実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
ISSN-L : 0387-7973
18 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 百貨店従業員の場合
    田尾 雅夫
    1978 年 18 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    百貨店の従業員 (n=369) における仕事の特性とワークモチヴェーションの関係が, Hackman & Lawler (1971) の枠組にもとずいて分析された。とくに, いわゆる成長欲求のようなより高次のニーズの, それらの関係におよぼす媒介的な効果について検討された。
    得られた結果は, ほぼ従来の知見を支持するものであった。つまり, 仕事の特性はワークモチヴェーションと有意な相関関係を示した。そして, 成長欲求の強い従業員では, いくつかの仕事の特性次元とモチヴェーション変数との関係が有意に高いことが示され, 仲介的効果が実証された。しかし, 従来の欧米の研究と比べて, その差は著しいものではない。
    加えて, ワークデザィンにおける方法論的な問題が提起された。すなわち, 1) 充実化された仕事に対する反応の個人差に配慮した時, 仕事の複雑さを1つの尺度にまとめることは難かしいこと。2) 人間関係に対する満足感と仕事の複雑さに対する積極的な反応は逆の関係を示す傾向がみられること。つまり, 仕事の特性のワークモチヴェーシ藝ンに対する効果は, そのコンテクストを無視しては得られないことを意味している。3) 公平感のように, 直接仕事の特性とは関係しないにもかかわらず, 仲介的効果を示す外部的な要因が存在しうることなどである。
    今後の課題として, 仲介変数などの概念をより明確にしながら, より広範な職種について, 仕事の特性とモチヴェーションの関係の比較検討をおこなうべきである。
  • ゲーム行動の分析を通して
    吉田 富二雄
    1978 年 18 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    社会的相互作用を行う二者間の対人認知過程において, 社会的立場, 視点の相違は個人の行動, 認知をどのように規定し, また, どのように相異なる対人認知を形成させるであろうか。本研究は, 社会的相互作用場面のモデルとしてPDゲームを用い, 「協力」, 「非協力」の異なる立場を設定し, 社会的立場と対人認知の関係を社会的相互作用の力動的視点から検討することを目的としている。
    被験者は女子大学・大学院生32名で16ペア。実験に先立ち・被験者の1人は「協力者」に, 他の1人は「非協力者」にランダムに割り当てられ, 別々に, 協力的或いは非協力的方向づけを受ける。次に15試行のPDゲームを行い, ゲーム終了後, 質問紙において, (a) ゲーム結果に対する成功-失敗感, その原因性, (b) 相手および自己の行動・意図に関して答えた。結果の概要は次の通りであった。
    1) ゲーム行動 ; 非協力者の協力反応数は, ゲームの進行にもかかわらず比較的安定している。一方協力者の協力反応数は, ゲームの進行にしたがい減少し, 非協力者の協力反応数に近づいた。
    2) 成功-失敗感情 ; 協力者は強い失敗感を表明した。
    3) 対人認知 ; 形容詞対評定尺度上, 協力者は自己と他者を引き離して認知した。一方, 非協力者は自己と他者を近づけて認知した。
    以上の結果は次のように考察された。協力的立場の人間と非協力的立場の人間がPDゲームで相互作用を行う場合, 協力者の協力的意図は, 非協力者の非協力反応により阻止され, 協力者は非協力者に行動的に巻き込まれる。それ故, 協力者は強い失敗感を感じ, 自己と相手の異質性を意識することにより, 自己と他者を引き離して認知する。一方非協力者は, 協力者の側における行動的変化のため, 自己と他者を近づけて認知する。さらに, 因子分析の結果, 協力者, 非協力者の認知は, 各々独自の構造をもつことが明らかにされた。特に, 協力者の自己認知においては, 極めて複雑な構造の存在が示唆された。
  • 大坊 郁夫
    1978 年 18 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    非対面式の3者閥会話事態における各組各成員の言語活動性の特徴と音声的なコミュニケーションのみを通して形成される対人印象の構造との関連性を知ることが, この報告の目的である。
