左右半球間の棘波頂点の時間の遅れ (interhemispheric peak delay: IHPD) を, マイクロコンピューターを用いてデジタル的にmsec単位で計測し, ヒストグラム, 平均値, 標準偏差値としてあらわし, その生理学的意義について検討した。棘波頂点の遅れの測定には特発性全般てんかん (idiopathic generalized epilepsy: IGE) 13名, 症候性全般てんかん (symptomatic generalized epilepsy: SGE) 15名の欠神発作時脳波の棘・徐波複合を用いた。
SGE群とIGE群のIHPDの平均値 (IHPD absolute mean: IHPD-ABS) は, 生理学的あるいは統計学的に有意な差を示さなかった。しかし, IHPDの標準偏差 (IHPD standard deviation: IHPD-SD) をみると, SGE群ではIGE群よりも大きいばらつきを示し, その群差は統計学的に有意であった。
棘波頂点の遅れを論じる場合には, 平均値のみならずそのばらつきを検討することが必要であり, その意味で直接計測法がすぐれている。またSGE群の欠神発作時の半球間の棘波頂点の時間の遅れのばらつきは, 発作放電の伝播経路の状態がIGE群に比べてより不安定でかつ多様であることを示唆していると考えられた。
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