てんかん研究
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29 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 小出 泰道, 長尾 雅悦, 福島 克之, 宇留野 勝久, 笹川 睦男, 高橋 幸利, 岡田 久, 渡邊 宏雄, 星田 徹, 井上 美智子, ...
    2011 年 29 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
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    新規抗てんかん薬であるトピラマート(TPM)の使用状況、有効性、安全性について、多施設共同で調査を行った。2007年9月から2009年1月までのTPM使用例302例のデータを検討したところ、総合効果判定での有効例が123例(40.7%)で認められ、発作消失は13例(4.3%)であった。てんかん類型では特にDravet症候群での高い有効性が示された。発作別の有効性では、50%以上減少した例が複雑部分発作で189例中49例(25.9%)、強直間代発作で91例中26例(28.6%)、強直発作で49例中9例(18.4%)、ミオクロニー発作では16例中4例(25%)に認められた。副作用は122例(40.4%)で報告され、眠気、食欲低下などのほかに種々の精神症状や認知機能への影響が認められた。TPMは幅広いスペクトラムを有し、有効性が高い半面、いくつかの注意すべき副作用もあることが明らかになった。
  • 曽我 菜海, 亀井 淳, 赤坂 真奈美, 千田 勝一
    2011 年 29 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル 認証あり
    脳室周囲白質軟化症における点頭てんかん発症の予測因子解析を行った。対象は1994年4月以降の14年間に当院NICUを退院し、脳室周囲白質軟化症と診断された児のうち、NICU退院前に頭部CTまたはMRI、脳波、聴性脳幹反応の検査を行った89例である。点頭てんかんは9例に発症した。NICU退院前の頭部画像では両側側脳室と第4脳室について次の比を求めた。(1)両体部比(体部幅/大脳幅)、(2)両前角比(前角幅/前頭葉幅)、(3)両後角比(後角幅/大脳幅)、(4)第4脳室比(第4脳室幅/橋底部幅)。解析は点頭てんかん発症を従属変数とし、周産期情報とNICU退院前の頭部画像における脳室比、および脳波と聴性脳幹反応の異常の有無を独立変数としたロジスティック回帰分析で行った。この結果、点頭てんかん発症は両体部比(0.01増大時のオッズ比1.4、95%信頼区間1.0~1.8、p=0.023)、および脳波の異常所見(オッズ比9.0、95%信頼区間1.5~52.6、p=0.015)と有意な関連を認めた。脳室周囲白質軟化症の点頭てんかん発症予測にはNICU退院前の頭部画像と脳波の所見が有用と考えられた。
  • 皆川 公夫, 渡邊 年秀, 大柳 玲嬉
    2011 年 29 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル 認証あり
    抗てんかん薬内服中のてんかん女性のうち、月経異常を認める患者に対して卵巣MRI検査と血中性ホルモン測定を行い、現在までに9例が2007年日本産科婦人科学会の診断基準により多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された。これら9例は全例精神遅滞を合併しかつバルプロ酸(VPA)を服用中であったが、うち7例は難治性で発作抑制がえられていなかった。VPAの平均投与開始時年齢は3歳7カ月、平均投与期間は17年と非常に長期であり、VPAの平均投与量は13.3mg/kg/day、平均血中濃度は85.4μg/ml であった。PCOS診断基準にある男性ホルモン高値基準を満たしたのが8例、LHとFSHの診断基準を満たしたのが5例で、卵巣MRIでは全例に多嚢胞卵巣を認めた。また、BMIが25以上の肥満が3例、HOMA-IRが2.0以上のインスリン抵抗性は全例に認められた。PCOS診断後は産婦人科や内分泌科と連携してホルモン治療やVPAの中止など適切な対応策を検討することが必要である。
  • 大谷 英之, 田中 正樹, 笹川 睦男, 溝渕 雅広, 井上 有史
    2011 年 29 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル 認証あり
    EURAPは抗てんかん薬の催奇形性を前方視的に調査するための国際共同研究機構であり、抗てんかん薬を内服している妊婦を登録し妊娠経過および転帰に関するデータを集積している。今回は日本国内からEURAPに登録した症例の途中経過を集計した。
    本稿集計時に登録されていた183例を対象とした。症例のてんかん分類は全般てんかん31.7%、局在関連性てんかん62.3%であった。葉酸は75.3%で服用していた。単剤治療は62.3%、多剤治療は37.7%で実施されていた。使用された主要な各抗てんかん薬の内訳はVPA39.5%、CBZ35.8%、PHT24.7%、PB24.1%、CZP11.1%、ZNS6.2%、CLB6.2%であった。転帰として、自然流産は4.3%、人工流産は3.1%、奇形合併出生例は4.3%であった。今後も症例登録を継続し、その結果を還元していきたい。
症例報告
  • 村上 智彦, 川田 和弘, 星田 徹
