てんかん研究
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8 巻, 2 号
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  • 田中 順子, 三牧 孝至, 田川 哲三, 小野 次朗, 板垣 裕輔, 小野寺 隆, 今井 克美, 岡田 伸太郎
    1990 年 8 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児難治性てんかん20例 (部分てんかん10例, 続発全般てんかん10例) にBromideのadd-on therapy (25-150mg/kg) を行い, その治療効果を検討した。50%以上発作減少6例 (30%), 25-50%減少3例 (15%), -過性改善1例 (5%) であった。てんかん分類別では部分てんかん, 発作型別では二次性全般化強直間代発作に有用で, ミオクロニ-発作への効果は少なく, 非定型欠神発作への効果は認められなかった。有効例での平均投与量は80mg/kgで効果発現は投与開始2-6週後であったが, 脳波上での改善はなかった。副作用出現は5例 (25%) と多いため投与に際しては十分な注意が必要であるが, 血中濃度と薬剤効果および副作用との関係は認められなかった。難治性てんかんの二次性全般化強直間代発作や強直発作頻発状態に対しBromideは試みる価値があると思われた。
  • 急速な脳波および臨床上の改善がみられた3例について
    金澤 治, 鳴戸 敏幸, 扇谷 明, 上村 悦子, 河合 逸雄, 山口 俊郎
    1990 年 8 巻 2 号 p. 110-120
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Continuous spike waves during sleep (CSWS) は小児期に限られ, 一般にてんかん発作以外の精神神経学的な問題を伴うことが知られているが, 脳波所見の改善に伴って改善するともいわれている。われわれはCSWSないしは全般性発作波の増加と消褪とを呈した3症例の経過観察を通して, 精神神経学的並びに行動上の評価を行い, 脳波異常との関連性について検討した。
    第1例は脳波のみの, 第2, 3例は脳波と発作双方の改善に伴って精神神経学的ないしは行動上の問題が短期間のうちに著明な改善を示した。
  • 堀米 ゆみ, 浜野 建三, 岩崎 信明, 川嶋 浩一郎, 城賀本 満登
    1990 年 8 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    抗けいれん剤の内分泌系, 特に下垂体一副腎系に及ぼす作用を明らかにするため, 抗けいれん剤服用中のてんかん患児の早朝空腹時血漿ACTHおよび血清コルチゾール濃度を測定し, その病態生理学的意義を検討した。対象は抗けいれん剤単剤で治療中の小児てんかん患者60例 (バルプロ酸単剤投与19例, フェノバルビタール単剤投与35例, カルバマゼピン単剤投与6例) であり, 対照には正常小児15例を用いた。バルプロ酸服用中の患児では, 他の群に比較して血漿ACTHの有意な低下が認められた。バルプロ酸は脳内のGABAを増加させることにより抗けいれん作用を発現し, 同時に, GABAにより抑制性の支配を受けているACTH分泌に対しても影響を与えるとされているが, 上記の結果はこの考えを支持するものであった。しかし, バルプロ酸単剤投与群の血清コルチゾール濃度には有意な低下がみられなかったことから, バルプロ酸によるACTH分泌抑制は副腎皮質機能に影響を及ぼすほど強くはないものと考えられた。
  • 田中 隆彦, 竹下 久由, 川原 隆造, 挾間 秀文
    1990 年 8 巻 2 号 p. 126-132
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    ラット扁桃体において電気キンドリソグ (E-K), メチオニンエンケファリン化学キンドリング (ME-K), およびE-K完成後にME-Kを作成した群 (E-M) をそれぞれ作成した。これら3群間でのキンドリング形成過程のwet-dog shakes (WDS) の出現様式を比較し, キンドリング現象におけるWDSの役割を検討した。その結果, 1) WDSの出現数はE-Kではキンドリングステージの進展に伴い有意に増加したが, 他の2群ではこれとは逆にステージの進展とともに有意に減少した。2) WDS出現のピークは3群ともに後発射 (AD) の終了前後に見られ, これは発作の終了とほぼ一致していた。3) ME-Kで全身けいれん出現時にはWDSはほぼ消失した。以上の結果から, WDSはキンドリング現象においてステージや, けいれん発作の終焉と密接な関係をもち, ME-KではWDSの消失がキンドリング完成の一つの指標となることが示唆された。
