てんかん研究
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20 巻, 1 号
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総説
  • 野沢 胤美
    原稿種別: 総説
    2002 年 20 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/08/01
    ジャーナル 認証あり
    睡眠中の異常行動は睡眠時随伴症として理解されてきた。睡眠時随伴症は特定の睡眠段階に関連して発現する。睡眠時遊行症や夜驚症は睡眠段階3~4の深睡眠でみられ、小児より頻度は低いが成人にもみられる。類似の症状はREM睡眠でもみられ、REM睡眠行動障害として注目されている。また異常行動は睡眠関連てんかん、特に夜間前頭葉てんかんや側頭葉てんかんでもみられる。これらにみられる異常行動は大声を発し、家の中を歩き回る、寝室の中の物を投げる、壁を蹴り上げる、窓から飛び降りる、妻の首を絞める、子供を窓から投げ落とすなど、自分自身のみならず家族や他人にも傷害を与えることより欧米では法医学上からも注目されている。睡眠中の異常行動の鑑別診断には長時間脳波・ビデオモニタによる観察に加えてPSG検査が必要である。
原著
  • 渡辺 雅子, 八木 和一, 大田原 俊輔, 清野 昌一
    原稿種別: 原著
    2002 年 20 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/08/01
    ジャーナル 認証あり
    クロバザム(CLB)は1、5位に窒素原子を有する初めてのベンゾジアゼピン系抗てんかん薬で、2000年5月に上市されている。開発治験時の384例のデータについてretrospectiveに有効性と効果耐性について調査研究した。その結果、臨床発作頻度がCLB投与前と比較して50%以上減少した改善率は、投与2週目で69.0%、12週目においても69.5%と投与初期から効果の発現がみられた。発作型別にみると、部分発作、全般発作の両者にわたる広い治療スペクトラムを有していた。効果耐性発現は19.5%にみられたが、効果耐性発現例と非発現例の間に臨床特性に有意な差はみられず、ある発作型に特異的に発現するものとは見なされなかった。CLBの副作用は抗てんかん薬に一般的にみられるもので、重篤なものはなかった。
  • 西 憲幸, 中川 一郎, 明田 秀太, 中瀬 裕之, 星田 徹, 榊 寿右
    原稿種別: 原著
    2002 年 20 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/08/01
    ジャーナル 認証あり
    アデノシンは、カイニン酸やピクロトキシンなどにより誘発されるけいれん発作を抑制することが知られ、内因性の抗けいれん物質として注目されている。今回砂ネズミ海馬スライスを用いて、後シナプス細胞に対するアデノシンの抗けいれん作用について検討した。低Caイオン下で砂ネズミ海馬CA1細胞を逆行性に刺激し、CA1の細胞外電位を測定した。電気刺激によりpopulation spike(PS)に続き、afterdischarge(AD)を誘発させた。灌流液に、0(n=8)、10(n=7)、20(n=10)、40(n=10)、80(n=9)μmol/lの濃度のアデノシンを加え、投与前後におけるADの電位比で抗けいれん作用を検討した。0~80μmol/lのアデノシン投与前後のADの電位比は、各々143.0±11.4、111.6±7.0、80.5±23.9、56.6±19.8、52.8±18.9%で、0~40μmol/lにおいて濃度依存的にADを抑制した(p<0.05)。アデノシンは、シナプス伝達を介さずに後シナプス細胞に対して、一定のレベルまでは濃度依存的抗けいれん作用を示した。
症例報告
  • 秋村 龍夫, 藤井 正美, 加藤 祥一, 梶原 浩司, 西崎 隆文, 鈴木 倫保
    原稿種別: 症例報告
    2002 年 20 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/08/01
    ジャーナル 認証あり
    頭蓋内ナビゲーションは、術中に、脳神経外科医に病変部位を表示し、手術を補助する装置である。このためには、手術前に、MR画像を撮像する必要があり、頭蓋内電極留置後の皮質焦点切除には応用しにくかった。我々は、多少の工夫により、難治性てんかん患者に対し、頭蓋内電極留置によるモニタリングに引き続き行なう皮質焦点切除術の際に、ナビゲーションを併用しているので症例を提示し報告する。ナビゲーションは、頭皮上にマーカーを置き、MRを施行し、ナビゲーションのワークステーションコンピュータ上で、リファレンスを設定し、画像と術野該当構造を空間座標上に合致させる作業が必要である。頭蓋内電極留置前から、頭皮上にマーカーを置き、MR画像を撮像する。マーカー部位を、モニタリング期間中に維持し、手術操作による頭皮の腫脹などの影響を受けないように留意する必要がある。これにより、硬膜下電極によりマッピングされた皮質切除予定部位と、ナビゲーションにより表示される病変部との関係を確認しながら手術可能であった。髄液の流出と硬膜下電極による圧排による脳の偏位がナビゲーションの正確性に影響することに注意しなければならない。
  • 大沢 武志, 松田 一己, 八木 和一
    原稿種別: 症例報告
    2002 年 20 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2002年
    公開日: 2002/08/01
    ジャーナル 認証あり
    成人難治てんかん患者ならびに家族にとって発作の存続は大きな心理的・経済的障害となるが、それにもまして発作のために就業の機会が失われるなど社会生活の自立が著しく制限されつづける社会的障害は大きな問題である。本邦の現状では、この社会的障害を解決する途が十分に敷かれているとは言えない。2例の成人難治てんかん患者の1例は、右側頭葉内側にてんかん焦点をもつ側頭葉てんかんで、発病以来21年目の22歳に標準的前側頭葉切除術を施行し、発作の完全消失を契機に就労が可能となり、術後4年半経た現在も発作がない。もう1例は軽度の知的障害をもつ後頭葉てんかんで、薬物治療に抵抗し現在も発作が続いているが、精神障害者の授産施設に入所し社会参加が可能になった。成人難治てんかん患者では、抗てんかん薬による治療の限界を適切に見極め積極的に外科治療を導入する配慮が、手術を施さない事例には施設入所など種々の社会資源を活用して社会的自立を目指す処遇が必須である。
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