実験社会心理学研究
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11 巻, 2 号
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  • 沼上 泰子
    1972 年 11 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, Cohen, A.R. (1962) による“相互影響的な事態に於けるネガティブな態度変容 (boomerang effect) の惹起に及ぼす不協和の大きさの影響”についての実験的知見に再検討を加えるべく, 先の実験に若干の変更を加えたものの大略はこれに準じたかたちで行なわれた。
    被験者は男子大学生32名で, “大学生活に於けるサークル活動の意義”という問題について各々立場を異にする者同志を二人一組としたbefore-afterデザインの実験である。相互影響的な事態に於いて, 立場を異にする相手を説得せんとした場合には, 自分の意図に反して相手からネガティブな反応がフィードバックされてくると, その度合が強い程 (high-dissonance条件), コミュニケーターの経験する不協和は大となり, その度合が弱い場合 (low-dissonance条件) よりもブーメラン効果は大となった。Cohen (1962) の対面的な実験場面で生じたbargaining effectを排除する為に本実験ではブースを使用したが, これにより実験結果は, 不協和理論の立場からより一義的に解釈され得るであろう。
  • 田中 宏二
    1972 年 11 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の主な目的は, Fiedlerのcontingency modelを現場の組織体において, 実証的に検証することである。調査対象は, 病院, 化学工場, 自動車販売会社, 銀行等の4組織体, 57集団からなり, interacting groupとcoacting groupの両集団を含んでいる。管理組織のレベルは, 第1線監督者と第2線監督者の2つのレベルである。集団状況は, Oct. I, II, III, V, VIIの5つのセルが得られた。
    結果はつぎのとおりである。
    1) 本調査によってモデルの主要仮説の妥当性が検証された。一部のOct. (IV, VI, VIII) について資料が得られなかったけれども, ほぼ検証の目的は達した。
    2) coacting groupにおいて, 仮説を支持する結果が得られた。
    3) 第2線監督者の組織レベルに, モデルが適用できる可能性がみられた。
  • 島 久洋
    1972 年 11 巻 2 号 p. 99-108
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    集団成員の能力や異質な特性に合わせて課題の再編成をどうするかというリーダーの仕事に係わってくると思われる他者の多様性の許容度を表わすものとしては, ASoは不十分であり, 抜けているところがある。それゆえ, 他者の多様性の許容度をより的確に表わす指標としてDPとDNとを考案した。
    DP, DN, そしてASoに関して次のことが明らかになった。
    1. DP, DNはASoと異なった認知的側面を表わしていることが確認された (Table 1)。
    2. 共働者を選ぶ集団を変えても, DP得点, DN得点, そしてASo得点にあまり変化はみられなかった (Table 2)。
    3. DP, DN, そしてASoは, テスト・再テストによる時間的変動がほとんどなく, 時間的安定性がみられた (Table 3)。
    4. ASoが効果をもっている集団課題状況において, DPとDNの両得点が高いリーダーは, 集団の課題遂行に対してもっとも効果的であった (Table 4, 5)。
  • 金児 暁嗣
    1972 年 11 巻 2 号 p. 109-126
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    連合形成に関する理論は, 心理学的立場からのものと, ゲーム理論的立場からのものとに分けられるが, ゲーム理論からの予測を可能とする状況を検討するため, 成員の間に無制限の取引き行動が許され, 第3者の介入の余地を十分与えた。
