実験社会心理学研究
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27 巻, 1 号
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  • 林 春男
    1987 年 27 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 太平洋戦争下の米国本土で起こった日系人の強制収容が日系二世における“Japanese American”というエスニック・アイデンティティの形成の契機であると考え, この社会的カテゴリーの成立と内在化の過程を中心に検討した。UCLA収蔵のJARPアーカイブに含まれる, アマチ収容所の所内新聞“Granada Pioneer”の英語欄の第1面トップ記事 (283件), 論説記事 (81件), 投書 (108件) を分析対象として, (1) 日系人を指示する社会的カテゴリーの使用, (2) “Japanese American”の発言者の同定, (3) 記事の内容分析を行った。その結果, 以下のような点が明らかになった。
    (1) “Japanese American”という社会的カテゴリーは, 1943年1月にアメリカ陸軍が日系二世の志願兵の募集を再開するのを契機として使用され始め, 1944年1月の日系二世に対する徴兵復活以降, 1945年1月に日系人の西海岸地域立入禁止令が解除されるまでの期間にもっとも頻繁に使用されていた。
    (2) “Japanese American”は最初連邦政府関係諸機関が日系二世を指示する他者規定の社会的カテゴリーとして提唱され, 日系二世自身がこの概念によって自己規定するまで, 1年7カ月を要していた。
    (3) “Japanese American”は日系人同士の関係や, 日常生活の場である収容所内の関係では顕在化せず, 連邦政府の動向やカリフォルニア州の世論動向との関係で, 顕在化した社会的カテゴリーであった。
  • 竹村 和久, 高木 修
    1987 年 27 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, 援助行動と非援助行動における原因帰属の次元を検討した。本研究の主目的は, (1) 高木 (1983, 1986) の援助動機型, 松本・高木 (1981) や高木 (1987) の非援助動機型と原因帰属次元との対応性を明らかにすること, (2) 援助行動あるいは非援助行動における原因帰属次元間の相関関係を検討すること, (3) 援助行動と非援助行動との間における原因帰属次元の差異と関連性を検討することであった。被験者は, 高木 (1983) の援助動機項目と松本・高木 (1981) の非援助動機項目を, 4種類の原因帰属次元に沿って評定した。本研究で用いた原因帰属の次元は, Weiner (1979) の提唱した, 統制の所在, 安定性, 統制可能性の次元とAbramson et al. (1979) の提唱した一貫性の次元であった。
    高木 (1983, 1986) の援助動機型, 松本・高木 (1981) や高木 (1987) の非援助動機型と原因帰属次元との対応性を明らかにするために, 各次元において各動機型得点を求めた。各次元内における動機型得点間の差異を検討したところ, 援助行動においても非援助行動においても各次元内の動機型得点間に有意差が認められた。これらの結果によって, 6種類の援助動機型 (高木, 1983, 1986) と5種類の非援助動機型 (松本・高木, 1981; 高木, 1987) を原因帰属次元より特徴づけた。
    つぎに, 援助行動および非援助行動における原因帰属次元間の相関関係を検討したところ, 援助行動においても非援助行動においても, 安定性の次元と一貫性の次元との間にのみ有意な正の相関が認められた。この結果は, Weiner (1979) の提唱した3次元が, 援助行動の場合も非援助行動の場合も, 互いに直交しているが, 安定性の次元とAbramson et al. (1978) の提唱した一貫性の次元とが'援助行動の場合も非援助行動の場合も, 経験的レベルでは直交していないことを示した。
    最後に, 援助行動と非援助行動との間における知覚された原因帰属次元の差異と関連性を検討した。まず, 本研究の結果は, 統制可能性の次元を除いて, 援助行動の場合と非援助行動の場合とで次元の重みが異なることを示した。すなわち, 非援助行動の場合が援助行動の場合より有意に内的・安定的・一貫的な方向に帰属されやすいことが明らかになった。つぎに, 両行動の原因帰属次元間の関連性を検討したところ, 両行動間の対応する次元の相関は, 統制の所在の次元, 安定性の次元, 一貫性の次元において有意であったが'統制可能性の次元は有意でなかった。統制可能性の次元間の相関が有意でなかったことは, 援助行動における意図の推測のパターンと非援助行動における意図の推測のパターンとが独立していることを示唆した。また, 援助行動と非援助行動に関する正準相関分析や冗長性の分析の結果は, 援助行動における原因帰属のパターンと非援助行動における原因帰属のパターンが, 1次独立な関係にあることを示した。
  • 高田 利武
