てんかん研究
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9 巻, 2 号
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  • 意味記憶とエピソード記憶の回復時間のずれによるその類型化の試み
    兼本 浩祐, 川崎 淳, 扇谷 明, 河合 逸雄
    1991 年 9 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    108個, 22症例の複雑部分発作に呼称・音読・見当識課題を含む20の設問からなる課題を, 全ての設問に対, て目的語が到達されるまで繰り返し検査し, その内容を逐語的に再現して, 錯語類型と回復時間という視点から分析した。その結果, 見当識の回復時間をエピソード記憶の障害度の, 呼称・音読の回復時間を意味記憶の障害度の指標とした場合, (1) 両方の記憶がともに早期に回復するもうろう状態早期回復群, (2) エピソード記憶の回復が遅れるエピソード記憶障害優位群, (3) 両方の記憶の回復が同程度に一定の期間を要する意味記憶障害優位群が区別され, 更に, 意味記憶障害優位群の中には, (4) 形体的語性錯語, 語新作を頻発する特異な一群が存在した。また, (1)(2) は右病巣との, (3)(4) は左病巣との関連が示唆された
  • 深部脳波による発作脳波同時記録の解析を通して
    兼本 浩祐, 扇谷 明, 上村 悦子
    1991 年 9 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    MRI, 発作時脳波, 切除切片の組織学的所見のいずれにおいても右海馬の発作起源が想定された側頭葉てんかんの女性例において出現した反復型の言語自動症を, 深部脳波による発作脳波同時記録を用いて解析した。その結果, (1) 常套句は単調な繰り返しではなく, さまざまの組み合わせで言語自動症の内に毎回出現する, (2) 語新作が常套句と混在して出現し, 言語自動症の末尾は常套句で終了する, (3) 冒頭の語句がその直前の会話のオウム返しである場合があり, 取り込まれた冒頭の語句は言語自動症の中で保持されることがある, といった発話の特徴とともに, 言語自動症と右海馬の発作放電との対応が確認された。この結果から, 本症例の言語自動症と失語症における再帰性発話との類似性に注目するとともに, 命題的・随意的言語を司る左半球と自動的・感情的言語を司る右半球との間の拮抗関係という観点から, 両現象の解釈を試みた。
  • 扇谷 明, 川崎 淳, 兼本 浩祐, 河合 逸雄
    1991 年 9 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    抗てんかん薬治療 (カルバマゼピンを含む) にもかかわらず, 1年以上にわたって, 月1回以上の複雑部分発作をもつ側頭葉てんかん55例に対してフェニトイン (PHT) 単剤治療が行われ, その有用性が検討された。そのPHT定投与量の上限は, 原則として複雑部分発作が抑制されるか, あるいは副作用の発現するまでとしたが, しかし血中濃度が30μg/mlに達しても発作の抑制されないときはそれ以上の増量を断念し, 無効とした。PHT単剤有効例は18例 (33%) あり, そのうち14例は複雑部分発作が2ヵ月以上にわたって抑制され, その抑制時点での平均血中濃度は20.8 (7.2~28.6) μg/mlであった。無効例は37例 (67%) あって, そのうち23例は副作用発現のためであり, その平均血中濃度は36.8 (22.4~60.3) μg/mlであった。またPHT単剤時に精神症状の発現をみたものが2例あり, そのいずれも発作が抑制されて精神症状の出現をみた。無効例に対してその後, 多剤併用が試みられたが, 1例のみ有効で他は無効であった。このことから現在のところ, PHT単剤高用量治療が失敗した例について, それに代わる抗てんかん薬治療をみつけるのは困難であるといえる。しかしPHT単剤治療下で2次性全般化発作 (大発作) をみた4例では他剤の追加で大発作は抑制された。以上から大発作の合併をみない難治定側頭葉てんかんに対してはPHT単剤定高用量療法は有用であるとみなされた。また最近の側頭葉てんかんに対する外科治療の進歩からみて, その適応としての薬物抵抗性を測る一つの指標に, PHT単剤高用量療法での結果は参考になりえるとみなされる。
