てんかん研究
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3 巻, 1 号
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  • 血清内濃度と臨床効果
    増渕 洋
    1985 年 3 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Sodium ValproaEe (VPA) の初期有効濃度を再検討するために, 39名の未治療てんかん患者に対してVPAの単剤治療を行い, 平均2.8年間追跡した。投与量は, 成人は200mg/日, 小児は100mg/日より開始し, 発作が抑制されるまで漸増した。その結果, 全発作の75%に有効性が認められ, 初期有効濃度は平均37μg/mlであった。特に機能性てんかんといわれる, 欠神発作, 強直間代発作, BECCT (Rolandic discharge) では, 有効率は93%と高く, 初期有効濃度は24μg/mlと低値であった。さらに血清内濃度は, 体重当りの投与量, 年齢 (20歳以下の場合), 体重などと正の相関関係を示した。またこの濃度の日内変動の大きさは, 1日2回投与でも3回投与とほとんど差はなかった
  • 術後症例を中心に
    忍頂寺 紀彰, 横山 徹夫, 田宮 健, 檜前 薫, 杉浦 正司, 松沢 裕次, 西沢 茂, 山本 清二, 嶋田 務, 根津 延和, 中島 ...
    1985 年 3 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    開頭術後症例17例, 非手術症例6例の計23例の成人脳神経外科的疾患を対象に, フェノバルビタールナトリウム坐剤を連続投与し, 血中濃度の推移を検討した。フェノバルビタールに換算4.04mg/kg/day以上の投与では, 48時間以内にその血中濃度は10μg/mlに達し, 72時間以内に10~25μg/mlの範囲に入る。72時間以後の有効血中濃度の維持は, フェノバルビタール1.53~2.53mg/kg/dayの経口または坐剤投与でなされた。これは, 4.50~6.0629/kg/dayの筋注によるフェノバルビタール, 72時間の投与と2.26~3.03mg/kg/dayの経口投与による維持に匹敵した。
  • 木戸 日出喜, 田端 修, 岸谷 和之, 倉田 孝一, 山口 成良, 越野 裕
    1985 年 3 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    てんかん患者の血清phenytoin (PHT), phenobarbital (PB), carbamazepine (CBZ), valproic acid (VPA) 濃度を螢光偏光イムノアッセイに基づくTDX (R) システムにより測定し, PHT, PB, CBZはHPLC法と, VPAについてはGLC法と比較した。TDXとHPLC, GLCによる測定値は4薬剤とも極めて高い正の相関を示し, 相関係数は, PHT: 0.99, PB: 0.99, CBZ: 0.98, VPA: 0.99であった。また, 既知濃度の標準血清試料を用いて調べた変動係数は, 4薬剤とも5%以下であり, TDXによる測定値は, HPLC, GLCによると同様に安定していた。TDXは, 試料の前処理, 抽出, 分離操作も不要であり, 臨床における抗てんかん薬血中濃度測定に有用と考えられた。
  • 鈴木 伸幸, 関 亨, 山脇 英範, 木実谷 哲史, 前沢 真理子, 立花 泰夫, 山田 哲也, 清水 晃
    1985 年 3 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    年以上追跡しえたWest症候群 (W群) 37例 (うちLcnnox症候群に移行したもの14例を含む), Lennox症候群 (L群) 29例 (うちWest症候群から移行したもの14例を含む), 合計52例をWからLに移行した群 (C群), WからCを除いた群, LからCを除いた群の3群に分類し, 長期予後と予後予測因子について検討した。ADLの予後はC群が最も悪かった。WからLへの移行危険因子は発症年齢, treatment Iag, ホルモン剤の初期治療効果, 発症前発達であった。ADLの予後に影響を及ぼす因子は, Wcst症候群ではホルモン剤の初期治療効果, 発作の再発または持続, Lennox症候群では発作の持続, 基礎疾患, 脳波上の発作波の持続であった。
  • 予後に関与する因子の検討を含めて
    立花 泰夫, 関 亨, 山脇 英範, 鈴木 伸幸, 木実谷 哲史, 前沢 真理子, 山田 哲也, 清水 晃
    1985 年 3 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児期における無熱性全般けいれん発作71例の予後を検討し, 以下の結果を得た。
