てんかん研究
Online ISSN : 1347-5509
Print ISSN : 0912-0890
ISSN-L : 0912-0890
34 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
巻頭言
原著
  • 須江 洋成, 岩崎 弘, 小高 文聰, 岡部 究, 中山 和彦
    2017 年 34 巻 3 号 p. 603-609
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル 認証あり

    てんかんに関連して幻覚妄想等の精神症状を認めた3症例(発作後精神病、交代性精神病、慢性てんかん精神病)について、ネオジャクソニズム(Ey)をもとに解釈をこころみた。てんかん発症と精神症状の発現の間には一般に10年以上の潜伏期間があるとされるが、これは発作によりくり返される一過性の解体が徐々に高次機能に微細な影響を与え、脆弱性にいたらしめる準備期間と解釈した。そして、この脆弱性を基盤としてより深い解体を生じると下位機能が解放されてダイナミズムが発せられると考えた。その後に意識することのゆがみ、病的反応として精神(陽性)症状が発現したと解釈される。

  • 渡辺 雅子, 森田 好海, 森本 耕吉, 渡辺 裕貴
    2017 年 34 巻 3 号 p. 610-618
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル 認証あり

    酵素誘導作用のある抗てんかん薬(Enzyme Inducing AED:EIAED)による臨床検査値への影響について、AED服用中のてんかん患者277例を対象に検討した。EIAED群(E群)とnon E群に分けると、E群は総コレステロール(TC)、アルカリフォスファターゼ(ALP)が有意に高く(それぞれp<0.001)、白血球数は有意に低かった(p<0.01)。男性の方がALPが高く(p<0.05)、女性では加齢に伴いALP上昇がみられた。特にE群では、性差に関係なく有意にALPは高値であった(男性:p<0.001、女性:p<0.001)。ALPアイソザイムの骨型ALP(bALP)は、E群(12%)でnon E群(3%)より有意に異常値例が多かった(p=0.015)。EIAEDの酵素誘導作用により、脂質代謝や骨代謝への影響が考えられるため、定期的なモニタリングや薬剤調整の考慮が必要と考えられた。

  • 高橋 孝治, 中川 栄二, 竹下 絵里, 本橋 裕子, 石山 昭彦, 齋藤 貴志, 小牧 宏文, 須貝 研司, 北 洋輔, 高橋 章夫, 大 ...
    2017 年 34 巻 3 号 p. 619-627
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル 認証あり

    片側巨脳症は、出生後早期から早期乳児てんかん性脳症などの難治性てんかんを認め、最重度の精神運動発達遅滞を呈することが多い発達予後不良の疾患である。薬物療法が無効のため生後早期に大脳半球離断術が行われることが多い。術後の経過中に、てんかん発作が消失しても非罹患側に脳波異常の出現を認めることがある。半球離断術によりてんかん発作が消失した症例を対象に、非罹患側の経時的脳波変化と発達月齢、発達指数との関係について後方視的に検討した。片側巨脳症の半球切除術後でてんかん発作の消失した症例では、術後の発達指数は全例で低下傾向だったが、発達月齢は運動・言語発達とも全例で緩徐ながら伸びていた。術後の発達は、発達指数よりも発達月齢で評価した方が、術後臨床的に発達を認める実態を把握しやすい。また経過中に非罹患側の突発活動が出現することがあり、その増加率が高いと表出性言語発達が遅滞する可能性が示唆された。

特別寄稿
  • 林 紀乃, 原田 一樹, 福永 龍繁
    2017 年 34 巻 3 号 p. 628-636
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル 認証あり

    東京都監察医務院(東監医)は、東京23区内の異状死を検案し、死因がわからない場合は行政解剖を施行する。過去20年間(1995年から2015年)、東監医で異状死として取り扱われたてんかん関連の死亡について、その状況と死因に関して調査、検討した。死因に関与する疾患として、てんかんがあったものは364例(全検案数の0.15%)で、201例(55.2%)は行政解剖を施行されていた。直接死因は、いわゆるSUDEPに相当するようなてんかん発作に起因した急死が最も多く191例(52.5%)と全体の半数以上を占めた。男性135人、女性56人と男性が女性の2.5倍であり、半数以上が就寝中に急死していた。2番目には溺死が多く、106例(男性52例、女性54例)で、男女差は殆どなかった。特にてんかん症例では通常の浴槽内死亡に比して、上半身が浴槽内、足が浴槽外で沈んでいる姿が多いことがわかった。

    (本稿は第50回日本てんかん学会学術集会、企画セッション11 SUDEPを探るの講演内容を元に作成した)

資料
  • 川合 謙介, 荒木 敦, 石田 重信, 久保田 英幹, 菅野 秀宣, 太組 一朗, 西田 拓司, 平田 幸一, 前垣 義弘, 松浦 雅人
    2017 年 34 巻 3 号 p. 637-644
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/05/11
    ジャーナル 認証あり

    2014年に改正道路交通法や自動車運転死傷処罰法が施行されたことを踏まえ、てんかんのある人の運転免許に関する実態と問題点の変化を明らかにする目的で、2013年および2015年の状況について公安委員会および日本てんかん学会員にアンケート調査を行った。本調査は2002年から定期的に施行しているもので、今回のデータを過去の報告と比較した。てんかんの認知件数、診断書の提出件数は2010年と2013年の間で著増していた。免許の拒否・取消件数は2013年と2015年の間で著増していた。医師による届け出は皆無ではないが、まだかなり限られた医師によってまたは限られた患者に対して行われているようであった。免許可否の運用基準については、これまで通り文面がわかりにくい、曖昧である、より細かい状況別の規定が必要であるとの意見が多かった。免許適性に必要な無発作期間は現行の2年が妥当との意見が多く、1年を支持する医師は半数以下であった。

feedback
Top