てんかん研究
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12 巻, 2 号
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  • 双極子追跡法による脳内電源の分析を中心に
    古関 啓二郎, 岩佐 博人, 伊藤 寿彦, 柴田 忠彦, 佐藤 甫夫
    1994 年 12 巻 2 号 p. 107-117
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    てんかん性笑い発作の発現機序を検討する目的で, 笑い発作のみを発作症状とする1例に, 双極子追跡法 (Dipole Tracing: DT) および123I-IMP SPECTを施行した。この症例の発作間欠期脳波は, 発作の初発から間もない時期では, 右前側頭部優位の棘徐波結合であったが, 後期においては多棘徐波結合が頻発するようになった。これらの突発波のDT分析を行った結果, 早期の棘波では右側頭葉内側部に等価電流双極子 (equivalent current dipole: ECD) が推定され, 後期の多棘波の先行棘波成分は早期の棘波と同様に右側頭葉内側部に, 後発棘波成分は前頭葉内側部にそれぞれECDが推定された。また, 同時期の123I-IMP SPECTでは, 右前側頭葉および前頭葉内側部に血流増加が認められた。これらの結果は, 笑い発作の発現には側頭葉内側部のみならず隣接の大脳辺縁系が関与していることを示唆している。
  • in vivo microdialysis法による検討
    高橋 留利子
    1994 年 12 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Carbamazepine (CBZ) 服用中, 時に眠気, 複視などの中枢神経系の副作用が発現する例がみられるが, この副作用の発現には, CBZのみならず, carbamazepine-10, 11-epoxide (CBZE) も関与しているといわれている。そこで, CBZEの中枢神経系の副作用への関与を調べるため, CBZ 1回経口投与後のラット線条体および血中におけるCBZとCBZE濃度の経時的変化を, in vivo microdialysis法を用い, 無麻酔下, フリームービングで測定した。その結果, CBZE濃度の経時的変化は, 血中と線条体でほぼ同様な動きを呈した。また, 線条体においてCBZEの半減期は, CBZの半減期に比べて有意に長かった。したがって, 血中のCBZE濃度は脳内のCBZE濃度を反映することが確認されたため, CBZ服用患者において, 中枢神経系の副作用の予防や軽減のため血中CBZE濃度を測定する意義があることが確かめられた。
  • 井上 有史, 渡辺 裕貴, 船越 昭宏, 漆畑 暁子, 三原 忠紘, 鳥取 孝安, 松田 一己, 今村 真一, 深尾 憲二朗, 八木 和一, ...
    1994 年 12 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    部分てんかん患者200人に施行したアミタールテストによる言語の半球局在と利き手の関係を調べた。その結果, (1) 右手利き患者182例のうち164例 (90%) が左半球, 9例 (5%) が右半球, 9例 (5%) が両側半球に言語機能を有し, 左/両手利き患者15例ではそれぞれ6例 (40%), 6例 (40%), 3例 (20%) であった。残りの左/両手利きの3例では左右いずれの注入でも失語症状を認めなかった。性差や利き手の家族負因による差はないが, (2) 外科治療をうけた側頭葉てんかん患者120人のうち, 生後2年以内の脳損傷を有する左側焦点の患者 (33例) では, 右/両側半球言語優位が有意に多く, また左/両手利きで左言語優位の患者はいなかった。(3) 両側半球に言語機能を有する12例のうち11例で相対的な言語優位側が認められ, 左優位は右手利き, 右優位は左/両手利きであった。
  • 連続型重積とサイクル型重積
    加藤 昌明, 石田 孜郎, 大沼 悌一, 足立 直人, 中野 浩武, 小柏 元英
    1994 年 12 巻 2 号 p. 132-141
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    複雑部分発作重積 (Complex Partial Status Epilepticus, CPSE) は, 従来考えられていたほど稀ではないものの未だ報告は少ない。われわれは, 過去1年間の当院てんかん病棟入院患者のうちCPSEを繰返す4症例 (連続型2例, サイクル型2例) を経験した。連続型の1例は周期性の亜昏迷状態を, 他の1例は全身けいれん後のもうろう状態を繰返し, それぞれ非てんかん性の亜昏迷, 発作後もうろう状態と診断されていた。しかし両者とも前頭部優位のてんかん発作波の連続的な出現, ジアゼパムの静注による発作波の抑制が確認され, 前頭葉起源の連続型CPSEと診断した。特にもうろう状態を呈した症例は, てんかん発作波の消失後にもうろう状態が残るため, 早期の脳波検査が診断上重要だった。サイクル型の2症例は側頭葉てんかんで, 無反応相と部分的反応相が交互に頻回に繰返し, 脳波変化もそれに対応した。連続型CPSEの中に診断困難な症例が存することを強調したい。
  • 実態調査を通して
    管 るみ子, 天沼 幾緒, 橘高 一, 宗像 俊一, 高橋 留利子, 内山 三津男, 園部 夏実, 竹内 賢, 鹿目 裕文, 片寄 圭子, ...
