てんかん研究
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8 巻, 1 号
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  • 天野 るみ
    1990 年 8 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    用Lennox-Gastaut症候群 (LGS) の発症機序, 病態生理の解明に資する目的で, LGS125例を潜因性cryptogenic (C群) 30例 (24.0%) と症候性symptomatic (S群) 95例 (76.0%) に大別して成因と臨床像との関連を検討した。なお, 50例 (40.0%) にはWest症候群 (WS) の既往があった。
    C群ではS群に比して知能予後は有意に良好であったが, 発作予後に関してはS群と有意差を示さなかった。しかし, C群を追跡時にも知能障害のない群 (C-1群) とある群 (C-2群) に分けると, C-1群ではS群およびC-2群に比して発作予後も有意に良好であった。
    次に脳波トポグラフィーでは, S群とC-2群で前頭部領域にδ帯域成分の増加を認めたが, C-1群ではみられず, C-2群はこの点でS群に近いことが示唆された。このことは上記の臨床的検討の結果とも一致しており, C-1群はより厳密な意味での特発例と考えられた。
    一方, WSの既往のある群は知能予後, 発作予後ともにこれのない群より有意に不良で, 大半がS群に属し, 出生前要因をもつものが多かった。したがって, LGSの予後はWSからの経年的変容と強い関連をもち, 変容は成因と関連していることが明らかになった。
  • 特に乳幼児期受傷例の検討
    榊 寿右, 角田 茂, 中瀬 裕之, 多田 隆興, 内海 庄三郎, 岩崎 聖
    1990 年 8 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    外傷性てんかんは比較的良好な経過をとり, 抗けいれん剤の投与にて, コントロールされるのが通常である。しかし時に難治性てんかんへと移行し, そのコントロールに苦慮する場合がある。われわれは, 乳幼児期の外傷後にてんかん発作が生じ, 難治性となって, 現在も多種多剤の抗けいれん剤の投与にもかかわらず, 発作のコントロールが不十分である症例を対象として, そのMRIの所見につきCT所見と対比しつつ検討した。これらの症例ではMRIの施行前にCTが行われ, その所見が判明しており, そして脳波上も患側半球で広範に出現する棘波が認められている。また臨床的に片側けいれんや自動症が主たる発作内容で, 粘着気質, 易怒性などの人格変化, 知能の発育障害も認められている。MRIではCTの変化に加え, さらに広範な萎縮性変化と患側側頭葉の発育障害が存在しているのが認められた。
  • 山本 忍, 江川 功, 山本 順治, 河崎 建人, 山下 仰, 白石 純三, 志水 彰
    1990 年 8 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    高度の精神緊張を背景に, 非言語性高次精神活動, 特に計算によって臨床発作および脳波上にてんかん性発作波が誘発される症例を報告した。各種神経心理学的脳波賦活の結果, 特に暗算, そろぽん算で左中心部優位の棘徐波複合が誘発された。臨床発作は, 暗算では非定型欠神発作が, そろぽん算では利き手のミオクロニー発作が誘発された。その理由として暗算ではより複雑で全般的な高次精神活動が賦活因と考えられるのに対し, そろばん算ではその器具を使いこなすための手指の細かい運動が主な賦活因であるためと考えた。
  • 1年以上継続投与している35例について
    金澤 治, 兼本 浩祐, 扇谷 明, 河合 逸雄
    1990 年 8 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    1.Zonisamideを1年以上継続投与している35例についてその経過および効果について検討した。
    2.発作が6ヵ月以上消失しているものが20%あったが, 一方で一時有効例も23%あり, “慣れ” が生じる可能性も考えられた。
