てんかん研究
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22 巻, 3 号
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総説
  • 廣瀬 伸一, 満留 昭久
    2004 年 22 巻 3 号 p. 160-170
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/12
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    GABA受容体とKチャネルはともに、抑制系神経にとって重要なイオンチャネルである。最近、これらの異常でてんかんが発症することが明らかになってきた。GABAA受容体は、主にα1、β2とγ2鎖で構成される5量体のリガンド結合型Clチャネルで、迅速性神経抑制を主に担っている。常染色体優性若年ミオクローヌスてんかんではα1の、全般てんかん熱性けいれんプラスとその関連てんかんでγ2鎖のヘテロのミスセンス変異が見出されている。ナンセンス変異が乳児重症ミオクロニーてんかんでも見出されている。電位依存性のKCNQ Kチャネルは、閾値以下の神経興奮性を調整すると考えられるMカレントを作り出す。良性家族性新生児けいれんでKCNQ Kチャネルの主要なサブユニットであるKCNQ2と3にヘテロの遺伝子異常が見出されている。この他にもKチャネルの遺伝子異常によるてんかんが報告されている。
  • 近藤 毅
    2004 年 22 巻 3 号 p. 171-179
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/12
    ジャーナル 認証あり
    バルプロ酸(VPA)は各種てんかんの治療において有用な薬剤であるが、挙児可能な年齢に達した女性に投与を行う場合、催奇性の問題が無視できない。しかし、実際の臨床場面においては、原疾患の増悪を避けるため、妊娠中も本剤の投与が継続されるのが一般的である。疫学的研究からは、1,000 mg/日以上の投与量および70 μg/ml以上の血中濃度において、VPAによる奇形発現が高率となり、他種抗てんかん薬の併用もVPAの催奇性のリスクを高めることが判明した。また、これらの薬剤危険因子はいずれもVPAの毒性代謝産物への移行を促進する因子でもあることが代謝動態学的に示された。一方、VPAの毒性代謝産物の生成は、従来剤から徐放剤への置換により抑制されることも明らかとなった。以上より、妊娠中のVPA投与においては、高用量及び高血中濃度を避け、可能な限り単剤化を図るとともに、徐放剤使用を行うべきであると考えられる。
原著
  • 吉川 秀人, 山崎 佐和子
    2004 年 22 巻 3 号 p. 180-185
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/12
    ジャーナル 認証あり
    1997年から2002年までの6年間に小児けいれん重積症に対してミダゾラム静注療法を施行した71例89機会の治療効果につき検討した。けいれんの原因はてんかん43機会、急性脳炎・脳症17機会、テオフィリンけいれん12機会、熱性けいれん重積11機会等であった。第1選択42機会、第2選択34機会、第3選択12機会、第4選択1機会で施行し75/89機会(84.2%)でけいれんは消失した。持続静注時間は1~240時間(平均51.2時間)で、使用量はbolus dose 0.05~0.4 mg/kg、持続量0.06~0.6 mg/kg/hrであった。副作用として1例で呼吸抑制が認められたが挿管は不要であった。同時期にジアゼパム静注を施行した159機会中有効であったのは106機会(66.7%)で、14機会で呼吸抑制を来たし挿管または人工呼吸管理を必要とした。小児けいれん重積症に対するミダゾラム治療は、安全かつ有効であると思われた。
症例報告
  • 寺田 倫, 大沼 悌一, 加藤 昌明
    2004 年 22 巻 3 号 p. 186-194
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/12
    ジャーナル 認証あり
    てんかんにうつ病が合併する例は多いと言われている。発作間欠期に最もよくみられる抑うつ状態は、interictal dysphoric disorder(IDD)、あるいはdysthymic―like disorder of epilepsy(DLDE)と呼ばれている。その特徴は、慢性の気分変調症の状態で、症状は断続的で、短期間の多幸的、爆発性のいらいら、不安、身体症状が混合した症状を呈し、抗うつ薬で改善されることが多い。てんかん患者が重症の抑うつ状態や希死念慮を呈し、入院治療を必要とする大うつ病を呈する報告は少ない。われわれは、重度の抑うつ症状と希死念慮を呈した大うつ病を合併したてんかん患者3例を報告する。抑うつ状態は薬物抵抗性で、多くの種類の抗うつ薬を十分量使用し効果を評価する必要があった。Maprotilineとclomipramineで発作が誘発されたが、他の薬物で誘発されることはなかった。
  • 岡崎 光俊, 伊藤 ますみ, 加藤 昌明
    2004 年 22 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/12
    ジャーナル 認証あり
    複雑部分発作群発後に特異な精神症状を呈した前頭葉てんかんの1例について報告する。症例は17歳男性。1歳6カ月で発症し、抗てんかん薬の投与が開始された。その後複雑部分発作が1カ月に1~5回の頻度で出現していたが、X年2月複雑部分発作群発後に意識清明期(lucid interval)を経て精神病症状が出現した。主症状は持続する易刺激性、不機嫌、攻撃性に加え、挿間性に繰り返される短時間の衝動行為のエピソードであった。これら精神症状は約3週間持続した後自然消退した。本例は臨床症状と脳波所見より前頭葉てんかんと考えられ、今回出現した症状は発作後精神病と共通する機序を持つ病態と診断した。従来報告されている発作後精神病と比較すると、症状経過に相違点を認め、この要因として前頭葉の関与が推測された。
  • 山本 仁, 今井 克美, 神山 紀子, 村上 浩史, 宮本 雄策, 福田 美穂
    2004 年 22 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/12
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    てんかんを合併した原発(真)性小頭症の3例を経験した。染色体異常症、奇形症候群や先天性感染症、周産期の異常などに伴う二次性の小頭症に合併するてんかんの報告は数多くみられるが原発性小頭症に合併したてんかんのまとまった報告はない。3症例とも生下時から正常頭囲より-3S.D.以下の小頭をみとめた。頭蓋の特徴としては、前頭、後頭部の低形成、前額部のsloping、尖状頭がみられ、他の脳奇形、染色体異常症、先天性感染症などが否定されたため原発性小頭症と診断した。それぞれ、生後9カ月、10カ月、1歳9カ月にててんかんを発症した。すべて症候性局在関連性てんかんであり、1例は薬物抵抗性の難治てんかんであった。発作型は複雑部分発作と二次性全般化発作を示した。全例とも精神遅滞を伴っていたが、その程度はさまざまであった。
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