実験社会心理学研究
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19 巻, 1 号
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  • 三隅 二不二, 杉万 俊夫, 窪田 由紀, 亀石 圭志
    1979 年 19 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 企業組織体における中間管理者のリーダーシップ行動を実証的に検討し, その測定尺度を構成することを目的とするものである。
    フィールドは, 自動車部品の製造, 販売を主要な業務とする企業体であった。まず, 中間管理者 (部長, 工場長, 課長) に, 管理・監督行動に関する自由記述を求め, それを分類・整理しながら, リーダーシップ行動を測定するための質問項目を作成した。質問項目作成の過程で, 質問項目検討のための専門家会議を数回にわたってひらき, 中間管理者のリーダーシップ行動が質問項目として網羅的に含まれることを期した。最終的に, (1) 部 (次) 長・工場長用49項目, (2) 事務・技術系課長用92項目, (3) 工場課長用85項目の質問項目を作成した。リーダーシップ行動測定項目はすべて部下が上司のリーダーシップ行動を評価する, 部下評価の形式にした。これに, リーダーシップ測定項目の妥当性を吟味するための外的基準変数を測定する16項目を加えて質問票を印刷した、外的基準変数は, 仕事に対する意欲, 給与に対する満足度, 会社に対する満足度, チーム・ワーク, 集団会合, コミュニケーション, 精神衛生, 業績規範の8変数である。
    回答者数は, 部 (次) 長・工場長用533名, 事務・技術系課長用1, 040名, 工場課長用273名であった。リーダーシップ行動測定項目に関して因子分析を行なったが部 (次) 長・工場長, 事務・技術系課長, 工場課長, いずれの場合も, 「P行動の因子」と「M行動の因子」が見出された。
    次に, P行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 「P行動の因子」で. 60以上, かつ「M行動の因子」で. 40未満の因子負荷量を持つ項目のみを対象とする因子分析を行なった。その結果, (1) 部 (次) 長・工場長の場合は, 「計画性と計画遂行の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (2) 事務・技術系課長の場合は, 「計画性の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (3) 工場課長の場合は, 「計画性の因子」, 「内部調整の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」が見出された。
    M行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 同様の分析を行なつた。
    その結果, (1) 部 (次) 長の場合は, 「独善性の因子」 と「公平性の因子」, (2) 事務・技術系課長, 及び (3) 工場課長の場合は, 「独善性の因子」と「配慮の因子」が各々見出された。
    従来の研究との比較によって, 第一線監督者と中間管理者のリーダーシップ行動の差異が考察された。すなわち, 具体的な内容には若干の違いがあるものの, 「厳格性の因子」及び「計画性の因子」は第一線監督者と中間管理者に共通している。しかし, 部 (次) 長・工場長及び事務・技術系課長の場合に見出された「率先性の因子」と, 工場課長の場合に見出された「内部調整の因子」は, 第一線監督者を対象とした従来の研究では見出されてはおらず, 中間管理者に特有な因子であると考察された。
    P行動, M行動の因子得点を用いてリーダーをPM型P型, M型, pm型に類型化し, 8個の外的基準変数との関連においてリーダーシップPM類型の妥当性を検討したが, いずれの外的基準変数においても, PM型のリーダーの下で最も高い得点, pm型のリーダーの下で最も低い得点が見出され, PM類型の妥当性が実証された。このPM類型の効果性の順位は, 従来の研究における第一線監督者の場合と全く同様であった。
    また, P行動測定項目10項目, M行動測定項目10項目を選定した。10項目を単純加算して得られるP (M) 行動得点はP (M) 行動の因子得点と. 9以上の相関を示すこと, PM行動得点を用いてリーダーの類型化を行なった場合のPM類型と外的基準変数の関係が因子得点を用いて類型化を行なつた場合の関係と同じであったことからこれらPM行動測定項目の妥当性が明らかになった。
  • 古川 久敬
    1979 年 19 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    従来の研究は, リーダーの行動が, 集団状況 (部下のパフォーマンス水準, 作業課題の特性) に対応して柔軟に変化すると述べているものの, それが何故であるかを明らかにしていない。本研究は, 下記の2つの仮説をたて, 集団状況の違いが, リーダーシップ行動の違いをもたらすメカニズムについて期待理論の観点から検討を加えたものである。被験者は, 鉄道輸送にかかわる職場に勤務する1, 576名の第一線管理者であった。