    MASによって規定される高・低不安者群の2群それぞれ5名, 中不安者群35名計45名の女子学生を被験者とし, ・非対面場面において, M2名を基本とした3名の組み合せであるHMM, MMM, LMM群各5組ずつ構成し, 会話実験を行なった。24分間1セッションを日を変え, 2セッション実施した。各セッションの会話実験後, 他者に対する印象評定を求めた。
    時系列的指標としては, 時系列的に0次の4種類の状態 (同時沈黙, 単独発言, 重複発言, 同時発言) を基本とし, 2次状態までを含めた。各群の言語活動性の比較に加え, 対人印象評定の構造, 言語活動性の構造を明らかにするために, それぞれの結果に基づき因子分析を施した。
    対人印象の構造としては, 明朗性, 社会的活動性, 魅力性の因子をはじめ, 包容性, 親和性, 信頼性因子が得られた。セッション1とセッション2とでは, 各不安者群とも, 各因子への寄与の程度が変化している。Lに関する印象評定に明朗性因子がもっとも強く反映されており, 各不安者群の評定問にも相違がみられた。
    言語活動性の因子は, 会話構成員数に応じた3名共同, 2名共同, 個体単独の発言因子をはじめ9因子抽出された。なお, MMM群およびMの言語活動性が最も低く, 群水準ではHMM≧LMM>MMM, 個体水準ではH≒L>Mの関係が示された。さらに, 会話を行なう3名間では, M2名間よりも不安水準の異なる2名間の発言交流が活発であった。なお, セッション1に比べセッション2において全体的に活動性は増大した。
    印象評定と言語活動性との間には, いくつかの有意な相関関係が認められた。とくに, 個体の単独発言指標が, 対人印象との関連が木であった。
    これらの結果から, 真体的なコミュニケーションを介して形成される印象構造には, 明朗性の程度が敏感に反映されていること, 道徳的な特徴は重要な役割を果たしていないことが示された。印象形成の行なわれる状況要因を検討する必要が示唆された。また, 不安水準と言語活動性とのU字型の関係および不安のdiscrepancy仮説が確認された。
  • 鹿内 啓子
    1978 年 18 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    自分の成功または失敗の帰因作用にself-esteemがどのような影響を及ぼすかを検討した。仮説はself-esteemの高い (高SE) 人は成功を能力に, 失敗を努力に帰因し, 他方self-esteemの低い (低SE) 人は成功を運に, 失敗を能力に帰因するだろう, というものである。
    被験者は申学2年生70名。self-esteemは質問紙によって測定し, 得点の上位1/4以内の者と下位1/4以内の者を選んだ。また, 同年齢の平均点として, 実際のそれよりも低いまたは高い偽りの点数を教示して, 成功・失敗を操作した。課題は4文字のアナグラムである。課題遂行後, 自分の結果についての帰因を, 能力, 努力, 課題の困難度, 運, そして調子の5要因による一対比較法で測定し, また次試行の結果についての予想も測定した。これを第3試行まで繰り返した。
    圭な結果は次のようであった。
    1. 高SE群は失敗を努力に, 低SE群は成効を運に強く帰因し, 仮説は支持された。また, 高SE群は低SE群よりも成功を能力に帰因するが, 失敗については逆の関係がみられ, 両群を相対的に比較すると, 能力についても仮説が支持された。
    2. 低SE群も高SE群と同様に失敗を努力に強く帰因した。これは, 高SE群は不安定要因としての努力に, 低SE群は内的要因としての努力に帰因する結果と解釈された。
    3. 全般的に, 成功を外的要因に, 失敗を内的要因に帰因するという控え目な帰因傾向がみられた。
    4. 帰因作用と成功に対する期待の高さとの関係については, 従来の知見が明らかには支持されなかった。
  • 蜂屋 良彦
    1978 年 18 巻 1 号 p. 47-55_1
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    リーダー行動と上司への満足感やモチベーションとの関係に職務特性や部下の個人的特性が及ぼす影響を, 百貨店従業員を対象に調査し分析した。
    結果を要約すると, リーダー行動と上司への満足感の関係に対しては, 職務特性や個人の成長欲求の強さが影響を与えていることが見出された。リーダーシップの課題遂行の強調次元と満足感との関係は, 自律性の低い職務, 多様性の低い職務, 見通しの低い職務において, また, 成長欲求の弱い個人において, 負の相関を示したが, 自律性の高い職務, 多様性の高い職務, 見通しの高い職務, および成長欲求の強い個人においては, このような関係はみられなかった。リーダーシップの集団維持的配慮次元と満足感との関係は, 一般に正の相関がみられたが, フィードバックの多い職務や見通しの高い職務では, それを欠く職務にくらべ, 正の相関は低下した。また, 協力の必要性の大きい職務では, それの小さい職務にくらべ, 集団維持的配慮次元と満足感の間の正の相関は一層高くなる傾向が認められた。これらの結果は大筋において仮説を支持する方向にある。
