てんかん研究
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21 巻, 1 号
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原著
  • 中山 和彦, 須江 洋成, 高橋 千佳子, 牛島 定信
    原稿種別: 原著
    2003 年 21 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル 認証あり
    長期薬物治療によっても発作が抑制されていないてんかん患者(男6名、女4名)の家族の感情表出(Expressed Emotion:EE)をCamberwell Family Interview(CFI)を用いて評価した。その結果、1) 高EEは7例、低EEは3例で、2) 高EEはすべてEOIが3以上であったが、CC>6タイプ(批判型)とW、PR>3タイプ(肯定型)があった。3) 批判型は不機嫌症が、肯定型はもうろう状態が合併していた。てんかんが、幼少より慢性に経過し、時に精神発達遅滞を伴うこと、また発作間歇期には、問題を示さない事が多いという臨床特徴は、家族が情緒的巻き込まれ過ぎ(自己犠牲と献身的行動、極端な過保護行動)に陥りやすいことが考えられる。これらはてんかん患者にとって心理的ストレスとなり悪循環的に発作誘発、または非発作症状の形成に影響を与えていることが考えられた。このことからもてんかん患者・家族への心理教育の重要性があらためて浮き彫りとなった。
症例報告
  • 栗原 まな, 中江 陽一郎, 小萩沢 利孝, 衛藤 義勝
    原稿種別: 症例報告
    2003 年 21 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル 認証あり
    症例は15歳女児。2歳4カ月時、右前頭部のastrocytomaの摘出術を受けた。その後脱力発作・強直発作が認められvalproate・clonazepam・acetazolamide・primidoneが投与されていたが、てんかん発作は週単位で認められていた。10歳時、発作のコントロールを目的に当科を紹介された。acetazolamide・primidoneを中止しvalproateを減量し、発作は月2~3回の軽い全身性間代発作に軽減した。12歳時、脳腫瘍再発にて摘出術が施行された。14歳時、流涎を伴う意識減損様発作が出現。carbamazepineの開始、clonazepamの減量を行ったが改善は得られず、意識減損様発作が1日5~6時間持続するようになった。脳波では今回のエピソード以前にみられていたてんかん性発作波が消失していた。Hydroxyzine-P(Atarax-P®)の服用を開始し、clonazepamを元の量に戻し、valproateを減量中止したところ、意識減損様発作は消失した。経過中本来のてんかん発作は認められなかった。今回のエピソードは脳波の強制正常化を伴う挿間性精神症状と考えられた。
  • 扇谷 明
    原稿種別: 症例報告
    2003 年 21 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル 認証あり
    主観体験であるdreamy stateを誘発させ、さらに意識消失、痙れんに至らしめるような発作を具現化、促進precipitationする現象と逆にdreamy stateを途中で頓挫させ、抑制inhibitionする現象を経験したので、そのメカニズムについて検討した。Precipitationに関しては、1例においては「昔のことを想いだす」ことによってdreamy stateを引き起こし、もう1例はdreamy stateが起こって、それに魅せられて、そこに留まり、時に痙れんをみる症例であり、両例においてprecipitationの作用が異なっていた。文献例からもdreamy stateのprecipitationは「昔の発作状況を想いだす」タイプと「魅せられる」タイプに2分される。Inhibitionに関しては、両例とも別のことを考えることにより、dreamy stateから脱却できた。両例のprecipitationのメカニズムから、dreamy stateの特異性が見出され、そこには情動、記憶、認知が複雑に絡んだ様相を呈していた。結論として、情動が先駆して、記憶、さらに認知に至るものと思われ、神経生理学的にもdreamy stateにおいて扁桃体から海馬、大脳皮質に至る大脳のネットワークが想定された。
  • 宮本 雄策, 山本 仁, 村上 浩史, 神山 紀子, 福田 美穂, 千葉 光雄, 加藤 達夫, 宮崎 治
    原稿種別: 症例報告
    2003 年 21 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル 認証あり
    てんかん発作の出現を契機に発見された左内頸動脈欠損症の12歳男児例を報告した。生来健康であったが、6カ月の間にテレビ視聴中のけいれん発作を2回繰り返し来院した。精査目的で施行した頭部MRIにおいて左内頸動脈のflow voidが描出されず、MRA及び骨条件の頭部CTより左内頸動脈欠損症と診断した。脳波上右中側頭及び後頭に鋭波を認めたため、けいれんはてんかんによるものと考えられた。しかし欠損側と脳波上の発作波出現部位は対側であり、明らかな症候性てんかんとは断定できなかった。カルバマゼピンの内服開始後、発作はコントロールされている。
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