    3.効果発現までの期間は, 発作頻度にもよるが早いもので投与開始ないしは増量後1~2週間位から, 遅いものでも数ヵ月後までであった。また数年後に発作消失に至るものもあり, これを直ちに追加されたZonisamideの効果とするには問題があるとも思われるが, もしそのような可能性があるものとすれば, そのような例においては継続投与が重要であると考えられた。
    4.有効血中濃度の幅は4.1~46.3μg/ml, 投与量の幅は2.4~17.5mg/kgであった。
    5.Zonisamideは側頭葉てんかんから他の部分てんかんや続発全般てんかんまで幅広い効果スペクトラムを持つ抗てんかん薬と考えられる。
  • その病態形成的側面と前兆の組成を中心として
    兼本 浩祐, 扇谷 明, 金沢 治, 河合 逸雄
    1990 年 8 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    : 30人のHHE症候群を持つ患者を対象として, 続発するてんかん発作の類型から, 側頭葉てんかん群, 側頭葉外に焦点を持つ部分てんかん群, 全般てんかん群の3群にこれを分け, その病態形成的側面, 前兆を中心に検討を行った。その結果, (1) HH症候群発症後, 潜伏期間が長ければ側頭葉てんかんを, 短ければ全般てんかんを続発する, (2) 発症年齢が低く病巣の広がりが大きい群ほど右麻痺が多い, (3) 対照群と比べ自律神経性前兆が多く, 夢様状態・不安発作が少ないなどの傾向がみられた。Ounsted-Taylorの半球成熟段階乖離説によって発症年齢の低いものほど右麻痺が多い現象を説明することを試み, 前兆の組成の独自性から, HHE症候群に由来する側頭葉てんかんが側頭葉てんかんの中で一定のまとまりを持っている可能性を鳥取らのいう内側型側頭葉てんかんの原因疾患における複雑熱性痙攣の優位と関連させて論じた。
  • 永矢 洋, 岡田 玲子
    1990 年 8 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    黒質・脚橋核GABA投射路がキンドリング発作に対しどのような役割を果しているかを, 以下の実験から検討した。
    実験1: ラットの脚橋核へGABA antagonistであるbicucullineを注入して, 扁桃核キンドリング発作に及ぼす影響を行動上, 脳波上観察した。その結果, キンドリング発作が脚橋核内へのbicuculline注入により有意に抑制されることが明らかとなった。
    実験2: 扁桃核キンドリング完成3日後, O-フタルアルデヒド法にて, 線状体・黒質・脚橋核のGABA濃度を測定した。線状体・黒質のGABA濃度は対照群と有意な差はみられなかったが, 脚橋核のGABA濃度は有意に増加していた。
    以上より, けいれん準備状態の獲得に伴い, 黒質と脚橋核を結ぶGABAニューロン活動が亢進すると推測された。このGABA活動をbicucullineによって阻害することは脚橋核ニューロンを脱抑制することであり, その結果発作の伝播が抑制されると考えられた。
  • 馬場 啓至, 小野 憲爾, 森 和夫, 高橋 克朗, 川浪 由喜子, 岡本 基
    1990 年 8 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    脳梁前半部離断術にて良好な結果が得られた成人型Lennox-Gastaut症候群の1例を報告した。
    症例は14歳時にけいれん重積状態となり, 以後全般性強直間代性発作, 非定型欠神発作, 転倒発作, 上肢のmyoclonusが出現し, 特に非定型欠神発作, 転倒発作が頻回となったため, 35歳時に脳梁前半部離断を行った。術後明らかな脳梁離断症状は出現せず, 上肢のmyoclonus以外の発作は消失または著明に減少し, 脳波上もatypical spikc&waveは右半球に限局化した。術中脳梁刺激によるtranscallosal responseのモニターは脳梁部分離断の際, 離断部位の脳梁線維の同定が可能であり, 発作全般化機序を考慮するうえで有用と思われた。
  • 治療終結のための基準
    植田 清一郎, 中沢 洋一, 石田 重信, 安楽 武彦, 佐藤 洋美, 辻丸 秀策
