てんかん研究
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19 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 岩田 誠
    専門分野: その他
    2001 年 19 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/05/31
    ジャーナル 認証あり
    ヒトの脳には現実世界からの感覚情報を受容してそれに反応する神経機構と共に、過去の反応様式の記憶を想起して仮想現実としての反応を試行する神経機構とが並列的に存在している。この仮想現実を形成する能力は、一方では芸術活動における創造性に繋がるが、他方では幻覚や妄想として異常な精神活動を生じることにもなる。すなわち、幻覚·妄想と芸術的創造性の源泉には、共通の神経機構が存在していると考えられる。両者を分けるところの重要なものは、脳内に想起された仮想現実を、自らの意志に基づく意図的な行為と自覚できるかどうかによっているものと思われる。
  • 扇谷 明
    専門分野: その他
    2001 年 19 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/05/31
    ジャーナル 認証あり
    John Hughlings Jackson (1835-1911)による現代てんかん学への貢献は測り知れないものがあり、最近になってもJacksonの再評価が行われている。ここではJacksonの現代てんかん学への貢献を次の3つのテーマに分けてみる。1) Jacksonは後にJackson発作と名付けられたてんかん発作の研究から始め、その研究を通してJacksonは今日のてんかんの定義とほぼ変わらない革新的な定義づけを行った。またその発作の研究から脳外科治療の端緒が開かれる。2) 発作後精神病の機序を進化-解体および陽性-陰性症状という後にジャクソニズムと呼ばれる理論で解明していく。3) Jacksonの患者であり、医師である症例Zとの出会いなどを通してdreamy stateの概念を確立し、さらに側頭葉てんかんの概念を確立してゆく。
原著
  • 臼井 直敬, 三原 忠紘, 松田 一己, 鳥取 孝安, 大坪 俊昭, 馬場 好一, 井上 有史, 八木 和一
    専門分野: その他
    2001 年 19 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/05/31
    ジャーナル 認証あり
    難治な側頭葉てんかんで手術し、側頭葉に限局性器質病変を有した50症例を対象に、前兆の内容を調べた。いずれも術後2年以上が経過し、手術成績はEngelの分類のclass-Iまたはclass-IIであり、病変の大きさはCTまたはMRI画像上で直径4cm以下を選んだ。対象を、病変が側頭葉外側後部にあるlateral群と側頭葉内側あるいは側頭極にあるpolar-mesial群に分けて検討し、また、病変の側方性(言語優位側か非優位側か)との関係を調べた。その結果、記憶障害性および言語障害性前兆はlateral群に多かった。他の精神性前兆(認知性、感情性)は病変の局在による差異を認めなかった。言語優位側に病変がある症例では前兆は訴えないものが多かった。記憶障害性および感情性前兆は言語非優位側に病変がある症例に多かった。すなわち、病変の局在や側方性により、精神性前兆の内容や頻度が異なることが示された。
症例報告
  • 田中 尚朗, 武田 洋司, 中村 文裕, 小林 淳子, 出店 正隆, 榊原 聡, 志賀 哲, 高野 晶寛
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2001 年 19 巻 2 号 p. 126-132
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/05/31
    ジャーナル 認証あり
    症例は25歳女性。視野狭窄と右方への眼球偏位を伴う単純部分発作、およびこれに引き続いて意識消失し右方への向反をおこす複雑部分発作が月単位から週単位で出現している。脳波では発作間欠時·発作時ともに側方性·局在性を明らかにすることはできなかった。MRIでは左後頭葉に器質性変病を認めた。99mTc-ECDを用いた発作時SPECT検査では、左後頭葉内側および外側皮質に集積の亢進を認めた。FDG-PETでは左後頭葉内側および外側皮質に低代謝領域を認めた。上記の検査結果から本症例の発作が左後頭葉に起始するものと考えられた。FDG-PETは発作時SPECTに比べて患者の負担が小さく、施行も容易であるため、後頭葉てんかんの診断においてFDG-PETは有用であると考えられた。
  • 大石 誠, 亀山 茂樹, 師田 信人, 富川 勝, 和知 学, 田中 隆一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2001 年 19 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/05/31
    ジャーナル 認証あり
    側頭葉底部にてんかん焦点を有する難治性てんかん症例に、全頭型脳磁計による脳磁図解析を行った。症例は30歳男性で、臨床的に右側頭葉てんかんと診断されたものの、他の非侵襲的検査で限局した焦点は同定できなかった。脳磁図で得られた発作間歇時棘波を等価電流双極子法で経時的に解析してゆくと、側頭葉底部から側頭葉外側皮質への棘波の伝播が示唆された。皮質脳波では、発作間歇時棘波で脳磁図と同様の所見が確認され、発作波の発射も側頭葉底部に認められた。てんかん焦点を側頭葉底部皮質と診断し、側頭葉前方切除と拡大皮質切除を行い良好な結果を得ている。脳磁図は難治性てんかん例の手術適応の評価や侵襲的検査の計画において有用と報告されてきたが、全頭型脳磁計による脳磁図解析はさらに向上した空間·時間分解能により、従来は鑑別の難しかった側頭葉底部の皮質焦点も正確に診断し、遠隔皮質間での伝播所見の検討にも有用であった。
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