てんかん研究
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4 巻, 2 号
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  • 剤形による吸収率の変化とその薬物速度論
    木戸 日出喜, 倉田 孝一, 木原 義春, 水野 義陽, 山口 成良, 横川 弘一, 市村 藤雄
    1986 年 4 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Phenytoin末 (PHT (P)) 服用中に大幅な血漿中濃度 (Cp) の変動を認め, PHT錠末 (PHT (T)) またはPHT細粒 (PHT (G)) への剤形変更により変動幅を縮小しえた続発性てんかんの3入院例を経験し, その原因につき薬物速度論的に検討した. 3例中2例は重篤な身体疾患を合併し, 他の1例は精神発達遅滞を伴った幼児であった. 薬物速度論的には, 吸収率FがPHT (T) で0.80, PHT (G) で0.95と安定しているのに対し, PHT (P) では0.54~0.90と変化したと考えられ, 血漿中濃度Cpの変動は, これによって理論的に追跡しえた. したがって, 3例においてPHT (P) 投与中にみられた大幅なCp変動は, 吸収に望ましくない生体側および製剤的条件によって増幅されたFの変化によると推定された.
  • 第1報: 難治の要因に関する検討
    高江洲 悦子, 山本 直樹, 高橋 泉, 古根 淳, 麻生 幸三郎, 根来 民子, 渡辺 一功
    1986 年 4 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    昭和50年から56年の間に名古屋大学小児科を受診し3年以上外来で経過観察のなされた371例中発作消失例は254例 (3年以上発作消失例195例-対照群-) で, 発作持続例は117例 (発作頻度不変または増悪例54例-難治群-) であった。発作持続率は続発全般てんかんで最も高く, 初診時発作型との関係では非定型欠神, 全般性強直間代発作, 複雑部発作, 混合発作の順で高い発作持続率を有し, とくに Lennox 症候群に属する混合発作での発作持続率が高かった。知能低下合併例, 出生前, 周産期の推定原因をもつ例で治療抵抗例が多く認められた。また難治群に含まれている全般性強直間代発作の場合稀発例が多く, 患者, 医師相方の治療に対する積極的姿勢を欠くためと考えられた。
  • 第2報: 治療の試み
    高江洲 悦子, 山本 直樹, 高橋 泉, 古根 淳, 麻生 幸三郎, 根来 民子, 渡辺 一功
    1986 年 4 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    昭和55年1月から60年6月までに名古屋大学小児科に治療抵抗性を主訴に紹介されたものは105例 (総受診者の16.6%) あり, 続発全般てんかんと部分てんかん例が多く, 高い発作頻度をもつ例が大多数であった。治療上の問題点としては診断・発作型の誤認, 選択薬剤の誤り, 多剤併用, 薬剤の過少投与などがみられ, それぞれ紹介症例のほぼ15%を占めていた。治療の試みとして薬剤の整理 (平均2.41剤→平均1.57剤), 間欠的ジアゼパム連続療法, フェニトイン, カルバマゼピン, バルプロ酸の大量療法などを行い, 61例 (58.7%) で50%以上の発作抑制を達成し得た。
  • 荻野 竜也
    1986 年 4 巻 2 号 p. 114-126
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Severe myoclonic epilepsy in infancy (SME) の14症例につき長期追跡研究を含め詳細に検討した.
    1) 生後2ヵ月~7ヵ月に全般性痙攣, 交代性片側痙攣や特異な部分発作で発症し, 次いで生後7ヵ月~4歳5ヵ月の間に非定型欠神とミオクロニー発作が追加出現した. これらの発作は極めて難治であった.
    2) 全例発症まではほぼ正常発達を示したが, 乳児期以降全例知的退行を示した.
    3) 脳波上, 全般性と焦点性てんかん波を併有することが特徴的であり, これらは乳児期には検出し難いことが注目された. また, 脳波上高率に光過敏性および図形過敏性を認めた. 4) SMEは特異な経過を示す極めて予後不良な続発全般てんかんの特殊型と考えられた.
  • 立花 泰夫, 関 亨, 山脇 英範, 鈴木 伸幸, 木実谷 哲史, 前沢 真理子, 山田 哲也, 清水 晃, 山崎 徹夫, 五十嵐 鉄馬, ...