    1990 年 8 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    長期間臨床発作が持続した慢性てんかんの中, 著者らの基準を満たし, 一定の手続きを経て投薬を中止した後も発作が再発しなかった19名のうち, 予後が良好なBECCTを除いた15名を報告した。著者らの治療終結の基準は, 1) 発作が2年間抑制され, この間に脳波検査でてんかん性異常波の消失が確認されたら薬を減らし始める, 2) 減量は異常波の消失を確認しながら徐々に行う, 3) 減量の開始から投薬中止までの期間はおよそ2年とする。
    治療が終結した患者の多くは他の医療機関から発作の抑制が困難なために植田病院てんかんセンターに紹介された者で, 発作型は部分発作が10名 (CPS3名, その他が7名), 全般発作はGTCが3名, West症候群とLennox症候群がそれぞれ1名である。発作の初発から治療中止までの平均期間は, CPSが14.9年, その他の部分発作は11.0年, GTC12.3年であった。
  • 脳神経外科の立場より
    桑原 孝之, 村木 正明, 忍頂寺 紀彰, 植村 研一
    1990 年 8 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    脳卒中急性期で病変部を, CTにてテント上に確認できた499例に対し, けいれん発作について検討した。1) けいれん発作出現頻度は, 直後けいれん4.2%, 早期けいれん1.6%, 晩期けいれん5.2%(2年以上経過した症例では7.5%) であった。2) 晩期けいれん発生率の高かった症例は, ア) 開頭血腫除去術例, イ) くも膜下出血後の脳梗塞例, ウ) 出血性脳梗塞例, エ) 脳梗塞の直後けいれん発生例であった。3) 出血, 虚血を問わず手術例にけいれん発作の発生率が高かった。4) 晩期けいれんの92%が2年以内の発症であった。5) 皮質下出血, 脳梗塞の直後けいれん例は生命予後不良ではなかった。
  • 中瀬 裕之, 多田 隆興, 江口 隆彦, 田中 祥弘, 榊 寿右, 宮本 誠司, 京井 喜久男, 内海 庄三郎
    1990 年 8 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    猫扁桃核kindlingを用いて, その発展過程におけるソマトスタチン (immunoreactivc (IR)-SRIF) の脳内および髄液内変動について検討した。control群 (C群), sham operation群 (S群), stage 4 kindling群 (S4群), kindling完成群で最終刺激2日後処理群 (S6-2d群) と2週間後処理群 (S6-2w群) の各5匹5群に分けた。kindlingは, 右扁桃核に刺激した。各群とも大槽より髄液を採取し, 13脳部位を取り出し, radioimmunoassay (RIA) によりIR-SRIFを測定した。その結果, 脳内では, S6-2w群の両側扁桃核・梨状葉・海馬において, またS6-2d群の両側扁桃核および梨状葉, 右海馬において有意に上昇していた。髄液では, S6-2dおよびS6-2w群で有意な上昇がみられた。以上より, SRIFが, てんかん発作準備性獲得後期の完成・維持に関与していることが示唆された。また, 髄液IR-SRIFは脳内IR-SRIFの上昇を反映していた。
  • 橋本 和明, 福島 裕, 斎藤 文男, 和田 一丸
    1990 年 8 巻 1 号 p. 82-84
    発行日: 1990/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    昭和61年12月現在での調査で, 当時, 運転免許証を保有していた112例について追跡調査を行った。今回は, そのうち99例 (男74例, 女25例) が調査可能であった。そこで, これら99例を対象として, 昭和62年と63年の2年間における運転状況について, 昭和63年12月の時点でまとめた。
    免許証を保有している者は98例 (1名は意図的に更新せず失効) で, そのうち実際に運転している者は81例 (83%) であった。発作を有しながら運転している者が15例 (19%) 認められた。過去2年間に事故を起こした者は7例 (7%) であったが (人身1例, 自損2例, 対物4例), いずれも発作とは無関係な事故であり, 警察に届け出されたものは1件のみであった。
    前回の成績 (昭和61年) との比較において, 若干の考察を加えた。
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