実験社会心理学研究
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26 巻, 2 号
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  • 提供行動の場合
    竹村 和久, 高木 修
    1987 年 26 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, (1) 意思決定過程における内的状態のパターンを検討すること, (2) 意思決定過程における情報探索ストラテジーと内的状態との関連性を検討することを目的とした。
    意思決定過程における情報探索ストラテジーを直接追跡するために, 情報モニタリング法が用いられた。被験者は, 提供が要請される状況において生起すると想定される, 実行可能な行動選択肢群の内から, あるひとつの行動を選択するまでの過程をシミュレートし, 意思決定後, 決定過程や決定時における内的状態に関する質問に回答した。
    得られた主な結果は, 次のとおりである。
    1. 内的状態に関する項目を因子分析したところ, 「コンフリクト」, 「リスク」, 「確信」に対応する3つの因子が抽出された。
    2. 決定段階毎に設定された情報探索ストラテジーの指標と内的状態に関する項目との関連構造を探索する正準相関分析を行ったところ, 「単純化」と「最適化」の現象に対応する2対の正準変量が抽出された。「単純化」に関する正準変量を検討した結果, 特定の行動属性に焦点を絞って, 検討する行動選択肢を絞って行くようなストラテジーは, 情報過負荷によるコンフリクト状態を低減することが示唆された。また, 「最適化」に関する正準変量を検討した結果, 特定の行動選択肢をそれぞれ綿密に検討するようなストラテジーは, 決定の確信度を高めることが示唆された。さらに, 正準相関分析の結果は, 決定段階の移行に伴って, ストラテジーと内的状態との関連構造が変異することを示したが, このことは, 意思決定の進行に応じてストラテジーの心理的機能が変化することを示唆している。
  • 技能水準, 課題難度, 遂行状況の関係について
    松本 芳之
    1987 年 26 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 課題遂行に及ぼす観察者効果と技能水準との関係について, フィールド実験を通じて検討することを目的としたものである。実験場面は次のような特徴を持つ。技能水準の基盤となる経験の違いは長期に及ぶ。課題は被験者が日頃行っている内容であり, また, 評価や比較が前提とされるものである。被験者は実験参加への自覚を持たず, 日常の活動の中で課題に携わる。
    被験者にはゴルフ・サークルに属する大学生30名を用い, 各自のハンディキャップ値を基に技能水準に応じて, 上級者, 中級者, 初級者の3群に分けた。課題はアプローチ・ショットを用い, その距離を50mと70mに設定することで成功可能性を操作した。被験者は定められた練習の後, 2種類の課題を各10試行, それぞれ単独, 観察者条件の下で遂行した。観察者は課題遂行者以外の被験者によって構成された。
    結果は次のことを示している。観察者の存在は全般に遂行結果を低下させる。この観察者効果は主に中級者と初級者によるものであり, 上級者の場合変化がみられない。ただし, こうした相違は傾向を示すに止まる。技能水準と成績は対応するが, 中級者と初級者には十分な差は存在しない。課題難度の高い70m課題の方が成功数は少なく, この傾向には技能水準や遂行状況による違いがない。これらの結果から次のような示唆が得られた。ゴルフのような競技が複雑な運動行動によって構成されていると仮定するならば, 観察者による妨害効果は従来の知見と合致するものである。それ故, 促進的な効果をもたらす可能性は残されているものの, むしろ, 複雑な課題の場合, 技能水準の上昇が及ぼす影響は妨害効果の減少というかたちを取るものと考えられる。
  • 山田 淑子
    1987 年 26 巻 2 号 p. 125-135
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, リーダーシップP (目標達成), M (集団維持) 尺度のPに含まれている2つの因子, 計画Pと圧力Pを独立の要因として, M・計画P・圧力Pの3つのリーダーシップが部下の職務満足 (モラール) に与える影響を検討したものである。企業体従業員35964名の調査結果が分析に使用された。
    得られた主な結果は, 次のとおりである。
    1. 3要因間の交互作用としては, Mと圧力P, 計画Pと圧力Pの間に高い相互効果が生ずる。
    2. 圧力Pは, 単独ではモラールを引き下げるマイナスの効果性をもつがMと計画Pが併存する状況においてはプラスの効果性に転ずる。
    3. 計画Pが高いレベルにおいて, 低いレベルよりもM×圧力Pの交互効果が顕著に見出されることから, 計画PはMと圧力Pの交互作用効果をさらに促進させることが見出された。
    4. 3要因相互の相関を検討したところ, Mと圧力Pの相関は, 計画Pのレベルによって変化することが示された。計画Pのレベルが高い時のMと圧力Pの相関は無相関となるが, 計画Pのレベルが低い場合のMと圧力Pの相関はマイナスの相関となる。この結果は, 計画P行動, もしくは計画P行動を規定する状況要因によって部下のリーダーシップ認知が変化することを示唆すると考察された。また, 計画PのレベルにMと圧力Pの交互作用が依存することを説明するものと考察された。
  • 岩井 紀子
    1987 年 26 巻 2 号 p. 137-149
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, リーダーシップP行動およびM行動と部下集団成員の「モラール」との因果関係を明らかにすることである。
    銀行組織を対象として, 約15ヶ月の間隔をおいて連続5回, 三隅ら (1970) の開発したリーダーシップPMサーペイを実施した。各行員は, 上司のリーダーシップP行動 (目標達成機能) およびリーダーシップM行動 (集団維持機能) ならびに職場集団の「モラール」を評定した。前後2回の調査のあいだに監督者が交替した職場集団が287, 交替しなかった集団が159であり, 集団の規模は監督者を含めて平均7名であった。
    主要な結果は以下のとおりであった。
    監督者が交替した集団では, 前任者のリーダーシップ得点と後任者の得点のあいだには有意な相関が認められない (P得点r=. 07; M得点r=. 11)。前年度の「モラール」得点と次年度の「モラール」得点との相関も低い (. 23)。前任者と後任者のあいだでのリーダーシップ得点の変化と「モラール」得点の変化とのあいだには高い相関が認められる (P. 50; M. 67)。
