てんかん研究
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12 巻, 3 号
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  • 初期像と後期像の比較検討
    高橋 克明, 小田野 行男, 高橋 直也, 内山 聖
    1994 年 12 巻 3 号 p. 205-212
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    症候性あるいは潜因性局在関連性てんかんと考えられた患児15例を対象に, 発作間欠期の123I-IMP SPECTを施行した。初期像は123I-IMP静注15-20分後に, 後期像は5時間後に撮像した。初期像における集積異常部位が, 後期像でどのように変化したかを定性的に比較検討した。
    対象患児の初期像から後期像への変化は, 以下の3型, すなわち初期像における低集積部位が, 後期像でも低集積を示した症例が2例 (第1型), 低集積部位が, 等集積へと変化した症例が9例 (第2型), 低集積部位が, 高集積へと変化した症例が4例 (第3型), に分けられた。
    このような後期像での再分布パターンの違いを臨床像と比較し, 文献的に考察した。
  • 中里 信和, 関 薫, 川村 強, 菅野 彰剛, 藤田 智, 藤原 悟, 吉本 高志
    1994 年 12 巻 3 号 p. 213-220
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    複雑部分発作を有する難治性てんかん4例において, 脳波と脳磁図の全頭部同時計測を行った。発作問激期棘徐波の信号源を, 電流双極子モデルにより推定し, MR画像上に表示した。2例において左右両側同期性の棘徐波磁界がとらえられ, 信号源として左右側頭葉外側部や海馬付近が推定された。他の2例では, 1個の電流双極子型を示す棘徐波が高頻度で認められ, 信号源は一側半球の限局した部位に推定された。原理的に脳磁図は容積電流の影響がきわめて少なく, 複数個の信号源の識別能力が高いと考えられるが, 特にヘルメット型脳磁計は, 両側同期性のてんかん異常波解析に有力な手段となりうる。
  • 側頭葉てんかんの発作起始側性の予測の補助検査として
    兼本 浩祐, 萱村 俊哉, 林 香織, 川崎 淳, 河合 逸雄
    1994 年 12 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    3回以上の複雑部分発作の発作時脳波において何れか一側からのみ発作波が開始した17例の手術例を含む21例の側頭葉てんかん例を対象として, Auditory Verbal Learning Test (AVLT), Paired Association Learning (PAL), Reyの複雑図形の即時想起の3種類の記銘力検査を行った。その結果, 言語性記銘力障害の指標としてのAVLTの総即時記憶をReyの複雑図形の即時想起の点数で割った商 (Verbal/Visual Ratio: VE/VI) が, 他のどの記銘力尺度よりも, 側頭葉てんかん病側を良く予測することができることが明らかになった。実際的な値としては, VE/VIが3.2を超えれば右病巣の, 2.0を下回れば左病巣の, 徴候として考えうることを提案した。また, PALの結果と対照群との比較から, 海馬の機能が組織化されていない情報を組織化することと関わっている可能性を示唆した。
  • 久郷 敏明, 三野 進, 赤田 幸平, 細川 二郎, 洲脇 寛, 細川 清
    1994 年 12 巻 3 号 p. 227-236
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    外来通院中の116例の成人てんかん患者を対象に, WPSIの職業適応・経済状況の規定要因を多角的に検討した。全体では, 職業適応は49%, 経済状況は61%の症例が, 問題ありと判定されるWPSIの問題領域3, 4に属していた。対象の38%が職業適応・経済状況両者, 11%が職業適応のみ, 23%が経済状況のみの問題性を自覚し, 28%は双方の問題性を示さなかった。これら4群の臨床特徴を統計的に解析し, 罹病期間, 発作の重症度分類と得点, 精神症状, 教育期間, 運転状況で有意差を認めた。職業適応では罹病期間, てんかん類型, 発作の重症度分類と得点, 精神症状, 教育期間, 就労状況, 結婚状況, 運転状況, 経済状況では教育期間で有意差を認めた。主成分分析で最も大きな影響を及ぼしていたのは, 情緒適応, 対人関係適応などの心理学的要因 (寄与率約30%) であった。さらに年齢的要因, 教育期間, 発作の重症度の成分 (寄与率はそれぞれ10%強) が抽出された。
  • 深部脳波による発作起始の確認
    兼本 浩祐, 河合 逸雄
    1994 年 12 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    複雑医分発作後に, 目標語との音韻的な繋がりを特徴とする形, 的語性錯語と語新作が, 語音連合を形成して頻発する側頭葉てんかんの1例を報告した。この症例では, 深医脳波で優位側の発作起始が確認された。豊富な錯語の産出を特徴とする複雑部分発作後の言語症状を, ウェルニッケ失語から音素性の障害の要素を差し引いた比較的純粋な言語の深層構造の障害の結果として解釈した。
  • 保田 貴美子, 杉田 克生, 仲佐 啓詳, 石井 光子, 新美 仁男
