てんかん研究
Online ISSN : 1347-5509
Print ISSN : 0912-0890
ISSN-L : 0912-0890
10 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 久野 武, 足立 直人, 大沼 悌一, 石田 孜郎
    1992 年 10 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    pseudoseizure (疑似発作) を合併したてんかん患者について検討した。対象は武蔵病院に入院した134名 (男: 85名, 女: 49名) のうち疑似発作を合併したてんかん患者10名 (男: 1名, 女: 9名, 平均年齢29.9歳) である。性, 現在年齢, 発病年齢, てんかん類型, てんかん発作型をあわせた, 疑似発作のないてんかん患者10名を対照群とした。幼少期発病例では20歳前後に疑似発作が出現する傾向があった。てんかん類型では側頭葉てんかんが6例と最も多かった。疑似発作型については, けいれん性7例, 非けいれん性4例であり, 自分自身のもつてんかん発作との類似性があったのは4例であった。疑似発作の基盤にヒステリー機制はなく, 原始反応に近いものと考えられた。対照群と比較して頭部CT異常, 基礎波の徐化と発作波の頻発, そして精神遅滞が多かった。疑似発作確定の際, 性別, 年齢, てんかん類型, CT所見, 間欠期脳波所見, 知能程度も考慮する必要があると考えられた。
  • 兼本 浩祐, 河合 逸雄
    1992 年 10 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    脳波上遅棘徐波と棘波群発を示す晩期発症の潜因性/症喉性全般てんかんを持つ39歳の男性において, 顔面の強直と自動症が交互に出現する発作群発状態に続発して, 数時間から十数時間にわたる言語障害を主体とする選択的高次脳機能の低下が月に1度の頻度で観察された。遷延性の言語障害を呈した時期に一致して, 両側性の鋭波, 鋭徐波などからなる多形性の突発波が持続的に記録され, また, 重篤な言語機能の表出および受容面での障害の存在にもかかわらず, 図形の模写や単純な口頭命令によって一定の身振りをする能力は保持されていた。本症例で出現した両側性突発波を伴う一過性言語障害を, 選択的高次脳機能障害を示すSpike-Wave Stuporと関連させて論ずるとともに, 運動要素を伴う意識消失発作に続発する遷延性高次脳機能障害の鑑別診断を行った。
  • MRI・SPECT・PETの比較
    前田 規秀, 渡辺 一功, 根来 民子, 麻生 幸三郎, 羽賀 淑子, 鬼頭 正夫, Nuguri Shylaja, 大木 隆史, 佐久間 ...
    1992 年 10 巻 3 号 p. 224-232
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児期発症の局在関連性難治てんかん患者24例 (側頭葉てんかん12例, 後頭葉てんかん6例, 前頭葉てんかん6例) にMRI, SPECT, PETを施行し, その病態について検討した。全体では, MRIでは14例, SPECTでは15例, PETでは20例で大脳皮質に局在する異常を認めた。側頭葉てんかん12例では, MRIで10例に側頭葉に異常を認め, 5例は側頭葉内側硬化が, 他の5例では側頭葉内側硬化以外の病変が疑われた。SPECTでは9例で, PETでは11例で側頭葉に異常を認めた。後頭葉てんかん6例では, MRIでは4例で, SPECTでは5例で後頭葉に異常を認めた。PETでは6例全例で後頭葉に異常を認め, 視覚発作を伴う4例で1次視覚中枢の異常を認めた。前頭葉てんかん6例では, MRI, SPECTでは全例異常を認めなかったが, PETでは3例で局在する異常を認め発作焦点と考えられた。PETは焦点部位の検出に極めて有用であった。
  • 川崎 淳, 扇谷 明, 兼本 浩祐, 河合 逸雄
    1992 年 10 巻 3 号 p. 233-240