    1994 年 12 巻 2 号 p. 142-149
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    福島県内の病院の精神科にて加療されている15~55歳のてんかん患者836例について, てんかん患者における精神症状の発現率と発症要因を調査した。精神症状を呈した例は836例中125例 (15.0%) であった。精神症状は部分てんかん例, 部分発作例, 境界知能例, 発作頻度の多い例, 脳波所見で基礎波異常のみを認める例において有意に発現率が高かった。性差, てんかんの初発年齢, CT所見には精神症状発現率に有意差はみられなかった。精神症状の状態像の主なものは, 分裂病様状態42例 (5.0%), 躁うつ病様状態27例 (3.2%), 神経症様状態14例 (1.7%), 性格変化41例 (4.9%) であった。
  • 村嶋 逸子
    1994 年 12 巻 2 号 p. 150-160
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    West症候群 (WS) 187例を成因, 基礎疾患より厳密に分類し, 臨床, 脳波像を比較検討した。さらに3年以上追跡しえた128例につき, 成因, 基礎疾患が予後に及ぼす影響を検討した。
    1) 特発群では, 発作予後, 知能予後, およびpyridoxa lphosphate大量療法の有効率が症候性の群に比し有意に良好であった。
    2) 症候性WSの中では出生前要因群の脳形成異常群において早発例, 先行発作が存在する症例が有意に多く, 大田原症候群後WSに変容したり, WSからLennox-Gastaut症候群へ変容する症例が多かった。また, この群では発作, 知能予後は著しく不良であった。一方, 出生後要因群では晩発例, asymmetric hypsarrhythmiaを認める症例が有意に多く, 知能予後は比較的良好であった。周生期要因群では特徴を認めなかった。
    以上より, 厳密な成因, 基礎疾患に基づく分類がWSの病態生理の解明, 予後判定などに重要なことを強調した。
  • 小穴 康功, 加瀬 裕之, 田上 和, 八巻 蔵人, 綿引 秀夫
    1994 年 12 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    強迫症状は情動障害を基盤としており, 左側半球優位作用仮説も報告され, 視覚系の症状によって影響されるといわれている。私たちは強迫症状を示した側頭葉てんかん11例, 対照群として強迫症状を示さない側頭葉てんかん112名を選択し, 強迫症状, 恐怖症, 棘・鋭波の側方性, 側頭葉の形態の変化, 光駆動反応, 視覚症状, 情動障害の有無を検討した。恐怖症は強迫症群4/11, 対照群0/112, 棘・鋭波の右側優位の側方性は強迫症群9/11, 対照群50/112, 光駆動反応は強迫症群6~7/11, 対照群2/20, 視覚症状は強迫症群5/11, 対照群18/112, 情動障害は強迫症群7/11, 対照群13/112で統計的に有意差が認められた。MRIにおける側頭葉の萎縮は強迫症群4~5/8, 対照群7~9/18と有意差は認められなかった。したがって, 側頭葉てんかんの強迫症状は側頭葉てんかんの8.9%に出現し;右側棘 (波), 情動障害, 視覚症状, 光駆動反応との関連性が認められた。
  • 大谷 和正, 今井 克美, 二木 康之
    1994 年 12 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    ACTH療法施行後3年以上経過観察した37例の小児難治てんかん症例について, ACTH療法中の発作ならびに脳波の改善度とACTH療法終了後の発作再発との関連について検討した。37例のACTH療法時のてんかん分類は潜因性West症候群 (WS) 2例, 症候性WS20例, Lennox-Gastaut症候群2例, その他の症候性全般てんかん12例, 症候性部分てんかん1例であった。ACTH療法によって発作が消失した症例は25例 (このうちACTH療法終了後の再発16例), ACTH療法中の再発は2例, ACTH療法によって発作が消失しなかったものは10例であった。ACTH療法開始日から発作消失までの期間と終了後の再発までの期間との間には関連は認められなかったが, ACTH療法中に発作が消失しなかった症例はその後の抗てんかん剤の治療によっても発作の抑制は得られなかった。ACTH療法開始後4週以内の脳波でてんかん性放電が消失した症例は, それが残存している症例に比べて発作の抑制が長期に及ぶものが多かった。これらの結果はACTH療法の長期有効性を得るにはACTH療法中のてんかん性放電の消失が必要なことが多いことを示しているとともに, それ以外の症例はたとえ発作が一時的に消失しても早晩再発する可能性が高いことを意味している。また, ACTH療法の有効性と限界の判定は福山の方式による連日2週間投与終了時にある程度は可能であることを考察した。
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