本研究は, natural settingであるキャンプ集団において, キャンパーのリーダーシップ行動の変容, および学校生活におけるリーダーシップ行動におよぼすキャンプ経験の効果を検討することを目的としている.
被験者は, 昭和54年夏に実施した4泊5日のキャンプに参加した5, 6年生児童99名 (5年生58名, 6年生41名; 男子42名, 女子57名) で構成されている. キャンプは5, 6年生別々に行なわれ, 両キャンプとも3日目から4日目にかけて, 1泊の野営をともなうサバイバル・ハイクという, 困難でしかも成員相互の協力なしでは達成できない課題を与えた. その中でグループ編成を操作して, リーダーシップ上位者グループ (HIGH Group), 下位者グループ (LOW Group), 中位者グループ (MIDGroup), 混合グループ (MIX Group) という4種の異なるグループをつくり出した.
キャンプおよび学校生活でのリーダーシップ行動を測定するために, キャンパー評定, カウンセラー評定, そして担任教師評定によるリーダーシップ行動評定尺度が用いられ, グループ編成と集団効果との関連を検討するために, ソシオメトリック・テスト, 要求水準測定項目, 満足度評定尺度が用いられた. また, リーダー的成員の個人的特性を明らかにするために, 達成動機検査, Y-G性格検査, そして前述のソシオメトリック・テストおよび要求水準測定項目を使用した.
本研究の結果から次のようなことがらが明らかになった.
1) キャンパーの相互協力を必要とする困難な課題を与えると, キャンパーのリーダーシップ行動は増すが, もとの状況に戻ると, リーダーシップ行動ももとに戻る.
2) キャンプ経験によって, 学校生活におけるリーダーシップ行動の向上が認められ, 特に, 対人行動の向上および諸活動に対する建設的, 積極的参加の向上が顕著である.
3) 集団として最も構造的に安定しているMIXGroupでは, 集団凝集度, 集団業績, 成員満足度といった集団効果が最高であり, HIGH, MID Groupがこれに次ぎ, LOW Groupは最も低い.
4) キャンプ集団におけるリーダー的成員は, そうでない成員に比べて, 達成動機, 要求水準が高く, 人気は比較的高い傾向があり, 性格的には活動性, 外向性に富んでいる.
本研究においては, キャンパーのリーダーシップ行動を測定するために, リーダーシップ行動評定尺度を作成し用いたが, 児童のリーダーシップ行動の測定方法について明確なものがないのが現状であり, 児童集団の特性を考慮した, 児童用リーダーシップ測定項目が今後確立される必要があろう.
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