  • キンドリングモデルを用いた実験的研究
    片山 かほる
    1990 年 8 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    NMDA受容体の競合性および非競合性阻害薬であるCPPとMK-801の全身投与は, ラット扁桃核キンドリングの形成において, 発作段階の発展と後発射持続時間の延長を強力に抑制した。扁桃核キンドリング完成後の全身けいれん発作に対しては, 両物質は行動上の発作のみを抑制し, 後発射持続時間に対しては抑制効果を示さなかった。海馬歯状回単シナプス性誘発反応における長期増強 (10ng-term potentiation: LTP) においては, CPP, MK-801はともに, 興奮性シナプス後電位 (EPSP) の増強をほぼ完全に抑制し, population spikeの増加率を有意に抑制した。NMDA受容体の受容体部分ないしイオンチャンネル部分の阻害によって, キンドリング形成が強く抑制されたことから, NMDA受容体複合体の反復する活性化がてんかん原性の獲得過程に重要な役割を演じることが示唆され, その機序の一つとして, LTPにみられるようなシナプス伝達効率の長期増強が関与している可能性が考えられた。
  • 発作と精神症状の相関について
    扇谷 明, 兼本 浩祐, 河合 逸雄, 徳永 隆司, 武内 重二, 上村 悦子
    1990 年 8 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    挿間性の急性精神症状を呈したことのある難治の側頭葉てんかん患者で, 側頭葉切除術が施され, 術後の精神症状の推移が検討された。症例は26歳の女性で, 7歳より恐怖感を伴った前兆から意識減損する複雑部分発作を頻発していた。患者はその恐怖感を側にいる他人に関係づける傾向をもっていた。抗てんかん薬の変更に伴って, 発作抑制とともに家族否認妄想を主とした精神症状を呈した。発作の再現とともに妄想は消失したが, 関係念慮は続いた。放射線学的にてんかん焦点に一致して, 器質病変がみられるため, 深部脳波で左海馬の焦点を確認したうえ, 左側頭葉切除術が施された。術後, 前兆を含めて発作は消失し, 精神的に一時期不安定になったが, かつての精神症状はみられていないが, 社会への適応においてなお課題をかかえている。このような精神症状を呈したことのある例について, 手術がどのような影響をもたらすのか文献例を通じて検討し, また術後のリハビリテーショソの必要性を論じた。また妄想症状を呈した時と術後とは, 同じく脳波は正常化し, 発作は消失したのに, 一方では妄想症状をみたが, 他方ではみなかったことから, 精神症状の生理学的機序について若干の考察を加えた。
  • マイクロコンピューターによる直接計測
    渡辺 裕貴, 渡辺 雅子, 三原 忠紘, 八木 和一, 清野 昌一
    1990 年 8 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    左右半球間の棘波頂点の時間の遅れ (interhemispheric peak delay: IHPD) を, マイクロコンピューターを用いてデジタル的にmsec単位で計測し, ヒストグラム, 平均値, 標準偏差値としてあらわし, その生理学的意義について検討した。棘波頂点の遅れの測定には特発性全般てんかん (idiopathic generalized epilepsy: IGE) 13名, 症候性全般てんかん (symptomatic generalized epilepsy: SGE) 15名の欠神発作時脳波の棘・徐波複合を用いた。
    SGE群とIGE群のIHPDの平均値 (IHPD absolute mean: IHPD-ABS) は, 生理学的あるいは統計学的に有意な差を示さなかった。しかし, IHPDの標準偏差 (IHPD standard deviation: IHPD-SD) をみると, SGE群ではIGE群よりも大きいばらつきを示し, その群差は統計学的に有意であった。
    棘波頂点の遅れを論じる場合には, 平均値のみならずそのばらつきを検討することが必要であり, その意味で直接計測法がすぐれている。またSGE群の欠神発作時の半球間の棘波頂点の時間の遅れのばらつきは, 発作放電の伝播経路の状態がIGE群に比べてより不安定でかつ多様であることを示唆していると考えられた。