    1986 年 4 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    A. 3年以上発作が抑制されたのちに再発したてんかん患児 (者) 20例について, 臨床的検討を行った。
    1) 思春期以降に再発する例も多く, 原発全般てんかんが13例と過半数をしめていた。
    2) 再発の推定要因として怠薬が重要で, 疲労, 精神的緊張, 月経などが関与していると考えられる症例もあった。
    3) 再発前にてんかん波が再出現した例は3例にすぎず, 脳波により再発を予知することは難しいと考えられる。
    B. 3年以上発作が抑制されたてんかん患児 (者) 221例を発作抑制後平均5年9ヵ月経過を観察したところ再発を14例に認め, 再発率は6.3%であった。
  • 堀田 秀樹, 熊谷 公明
    1986 年 4 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    夜間睡眠中複雑部分発作を頻発する10歳男児に終夜ポリグラフィーを行った。間欠期脳波はび漫性の不規則棘徐波複合を示した。臨床発作はふとんをかけるしぐさの自動症, 自動症の前に手足を硬直させるもの, 後者の後に二次性全汎化発作を生ずるものの3型がみられた。発作時脳波では最初低振幅もしくは著変を認めず, 自動症の出現とともに徐波バーストを全領野にみるようになり, 二次性全汎化発作のときはfast activityとそれに続く棘徐波バーストを全領野に認めた。発作は入眠後3時間以内に頻発し, すべて NREM 睡眠時に出現した。睡眠経過をみると発作が頻発するため徐波睡眠の出現が遅れたが, その量は軽度増加していた。REM睡眠は減少していた。
  • 坂本 亘司, 花井 敏男, 楢崎 修, 植木 洋子
    1986 年 4 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    triclofos sodium (トリクロリール) は催眠剤として広く使用されているが, 抗けいれん剤として用いた報告は見られない. 今回, 難治性のけいれん重積状態の女児にトリクロリールを使用し, 著明な効果を得たので報告する. 患児は新生児期よりシリーズ形成を伴うtonic spasmsが出現し, 乳児早期てんかん性脳症の診断で種々の治療を行ったが, 発作の抑制は困難であった. 3ヵ月よりWest症候群へと変容していたが, 1歳2ヵ月時, けいれん重積状態となり, 静脈麻酔を含む各種の抗けいれん療法を行ったが発作のコントロールは困難であった. トリクロリール間歓的経口投与開始により, けいれん重積からの離脱に成功し, 漸減中止にても経過は良好であった.
  • 17年間の経過観察
    上杉 秀二, 小島 卓也, 市川 忠彦, 大高 忠
    1986 年 4 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    12歳初発のてんかん患者で, 27歳までの15年間の脳波 (20数回の記録) に, 棘 (鋭) 徐波複合ないし棘 (鋭) 波が後頭部に連続性に出現し, 前頭部優位にδ波が群発する稀な症例を報告する。症例は29歳の女性で既婚。満期で正常分娩。高熱疾患, 遺伝負因はなく, 生後10ヵ月時に熱性けいれんを1回認めた。神経学的異常所見, 視覚障害, 知能障害を認めない。CT-scan異常なし。発作は急に気持ちが悪くなってうずくまり, 強直間代発作を示すもので, 発作回数は, てんかん性放電が持続して出現している割りに合計8回と少ない。
    てんかん性放電は開眼で抑制されたが, 抗てんかん剤では消失しない。終夜睡眠脳波ではREM睡眠を認めたが, NREM睡眠では明らかな瘤波, 紡錘波が見られずしばしばδ波が群発し, その段階分けは困難だった。てんかん性放電はREM睡眠で覚醒時より減少し, NREM睡眠で著減した。27歳以降はてんかん性放電の頻度が減少した。本例の病巣部位については, 後頭葉の皮質ではなく, より深部が考えられた。
  • 中村 純, 有川 勝嘉, 松永 博喜, 桑原 啓郎, 稲永 和豊
    1986 年 4 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    てんかん性精神病の1症例 (20歳, 女性) にTRH analog (DN-1417) を投与し, 臨床経過および経時的な脳波所見を報告した。DN-1417は今まで服用中の抗てんかん薬の血中濃度に変化を与えることなく, 自閉的ともいえる能動性の低下に対して著しい効果をもたらした。さらに幻覚, 妄想などの異常体験をも改善した。脳波はパワースペクトル分析を行い, 鳥かん図に表記して経時的変化を検討した。その結果, 臨床症状の改善と側頭部脳波の速波化とはよく対応していた。
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