    被験者は中学2年生男子で, 3名をもって1集団が構成され, 計15集団が用いられた。使用された3人集団の型は, CaplowによるType II (3-2-2), Type V (4-3-2), Type VIII (4-2-2) で, 各集団は3つのTypeについて6回のゲーム, 計18回のゲーム盤によるゲームを行なった。成員に与えるウェイトはランダムとされた。その結果, 次のことが明らかにされた。
    1. Type II, Vにおいては, Caplowの予測が確証され, プレイヤーは最初のウェイトについての知覚に基づいて行動した。しかし, Vinacke & Arkoff (1957) の結果よりも偶然の範囲に近かった。
    2. Type VIIIでは, 2-2連合が最も多く形成され, Caplowの予測は確証されなかった。
    3. 連合しようとの最初の申し出をしたプレイヤーは, Type II, Vでは強者と弱者の間で差がみられず, Type VIIIでは, 弱者の申し出の方が強者よりも多く行なわれた。一方, 申し出を受けたプレイヤーは, Type II, Vにおいては弱者の方に多くみられ, Type VIIIでは強者と弱者の間に差はなかった。
    4. 強者から弱者へ, または, 弱者から強者への連合しようとの最初の申し出における報酬の分配については, 強者と弱者の間では差がなく, Typeによるちがいがみられた。即ち, Type IIでは等分配, Type VIIIでは比例分配の申し出が多くみられた。
    5. 最終的な連合形成における報酬の分配については, 従来の結果よりも比例分配が少なかった。そして, Type II, VIIIの弱者間の連合では, 非・等分配がかなり出現した。
    6. 最初の申し出において一致がみられた組について, その申し出が最後まで持続されたか否かを調べたところ, 資源に差異がある組ほど持続されていなかった。
    7. 取引きにおいて交わされたペーパー・コミュニケーションは, Type VIIIが最も少なかった。
  • 狩野 素朗
    1972 年 11 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    Sociometric testにおける2段階地位指数法の定式化に際し, 1段階的被選択数に対する2段階的被選択数の効果性の比率を実験的に求める研究の一部として, 本実験においては2段階的被選択数の変化が如何なる値を超したとき, 一定の行動的効果性の変化を生ずるかを検討した。
    従来の狩野の実験の方法と同じく, 中学校生徒に勉強, 遊び, 相談の選択規準によるsociometric testを行い, 1段階的被選択数が等しく2段階的被選択数が異る条件で2人1組の対を構成し, それらの対の2者について影響力, 社交性, 信頼感, 人気, 学力の5項目について4人の教師が独立に比較評定した。対は2段階的被選択数の差の大きさ (1, 2, 3, 4, 5, 6以上) によって構成された。
    結果によると勉強の規準では2段階的被選択数の差が5を超したとき信頼感と学力に, 遊びの規準では5を超したとき社交性に, また相談の規準では5を超したとき社交性, 学力, 6を超したとき影響力, 信頼感にそれぞれ比較評定に5%水準で有意な差がみとめられた。すなわち規準によって有意な差の生ずる項目は異っているが, 差が認められる場合についていえば, 2段階的被選択数の差が大体において5を超した場合であるといえる。
  • 古川 久敬
    1972 年 11 巻 2 号 p. 133-147
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 筆者が仮設的に提唱したリーダーシップ影響過程に関するモデルを, 実験的に検証することであった。われわれは, 集団成員 (フォロワー) に対して与えられた成功ないしは失敗という評価が, 彼らのモラール (作業に対する満足度, グループ・エスティーム, 集団凝集性) とリーダーシップ機能認知に及ぼす効果を検討した。
    被験者は, 120名の中学生男子で, 彼らはニア・ソシオメトリーをもとに, 4~5名の実験集団 (相互選択の成員よりなる) に割り当てられた。本実験は3セッションよりなり, 各セッションにおいて, 実験者によって与えられたリーダー (PないしはMタイプ) のもとで, 被験者はTAT図版をもとに, 15分間。班でよく話し合って物語を作成した。第2, 第3セッションでは, これらの物語は, 評価者によって成功か失敗かの評価を受ける (実は, この評価の内容は, 実験前に決定されていた)。各セッションの最後に, 被験者のモラールおよびリーダーシップ機能認知得点が, 質問紙によって測定された。これらの得点は分散分析 (LindquistタイプIII, リーダーシップ×評価×セッション) により検定された。結果は次のとおりであった。
