非対面式の3者閥会話事態における各組各成員の言語活動性の特徴と音声的なコミュニケーションのみを通して形成される対人印象の構造との関連性を知ることが, この報告の目的である。
MASによって規定される高・低不安者群の2群それぞれ5名, 中不安者群35名計45名の女子学生を被験者とし, ・非対面場面において, M2名を基本とした3名の組み合せであるHMM, MMM, LMM群各5組ずつ構成し, 会話実験を行なった。24分間1セッションを日を変え, 2セッション実施した。各セッションの会話実験後, 他者に対する印象評定を求めた。
時系列的指標としては, 時系列的に0次の4種類の状態 (同時沈黙, 単独発言, 重複発言, 同時発言) を基本とし, 2次状態までを含めた。各群の言語活動性の比較に加え, 対人印象評定の構造, 言語活動性の構造を明らかにするために, それぞれの結果に基づき因子分析を施した。
対人印象の構造としては, 明朗性, 社会的活動性, 魅力性の因子をはじめ, 包容性, 親和性, 信頼性因子が得られた。セッション1とセッション2とでは, 各不安者群とも, 各因子への寄与の程度が変化している。Lに関する印象評定に明朗性因子がもっとも強く反映されており, 各不安者群の評定問にも相違がみられた。
言語活動性の因子は, 会話構成員数に応じた3名共同, 2名共同, 個体単独の発言因子をはじめ9因子抽出された。なお, MMM群およびMの言語活動性が最も低く, 群水準ではHMM≧LMM>MMM, 個体水準ではH≒L>Mの関係が示された。さらに, 会話を行なう3名間では, M2名間よりも不安水準の異なる2名間の発言交流が活発であった。なお, セッション1に比べセッション2において全体的に活動性は増大した。
印象評定と言語活動性との間には, いくつかの有意な相関関係が認められた。とくに, 個体の単独発言指標が, 対人印象との関連が木であった。
これらの結果から, 真体的なコミュニケーションを介して形成される印象構造には, 明朗性の程度が敏感に反映されていること, 道徳的な特徴は重要な役割を果たしていないことが示された。印象形成の行なわれる状況要因を検討する必要が示唆された。また, 不安水準と言語活動性とのU字型の関係および不安のdiscrepancy仮説が確認された。
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