  • SPECTとMRIの比較
    三浦 清邦, 鬼頭 正夫, 早川 文雄, 前原 光夫, 根来 民子, 渡辺 一功
    1990 年 8 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児期発症の局在関連性難治てんかん患者44例のSPECT, MRI所見を比較検討した。側頭葉てんかん患者での異常所見は, MRIで80%, SPECTで80%に, 後頭葉てんかん患者では, MRIで71%, SPECTで100%に, 前頭葉てんかん患者ではMRIで17%, SPECTで67%に認められた。MRIの異常部位と脳波焦点との一致率は, 側頭葉てんかんでは44%, 後頭葉てんかんでは57%, 前頭葉てんかんでは0%であった。SPECTの血流低下部位と脳波焦点との一致率は, 側頭葉てんかんでは50%, 後頭葉てんかんでは43%, 前頭葉てんかんでは0%であった。MRI異常部位とSPECTの血流低下部位との一致率は, 側頭葉てんかんでは30%, 後頭葉てんかんでは57%, 前頭葉てんかんでは0%であった。SPECTとMRIは, 側頭葉てんかん患者の診断に特に有用であり, 両者同時に施行すべきと考えられた。
  • 抗てんかん薬によるasterixisとの関連
    土井 永史, 宇野 正威
    1990 年 8 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    抗てんかん薬服用中のてんかん患者のうち, asterixisを呈する9例 (1群) とasterixisを認めない8例 (II群) ならびに抗てんかん薬を服用していない精神神経学的健常者9例 (III群) を対象として, 髄液・血漿アミノ酸組成ならびに血漿NH3濃度を調べ, 群間比較を行った。その結果, 1群の髄液中でのみglutamine (Gln) 高値とlysine (Lys) 低値という異常所見を認めた。髄液中のGlnとLysの濃度比は, 1群と他の2群とを96.2%の確率で正判別していた。抗てんかん薬減量後, 臨床症状の改善と血漿NH3濃度の低下とともに, I群患者の髄液所見は改善した。以上から, asterixisの背景には脳内に特異的に生じた可逆的なアミノ酸代謝障害の存在することが示された。また, このアミノ酸代謝障害をもたらす外的要因として, 抗てんかん薬の脳への一次的効果あるいは血漿NH3濃度上昇を介する二次的効果の可能性が考えられた。
  • 堀田 秀樹, 浜野 晋一郎, 福島 清美
    1990 年 8 巻 2 号 p. 176-178
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    過去4年半に, 抗てんかん薬服用中副作用がみられた48例を調査母体とした。調査時年齢は1歳7ヵ月~29歳2ヵ月であった。体重増加 (肥満) は7例に認め, すべてバルプロ酸ナトリウム (VPA) によるものであった。3ヵ月から24ヵ月の間に肥満度の上昇をきたし, 全例肥満度30%以上となった。投薬前から既に肥満度20%以上を示したものが4例いた。肥満のため投薬を中止したのは4例で, うち3例で体重の減少を認めた。夜尿は7例に認め, 5例がVPAによるもので, フェニトイン, クロナゼパムによるものがそれぞれ1例ずついた。夜尿の出現時期は服薬1日目が4例と多かった。4例で投薬を中止し, 全例その直後から夜尿の消失をみた。VPAによる体重増加, 夜尿は, VPAが視床下部に存在する食欲および排尿調節中枢へ影響を及ぼすためと推測された。
  • 森 則夫, 渡辺 賢, 熊代 永
    1990 年 8 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    スーパーオキサイド (O2-) の特異的なスカベンジャーであるスーパーオキサイド・ディスムター・ゼ (SOD) と扁桃核 (AM) キンドリングとの関連を検討するためラットを用いて次の2つの実験を行った。実験1で, キンドリング完成から30日後に全脳のSOD活性を測定したところ, 脳内のSOD活性はコントロールに比して有意に上昇していた (p<0.01)。次いで, 実験2で, SOD 3ngを焦点部位であるAMに注入すると, キンドリングけいれんの抑制がみられた。以上の結果から, SODはAMキンドリングによってもたらされたけいれん感受性とAMキンドリングけいれんの発現に関与していることが示唆される。
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