    2011 年 29 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
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    ラモトリギン投与後、発作の消失とともに脳波所見の著明な改善を認めた2症例を経験した。症例1は外傷性てんかん、重症心身障害者の32歳男性で、笑いを伴う複雑部分発作が日に数回みられていた。症例2は多発性海綿状血管腫に伴う局在関連てんかんの25歳男性で、週単位以上の頻度で複雑部分発作がみられ、時に二次性全般化発作をきたした。ラモトリギン投与前の間欠期脳波では、2症例とも全般性、左右同期性の棘徐波複合が持続し出現していた。ラモトリギンを開始し、維持量に達したのち発作は消失した。発作消失後の脳波では、ともに限局性の棘波の残存はみられるも全般化は認めなかった。加えて、症例2では、背景活動の正常化を示した。これらの変化に付随して、2症例とも認知面、行動面での改善がみられるようになった。自験例において、ラモトリギンはてんかん焦点からの興奮が全般へと拡延する過程に作用することで発作を抑制し、α活動を増加させることで認知機能や行動面での改善に寄与した可能性が示唆された。
  • 永井 達哉, 齊藤 聖, 高木 俊輔, 坂田 増弘, 渡辺 雅子, 渡辺 裕貴
    2011 年 29 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル 認証あり
    症例は最重度精神遅滞を伴う29歳女性である。幼少期より体が硬くなる発作が月数回、強直間代発作が年1回、舌および四肢の攣縮が連日1時間程度あったが、攣縮がてんかん発作か不随意運動かは症候的に判別困難で症候群診断もなされていなかった。当院入院による脳波検査で、攣縮中に広汎性2~3Hz棘徐波複合と広汎性鋭波様律動が数秒ごとに二相性に認められ、ミオクロニー重積と判明した。重積はジアゼパム静注では頓挫できず、静注用フェノバルビタールが著効した。本症例は非定型欠神発作、頻繁な微笑なども認められ、染色体検査にて15q11-13の欠失が確認され、アンジェルマン症候群の診断が確定した。アンジェルマン症候群ではミオクロニー発作や非定型欠神発作が多く、重積になりやすい。これらの発作に精神遅滞を伴う場合、アンジェルマン症候群を鑑別に入れることが重要であり、フェノバルビタールが著効する場合がある。
  • 中村 康子, 村田 佳子, 谷口 豪, 開道 貴信, 渡辺 雅子, 渡辺 裕貴
    2011 年 29 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル 認証あり
    一側性眼瞼瞬目は側頭葉てんかんの発作症状のひとつとされているまれな発作症状である。我々は、右眼瞼瞬目から始まり同側の四肢の自動症に移行する右外側側頭葉てんかんの1例を経験した。発作は過呼吸により誘発された。発作間欠期の脳波検査では明らかな異常は認めなかったが、頭部MRI、MEG、IMZ-SPECTで右側頭葉外側に一致したてんかん原性域を認めた。MEGでは発作の進展に伴い右中心前回にspike dipoleの集積を認めた。本症例で見られた右眼瞼瞬目の機序については、右焦点発作活動により、左脳が開放されて生じた自動症ではないかと考察した。
  • 辻 富基美, 高橋 隼, 篠崎 和弘
    2011 年 29 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル 認証あり
    てんかん患者がもつ発作後精神病の予防にlamotrigineが有効であった3例を報告する。3症例は全て側頭葉てんかんと診断され、てんかんの発症から17~27年時に発作後精神病が出現した。発作型はいずれも複雑部分発作であり、十分な抗てんかん薬を投与したにもかかわらず、月1回以上の発作があった。精神病エピソードはこれまでに2~5回以上であったが、ラモトリギンの投与後10~12カ月の期間では精神病エピソードの再発がなかった。発作頻度はラモトリギンにより1症例は群発発作が消失し、2症例は発作頻度が減少した。この群発発作の消失、発作頻度の減少が発作後精神病の再発を予防した可能性がある。一般的にラモトリギンは精神病症状を引き起こす副作用の頻度が小さい。これらのことより、発作後精神病の予防ための抗てんかん薬として有用な可能性がある。
  • 後藤 一也
    2011 年 29 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル 認証あり
    異常運動(abnormal movement:AM)が頻発するものの、背景脳波活動が著しく抑制され、てんかん性脳波異常を認めない重症心身障害児(重症児)の1例を対象に24時間ビデオ脈拍数(pulse rate:PR)記録を行った。頻脈とPR較差から求めたPR増加区間のビデオを観察し、AMの内容や頻度を分析した。3回のビデオPR記録を分析して、抗てんかん剤(antiepileptic drugs;AED)((ゾニサミド(ZNS)クロバザム(CLB))の効果判定を行った。ZNSとCLBの投与により、上肢伸展や泣きなどが減少もしくは消失したことから、これらのAMがてんかんであると診断した。てんかん性脳波異常を認めない重症児のAMでは、抗てんかん剤による治療的診断の適応となることも少なくない。適切なAMの評価が必要であり、ビデオPR記録は有用と考える。
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