    1994 年 12 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    バルプロ酸徐放錠単剤を長期服用中の小児てんかん患者11例を対象とし, 経時的に採血し薬物, 内動態を解析した。さらに従来報告されていない小児での薬物動態学的パラメータの算出を試み臨床的有用性を検討した。定常状態での血中濃度は内服後いったん下降し, 約3時間後に最低となった。最高血中濃度は平均約8時間後であった。得られた小児母集団パラメータは, 健康成人単回投与により求められたものとほぼ同様の値であった。さらに今回の小児母集団パラメータを用い, ベイジアン法による実測値1点からの血中動態推定値は, 実測値と近似し臨床使用可能であった。
  • 早川 武敏, 捻橋 芳久, 岸 高正, 梶山 通
    1994 年 12 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    15歳未満の小児てんかん新鮮例47例にZNS単剤投与し, 血中ZNS総濃度および遊離型濃度を継時的に測定し次の結果を得た。
    1. 年齢を2歳未満, 2歳以上5歳未満, 5歳以上10歳未満, 10歳以上の4群に分け, 血中濃度/投与量比を比較すると, !0歳未満の3群は2.50±0.54, 2.62±1.06, 2.56±0.76と差はなかったが, 10歳以上群では3.28±0.63と有意に高かった。しかし, 各群間内での継時的変化はみられなかった。
    2. ZNS遊離型/総濃度比は, 上記年齢別および経過による変化はなく, 各平均値は51~61%とほぼ一定の値を示した。
    3. ZNS総濃度を10以下, 10~20, 20~30, 30μg/ml以上の4群に分け, 各群間のZNS遊離型/総濃度比を年齢別に比較したが, 差はなかった。
    4. 発作消失31例 (全症例の66%) の血中ZNS総濃度の平均は9.7±5.4μg/mlであった。
  • 高屋 豪瑩, 森 文秋
    1994 年 12 巻 3 号 p. 255-263
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    ラットを14と28日の2回, 122-125dBの強音をそれぞれ8と4分刺激して後天性聴原性発作モデルを作成した。このモデルの聴性脳幹反応 (ABR), 中枢性聴覚路のFos蛋白免疫反応および病理組織像を検討した。ABRを同時に測定した3例中1例を除いた全例に, “wild-running”(WR) が2回目の音刺激後にみられた。全例の生後28日目のABRでは, 閾値の上昇 (50dB), I波に対するIIおよび131波の振幅比の減少, I-IV波間潜時の延長などを認めた。
    c-fosはWRを示した例のみに発現していたが, 中枢性聴覚路の外側毛帯, 下丘, 内側膝状,, 側頭皮質の多数の神経細胞に, さらに黒質, 脳幹網様, の神経細胞にもわずかに認めていた。一般染色から見た病理像は, Fos蛋白発現神経細胞, に隣接した部位の神経細胞に淡明化がみられた。
    発育途上の特定時期に与えた音刺激が, 聴覚路の神経細胞に何らかの機能障害を惹起し, 一定期間後の再刺激により, 関連する第脳皮質の神経細胞に興奮を誘発させた結果聴原発作が出現することが推察された
  • 荻原 正明, 星加 明徳, 松野 哲彦, 宮島 祐, 木ノ上 啓子, 王 傳育, 山田 直人, 小穴 康功
    1994 年 12 巻 3 号 p. 264-271
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    重症ミオクロニーてんかんの2名とHVS-grand ma1の1名にみられた著明な振動を伴う全身性強直間代発作について, 脳波・ビデオ・ポリグラフ同時記録装置を用いて検討した。その結果, (1) 強直期から間代期への移行帯 (中間振動期) の持続時間が平人の大発作に比較して著しく長い。(2) 中間振動期において両側の上下肢の筋群は約5~6Hzの収縮を示すが, 筋収縮が非同期性であるがために, 実際以上に細かく, より振幅の大きなふるえとして観察される。(3) 間代期においても左右の上下肢の筋収縮は著明な非同期性を示す。(4) 発作時脳波では棘・徐波複合は極めて不規則で, 発作終了後も持続する傾向などが認められた。これらの症例では交代性の片側痙攣を伴うことから, その病態生理学的基盤には左右の第脳半球間の同期化機構の成熟障害の存在が示唆された。本発作型は成人にみられる大発作とは異なる特徴を有していると考えられた。
  • 大谷 和正, 今井 克美, 二木 康之, 田川 哲三, 橋本 卓
    1994 年 12 巻 3 号 p. 272-277
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    いわゆる発作型としてのinfantile spasms, すなわちtonic spasms (TS) に先行して部分発作 (PS) が出現する複合発作を有する男児例を経験した。患者は新生児期に単発のTSで発症し, 1.5カ月よりシリーズ形成性TSが出現した。ACTH療法中にTSが消失したが, その直後にPSが出現した。ACTH療法終了と前後して, PSに引き続いてTSがシリーズ形成性に出現する複合発作がみられるようになった。MRIで左頭頂・後頭部に局所性脳回肥厚症と考えられる病変が指摘された。このような奇異な発作の発生には, TSの発現に不可欠な皮質から皮質下に至る広範かつ異常な神経興奮の伝播機構と皮質内の局在性てんかん原性焦点との並存と相互作用が必要であると考えられた。
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