実験社会心理学研究
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24 巻, 1 号
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  • 混雑状況と情動喚起刺激とによつて引き起こされた生理的喚起の誤り帰属が混雑感知覚と刺激の情動性評定とに及ぼす効果
    岡 隆
    1984 年 24 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    52人の男子高校生が被験者として, 混雑状況のみ, あるいは情動的スライドのみ, あるいはこの両者を経験した。混雑状況と情動的スライドの両者を経験した被験者は, さらに混雑状況と情動的スライドを同時に経験する条件と, 非混雑状況で情動的スライドを見た後に混雑状況を経験する条件との二つに分けられ, この両者によって引き起こされた生理的喚起の入手可能な原因としての, この両者の相対的顕著さが操作された。
    生理的喚起の加法性の原理から, (I) 混雑状況と情動的スライドの両者を経験する場合には, これらのうちいずれか一方のみを経験する場合よりも, 引き起こされた生理的喚起の水準はより高いであろう, と予測された。また, 情動の二要因説から, (II-a) 混雑状況と情動的スライドの両者を経験する場合で, 情動的スライドよりも混雑状況のほうが顕著な時には, 混雑状況のみを経験する場合に比較して, 混雑感知覚の程度はより高く, 情動的スライドのみを経験する場合に比較して, 刺激の情動性評定の程度はより低く, (II-b) 混雑状況よりも情動的スライドのほうが顕著な時には, 混雑状況のみを経験する場合に比較して, 混雑感知覚の程度はより低く, 情動的スライドのみを経験する場合に比較して, 刺激の情動性評定の程度はより高いであろう, と予測された。
    結果は仮説 (I) を支持せず, 生理的喚起の水準にはどの条件間でも有意な差はみとめられなかった。そのため, 生理的喚起の性質と測度の妥当性とが考察された。また, 仮説の (II-a) と (II-b) は支持されなかったが, 混雑状況と情動的スライドの両者を経験する場合には, これらのうちいずれか一方のみを経験する場合に比較して, 混雑感知覚の程度も刺激の情動性評定の程度も有意に低いという結果が得られた。原因探索や原因同定の過程に影響を与える要因としての割引原理を考慮することによって, 情動の二要因説の枠組内でこの結果を解釈する試みがなされた。
  • 類似態度比率と態度項目数の効果
    村田 光二
    1984 年 24 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    形成されている対人魅力と評価的に一貫しないその人の行動は, 外的原因に帰属されることで認知のバランスが保たれる傾向がある。しかし, この傾向は, 魅力形成の程度が大きく確信度が高い場合にみられるだろう。確信度が低い場合には, 行動を内的原因に帰属し, むしろ魅力が変化するであろう。以上の考えを背景に, 本研究では, 態度の類似性を用いて形成された刺激人物に対する魅力が, その人物の好ましくない行動についての原因帰属に及ぼす影響について実験的な検討を行った。
    刺激人物の態度回答として, 類似比率の高・低の要因と項目数の多・少の要因とを組み合わせた4種類が用意された。これらのいずれか一つを情報として与えられた後に, 統制条件の被験者は, 対人魅力の測度を含む対人判断尺度に回答した。帰属 (実験) 条件の被験者は, 刺激人物の起こした交通事故についての記述を読んで, その行動の内的および外的原因帰属を評定した。またその後, 対人判断尺度にも回答した。
    得られた主要な結果は, 以下のとおりであった。
    1. 形成された対人魅力の水準は, 類似態度比率が高いほうが有意に高かったが, 態度項目数の要因の影響はなお, 本論文の“問題”の項で, 両者があたかも“一方がポジティブならば他方がネガティブになる”というような相補的で二値的な判断事象として取り扱ったのは, あくまでも議論を明快にするためであった。“不協和量 (の低減) ”に相当するような“インバランス状態 (の低減) ”概念を導入すれば, 帰属に関して同じ内容で量的な予測が立てられたであろう。認められなかった。
    2. 対人魅力の確信度は態度項目数が多かった場合のほうが大きい, という点に関する証拠は得られなかった。
    3. 実験仮説どおり, 類似態度をもつ人物の好ましくない行動を外的原因に帰属する傾向は, 態度項目数が多い場合のほうが少ない場合と比べて有意に大きいことが認められた。
    4. 非類似態度をもつ人物の好ましくない行動を外的原因に帰属しやすい傾向はなく, 態度項目数の効果も認められなかった。
    5. 事後的分析から, 類似態度をもつ人物の好ましくない行動が外的原因に帰属された場合には対人魅力の水準は高いまま維持され, 内的原因に帰属された場合には低下する傾向が示された。
  • 割引原理・割増原理の検討
    外山 みどり