  • phenytoin, diazepamおよびimipramineの抗けいれん効果との比較
    安楽 武彦
    1991 年 9 巻 2 号 p. 124-131
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    ラット扁桃核キンドリングに対するindeloxazineの作用を検討した。その結果, indeloxazine (0.25~10mg/kg i. p.) を投与して最終けいれん閾値 (FET) で刺激したところ, 濃度依存的な後発射持続時間の短縮と発作段階の減少が認められた。10mg/kg投与では全例にけいれん発作および後発射の完全な抑制が認められた。しかし, 刺激強度を上昇させていくと全例にstage2からstage5までの発作が誘発されたことから, その抗けいれん効果は刺激局所のFETの上昇によるものと考えられた。なお, indeloxazine 40mg/kg投与では自発けいれんが誘起され, 濃度による二相性作用が認められた。同様に行ったPhenytoin, diazepamおよびimipramineの抗けいれん効果とこれまでの薬理学的実験の結果とを考慮すると, indeloxazineの抗けいれん効果はimipramineと最もよく似ており, モノアミソの伝達が増強されることによるのではないかと推定した。
  • 家族へのアンケート調査より
    山田 哲也, 関 亨, 木実谷 哲史, 立花 泰夫
    1991 年 9 巻 2 号 p. 132-140
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児科神経外来通院中のてんかん患児 (者) 家族に対し, アンケートにより病名告知・学校生活上の問題点を調査した。回収例210例の検討で, 最初にてんかんと診断された時には, 何とかして治してあげたいと感じた例が173例 (82%) と最も多く, 子供がかわいそうなどの感情は次第に消失する例が多い。病名を本人に告知している例は年長者ほど多いが, 全体では59%が告知しておらず, このうち知らせるつもりがない例も15%に見られた。この病気のための家族の悩みでは, 患者の将来134例 (77%) が最多であるが, 兄弟への影響・周囲の偏見などに対する危惧も少なくなかった。学校生活においては, 約1/4に友人関係に問題があり, 学校行事への参加にも問題が認められた。学校に対し病名を通知している例は, 普通小・中・高等学校通学中の患者定うち約1/3だけで, 大半は通知しておらず患者家族の大きな悩みになっていると思われる。
  • 大谷 和正, 岡本 伸彦, 田川 哲三, 二木 康之, 藪内 百治
    1991 年 9 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児の難治てんかん38例にclorazepate dipotassium (CLP) をadd-on法にて投与し, その効果を検討した。症候性全般てんかん (19例) に対しては長期 (6カ月以上) 有効例はなく, 1ヵ月以内の一過性発作頻度減少が2例であった。症候性部分てんかん (13例) に対しては長期発作消失が3例, 長期発作頻度減少が2例であった。これら定有効例のうち4例は焦点性運動発作や二次性全般化けいれんを主体とする発作であった。焦点性か全般性か決定できないてんかん (6例) に対しては長期発作消失が2例, 長期発作頻度減少1例であった。長期発作消失の1例は徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん, 他の1例と長期発作頻度減少の1例は全般性強直間代けいれんを主徴とする難治てんかんの姉弟例であった。これらの結果CLPは症候性部分てんかんのうち焦点性運動発作や二次性全般化けいれんを主体とするもの, および全般性強直間代けいれんを主徴とする難治てんかんに対して試みる価値のある薬剤と考えられた。
  • I. 1症例における認知機能検査
    鳴戸 敏幸, 宇野 正章, 相坂 明, 山野 恒一, 島田 司巳
    1991 年 9 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    視覚刺激によって, てんかん発作が誘発される現象はよく知られているが, そのメカニズムはいまだ十分解明されていない。われわわは視覚刺激によって棘徐波が誘発される1例において, 視覚刺激中に認知機能検査を行った。その結果, 認知機能検査における反応時間は棘徐波の出現頻度と関連を持って変化した。一方, 棘徐波の出現頻度に差がない状態において, 認知機能検査での誤認反応数は誘因刺激によって増加した。
