てんかん研究
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21 巻, 2 号
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総説
  • 五十嵐 一枝
    原稿種別: 総説
    2003 年 21 巻 2 号 p. 146-156
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    ジャーナル 認証あり
    近年日本でも、知能は正常範囲にありながら学業に特別な困難を持つ子ども達が人々の関心を集めている。これらの困難は学習障害(LD)といわれる。また、学習障害児の中にてんかん発作や脳波異常を示す子どもが存在することが報告されている。著者らは、小児の局在関連てんかんにおける認知障害について研究を行ってきた。その結果、高次脳機能障害とワーキングメモリおよび遂行機能との関連性に注目するようになった。ワーキングメモリと遂行機能は小児のてんかんにおける学習障害と関連し、これらの機能障害は文の読解、計算、推論などの困難の原因となりうると思われる。本稿では、小児てんかんにおけるワーキングメモリと遂行機能について概説し、治療教育的方法を検討する。
原著
  • 二宮 貴至, 森本 清, 渡辺 岳海, 平尾 徹, 安原 治, 木村 宏, 洲脇 寛
    原稿種別: 原著
    2003 年 21 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    ジャーナル 認証あり
    側頭葉てんかんにおける海馬歯状回顆粒細胞新生の病理学的意義に関して、ラットのカイニン酸扁桃核局所注入モデルを用いて研究した。海馬歯状回顆粒細胞層におけるbromodeoxyuridine陽性細胞数を免疫組織化学法で検出し、CA1、CA3領域における細胞脱落も評価した。カイニン酸投与による辺縁系発作重積の5日後には両側海馬における歯状回前駆細胞の分裂が著明に増加し、その後のシナプス再構成などてんかん原性変化の成因となる可能性が示唆された。NMDA受容体拮抗薬であるMK-801(1mg/kg, i. p.)の単回前処置では、カイニン酸投与後のneurogenesis現象に影響が見られなかった。しかし、MK-801を3回投与した場合には軽度の抑制効果がみられた。一方、MK-801投与がCA1錐体細胞脱落に対して選択的な細胞保護効果を示すことが確認された。以上より、神経細胞脱落は顆粒細胞のneurogenesis促進に必須ではなく、NMDA受容体の活性化が部分的に関与するものと結論された。
  • 森 健治, 橋本 俊顕, 原田 雅史, 東田 好広, 宮崎 雅仁, 山上 貴司, 田尾 佳代子, 黒田 泰弘
    原稿種別: 原著
    2003 年 21 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    ジャーナル 認証あり
    ACTH療法を施行したWest症候群の患児7例(症候性4例、潜因性3例、年齢4カ月~1歳6カ月)において1H-MRSを経時的に測定し、ACTHの脳組織に及ぼす影響について代謝の面から検討した。ACTH療法は、コートロシンZ® 0.015mg/kg/dayを2週間連日筋注し、その後6週間で漸減し中止した。ACTH療法開始1カ月後には全例でNAA/Cr比の低下を認めた。その程度は乳児例で著しかった。ACTH療法終了4カ月後にはほぼ前値に戻ったが、7例中2例(共に乳児例)で治療前よりまだ低値を示した。Cho/Cr比は乳児例では、ACTH療法開始1カ月後に低下したが、ACTH療法終了4カ月後には前値に戻った。1歳以上の2症例では低下は認められなかった。以上のことより、ACTH療法により神経細胞の活動性の低下がもたらされることおよび非可逆的な神経細胞の減少が生じる可能性が示唆された。さらにACTHには髄鞘化を抑制する作用もあると考えられた。そして、これらの作用は乳児例で著しいと考えられた。
  • 吉川 秀人, 山崎 佐和子, 東條 恵
    原稿種別: 原著
    2003 年 21 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    ジャーナル 認証あり
    1997年から2002年までに経験したインフルエンザ脳炎・脳症後遺症例9例の経時的脳波所見を検討した。急性期には全例でけいれん発作が頻発し、画像では7例が塩見らの遅発性皮質型、またはけいれん重積型と呼ばれるタイプであった。てんかん発作は5例で認められ、2例が症候性局在関連性てんかんであり、3例はミオクロニー発作を主体とする症候性全般てんかんであった。脳波所見は急性期には全例高振幅徐波を呈し、2例で周期性異常波を認めた。その後7例で1~12カ月後に焦点性棘波が出現し、4~18カ月後にはそれが全般化して多棘波を呈した。今回検討した症例では経時的脳波所見は共通した変化を呈し、インフルエンザ脳炎・脳症に特徴的な経時的脳波変化である可能性が示唆された。
症例報告
  • 池田 浩子, 川脇 寿, 富和 清隆
    原稿種別: 症例報告
    2003 年 21 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/09/04
    ジャーナル 認証あり
    ロフラゼプ酸エチル(メイラックス®)が脳波異常と症状の一部に対して有用であったLandau-Kleffner症候群(以下LKS)の9歳、男児例を経験した。患者は3歳2カ月より進行性の発語量低下を示し、脳波で多焦点性棘徐波に加え睡眠時に全般性の棘徐波複合がみられ、検査にて言語性聴覚失認を認めLKSと診断された。ステロイドパルス療法を含め、各種抗てんかん薬治療が無効であったが、ロフラゼプ酸エチルにより、流涎減少、口唇と舌の動きの改善、著明な脳波の改善が得られた。ロフラゼプ酸エチルは、近年難治性小児てんかんに使用されつつあるが詳細な報告例は少ない。我々の症例は副作用、耐性もなく開始後2年経過しており、LKSに対して他の治療で効果がみられないときにはロフラゼプ酸エチルを試みる価値があると考えられた。しかし、言語についての改善がみられておらず、長期に脳波異常が持続した例では回復が困難になる可能性が高いようで、早期の脳波改善策が重要と考えられた。
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