    1984 年 24 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究では, 他者の行動に対する帰属に関して, 割引原理・割増原理で表現される推論のパターンを検証することを試みた。共通の刺激場面を用い, 情報の与え方を変化させた3つの実験を行なったが, それらの概要と主な結果は以下の通りである。
    1. 実験Iでは, 刺激人物 (行為者) の内的な特徴に関する情報を最小限にとどめ, 行動の起こった状況の外的要因の力と行動の内容のみの情報から帰属を行なわせた。
    外的要因に関する条件には, 行動に対して促進的 (F), 中性的 (N), 抑止的 (I) の3種類を作ったが, 内的要因が原因と考えられる程度は, 外的条件が促進的である時に最も低かった。さらに外的条件が促進的な場合には, 行動に対応した行為者の傾注・属性を推測する程度も最も低かった。つまりデータは, 割引原理からの仮説を強力に支持した。しかし, 外的条件が抑止的である場合と中性的である場合の差は明確でなく, 割増原理に対応する推論パターンは確認されなかった。
    2. 実験IIでは, 行為者の内的な特徴に関する情報・知識をもつ場合を検討した。ここでは, 状況の外的条件に関する情報に加えて, 行為者の性格や行動傾向など, 内的条件に関する情報も操作し, 3×3の要因配置で実験を行なった。
    その結果, 全般に内的, 外的両条件が考慮された上で帰属の判断がなされたことが確認されたが, 特に内的条件に関する情報が著しい効果をもち, 内的条件の強弱が外的要因の評定に影響を与えるという方向で, 割引・割増型推論が生じた。他方, 外的条件の強弱は, 内的要因の評定にあまり大きな影響をおよぼさなかった。
    3. 実験IIIでは, 実験IIの結果を受けて, 内的条件の知識をもとに外的要因の作用を推定するという方向の推論を吟味した。そのため, 実験Iとは逆に, 外的状況の叙述を極めて不明確で曖昧なものとし, 行為者側の内的条件のみを, 促進的 (f), 中性的 (n), 抑止的 (i) の3段階に変化させた。
    その結果, 内的条件がf→n→iとなるにつれ, 状況に存在する外的要因の役割がより大きく評価される傾向が得られた。この傾向は, 外的状況の諸側面に関する推測にも同様に認められた。
    以上, 3つの実験の結果から, (1) 割引・割増原理に対応する推論は, 2つの可能な原因のうち片方のみに関する情報が存在する時に, 最も典型的な形で起こること, (2) そしてその推論は, 外的要因→内的要因という方向に限定されないこと, そしてさらに, (3) 両原因に関する情報が存在する場合でも, 相対的に優勢, 明確な方の情報をもとにした割引・割増型推論が起こり得ること, が明らかになった。
  • 鹿内 啓子
    1984 年 24 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 自分がある課題を遂行して成功または失敗を経験した後に他者の成績情報が与えられた場合, その因果帰属に対して自己の成績およびself-esteemがどのような影響を及ぼすかを検討することである。そして次のような仮説をたてた。自分が失敗した時には, self-esteemの高い者 (高SE群) は高いself-esteemを維持するために相対的に他者を低く評価し, 他者の成功を外的要因に, 失敗を内的要因に帰属するであろう。他方self-esteemの低い者 (低SE群) は失敗によって自己評価を低めるので, 相対的に他者を高く評価し, 他者の成功を内的に, 失敗を外的に帰属するであろう。自分が成功した場合には, それが自己評価に及ぼす影響に関して相反する二つの方向のものが考えられるので, 仮説はたてられなかった。
    被験者は女子大学生であり, 質問紙によるself-esteemの測定の結果, 高SE群と低SE群各30名を選んだ。まず被験者自身にアナグラム課題を4試行遂行させ, 成功条件では全試行で成功し, 失敗条件では全試行で失敗するよう操作した。各試行および全試行全体の成績に対して能力, 努力, 問題の難しさ, 運および調子のそれぞれがどの程度影響していたかを7点評定させて因果帰属を測定した。その後, 同じ課題での他の大学生の成績であると教示して, 4名の他者の成績を知らせ, 自己の場合と同様に因果帰属を求めた。4名のうち2名は全試行で成功し, 他の2名は全試行で失敗している。最後に実験の目的と成功・失敗の操作について説明した。
    主な結果は次のようなものであった。
    1. 自分が失敗した時には, 高SE群よりも低SE群が他者の成功を内的に帰属し, 他者の失敗については逆に高SE群のほうが内的要因により強く帰属した。これは仮説を支持するものであった。
    2. 自分が成功した時には, 内的要因でも外的要因でもself-esteemの影響はみられなかった。
    3. 自他の因果帰属の差異に関しては, 自己よりも他者の成功が, また他者より自己の失敗が能力により強く帰属され, 運へは他者の失敗のほうが強く帰属された。これは, 自己の成績については控え目な帰属を, 他者のそれについては望ましい帰属をする傾向を示すものであり, public esteemによって解釈された。
