てんかん研究
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12 巻, 1 号
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  • 井上 有史, 三原 忠紘, 松田 一己, 鳥取 孝安, 渡辺 裕貴, 今村 真一, 八木 和一, 清野 昌一
    1994 年 12 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    側頭葉てんかんの術後に前兆が再発した症例の臨床特性, 術前に施行した前兆時の頭蓋内脳波, および発作の術後経過を検討した。対象は長時間頭蓋内脳波記録を経て側頭葉の切除手術をうけ, 術後2年以上の経過を観察した56例である。前兆と複雑部分発作が共に完全に消失した31例に比べ, 前兆のみが再発した14例は, 幼児期の脳損傷の既往を有し, 罹病期間が長く, 術前に前兆の頻度が多く, 前兆時の頭蓋内脳波では海馬・扁桃核に起始した発作発射が側頭葉内側・底部の後方へ波及しやすい傾向を示した。前兆の再発より遅れて複雑部分発作が再発した6例でも類似の傾向を認めた。残りの5例では複雑部分発作の再発が前兆の再発とほぼ同時期か, または前兆の再発より先行していた。前兆が先行して再発した症例では, 前兆の再発時期は術後半年以内であり, 全例が内側構造にてんかん原性帯域を有し, 切除標本の組織所見では内側側頭葉硬化の症例が多かった。これらの症例の前兆は経年的に減弱ないし消失した。これに反して, 外側皮質にてんかん原性帯域が存在する症例では, 前兆と複雑部分発作が消失するか, あるいは共に再発するかのいずれかであった。
  • 荻原 正明, 星加 明徳, 王 傅育, 宮島 祐, 松野 哲彦, 武井 章人, 篠本 雅人, 長沢 純子
    1994 年 12 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Epilepsia partialis continua (EPC) の経過中にシリーズ形成性の部分発作を認めた1乳児例を報告した。患児は仮死があり出生直後より痙攣重積状態が認められた。生後5カ月より右上肢の律動的ミオクローヌスが出現するようになった。生後6カ月時には約2Hzの頻度で持続的に出現するに至ったが (EPC), この頃より覚醒直後から頭部の右方回旋, 右肩の挙上を伴い右上肢を強直させる部分発作が8~10秒の間隔で5~20分持続するようになった。この発作型はGobbiらが記載したperiodicspasms (PS) に類似するが, シリーズを形成して出現する発作が部分発作である点がPSとは異なっていた。EPCに合併する発作型についての報告は少ないが, EPCの症例中には本症例のような特異なシリーズ形成性の部分発作を合併する可能性があると思われる。
  • 発作間歇期精神病状態と比較して
    兼本 浩祐, 川崎 淳, 河合 逸雄
    1994 年 12 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    複雑部分発作を持つか脳波上側頭部焦点を示す患者の中から, 発作の抑制とともに精神病状態が誘発された25症例 (I群) と, 発作の出現と関連して精神病状態が誘発された22症例 (P群) を比較した。その結果, P群の特徴として, (1) I群よりも精神病状態発現までの罹病期間が長い, (2) 一側性感覚運動発作, 前兆としての不安・既知体験の頻度が高い, (3) I群では一次妄想が頻発するのに対して, P群では過度の情動的反応が前景に立ち, 誇大的宗教的体験, 性的脱抑制が時に目立つなどの点が明らかになった。
  • 長時間脳波記録による検討
    堀田 秀樹, 前川 喜平
    1994 年 12 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    症例は検査時4歳0カ月の男児で, 3歳1カ月から入眠時右口角の部分発作が出現, 3歳7カ月からは非定型欠神発作を認め, 3歳10カ月からは瞬目, 躯幹, 上肢の脱力発作を伴った非定型欠神発作重積状態となった。脳波では左側C-P-mT-pT優位の鋭・徐波複合が両側広汎性にみられた。小型携帯脳波計を用いた21時間半の記録では覚醒時から広汎性鋭・徐波複合がバースト状にみられ, 入眠と共に連続性に出現したが, 全NREM睡眠での連続性鋭・徐波複合の占める割合は40%であった。REM睡眠でも広汎性鋭・徐波複合はバースト状に出現し, 朝の目覚めとともに減少する傾向にあった。夜間の睡眠時間におけるREM睡眠の占める割合は21%であった。発作予後, 知的予後は良好であった。臨床経過, 脳波所見よりABPEと診断し, CSWS, Lennox-Gastaut症候群との相違について検討した。
  • 兼本 浩祐, 河合 逸雄
    1994 年 12 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    深部脳波で劣位半球起源の発作放電が確認された側頭葉てんかんの女性例において, 劣位半球海馬の放電と一致して「環界の出来事を自身の身体感覚として直接感知できる」という体験が出現した。さらに, この患者は, 発作群発後, 躁状態を示した。この症例における前兆での環界との過剰な相即体験と側頭葉てんかんでの土着的な宗教への独特の傾斜を結びつけるとともに, 劣位半球海馬の発作起源と発作後躁状態の関係について論じた。
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