実験社会心理学研究
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12 巻, 1 号
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  • 蜂屋 良彦
    1972 年 12 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1972/11/30
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本論文は, 1) 集団成員の性格と彼がとりやすいリーダーシップの機能的役割との関係についての吟味, 2) 機能的役割の分布状況をもとにした各集団のリーダーシップの類型化, 3) 一般成員が公式リーダーに対して示す態度や苦情・敬意等の意見および集団生産性に関してリーダーシップ類型間の比較, を目的として高校バスケットボールチームを対象に実施された調査報告である。
    結果を要約すると, 1) 集団維持的役割を取っている個人は, それを取ってない個人にくらべYG検査のG, R, S尺度等の衝動性因子や主導性因子で比較的高い得点をとっていること, 2) 課題遂行的役割と集団維持的役割とが一人に集中している統合型, 2つの役割が別個の個人に分化していてその間の関係が友好的な分離高友好型, その間の関係が低友好的である分離低友好型, の3種のリーダーシップ類型に集団を分類してみると, 成員が課題達成リーダーに対して示す友好的態度は統合型集団で最も高くなること, 成員の感じる融和的集団雰囲気は分離低友好型集団で最も低くなることが見出された。しかし集団生産性および公式リーダーへの苦情に関しては類型間に有意差は認められなかった。
  • 河津 雄介, 三隅 二不二, 小川 暢也
    1972 年 12 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 1972/11/30
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    生産性では明確な条件差は認められなかったが, 生理反応においては明確な条件差が認められた。即ち, P条件は, 被験者の心拍数を増加させ, GSRを増大させるように作用し, M条件は, 心拍数を減少させGSRを増大させるように作用した。また, PM条件は, 被験者の心拍数は変化させないが, GSRを増加させる作用をした。即ち, 受験による神経系の一般的興奮を反映するGSRにおいては, 変化の方向がすべて上昇変化で, 三条件間に差がなかったが, 状況特異的な生理指標であるHRにおいては三条件間に差がみられた。
    認知にもとずく, 満足度その他の資料を参考に, J.I. Laceyのenvironmental inake-rejection概念にもとずいて, 考察が加えられた。即ち, PM型監督行動による刺激状況とLaceyらのいうenvironmental intake-rejection刺激状況との間に, 生理反応パターンを媒介として, 状況特性に関する一定の対応関係がみいだされた。
  • 田崎 敏昭
    1972 年 12 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 1972/11/30
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究はPM式リーダーシップの各類型とメンバーの対リーダー感情負荷及び, 各類型の下で生産された品物 (作品) に対する感情負荷との関係を実験的に明らかにしようとしたものである。メンバーの対リーダー, 対作品感情負荷については, 距離測定装置上で知覚対象物の主観的距離知覚判断と客観的物理的距離のくい違いから推測していく方法を用いた。被験者は女子大学生24名。結果は次のとうりである。全ての被験者は距離測定装置上の知覚対象物として, 同じ人物の写真を見せられたにもかかわらず, PM的リーダー, 及びM的リーダーの下で作業をしたメンバーは, それがリーダーの写真であることを知らされると, 自己にとって好ましい対象物を定位させる方向 (正の感情価方向) へ写真を移動させ, P的リーダーの下で作業したメンバーは, 自己にとって好ましくない対象物を定位させる方向 (負の感情価方向) へ写真を移動させた。知覚対象物を作品にした場合もリーダーの写真と同じ関係がみられた。これらの結果より, PM的, M的リーダーの下で作業したメンバーは, そのリーダー及び作品に対して正の感情を負荷し, P的リーダーの下で作業したメンバーは, そのリーダー及び作品に対して負の感情を負荷したと解釈されよう。
  • 三隅 二不二, 橋口 捷久
    1972 年 12 巻 1 号 p. 28-40
    発行日: 1972/11/30
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 逆アルファベット書記課題を使用して, 指導者-被指導者の二者関係において, 指導者のPM式指導行動が被指導者のリスク・テイキング行動におよぼす効果を明らかにしようとしたものである。実験条件として, 指導者のPM式指導行動が操作され, PM型, P型M型, そしてpm型の4指導条件が設定された。結果を要約すれば, つぎのとおりである。
