てんかん研究
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13 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 土井 俊明, 松田 一己, 八木 和一, 清野 昌一
    1995 年 13 巻 3 号 p. 184-194
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    難治の局在関連性てんかん患者25症例に123I-iomazenilを用いたSPECT (以下IMZ-SPECT) を行い, 脳内ベンゾジアゼピン受容体 (以下BZPR) の変化を調べ, 脳波・発作関連, および他の画像所見 (MRIおよび他の核種を用いた脳血流SPECT) から同定されたてんかん原性焦点部位におけるIMZ-SPECT所見を検討した。焦点部位が同定された23例中, 123I-iomazenil静注直後の早期像では17例74%, 3時間後の後期像では20例87%にてんかん原性焦点に一致する部位に低集積所見を認め, MRIの74%, 発作間けつ時脳血流SPECTの70%よりも優れ, 特にBZPR分布を示す後期像は, 発作時脳血流SPECTの95%に次ぐ検出率を示した。本法はレセプターイメージを見ることができる初めてのSPECTであり, てんかん動態により密着した情報が得られるところから, 非侵襲的なてんかん外科術前検査法として有用である。
  • 脳波学的所見と嚢胞の部位と容積との関係について
    岡田 祐輔, 浜野 建三, 岩崎 信明, 堀米 ゆみ, 榎本 貴夫, 滝田 齊
    1995 年 13 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    小児クモ膜嚢胞 (以下ACと略す) におけるてんかんの病態生理を明らかにするために, 臨床脳波学的所見とACの部位および容積との関係を検討した。対象は筑波大学小児科を受診した頭蓋内AC33例 [男26, 女7; 発症または発見時年齢0カ月-13歳 (4.0±4.2歳)] であった。ACの存在部位はテント上中頭蓋窩が21例, 中頭蓋窩以外が4例, テント下が8例であった。脳波異常は21例に, このうちてんかん発作は11例に認められた。発作型は部分発作が7例であった。テント下のAC2例にも部分発作および局在性の発作性放電が認められた。てんかん発作がなく脳波異常のみが認められた群では, 背景活動の異常が10例中9例に, 発作性放電が1例にのみみられたが, 嚢胞の容積は発作のある群に比較して有意に大きかった。以上のことは, てんかんの発症にはACが直接的に影響しているのではなく, 合併した脳実質障害が関与している可能性を示唆するものと考えられた。
  • 兼本 浩祐, 川崎 淳, 武内 重二, 河合 逸雄
    1995 年 13 巻 3 号 p. 202-210
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    難治側頭葉てんかんのため本院で手術を受け1年以上経過した22例の患者について術後の精神症状を検討した。その結果, (1) 術前に精神病状態を体験したことのない患者で術後新規に精神病状態を体験した患者が3例あり, いずれも右切除例であった, (2) 際立った精神症状をきたした患者では, 実体的意識性, 夢様状態を前兆とするものが比較的多かった, (3) うつ状態は術後3カ月以内には出現し, 時には自殺企図を伴うほど重症になった, (4) 術前に敵意・攻撃性が目立った患者は, 術後には改善がみられた, (5) 精神症状の大部分は1年以内には消失したが, 軽症化したものの2年以上遷延した例が2例みられた。以上の結果を文献例と比較し, 術後精神病を心因論だけからは説明することが難しいことを指摘するとともに, 側頭葉てんかんに対する外科手術後に, 神経学的, 神経心理学的評価だけでなく, 精神科的評価が不可欠であることを考察で論じた。
  • とくにRolandic dischargeの経過
    満留 昭久, 大府 正治, 安元 佐和, 小川 厚, 大蔵 美佐子
    1995 年 13 巻 3 号 p. 211-219
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    未治療の中心・中側頭部に棘波を有する小児てんかん (BCECT) 20例に対しクロナゼパム (CZP) を投与しRolandic discharge (RD) の消失と臨床発作の消失について経時的に検討した。CZP服用1週間目の脳波で13例中6例はRDは消失した。1カ月目の脳波では20例中15例 (75%) でRDは消失した。
    1カ月目にRDが消失した15例のうち脱落した3例を除く12例にCZPをひきつづいて投与し, RDと臨床発作の経過を検討した。10例は3カ月から2年6カ月の間にRDが再出現し, このうち7例で臨床発作も再発した。
    CZPに対し早期に反応し, 消失することはRDの特徴のひとつと考えられた。RD早期消失例と非消失例の間には臨床像の差はみられなかった。CZPの服用を続けるとRDおよび臨床発作に再発がみられ, BCECTの治療薬としては本剤は第一選択剤にはなり得ず, 今後服用方法の検討が必要と思われた。
  • 細田 のぞみ, 三浦 寿男, 高梨 栄, 白井 宏幸, 砂押 渉, 安保 賢一
    1995 年 13 巻 3 号 p. 220-226
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    過去に2回以上の部分発作を示す, それまで未治療の潜因性局在関連性てんかん患児45例を対象に, zonisamide (ZNS) を単剤で1日1回の投与を行い, 血中濃度の日内変動 (最高/最低血中濃度比) と年齢的変化を検討した。ZNSの初回維持量は8mg/kg/dayを基準としたが, 最高/最低血中濃度比は1.25±0.13で, 日内の血中濃度は比較的一定に保たれた。
    さらに, 前述の対象のうち, 調査時まで12カ月以上にわたり経過を観察しえた25例について, ZNS単剤1日1回投与法の臨床効果を血中濃度面から検討した。初回維持量で, 25例中5例で発作が再発し, 3例で眠気が出現したが, 再発例は最低血中濃度が15μg/mll前後の者に多く, 眠気は最高血中濃度が40μg/ml以上の者に出現した。
    また, ZNS単剤治療を継続した22例中8例では, 治療開始後12カ月の時点で, 脳波上のてんかん発射が消失していた。
  • 小坂 仁, 木村 清次, 根津 敦夫, 小林 拓也, 石井 みゆき
    1995 年 13 巻 3 号 p. 227-232
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    頻回の複雑部分発作を示すdouble cortex syndromeの12歳女児例を報告した。発作様式は, 眼球の共同偏視を伴う数分間の意識減損が断続的に出現するものであり, 意識減損に一致して左後頭部, 頭頂部付近もしくは左前頭部の律動波から始まる発作時脳波が記録された。意識障害は6時間持続したが, ダイアゼパムの静注にて頓挫した。double cortex syndromeでは種々の痙攣発作を認めるが, 複雑部分発作重積を伴ったものとしては本例が最初の報告と思われる。
  • 田川 哲三, 隅 清臣, 板垣 裕輔, 田邊 裕司, 藤井 史敏
    1995 年 13 巻 3 号 p. 233-236
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Carbamazepine (CBZ) 単剤治療中に再生不良性貧血を発症した1例を報告した。症例は31歳の女性である。複雑部分発作のため平成5年3月よりCBZの服用を開始し, 10月に著明な汎血球減少を認めた。骨髄は高度の低形成で再生不良性貧血と診断した。CBZを用いたリンパ球刺激試験は陰性であった。本例ではCBZと再生不良性貧血発症との直接的な因果関係は不明であったが, CBZ服用中に再生不良性貧血を発症した同様の報告例もみられ, 治療に際しては常に念頭におかねばならない。本例のように再生不良性貧血という重篤な疾患を発症しても症状の乏しい例も存在するので, 抗てんかん薬服用中には注意深い経過観察と共に定期的な臨床検査が必要である。
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