    リーダー行動とワークモチベーションとの関係は低いものであり, また職務特性や個人的特性の影響はあまりみられず, 部分的には予想とは反対の結果が得られた。
  • 西川 正之, 広田 君美
    1978 年 18 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 従来一貫した結果が得られていない平等視範の存在を検討し, あわせて平等規範と報酬の重要度および過剰-不足分配状態との関係を明らかにすることを目的とする。仮説は, 不平等分配によって生じる緊張が不平等の程度に対応する (仮設1), 報酬の重要度に対応する (仮説2), そして報酬の過剰一不足状態によって異なる (仮説3), というものである。
    60名の男子大学生を被験者に用い, 実験協力者 (Co.) との2人1組でチップ獲得のための的当てゲームをおこなわせた。ゲーム終了後, 両者に命中数が等しいことを告げ, 彼らにチップを与えた。実験操作によりCo. がそれを分配した。被験者は分配者 (Co) に再分配を要求し, 同時に分配者への協力度と分配に対する満足度を評定した。
    不平等の程度は70%-30% (高不平等) と60%-40% (低不平等) の2条件, 報酬の重要度はチップに賭けられた金額に応じて低, 申, 高群の3条件に分けられた。さらに報酬の過剰-不足状態は, Co. の呈示した不平等分配が被験者にとって有利か不利かということで操作された。
    実験の結果仮説は支持された。被験者は分配が不平等であるほどその回復を求め, 過剰報酬状態では報酬の削減をのぞみ, 報酬不足状態では増加を求めた。また報酬の重要度が高まるほど不平等分配により生起した緊張は大きかった。高重要度条件では, 70%の報酬を分配された者が過度に自己の報酬を削減することで分配者に返礼し, 分配が30%の者は分配者の報酬の剥奪を求めることで報復をこころみた。分配者への協力度と分配への満足度にも実験変数の効果はみられた。
  • 三井 宏隆, 江頭 米子
    1978 年 18 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本実験では電話を介した相互作用場面が取りあげられるとともに, 被験者は実験者の役割を演ずるように求められた。
    実験条件としては, パートナーの魅力とパフォーマンス (作業成績) が操作された。
    実験結果はattribution theoxyと関連づけて分析された。
    (1) 魅力及びパフォーマンスに関わる操作は被験者に正しく認知され, 意図した通りの効果をあげることができた。
    (2) 高成績条件ではパートナーの魅力如何にかかわらず, 「パートナー自身の有能さ」 にその説明が求められた。
    (3) 低成績条件ではパートナーの魅力如何にかかわらず, 「実験者としての役割を十分に果たすことができなかった」 と判断された。
    (4) 高魅力-低成績条件では, パートナーの低成績の原因は 「パートナー自身の能力」 以外に, (イ) 課題が能力を測定するのに適していなかったこと, (ロ) パートナーが能力を十分に発揮しえなかったこと, (ハ) 実験者としての役割遂行の失敗, に求められた。
    (5) 低魅力-高成績条件では, パートナーの高成績の原因は 「パートナー自身の能力」 のほかに, 課題が能力を測定するのに適していなかったこと, に求められた。
    (6) コントロール条件においては, 特に顕著な判断傾向はみられなかった。
    また, 本実験がこれまでの研究のなかでもつ意味合いについて, コミュニケーション・メディアの相違と関連づけた考察がなされた。
  • 自己評価・判断次元との関連において
    蘭 千寿, 小窪 輝吉
    1978 年 18 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1978/08/17
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 18 巻 1 号 p. e1
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
feedback
Top