    (1) リーダーのリーダーシップ・タイプにかかわりなく, 集団活動のアウトプットに関する成功評価のは, 被験者のモラール得点を有意に上昇させた。他方, 失敗評価は, それを有意に下降させた。
    (2) このモラールの変化と相まって, 成功評価, および失敗評価は, 被験者のリーダーシップ機能認知を, それぞれ, PM, pmタイプに変化させた。
    上の結果は, 評価内容の差異によって生起された被験者の心理的状態の違いという観点から考察された。さらに, 筆者は, この心理的状態がリーダー-フォロワー関係に影響を及ぼす変数の一つであるという点にも言及した。
  • 三隅 二不二, 石田 梅男
    1972 年 11 巻 2 号 p. 148-158
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    二段階の監督レベルを含むリーダーシップ類型の相異が, 集団成員の動機づけ, 終末結果に及ぼす効果差を, とくにリーダーシップ・タイプの相補性効果の観点から吟味するため, 実験室的状況を設定した。独立変数として, 第二線監督の指導類型PM型, P型, M型, 第一線監督の指導類型PM型, P型, M型, pm型を構成し, これらの二段階のリーダーシップ・スタイルの組合せのもとで, 集団成員は, IBMカードの穿孔数を3人が協同して数える単純作業に従事させられた。被験者は無作為に実験集団の一つに割り当てられた。一集団は3名の作業者で構成された。3人の被験者よりなる2~3集団は, 1名の監督者のもとで作業を行なったのであるが, これを更にもう1人の第二線監督者が監督した。第二線監督者は, 常時実験室には駐在せずに, ときどき実験室を巡回して, 第一線監督者を指導した。この意味において, 第二線監督者の集団成員に対する影響は第一線監督者を媒介した間接的なものであるが, 第二線監督者と第一線監督者との会話は, すべて部下達の面前で行なわれたので, 第二線監督者の存在とその行動様式は, 集団成員にとって現実的なものであった。被験者は, 平均年齢22才の男子, 63名。第一線監督者は, 心理学専攻の大学院生10名。第二線監督者は, 心理学研究室の助教授3名。1回の作業時間は15分, 1日2回, 全部で8回作業を行なった。結果を要約すれば, 次の通りである。
    1. 実験者によって設定されたリーダーシップ条件と被験者の認知的反応が一致したものをもって, リーダーシップ条件とした。
    2. 終末結果としての生産性指数においては, 試行回数の後半において, PM類型群が, 全試行を通じてP-Mが上位であり, 重複類型群であるP-P, M-M及びP-pmは生産性指数が低位であった。
    3. 集団成員の状況満足度については, 生産性指数ほど明瞭な結果は見出せなかったが, PM類型群全体の得点は, 重複類型群の得点よりも有意に高く, 有意差はないが, 単型Pと単型Mの相補群が中間の得点を示した。
  • 三隅 二不二, 阿久根 求
    1972 年 11 巻 2 号 p. 159-169
    発行日: 1972/03/31
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    この研究は, “学校教育に対する集団力学的アプローチ”というテーマで進めている総合的研究の一部である。
    研究目的は, 教師認知の規定因を主として認知者の内的条件より検討することであり, 仮説は, 達成動機, テスト不安および教師との同一化の程度が, 教師の指導性機能のP機能とM機能への認知に差異を生じさすであろう, ということであった。
    被験者は, 小学校6年生10クラスで350名であった。
    達成動機はHermansの質問紙による測定尺度, テスト不安はSarasonのTASCで, 教師との同一化はRingessの尺度より, それぞれ測定された。
    結果を要約すると次のとおりである。
    1) 達成動機の高い児童は, 教師の指導性機能のP, M両機能を高く認知する (PM型認知) 傾向が強いが、逆に達成動機の低い児童は、両機能を弱く認知 (pm型認知) する傾向にあった。
    2) しかし、この事実は、女子児童の男性教師の指導性に対する認知型においては実証されなかった。
    3) テスト不安の強弱が指導性認知に一貫的な影響を与えるであろうという仮説は支持されなかった。
    4) また、教師との同一化の程度も指導性認知に有意な効果を有していなかったが、これは同一化の把握法に問題があると考察された。
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