    一方, 監督者が交替していない集団では, 前年度のリーダーシップ得点と次年度の得点のあいだの相関は高く (P. 64; M. 57), 「モラール」得点についても同様である (. 43)。これらの結果は, 監督者のリーダーシップ行動の変化が職場集団の「モラール」に変化をもたらしていることを示唆している。
    監督者が交替した集団についてさらに対数線型モデルを用いて, 前年度の「モラール」, 次年度の「モラール」および後任の監督者のリーダーシップPM行動類型のあいだの関連を分析した。その結果, 後任者のリーダーシップ行動類型と次年度の「モラール」との交互効果の他に, 前年度の「モラール」と後任者のリーダーシップ類型とのあいだにも交互効果が認められた。しかしながら後者の効果は前者よりも弱い。また, P型の監督者は「モラール」の高い集団で出現しやすいが, そのリーダーシップ行動は「モラール」を低める傾向があり, 逆に, M型の監督者は「モラール」の低い集団で出現しやすいが, そのリーダーシップ行動は「モラール」を高める傾向があった。一方, PM型の監督者は部下集団における前年度の「モラール」の影響とは比較的無関係に出現するが, そのリーダーシップ行動は「モラール」を高める傾向が強く, pm型の監督者は「モラール」の低い集団で出現しやすく, そのリーダーシップ行動は「モラール」を低める傾向が強いことが見出された。
    本研究の結果は, 部下集団の「モラール」の状態がリーダーシップ行動様式を規定する側面もあるが, 監督者のリーダーシップ行動条件が部下集団の「モラール」を規定する力の方が強いことを示しており, リーダーシップPM理論における仮定を支持している。
  • 諸井 克英
    1987 年 26 巻 2 号 p. 151-161
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 大学生における孤独感と自己意識傾向の諸側面との関係について検討し, 高校生の結果 (諸井, 1985) との比較によって, 青年期後期における孤独感の様相を明らかにすることを主目的とした。また, S-M傾向を測定する2種の測定を併用し, それぞれの孤独感との関連も含めた妥当性を検討した。被験者は男女大学生396名であった。UCLA孤独感尺度とともに, 自己意識傾向に関する測度として, Rosenberg (1979) の自尊心尺度, Fenigstein et al. (1975) の自己意識尺度, Snyder (1974) のS-M尺度, Lennox & Wolfe (1984) の改訂S-M尺度が用いられた。
    主要な結果は以下の通りであった。
    1) 男子の孤独感は, 女子よりも有意に高かった。
    2) 孤独感は, 男女ともに自尊心およびS-M傾向との間に有意な負の相関, 社会的不安との間に正の相関があり, さらに, 男子では私的自己意識との間に正の相関が認められた。これらの傾向は高校生と同じであった。
    3) 重回帰分析や判別分析によると, 男子では自尊心, 社会的不安, 私的および公的自己意識, さらにS-M傾向が, 女子では社会的不安および自尊心が, それぞれ有意な孤独感の規定因であった。
    4) 2つのS-M尺度については, Lennox & Wolfe (1984) の改訂版のほうが尺度構成上の妥当性があるといえるが, 孤独感との関係では両尺度ともに興味ある知見をもたらした。
  • 今井 芳昭
    1987 年 26 巻 2 号 p. 163-173
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    日常の対人関係において, 一般的レベルでの被影響の認知および影響者に対する満足度が, 6種類の社会的勢力 (参照・専門・魅力・正当・賞・罰) とどのように関連しているかを検討した。
    大学生229人 (31人の会社員・公務員・自由業, 19人の主婦を含む) に, ふだん頻繁に接触している人の中から自分にとって最も影響力のある人 (影響者I), 2番目に影響力のある人 (影響者II) を選択させ, 社会的勢力・被影響の認知・満足度に関連する31項目 (7件法) に, それぞれの人について評定させた。
    各尺度の信頼性を因子分析・α係数で検討した後, 林の数量化I類・重回帰分析でデータ解析を行った。主要な結果は次の通りである。
    1. 被影響の認知と関連する社会的勢力は, 全体的に見ると, 参照勢力・罰勢力および正当勢力 (影響者I) ・専門勢力 (影響者II) であった。
    2. 影響者に対する満足度と関連する社会的勢力は, 主に魅力勢力であった。
    3. 1・2で述べた点について, 重回帰分析を用いて影響者ごと (父・母・夫・友人・職場の上司・クラブの先輩・クラブの同輩) に結果を出したが, 影響者I・影響者IIを通じて一貫した傾向をもつ影響者間の差異は見出されなかった。
    4. 影響者の種類を水準として社会的勢力ごとに一要因の分散分析を行ったところ, 参照勢力は影響者間に有意差のないことが見出された。また, 被影響の認知が相対的に大きいのは, 父・母・夫であり, 満足度が大きいのは, 友人・クラブの同輩であった。
  • 森永 康子, 松村 明子
    1987 年 26 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study was to investigate the generalization of the mere exposure effect in person perception. When positive affect was produced by repeated presentations of a photograph of the face of a stimulus person, it generalized about a similar person. Change in the subject's perception of the stimulus persor's personality on social desirability dimension also generalized in regard to a similar person, when the mere exposure effect was obtained. Regression analyses were performed to examine the relationship between the mere exposure effect and the change in personality perception. The results indicated that the change in personality perception was mediated by the mere exposure effect.
  • 和田 実
    1987 年 26 巻 2 号 p. 181-191
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
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