    仮説1 管理者は, 自己の職場集団をとりまく諸々の状況を考慮しながら, 自己の職場にふさわしい独自の職場管理目標を設定するであろう。管理者は, “部下職員との関係のよさ”, “労働組合との関係のよさ”, “管理者自身の意欲”, “直属上司との関係”, そして “経営施策への信頼”などの職場状況要因を考慮しながら, 自己の職場管理目標を設定していることを分析結果は裏づけていた。さらに, 管理者にとっての職場状況の有利性という観点からみれば, 管理目標の設定において明確な階層性があることも見い出された。
    仮説2 管理者のリーダーシップ行動は, 彼がいかなる職場管理目標を掲げているかによって差異が認められるであろう。なぜなら, 期待理論が示唆するごとく, 管理者は, 自己の職場管理目標の実現に役立つと思うリーダーシップ行動をより多く行使するからである。結果は, この仮説を支持していた。すなわち, 課題志向的な管理目標を掲げる管理者は, リーダーシップ行動のうち課題達成機能を, 逆に集団志向的な管理目標を掲げる管理者は集団維持機能を, それぞれより多く行使していた。また, 管理者が自己の職場管理目標の実現にとってリーダーシップ行動が貢献すると信じている程度 (道具性認知) と, 彼の現実のリーダーシップ行動とは高い相関を示した。
    本研究の結果をもとに, 集団状況とリーダーの行動との間に, リーダーによる目標設定過程を仮説する必要のあることを説き, リーダーシップ過程に関するひとつのモデルを提示した。
    最後に, このモデルに依拠して, リーダーシップ行動の多様性を説く従来の研究結果を説明, 解釈し, さらに, Fiedler (1967) の提唱するリーダーシップの有効性に関する条件即応モデル (contingency model) の解釈を試みた。
  • 言語教示の効果
    大里 栄子, 小川 暢也, 三隅 二不二
    1979 年 19 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, PM式リーダーシップ論によるPM型教示は, 遂行行動にとって最適であるという観点より, PM型教示によって喚起される生理的水準は, MとP型教示条件の問に位置する, すなわちP, PM, Mの順に喚起水準は高く, 達成作業度はPM条件のもとで最も高いであろうという仮説を検証することを目的とした。
    対象は健康な女子学生45名であった。テスト前にSpielbergerのSTAI-I型によりstate anxietyを測定した。鏡映描写テスト施行法は教示表によって示し, その後3分集中施行し, 試行直後に評価法によって心理学的時間を測定した。1分間休止後, あらかじめ録音したP, M, およびPM型教示のいずれかをヘッドホーンより与えた。教示後, 再び鏡映描写テストを3分間集中施行した。その後同様に心理学的時間を測定した。心拍数はプルスメーターによりテスト前安静時, テスト中, テスト後安静時を通して連続的に観察し, 10秒間の最高・最低値を記録した。テスト後, 言語教示に対する認知をPMスケール, その印象をSD方式により, またSTAI-I型によりstate anxietyを測定した。
    主要な結果は次の通りである。
    1. 鏡映描写テスト時の心拍数は, P, M, PM教示のいずれによっても増加するが, その増加数は, PM, M教示群の順に大きく, 群間に差が認められた。
    2. 鏡映描写テストの速度は, 各教示条件導入後いずれの群も増大し, 群間に差は認められなかった。正確度は, PM, M群においては逸脱回数および逸脱時間が減少し, 正確度の増大が認められたが, P群は正確度が低下した。
    3. 心理学的時間は, PM, M群において減少したがP群においてはそれが認められなかった。試行時間を長く感じた」が「短く感じた」かについての主観的評価は, PM, M群は教示条件導入後時間を短く感じた者が増加したが, P群にはそれが認められなかった。
    4. STAI-I型によって測定した状態不安state anxietyは, テスト後PM群においてのみ減少した。
    5. STAI-I型の得点 (テスト前) と心拍数の相関はP群において教示中, 鏡映描写テスト中に有意な正の相関が認められた, PM, M群においてはそれが認められなかった。
    以上の結果, 鏡映描写テスト時の心拍増加数はP, PM, M群の順に高く, P型教示は遂行行動にとってover arousalな状態をもたらし, PM, M型教示はよりoptimalな状況を作り出すと考えられる。PMとM型教示に類似した効果が認められたが, PM型教示群は, M群よりも正確度の改善が早く特態不安の低下している点で優れている。automonic areusal level, 遂行行動情動状態を総合的に考え合わせると, PM教示が, P, M教示より最適な効果を持つことが示唆される。
  • 杉万 俊夫
    1979 年 19 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study was to investigate the effects of equality of varying degrees of influence exerted by individual members in the process of decision making upon decision time, perceived efficiency and perceived equality.
