本稿は、てんかん患者とその家族の治療に対する認識の異同について比較考察することを目的とした。てんかん治療がもたらす社会的便益は自発的支払意思額(willingness to pay:WTP)を指標に検討した。インターネット調査の結果、有効回答者は932人で、患者回答が382人、家族回答が548人であった。現在の治療継続へのWTPの中央値は患者回答(1,000円/月)に比べて家族回答(2,000円/月)が有意に高かった(P<0.01)。また、望ましい状況が実現できる新しい治療のために現在の自己負担額に対して追加で支払える金額は、患者回答(2,000円/月)より家族回答(5,000円/月)が有意に高かった(P<0.01)。本研究では患者と家族では少なからず認識の相違が見られたものの、共通して患者がより望ましい状態になることを願い、また社会の理解やサポートの向上を必要としていることが確認された。
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