    PM式指導条件間に, パフォーマンスの量的有意差は見い出されなかった。
    リスク・テイキング行動については, PM式指導条件間に, リスク・テイキングスコアの有意差は見い出されなかった。しかしながら, GDスコアとADスコアには, PM式指導条件間につぎのような有意差が見い出された。GDスコアでは, PM型のみがプラスであり, その順位はPM型>P型=M型>pm型であった。また, ADスコアでは, PM型のみがマイナスであり, その順位は, pm型>M型=P型>PM型であった。
    つぎに, typical shiftはPM型に最も多くあらわれP型, M型, pm型の順で減少し, atypical shiftはpm型に最も多くあらわれ, M型, P型, PM型の順で減少した。
    リスク・テイキング行動に関する結果を総合すると, PM型指導条件のみがリスキーであり, 他の3指導条件 (P型, M型, およびpm型) はコンサーバテイブであった, なかでもpm型指導条件は最もコンサーバティブであった。これらの結果より, 仮説1が部分的に検証され, 仮説2は検証されなかった。そして, PM式指導条件と達成動機, 失敗回避動機との関係は, 本研究結果のリスク・テイキング行動を媒介として, 達成動機はPM型>P型>M型=pm型, 失敗回避動機はpm型>P型>PM型>M型であり, PM型はMs>Mf, P型はhighMs≦highMf, M型はlowMs=lowMf, pm型はMs<Mfであると推論された。この推論を明確にするためには, さらなる実験室的研究が必要であろう。
  • 古川 綾子
    1972 年 12 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 1972/11/30
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 親の子どもに対するリーダーシップ行動 (養育態度) を, 親の自己認知と子どもの認知の両者の観点から比較検討することであった。その際, 同じ記述次元を用いるために, 両者に共通して用いることができるようなテストバッテリーを作成した。作成されたテストバッテリーは, 情緒的相互作用 (Maintenance Factor) と, しつけ・訓練 (Performance Factor) についてそれぞれ10項目から構成されるものであった。
    このテストバッテリーで, 親の自己認知と子どもの親認知の得点は, 父親のP機能・M機能, 母親のP機能において親の自己認知得点は有意に高く, 母親のM機能には有意な差は認められなかった。
    次に, 親のリーダーシップ行動と子どもの親に対する態度の関係は, 子供の認知と親の自己認知では同じ類型でもその関係は異ってくる。即ち, 子どもが親に対して積極的にポジイティブ (理解があると思う, 信頼する, 誇りを持つ, 親しみをもつ, 尊敬する) な態度をとるのは, 親の自己認知による類型ではpm型, M型より, PM型, P型 (P優位型) である。子どもの認知による類型では, pm型, P型よりPM型, M型 (M優位型) であることが明らかになった。
  • 三隅 二不二, 藤田 正
    1972 年 12 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 1972/11/30
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 第一線監督者のリーダーシップ機能に関する自己評定についての検討をおこなった。以下の点が見い出された。
    (1) 自己評定値と部下評定値の間には認知的不一致が見い出された (Table 1)。
    (2) この認知的不一致は量的側面について著しく, リーダーシップ方向における認知的不一致は比較的小さい (Table 4, 6)。
    (3) また, 自己評定と部下評定の相関について検討をしたところ, P機能にのみ企業別部門別に差異を見い出し, 組織特性との関連が考察された (Table 2, 3), (Table 13~16)。
    (4) 第一線監督者の職務満足度は, 第一線監督者の自己評定のP得点, 第二線監督者のM得点 (第一線監督者の評定) と関係あることが見いだされた (Table 8, 9)。
    (5) 同様に, 第一線監督者が部下集団に対してもつ“リーダーにとってのやりやすさ”について検討したところ, 第一線監督者の自己評定のM得点, 第二線監督者のPM両得点 (第一線監督者の評定) と関係あることを見い出した (Table 10, 11)。
    以上の分析から, 自己評定の妥当性が充分高いものであるという根拠は得られなかったが, 部下評定と自己評定では異ったリーダーシップ空間を構成していると考えられ, 両者のリーダーシップ空間がどのように関連しあっているのか, という点については今後の研究課題としたい。
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