  • 森永 康子
    1984 年 24 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 承認欲求の喚起される側面によって, 自己の遂行結果についての原因帰属の表明がどのように異なるかを究明した。
    喚起される承認欲求の側面としては, 知的次元と性格的次元をとりあげ, 知的次元で承認欲求がより高く喚起される条件 (知的条件), 性格的次元で承認欲求がより高く喚起される条件 (性格的条件), および承認欲求の喚起度の低い条件 (低条件) を設定した。被験者は42名の女子大学生で, 上述の3条件に14名ずつ割り当てた。まず, 被験者に課題を遂行させ, 偽りのフィードバックを与えることによって失敗を経験させた。次に, 知的条件と性格的条件では, 実験協力者Aに被験者をそれぞれ知的次元, 性格的次元で低く評価させ, その後, 被験者に, 続いて被験者について評価を行う実験協力者Bを対象として帰属表明を行わせた。このような手続きにより, 協力者Bに対する承認欲求を喚起させ, 遂行結果の原因帰属を表明させた。これに対し, 低条件では, 匿名性を保証したうえで原因帰属を表明させた。
    主な結果は次の通りである。
    1. 性格的条件では知的条件よりも, 課題遂行の失敗が能力に高く帰属して表明されていた。
    2. 性格的条件では低条件よりも, 遂行の失敗経験は能力に高く帰属し, 運に低く帰属して表明されていた。
    以上のことから, 承認欲求の喚起される側面によって, 失敗の原因帰属の表明に違いのあることが判明した。
  • 松原 敏浩
    1984 年 24 巻 1 号 p. 55-65
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, リーダーシップ行動の部下のモラールへの影響が, 部下のパーソナリティ, 部下の職務特性, 部下の職位水準によってどのように規定されるかを検討するものである。
    リーダーシップ行動は, PM式リーダーシップ測定尺度によって測定された。モデレーターである部下のパーソナリティ特性は, YG性格検査, 職務特性は質問紙によって測定された。そして部下のモラールも質問紙によって測定された。
    得られた主な結果は, 次の通りであった。
    1. 部下によって認知された上司の目標達成行動 (P行動) と部下のモラール (満足感次元) との関係は, 情緒的に安定した部下の方が, そうでなひものよりもより高い正の相関を示した。
    2. P行動と部下のモラールの凝集性次元との関係は, 社会的活動性に富む部下の方がそうでないものよりもより高い正の相関を示した。
    3. P行動と凝集性次元との関係は, 多様性に富む職務, 協力の必要性のある職務のものの方がそうでないものよりもより高い正の関係を示した。
    4. P行動と部下のモラールとの蘭係は, 部下の職位水準の上昇とともに増加した。
    5. 部下によって認知された上司の集団維持行動 (M行動) とモラールとの関係におよぼすモデレーターとしての部下のパーソナリティ特性の役割は, P行動の場合ほど明確でなかった。
    6. M行動とモラールとの関係は, 多様性に欠ける職務の方が富む職務よりもより高い正の相関を示した。
    7. 部下の成長欲求は, モデレーターの役割が明確でなかった。
    結果は, Houseのパス・ゴール理論, 三隅のPM理論から考察された。
  • ブーメラン効果発生の条件の分析を中心として
    榊 博文
    1984 年 24 巻 1 号 p. 67-82
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 説得的コミュニケーションの送り手と受け手の間の意見の食い違い, 即ち, コミュニケーション・ディスクレパンシーと意見変容の関係を, 多くの諸要因との関連の中で検討したものである。社会判断理論や認知的不協和理論は, ディスクレパンシーが大きい時にブーメラン効果 (唱導方向とは逆方向への意見変化) が生じると説明するが, 本研究においては, 群別の方法や分析の方法の如何にかかわらず, ディスクレパンシーが小さい時にブーメラン効果もしくは少ない意見変容が生じた。また認知的不協和理論の説明とは反対に, ディスクレパンシーと送り手の評価を下げることとはほぼ無関係か, むしろディスクレパンシーが小さい時に送り手の評価を下げ, ディスクレパンシーが大きい時には評価を上げる傾向がみられた。
    これらの事実に対して本稿では, 原岡 (1970) の示唆にもとづき, 〈自己の意見と同一もしくは同様の立場に立つ意見を外部から表明されると, 人は議論の的になっている事柄をもっと別の角度から見ようとする動機を発生させる〉という解釈を試みた。
  • PM式リーダーシップ条件の効果
    佐藤 静一, 釘原 直樹, 三隅 二不二, 重岡 和信
    1984 年 24 巻 1 号 p. 83-91
