺崎 智行, 大田原 俊輔
    1983 年 1 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    非痙攣性てんかん重積状態の1特殊型であるminor epileptic status (MES) を反復した亜急性硬化性全脳炎, SSPEの1症例を報告した。すなおち, 4歳5ヵ月より瞬間的に倒れるエピソードと知的退行でSSPEが発症し, 4歳7ヵ月と4歳11ヵ月の時に突然2週間および2日間持続する昏迷状態が出現した。脳波で広汎性高振幅不規則徐波に多焦点性てんかん波が混在した特異なパターンを認めたためMESと診断した。
    本例ではSSPEによりもたらされたてんかん性機序を基盤にMESが発現したと考えられた。
  • 猪熊 和代, 渡辺 一功, 根来 民子, 杉浦 ミドリ, 松本 昭子, 高江洲 悦子
    1983 年 1 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Landauらの報告したてんかん発作と脳波異常を伴う後天性言語障害症候群に類似するが, これと異なり, 感覚性言語障害より, 運動性の言語障害を主とする2症例について報告した。脳波異常の程度と言語障害の間には相関性が認められた。2例とも, 右ききでその脳波異常は右側優位であった。ACTH-Z療法によって, 脳波異常, 言語障害ともに消失した。その後再発を繰り返したが, 焦点性発作波だけの時期にも, ACTH-Zは効果を認めた。両例とも現在までけいれん発作はコントロールされている。
  • 西村 成子, 今澤 正興, 宮本 侃治
    1983 年 1 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    ラット脳のフェニトイン (PHT) 特異的結合活性の約70%が顆粒画分に存在し, 凍結-融解, 超音波処理, 界面活性剤CHAPSを併用することにより顆粒画分活性の約40%が可溶化されることを認めた。可溶化画分をPhe-Sephカラムクロマトグラフィーおよびn-ブタノール処理により部分精製すると, 比活性が約10倍に上昇することを認めた。
    部分精製した結合部位に対する抗てんかん薬および類似化合物のPHT結合阻害が化学構造に特異的であり, ヒダントイン系薬物としてはPHT自体および5位のフェニル基にメチル基を導入したMPPHは強い結合親和性を示し, そのメチル基が水酸基となったHPPHでは親和性が著明に低下した。またヒダントイン以外の抗てんかん薬はすべて結合親和性を示さなかった。
  • 多田 隆興, 宮本 誠司, 内海 庄三郎, 堀 浩
    1983 年 1 巻 2 号 p. 165-174
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    てんかん焦点の組織学的研究において完成された焦点の観察も重要であるが, 焦点完成までの経時的組織変化および焦点形成に関与した物質の脳内・細胞内作用場所の同定も重要であると考えられ, 本実験を行った。
    塩化第一鉄, フェリチンを脳内に注入し, 慢性焦点性てんかんモデルを作製し, 光顕, 電顕などを用い焦点を観察した結果, 神経細胞内には, paired cisternaeの出現, 神経膠細胞には微細繊維の増加などの所見を得た。
    鉄の局在に関しては, 神経細胞, 神経膠細胞細胞質内から, 二次的ライソゾーム内にとり込まれ, 終生細胞内に鉄が留まると考えられた。これらの結果より, 形態学的側面よりみた, てんかん波出現に関する考察を試みた。
  • 二次焦点形成への干渉をめぐって
    上津原 甲一, 朝倉 哲彦, Juhn A. Wada
    1983 年 1 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Kindling現象に伴う二次焦点形成時の促進および抑制の観察は主として扁桃核を中心とした辺縁系で検討されており, 新皮質での取り組みは少ない。ただ新皮質と辺縁系では当然異なる機序が存在すると考えられ, この問題をラット前頭葉皮質kindlingの変化より検討した。用いたラットはRoyal Victories black-hooded strainの成熟雄7匹で, 前頭葉の位置はanterior frontal cortex。その際, 刺激閾値, 形成条件を扁桃核kindlingの条件に近づけて検討した。その結果ラット一側前頭葉皮質kindlingに伴ってけいれん促進性および抑制性の影響が対側対称部位にそれぞれ見られ, それがさらに一次側刺激効果にもそれぞれの影響を及ぼすことを確かめ扁桃核kindlingと明らかな差を認めた。
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