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    難治側頭葉てんかんに対する外科治療の適応精査を目的に, 蝶形骨誘導脳波-ビデオ同時記録を施行し, 発作時脳波を捉え得た15例32発作を対象にし, 発作時脳波からみた発作時症状の側方性について検討した。発作時脳波については一側限局, 一側優位, 判定不能の3群に分けて検討した。ジストニー肢位は, 発作焦点の対側にみられた。反復性言語自動症は, 発作焦点が劣位側にあるものにみられた。発作後の言語回復が速やかであったものは, 発作波が劣位側に限局していた。発作に対する健忘を伴うものは, 発作波が両側に出現する例に多くみられた。これらの結果から側頭葉てんかんにおける発作時症状は, 発作焦点を予測するうえで, 有用な情報を提供すると思われた。
  • 川島 康宏, 柴崎 尚, 田村 勝, 大江 千廣
    1992 年 10 巻 3 号 p. 249-259
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    てんかん発作を呈した側頭葉腫瘍20例のてんかん発作様式と臨床症状, CTやMRI, PETなどの画像所見, 脳波所見, 予後を検討した。CTまたはMRIにて扁桃核や海馬など側頭葉内側構造に腫瘍の浸潤や著しい圧排変形などの変化を認めた11例では嘔気や動作の停止と前方凝視, 自動症などhippocampalあるいはamygdalar epilepsyに特徴的な発作を認めた。一方, 側頭葉外側部に病変を持つ例では単純部分発作やJacksonian typeの発作, 前兆のない全身痙攣発作, auditory seizureやdreamy stateに続く全身痙攣発作が観察された。発作間歇期には患側側頭葉の局所脳血流量, 局所脳酸素およびグルコース代謝率は低下していたが, 腫瘍の存在部では血流量はその病態に応じて, 低下している部もあれば, 上昇している部も見られた。脳腫瘍治療後, てんかん発作は一般に抑制されやすくなった。側頭葉外側部のgliomaでは内側部のものに比し死亡率が高かった。
  • Dot counting testを用いて
    足立 直人, 大沼 悌一, 久野 武, 村松 玲美, 鈴木 一郎
    1992 年 10 巻 3 号 p. 260-267
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    側頭葉てんかん (TLE) 患者27例と特発性全般てんかん (IGE) 患者25例, 健康正常者 (健常者) 18例に対しDot counting testを行い, その注意認知機能を測定した。てんかん群において, Dot counting testの成績 (DC score) と年齢, 性, てんかん罹病期間, 発作頻度との相関はなく, わずかに知能との相関を認めた。
    てんかん類型ごとに健常者群と比較したところ, TLE群は有意な低成績 (p=0.006) を示したがIGE群は有意な差はなく, TLE群に注意の障害が多く認められた。
    服用抗てんかん薬についてみると, 多剤服用群は健常者群に比して有意に低成績であり, 単剤服用群は有意な差を認めなかった。服用抗てんかん薬の種類による成績の差を認めなかった。ただしPHT服用患者の血中PHT濃度は, DC scoreとの間に有意な負の相関を認めた。
  • 森本 清, 實井 俊典, 佐藤 圭子, 清水 幸登, 松本 洋輔, 難波 多鶴子, 山田 了士
    1992 年 10 巻 3 号 p. 268-278
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    作用機序の異なる4種類のGABA系作動薬の急性抗けいれん効果について, ネコの扁桃核および海馬を焦点としたキンドリングモデルを用いて, 系統的比較研究を行った。
    1) 選択的GABA受容体作動薬のprogabideは, 非中毒量において扁桃核, 海馬キンドリングの2次性全般化発作を抑制し, 中毒量では部分発作と後発射を強力に抑制した。
    2) GABA再取り込み阻害薬のSKF89976Aは, 扁桃核, 海馬キンドリングの発作段階を用量依存的に抑制し, 中毒量で後発射の出現を阻止したが, その際ミオクローヌス様発作と突発波が惹起された。