    1) 発作の消失したものは, 総数71例中50例 (70.4%), 正常な精神運動発達・精神発達を示したものは, 64例 (90.1%) であった。
    2) 経過中, 他の発作型を認めたものは, 10例 (14.1%) で, 内訳は, 単純部分発作3例, 複雑部分発作6例, 複雑部分発作+非定型欠神発作1例であった。
    3) 発作の予後に関与する因子として,
    i) 精神運動発達遅滞・精神遅滞の合併 (p<0.01)
    ii) 治療開始までの期間 (p<0.05)
    iii) 30分以上持続した無熱性全般けいれん発作の既往 (p<0.05) 3つが指摘された。
  • 梶谷 喬, 中村 誠, 井出 京子, 木村 敬文, 己斐 幹生, 古園 晴久
    1985 年 3 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    当科で抗てんかん剤の持続投与を行い, その後断薬するに至ったてんかん77例 (大発作51例, シルビウス発作19例, その他の部分発作4例, 小発作3例) と熱性痙攣38例, 計115例について, 断薬後2年間以上経過を観察した。これらのうち断薬時または断薬後に脳波上にてんかん波を認めたものが44例あったが, 断薬後に発作の再発をみたものは大発作2例, 熱性痙攣3例, 計5例 (4%) にすぎなかった。断薬から再発までの期間は4ヵ月~2年8ヵ月 (平均1年7ヵ月) であった。以上より, 断薬の時期は個々の症例において臨床的諸因子を総合的に考慮して決定すべきであり, 脳波の正常化 (てんかん波の消失) は断薬の必要条件にならないことを強調した。
  • 管 るみ子
    1985 年 3 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    妊娠群40匹を含む計87匹のラットを用いて, 妊娠に伴う全身けいれん誘発閾値と血中PB濃度の変化を測定し, 次の結果を得た。1) Amygdaloid kindled ratsの妊娠群の閾値は非妊娠群に比較して有意に高かった。2) 連日PB (4mg/kg/日) を妊娠中の体重増加に相応して経口投与したラットの血中PB濃度は, 妊娠群と非妊娠群で有意差がなかった。3) 同様に連日PB (4mg/kg/日) を経口投与したamygdaloid kindled ratsの妊娠群の閾値は非妊娠群に比較して有意に高かった。以上から妊娠時には発作閾値の上昇が存在し, これが体重増加によると推定される抗てんかん薬血中濃度減少のための閾値の低下と拮抗的に作用することを示唆した。
  • 臨床, 脳波, 病理所見
    関 健, Juhn A. Wada
    1985 年 3 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    けいれんを惹起する物質の1つである葉酸を猫の一側扁桃核 (Am) もしくは無名質 (SI) に微量投与したところ, 激しい自律神経症状を伴った, 扁桃核キンドリングstage1~6に相当するてんかん発作の重積状態 (SE) が4~8時間にわたってみられ, その後5日以内に臨床・脳波上完全な回復を示した。SE中尿中ノルアドレナリンの放出増加およびミオグロビン尿が認められたが, これらも改善を示した。注入2週間後の脳病理所見は注入部の変化はなく, 同側海馬, 梨状葉皮質のわずかな虚血性変化を認めたにすぎなかった。心臓, 肺, 腎を含む諸臓器には全く異常病理所見を認めなかった。このようにAm, SI起源のてんかん発作全汎化には共通の機序の存在が示唆された。
  • 関 健, Juhn A. Wada
    1985 年 3 巻 1 号 p. 80-89
    発行日: 1985/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    neurotoxinの1つである葉酸を猫の一側扁桃核または無名質に投与したところ, ほぼ同様の脳波・行動上のてんかん重積発作が一過性に惹起されいったん回復した。しかし2~4週間ののち突然, 無力, 無欲, 意識混濁状態となり死亡した。病理学的には脳および心臓に虚血性組織変化が認められ, カテコラミン放出に由来する心臓死が強く示唆された。これはヒトのてんかん患者でみられるsudden unexpected death (SUD) とある相似点をもっており, その解明に有用なモデルと考えられた。ネンブタール麻酔下で同様の実験を行ったところ, 猫は生き延び, 扁桃核キンドリングに対する影響もなかった。すなわちこのSUDは予防可能であることが確かめられた。
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