てんかん研究
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10 巻, 1 号
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  • 井上 有史, 鈴木 節夫, 渡辺 裕貴, 八木 和一, 清野 昌一
    1992 年 10 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    非言語性高次大脳機能を主誘発因とする反射てんかんの自験10例と文献に報告された64例を臨床・脳波学的に検討し, 次の諸特徴を抽出した. 1) 若年発症. 2) 誘発される発作型は全般発作で, 腕や手を中心とするミオクローヌスと大発作が主体であり, 欠神発作を合併することがある. 3) 脳波には中心部を中心とする全般性てんかん放電がみられ, これは特殊な神経心理学的賦活により誘発される. 4) 誘因は複雑な連続的空間的思考から随意運動へといたるプロセスにあると考えられ, 具体的には計算, 描画, 構成, 書字, チェスやカードなどのゲーム, 複雑な手指運動などであり, 随意運動の表象だけでも誘発される. 5) 精神緊張や注意集中は助長因子である.
    高次大脳機能により誘発される特発性反射てんかんは, 非言語性機能によって誘発される上記の一群と, 言語誘発てんかん (読書てんかんを含む) とに大別される. 本邦における非言語性高次大脳機能誘発てんかんの多さは言語誘発てんかんの少なさと対照的であり, 言語的・文化的背景が存在する可能性を指摘した.
  • 足立 直人, 大沼 悌一, 鈴木 一郎, 清水 弘之, 石島 武一, 杉下 守弘
    1992 年 10 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    12例の難治側頭葉てんかん患者の術前機能評価として27回のWadaテストを行い, 同時に両側深部電極より脳波記録を行った。 両側脳波の注入前後1分間の突発性異常波 (以下突発波とする) を視察的に数量化し, 焦点側と非焦点側について比較検討した。
    amobarbital注入側の突発波は, 焦点側・非焦点側のいずれも注入後は有意に増加した (p<0.01). 焦点側と非焦点側の間に, 注入後突発波数と注入後突発波増加数において有意な差を認めなかった。
    amobarbital注入の反対側の脳波変化では, 注入反対側が焦点側の場合には, 非焦点側の場合に比して, 注入後突発波数が有意に多く (p<0.01), 突発波増加数も有意に高かった(p<0.05)。
    これらの所見から, amobarbital注入時の海馬脳波変化は, 発作焦点側判定のための補助的情報となる可能性が示唆された。
  • 西村 範行, 田中 一宏, 永木 聖子, 田中 利佳, 港 敏則, 中村 豊, 植村 幹二郎
    1992 年 10 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    当科神経外来通院中の患児142例 (VPA単剤服用中の患児: 45例, PB単剤服用中の患児: 34例, CBZ単剤服用中の患児: 14例, 抗けいれん剤を服用していない患児: 49例) を対象に血小板数 (Plt), 平均血小板容積 (MPV), 血小板分布幅 (PDW), 血小板クリット (Pct), 赤血球分布幅 (RDW), 各抗けいれん剤血中濃度を測定し, MPV nomogram を作成した。
    VPA単剤服用患児において,
    1) Pltの有意 (p<0.01) な減少
    2) MPVの有意 (p<0.01) な増加
    3) MPV nomogramの偏位
    を認めたが, 血中濃度および投与期間との間に相関関係はなく, PDW, Pctの有意な変化はみられなかった.
    PBおよびCBZ単剤服用患児では, Plt, MPV, PDW, Pctの有意な変化はみられなかった。
  • 萩原 真理子
    1992 年 10 巻 1 号 p. 34-44
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Carbamazepine-10, 11-epoxide (CBZE) の副作用発現への関与を知るために, carbamazepine (CBZ) 服用中に眠気, 複視などの副作用が出現したてんかん患者24例 (36検体)(副作用 (+) 群) と副作用が出現しなかった46例 (74検体)(副作用 (-) 群) のCBZおよびCBZEの血中濃度を同時に測定し比較検討した。
    CBZEの平均血中濃度は, 副作用 (+) 群で有意に高値であった。CBZE. 血中濃度 (μg/ml) の母平均の95%信頼区間は, 副作用 (+) 群では2.19<μ<2.71, 副作用 (-) 群では1.04<μ<1.27であった。副作用 (-) 群のCBZE血中濃度は全例で2.2μg/ml以下であった。またCBZおよびphenytoinが治療有効濃度であるのに, 副作用の出現した例が33検体あり, そのうち, 18検体では, 副作用発現時のCBZEが2.2~4.5μg/mlと高値であった。経時的に血中濃度を検討し得た2例では, 副作用が発現している時にはCBZが治療有効濃度であるのにCBZEは高値を示した。これらのことより, CBZEの血中濃度と副作用発現には有意な相関関係があることが示唆された。また, 副作用発現のCBZE血中濃度の値として2.2μ/ml以上のレベルが指摘された。
  • 岩下 好文
    1992 年 10 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    ラット扁桃核キンドリングを用いて, アルコールの急性投与および慢性投与後離脱時のけいれん発作に対する影響を検討した。
    1) アルコール急性投与の作用: 20%アルコール溶液 (0.25, 0.5, 1, 2g/kg) の腹腔内投与後, 後発射持続時間およびRacineの分類による発作段階を経時的に調べた。その結果, 0.5~2g/kg投与群では, 用量依存的に抗けいれん作用を認め, 発作段階の減少および後発射持続時間の短縮が見られた。一方0.25g/kg投与群では, 発作段階は変化せず, 後発射持続時間がわずかに延長した。さらに同用量投与30分後のけいれん閾値の変化を調べた結果, 25μAの閾値低下を認め, けいれん促進作用を示した。
    2) アルコール慢性投与後離脱時の影響: 20%アルコール溶液 (2g/kgi. p.) を1日1回, 8日間連続投与し, 離脱1, 4, 8日目の閾値の変化を調べた。その結果, アルコール投与群では, 閾値が離脱1日目のみ投与前に比べ有意に低下していた。
  • 河村 弘庸, 天野 恵市, 谷川 達也, 川畠 弘子, 伊関 洋, 平 孝臣, 岩田 幸也, 梅沢 義裕, 清水 常正, 荒井 孝司, 清水 ...
