てんかん研究
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18 巻, 3 号
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  • 松岡 洋夫
    2000 年 18 巻 3 号 p. 179-194
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    てんかんにおいて神経心理学は、 (1) 発作間欠期における認知機能の評価、 (2) てんかん発作時の症状評価、 (3) 発作誘因としての高次精神活動の評価など、さまざまな病態の評価や解明にとって重要な情報を提供する。本稿では (3) を中心に概説した。
    高次精神活動の臨床発作に対する影響を検討する目的で、てんかん患者480例を対象に脳波記録のさいに種々の認知課題 (黙読、音読、会話、書字、筆算、暗算、構成行為) を負荷する神経心理学的脳波賦活を施行した。これにより38例 (7.9%) でてんかん発射が誘発され、その半数以上にミオクロニー発作などが見られた。38例中36例は若年ミオクロニーてんかんなどの特発性全般てんかんに、2例は側頭葉てんかんに分類された。神経心理学的分析から、発作誘発機序には行為プログラミング過程や思考過程が重要であると結論された。高次精神活動で誘発される “反射てんかん” の分類についても言及した。
  • 相川 博, 榎日 出夫, 友田 靖子, 高田 弘幸, 山内 俊雄
    2000 年 18 巻 3 号 p. 195-203
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    TVアニメ「ポケットモンスター」視聴時に発作性症状を呈して医療機関を受診した175名 (平成9年度厚生科学特別研究対象症例) のうち、98名について、その後の経過について追跡調査を行い、発作性症状の出現と脳波所見との関連について検討することができた。脳波所見をもとに一般脳波で突発性異常波を示し、かっ光突発反応がみられたI型、一般脳波で突発性異常波がなく光突発反応がみられたII型、脳波異常のみられなかったIII型に分類した。その結果、I型に分類された35名のうち4名に光感受性発作、7名に自発発作の出現がみられた。自発発作のみられたもののうち3名は「ボケモン視聴時」以前にはてんかんの既往はなかった。II型に分類された18名のうち自発発作は1名のみで、4名に光感受性発作の出現がみられた。III型に分類された23名では、てんかんの既往のある1例のみに自発発作がみられた。追跡調査期間中に光感受性発作のみられたものは、すべて未服薬者か、たまたま怠薬していた者であった。
  • 山田 康一郎, 白石 秀明, 渡辺 裕貴, 八木 和一, 滝川 守国
    2000 年 18 巻 3 号 p. 204-211
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    視覚発作を有する10例の症候性後頭葉てんかん患者に対して脳波、脳磁図同時記録を施行し、脳磁図上の発作間歇時発射を解析して得られた単一等価電流双極子 (single equivalent current dipole: 以下ECD) の局在位置について検討した。ECDの局在位置と視覚発作症状との間に相関があり、後頭葉内側にECDが局在する症例では要素性幻視を、後頭葉外側に局在する症例では複雑性幻視やそれに続いて他葉起源と思われる症状を呈する傾向があった。この違いは後頭葉各部位の機能と関連していると思われた。後頭葉てんかんにおける脳磁図の有用性が確認されたとともに、後頭葉てんかんの診断をする上で視覚発作の内容の吟味がてんかん焦点の局在位置を推定する際に重要であることが示唆された。
  • 吉岡 三恵子, 黒木 茂一, 小林 健一郎, 斉藤 潤, 松本 茂男
    2000 年 18 巻 3 号 p. 212-219
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    部分発作を合併した点頭てんかんの3症例を経験し、発達に視点をおいて、治療と予後を検討した。3症例は周産期や点頭てんかん発症までの発達には異常なく、2例では点頭てんかん発症前に部分発作が認められていたが、後に両発作が併存するようになった。他の1例では両発作が同時期に発症し併存した。両発作の併存は長時間ビデオー脳波同時記録で確認した。画像上の局在病変として、1例はMRIで左側頭部に嚢腫様腫瘤、他の1例ではSPECTで左側頭部に低灌流域を認めた。3例とも発作はパルプ口酸とビタミンB6の併用またはACTHによりいったん抑制されたが、いずれも再発した。2例ではACTHと他の抗てんかん薬によって再び抑えられたが、他の1例は難治であり、左側頭葉部分切除によって発作の消失と発達の改善をみた。部分発作を合併する点頭てんかんの症例には切除術の有効な例もあると考えられた。
  • 渡辺 雅子, 渡辺 裕貴, 重松 秀夫, 藤原 建樹, 八木 和一
    2000 年 18 巻 3 号 p. 220-223
    発行日: 2000/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    右手の運動発作を呈する9歳男児において、発作時の脳波および脳磁図の同時記録を行った。脳波では発作間欠時および発作時とも、異常波はほとんど記録されなかった。しかし、脳磁図ではきわめて明瞭な発作間欠時棘波と発作時律動波が記録された。脳磁図上のこれら異常波の等価電流双極子は、体性感覚誘発磁場の等価電流双極子の約1cm前方にあるものと推定され、臨床所見との整合性から、この部位がてんかん原性焦点と考えられた。臨床的にてんかんが疑われるにもかかわらず、脳波ではてんかん波が記録されない場合には脳磁図検査が有用なことがある。
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