    仮に, 視覚刺激中であっても, てんかん放電発生までは脳機能に異常がなく, てんかん放電によって機能異常が出現するとすれば, 両者は密接な関連を有すると考えられる。一方, てんかん放電が発生する前に, その発生閾値の低下という異常が惹起されると仮定すれば, 今回のように, 脳波所見よりもむしろ刺激と密接に関係した異常が観察されても矛盾がない。
  • とくに側頭葉てんかんの長期予後と治療定問題をめぐって
    和田 一丸
    1991 年 9 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    10~20年間にわたって治療経過を観察し得たてんかん患者161例について, 治療開始後定最初の2年間での治療効果 (初期治療効果) を判定し, 長期予後との関係について検討した。その結果, 初期治療効果と予後と定間に有意な相関関係を認めた。特発性全般てんかんでは, 初期治療効果が良ければ予後も良く, とくに最初の2年間に発作が完全に抑制された例の発作消失率は高かった。側頭葉てんかんでは, 初期治療効果不良, 予後不良の例が多かったが, とくに治療開始後2年目の発作頻度が月1回以上の例や, 外因, 合併障害を有する例の予後が不良であった。それ以外の症候性局在関連性てんかんでは, 初期治療効果良好例で予後が良く, 初期治療効果不良例では予後が不良であるという関係が明瞭であった。治療初期における長期予後予測の可能性について述べ, 難治てんかんの治療について考察した。
  • 竹下 久由, 松田 和義, 小松 和久, 伊藤 邦修, 川原 隆造, 挾間 秀文
    1991 年 9 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Wistar系雄性ラット9匹を用い, 右背側海馬刺激による電気キンドリングを作成した。完成したキンドリングラットにベメグリド5.5mg/kgを腹腔内投与し, 金網による拘束ストレスが, ベメグリド投与後に出現する痙れん発作, および発作性放電に及ぼす影響について検討した。その結果, 拘束ストレス負荷時にはべメグリド投与によって生ずる大脳皮質からの突発性律動波と, それに伴う頭部, 体幹の間代性痙れん発作はストレス負荷前に比べて有意に減少したが, 背側海馬からの散発性の発作性放電は有意に増加した。また拘束解除直後には大脳皮質からの突発性律動波, 臨床発作および背側海馬からの発作波はいずれも一過性に著しく減少したが, その後は再び増加した。以上の結果, ストレスは大脳皮質からの発作波の出現に対しては覚醒作用を介して抑制的に, 一方背側海馬のそれに対しては情動的刺激として促進的に作用しているものと思われた。
  • 小出 誠司, 大西 博, 片山 雅文, 山上 栄, 川北 幸男
    1991 年 9 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 1991/10/31
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    遺伝てんかんモデルのElマウスの痙攣と脳内オピオイド系との関係を明らかにするために, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) とradioimmunoassay (RIA) を組み合わせたHPLC/RIA法で, 交叉物を除いた生理活性ペプチドの脳内メチオニンエンケファリン (ME) をElとその母系であるddYマウスにおいて測定した。Elマウスは, 生後28日から放り上げ刺激を加え, 放り上げ刺激の有無でEl (+) とEl (o) に分けた。El (+) マウスは, 50日から不全発作, 75日以降で強直間代発作を示した。25日では, ElのME量が海馬と中隔野で, 50日では, 発作間歓期のEl (+) とEl (o) のME量が, 中隔野と大脳皮質でddYに比べて有意に減少した。150日では, El (+) とEl (o) のME量が, 中隔野と大脳皮質と線条体で有意に低下した。Elマウス脳のMEの低下は, これまでに報告したオピオイドδレセプターのup-regulationに対応しており, 内因性MEの減少がElマウスの発作の病因に密接に関与していることを示唆する。
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