    Subjects were seventy-two university students and twenty-four three-person groups were formed. They made a decision on twelve words by selecting them from a word list in order to use them in a composition which they would subsequently write by group work. Observers judged the number of words decided by each member and this number served as the measure of the amount of influence exerted by each member. The index of equality of influence was defined by the same way as the equality of family income was defined with Lorenz curve in economics.
    The results showed that the greater the equality was, the more decision time was required and the lower the perceived efficiency was. It was also found that the greater the equality was, the larger the variance of decision time was and it suggested that in the case of decision making, in which members exerted influence almost equally, decision time was determined by some other factors in the members' interaction processes.
    As to the perceived equality, there were no differences among each level of equality. But, in the groups whose equality was considerably low, those members who exerted large influence perceived equality to be low and those members who exerted medium influence perceived equality to be high. From this result, it was considered necessary that such variables concerning individual members as perceived equality should be explained by both a set of variables representing the situation of group as a whole and a set of variables representing the situation of individual members.
  • NOBUYA OGAWA, CHIAKI HARA
    1979 年 19 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    In this paper the abnormal behavior induced by long-term competition for food between two rats cohabitating in the same operant chamber is discussed with regard to its application to the animal model of psychopathology and with reference to the Hebb's criteria of neurosis. Two male rats which had learned individually to press a lever and to receive a pellet of food under a fixed ratio schedule were put into an operant chamber with two levers and one feeder.
    The pair of rats, successively exposed to three conditions, showed various behavioral patterns on the basis of the dominance hierarchy as follows: (1) With the competition for food under free feeding condition, only the subordinate rat shwed abnormal behavior, i. e. heterophagia. (2) Under the restricted feeing condition, the subordinate rat's abnormality increased and, concomitantly, circadian rhythms of various activites shifted to feeding time except for aggressive activity. (3) With return to individual housing and free feeding, only the subordinate rat showed this abnormality as the disruption of rhythms for at least one week.
    Since this abnormal behavior corresponds to Hebb's definitions, the abnormal behavior of this model suggests the possibility of its application to experimental neurosis.
  • 磯崎 三喜年
    1979 年 19 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 社会的促進現象にみられる他者存在と個人行動との関わりをより明確にするため, 課題の反応しやすさの程度, 存在する他者の人数およびその存在形態が個人の遂行にどのような影響を与えるかを, 共行為・聴衆両事態において検討し, あわせて両事態での効果の比較を行なった (実験I: 共行為事態, 実験II: 聴衆事態)。
    被験者は大学生144人 (男女各72人)。課題はアルファベットの並びかえ作業であった。
    主な結果は次のとおりである。
    1. 反応しやすい課題は, 共行為・聴衆いずれの事態でも他者存在により, その正反応数が増加し, 特に共行為事態では誤反応数の減少もみられた。反応しにくい課題は, 聴衆事態においてむしろ誤反応数が増加した。
    2. 存在する他者の人数による効果の違いは共行為事態においてはみられず, 聴衆事態において聴衆が1人の場合より聴衆が3人の場合に, 反応しやすい課題での促進効果がより大となる傾向を示した。
    3. 他者の存在形態の違いによる課題遂行量の差は, いずれの事態においてもみられなかった。
    4. 促進のみられた課題の正反応数を試行ごとにみると, その効果が特に前半に集中していることが示された
    以上の結果から共行為効果と聴衆効果について若干の検討が加えられた。
  • 誤まった関連づけの認知
    白井 泰子
    1979 年 19 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
  • 三井 宏隆
    1979 年 19 巻 1 号 p. 71-79
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
  • 本間 道子
    1979 年 19 巻 1 号 p. 81-90
    発行日: 1979/08/27
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
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