    1992 年 10 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    難治性外傷性てんかん5例に対して, 焦点切除術を行った。その際, 新たに開発した皮質電極により, てんかん源性焦点を同定し, てんかん焦点および周辺脳の微小血流をLaser dopplerによるblood perfusion monitorを用いて測定して, 皮質電極で記録されたてんかん焦点と微小脳血流量との関連について検討した。今回開発したグリット電極は20個の球状電極を2枚のビニール膜の間に挾み固定してあり, この基盤が非常にflexibilityに富むため, この電極の固定は電極盤を脳表に置き, 生理食塩水をこれに注ぐだけで, しっかりと固定された。また, 各電極を国際式10-20法の電極配列にしてあるため, 電極の確認が容易であった。また今回Laser dopplerによる微小脳血流の測定を行った5症例の結果をまとめると, spike focusのみられた部位では40~76ml/100ml/min, 平均52.2mlとspike dischargeのみられなかったgliosisと思われた部位 (平均38.8ml) に比べると, 13mlの血流増加がみられた。また, この値は正常脳表の血流量より約32%低値を示した。しかし, 微小脳血流量の測定の時点で, 皮質脳波に捕えられたspike dischargeから臨床発作間欠期なのか発作時なのかを決めることが困難なため, 今回の測定結果をSPECT, PETなどによる, てんかん焦点の局所脳血流量と直ちに比較することはできなかったが, てんかん焦点の微小脳血流の把握が可能となった点で興味深い。
  • 三浦 清邦, 前田 規秀, 鬼頭 正夫, 羽賀 淑子, 麻生 幸三郎, 根来 民子, 渡辺 一功
    1992 年 10 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    難治性側頭葉てんかん患児20例にMRIを施行し, 患児の既往歴との関連から難治性側頭葉てんかんの病態について検討した。12例に内側側頭葉硬化と思われる所見が認められた。診断には冠状断T1, T2強調画像が必要で, 片側の海馬の萎縮 (T1強調画像) と同部位の高信号域 (T2強調画像) がみられた。また片側の海馬にT2強調画像で高信号域を認めるが, 海馬の萎縮は認められない症例が4例あり, いずれも右側病変であった。3例では器質性病変が疑われ, 所見が全くなかったのは1例だけであった。
    内側側頭葉硬化が原因と考えられた12例中の9例にのみ幼少期の痙攣重積の既往がみられ. 幼少期の痙攣重積によって生じた内側側頭葉硬化が側頭葉てんかんの原因と推測された。また, 短い熱性痙攣の有無周産期異常の有無とMRI所見との関連はなかった。
  • 学校教師への意識調査・12年間の変化
    三宅 捷太
    1992 年 10 巻 1 号 p. 68-77
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    従来よりてんかんをもつ子の生活改善のために社会医学的研究を行ってきた。今回は横浜市立全養護学校と一特別区の全小・中学校の学校教職員1, 335名に平成2年6月に調査し904名68%の回答を得たので結果を報告する (12年前の同一の調査では対象の72% 751名の回答を得た。その結果を () 内に示した)。
    結果: a) てんかんの印象を多くの教師は危険35% (31%)・不安22% (19%) と回答し, 遺伝・精神病・不治の病との回答は前回より減少し, 教師はより正しく理解していた。
    b) てんかん児と健康児とに成績・性格・行動上の差はないとの回答が増加し, 特有な性格をもつとした教師は35%に53%より減少していた。
    c) 家族より病名の連絡を受けた経験のある教師は59% (37%) と前回より増加し, 主治医との連絡は18%の教師に経験があり低率だが倍増して, 相互の連携は軽度に改善していた。
    d) 修学旅行への参加に39%の教師が主治医の診断書を求めていた。例示した15種目の運動や行事のうち, 50%以上の教師が参加の許可を与えたのは13種目 (7種目) でほぼ倍増し, 各教師の平均許可率は64% (50%) と増加していた。
    e) 教師から医師へ467件 (216件) の要望がだされ, 多くは疾病に関する指導, 病名や病状の連絡, 家族への十分な指導に関してであった。
    前回と比較して教師のてんかんへの理解が深まり, 教師の立場の違いによる意見の差も減少していた。しかし解決すべき問題は多く, 特に医師と相互の理解が一層求められていた。
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