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 模擬的被災状況におけるリーダーシップ行動が, 避難行動, すなわち脱出成功率, 混雑低減の度合および攻撃, 譲歩等に及ぼす効果について実験的に吟味したものである。特にリーダーシップ行動をPM式リーダーシップ理論の枠組に添ってPM型, 計画P型, 圧力P型およびM型に類型化しその効果性について吟味せんとしたものである。
    被験者は大学生372名で, 同性からなる6人集団が62集団構成された。このうち, 32集団を実験1, 30集団を実験2に配置した。実験1では, 実験開始後から, また実験2では実験開始30秒後からリーダーシップ条件を導入した。リーダーは6名の被験者と1名のサクラ計7名のくじ引きによりサクラが選出されるようにした。リーダー (サクラ) は, 他の6名の被験者に対して, 脱出のための指示, 発言をおこなう。但し, リーダーがおこなう脱出のための発言, 指示, すなわちリーダーシップ行動は, あらかじめPM式リーダーシップ理論に基づき類型化したPM型, 計画P型, 圧力P型そしてM型のいずれかであった。ここで, PM型とは, 計画P型とM型とが結合した複合型である。計画P型とは, 脱出者を明確に指定し (IND), 順序づけ (ORD), 脱出を支持する (SUP) 発言や指示である。具体的には, “右 (あるいは左) から” “順番に1人ずつ”といった発言や指示である。圧力P型は, 脱出を促進, 強制する発言や指示 (FAC) で, 具体的には, “急いで” “早く早く” “時間がないそ”などである。M型は, 情緒安定指示で, 具体的には, “落着いて” “大丈夫”“時間は十分ある”などの発言, 指示である。
    結果は次の通りである。
    1. 脱出成功率は, PM型, 計画P型, M型そして圧力P型の順で低くなる結果が見出された。一方, 混雑度については, 上記の順で高くなる結果が見出された (実験1および実験2)。
    2. 攻撃, 譲歩の反応強度は, PM型, 計画P型, M型そして圧力P型の順で高くなる結果が見出された (実験1および実験2)。
    3. リーダー行動の適切性の認知では, PM型, 計画P型そしてM型の順で適切とする者の割合が低くなる結果が見出された。また, 時間経過 (ピッチ音) の認知では, 上記の順で気になったとする者の割合が高くなる結果を示した (実験2)。
  • 諸井 克英
    1984 年 24 巻 1 号 p. 93-103
    発行日: 1984/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    The main purpose of this study was to examine the relationships between loneliness and attitudes toward pets. The UCLA Loneliness Scale (Russell et al., 1980), the Pet Attitude Scale (Templer et al., 1981), and the College Life Questionnaire were administered to the undergraduate students (N=301) at two universities.
    The following results were obtained:
    1) Scores on the UCLA Loneliness Scale (α=. 897) showed significant correlations with various aspects of their college lives.
    2) The Pet Attitude Scale had high internal consistency (α=. 919). Varimax rotation of the factor analysis (principal factor solution) produced three factors labeled “affection, ” “interaction, ” and “pet-in-the-home, ” respectively.
    3) Loneliness scores were negatively correlated with “affection, ” and “pet-in-the-home” factor scores, while they were positively correlated with “interaction” factor scores.
  • 1984 年 24 巻 1 号 p. 108a
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 24 巻 1 号 p. 108b
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 24 巻 1 号 p. 108c
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
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