    3) GABA分解酵素阻害薬のγ-vinyl-GABA (GVG) は, 非中毒量で編桃核, 海馬キンドリングの発作段階のみを投与後4ないし24時間で用量依存的に抑制し, 特に2次性全般化を阻止した。
    4) 選択的GABA-B受容体作動薬のbadofenは, 扁桃核キンドリング発作に対し抗けいれん効果を認めなかった。
    以上の結果から, 中枢神経系のGABA-A受容体に関連した抑制機構を強化する薬物は, 辺縁系発作と2次性全般化のコントロールに有効であることが結論された。
  • 伊藤 ますみ, 香坂 雅子, 角 哲雄, 森田 伸行, 宮本 環, 本間 裕士, 福田 紀子
    1992 年 10 巻 3 号 p. 279-284
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    睡眠中の全般性強直間代けいれん (GTC) のみを呈する20例について, 臨床脳波学的検討を行った。発作は睡眠後半部, 次いで睡眠前半部 (主に入眠直後) に多く出現しており, 発作発現と睡眠過程との関連が推測された。また, 約75%で3年以上発作が抑制されており, 本症の予後は比較的良好と思われた。発作抑制群では, 非抑制群に比し, 治療開始までの期間が有意に短く, 本てんかん群においても早期治療開始が良好な予後と関連することが示唆された。
    脳波上, 全般性異常波を示す例はなかったが, 一方, 約半数例に側頭部あるいは前頭部を中心に局在性異常波を認め, これらが局在関連性てんかんである可能性が示唆された。また, 終夜睡眠脳波にて初めててんかん性異常波が検出された例もあり, 終夜睡眠脳波はてんかん類型の決定に有用と思われた。
  • 兼本 浩祐, 山口 俊郎, 河合 逸雄
    1992 年 10 巻 3 号 p. 285-294
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    数ヵ月以上持続していた左半身の運動無視とそれに対応する右中心部の脳波異常が, 抗てんかん薬による治療によって劇的に改善した16歳の女性例を報告した。患者は, 入院時には意識消失発作を日に1~2度示すとともに, 強く促せば所定の運動を行うことができるにもかかわらず, 作業療法や食事など日常生活上, 自発的には左上肢を全く用いず, 歩行の際には失調や麻痺が認められないにもかかわらず, 左下肢が遅れるためパランスを崩すことがあった。フェニトィンの濃度が有効血中濃度に達した時点で意識消失発作は激減し, 同時に運動無視は消失した。意識消失発作に代わって経過の後半で出現してきた発作性の左上肢の異常感覚と, 経過の前半の持続性の運動無視の機序とを, 身体図式の障害や閾値下痙攣といった幾つかの異なった枠組みにおいて試案的に考察した。
  • 渡辺 裕貴, 船越 昭宏, 三原 忠紘, 井上 有史, 山角 公明, 川上 香, 松田 一己, 鳥取 孝安, 馬場 好一, 八木 和一, 清 ...
    1992 年 10 巻 3 号 p. 295-302
    発行日: 1992/11/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    右言語優位患者11名を含む側頭葉てんかん患者 (TLE) 77名について, アミタールテストによる言語記憶検査を行った。対象は, 左言語優位・左焦点群 (LL群) 23名, 左言語優位・右焦点群 (LR群) 43名, 右言語優位・左焦点群 (RL群) 5名, 右言語優位・右焦点群 (RR群) 6名であった。アミタール非注入時の記憶率は, 全体で83.1%(80.2~93.3%) であった。アミタール注入時の成績は, 右側注入時には, 右言語優位群 (RR, RL群) が著行明に低下し, 焦点側を含めた結果ではLR群のみが良好な成績を示した。左側注入時には, 左言語優位群の成績が著明に低下し, 焦点側を含めた結果では, RL群のみが良好な成績を示した。以上の結果から, 1) 言語優位側が左右のいずれであっても, 言語記憶は言語優位半球に依存していること, 2) TLEには焦点側半球に記憶低下につながる潜在的障害が存在すること, 3) 海馬を含む記憶系の保持には, 言語優位半球と海馬の機能維持がともに必要であることを結論した。
feedback
Top