    1987 年 27 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    Three experiments based on Schwartz and Smith (1976) 's research were made, trying to explore the cultural differences of the process of self-evaluation. According to their findings, the greater the difference of performances between self and other, and/or the the smaller the variance in the other's performance, the higher is certainty about one's abillty level, regardless whether one is superior to the other or not. Experiment I failed to duplicate Schwartz & Smith's findings and showed strong self-deprecative tendencies in self-evaluation, however. Namely, the cartainty of self-evaluation was high when one is inferior to the other, regardless of the performance differences and the variance in other's performance. Experiment II also did not support Schwartz & Smith's hypothesis derived from the analogy with a t test for the difference of two means, in spite of the slightest situational implications for the srategic deprecating self-presentation. In experiment III, where subjects are to judge two others' ability level, the parametric metaphor hypothesis was supported. Implications of these findings for the strategic self-presentation and/or the self-evaluation processes through social comparison in Japanese culture were discussed.
  • 古屋 健
    1987 年 27 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究では個人の中でどのような特性が自己図式に統合されやすいかを検討する目的で, EysencyのE特性次元とN特性次元を対象に, MPIでの反応とその特性に関する自己図式の有無の関係について検討した。
    実験Iでは, E特性次元及びN特性次元でのMPIの得点によって被験者を群分けし, それぞれの特性の特徴を示した形容語の自己判断課題での成績を比較した。その結果, 反応内容はMPIの得点水準に対応した一貫性を示していたが, 判断の処理効率に及ぼす自己図式の効果について特性によって次のような違いが見られた。
    1. E得点が高い被験者群ではE特性の自己図式の効果が認められた。しかし, E得点の分布が偏っていたために, E得点の低い被験者群でI特性が自己図式に統合されているかどうかは確認できなかった。
    2. N得点水準はN形容語及び非N形容語判断の効率に影響を及ぼさず, N特性, 非N特性とも自己図式に統合されにくいことが示された。
    実験IIではE形容語・I形容語の自己判断について日常的な形容語を利用して再検討すると共に, 他者判断についても検討を加えた。結果は次の通りである。
    1. 自己判断においては, E形容語及びI形容語判断ともに自己図式の効果が認められたが, I特性は相対的にE特性より自己図式が形成されにくいことが示唆された。
    2. 他者判断の場合, I特性よりE特性判断で判断が容易かつ速やかになされることが明らかにされた。以上の結果は, 特性の自己推論過程との関連で考察された。
  • 吉村 英
    1987 年 27 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 印象を方向づけた情報が, 後にその人物との関連性を否定されるという状況において, 最初の情報の望ましさと, 再判断時に利用できる情報の有無, 及び情報を積極的に解釈するという行為の有無が, 再判断にどのような影響を及ぼすかについて, 検討を行なった。
    本研究では次のようなパラダイムを用いた。(1) 先ず意味のはっきりしている情報 (positive又はnegative) とあいまいな情報から印象を形成する。(2) 次に, 意味のはっきりしている情報が, ターゲットと無関係であることが知らされる。(3) 最後に, あいまいな情報だけで, 再びターゲットに対する判断を行なう。
    実験Iでは, あいまいな情報だけにもとづいて判断する場合でも, 初めにpositiveな情報を与えられたグループの方が, negativeな情報を与えられたグループより, ターゲットをよりpositiveに判断するという結果が得られた。又, 再判断を行なう場合に, あいまいな情報を与えられず記憶にたよる条件では, 与えられる条件よりも, 印象が変化しにくいという結果も得られた。
    実験IIでは, 実験Iで得られた結果を更に詳しく検討するために, あいまいな情報に対する解釈を行なう条件と, 行なわない条件が比較された。初めにpositiveな情報を与えられたグループの方が, negativeな情報を与えられたグループより, ターゲットをよりpositiveに判断するという傾向が, 解釈を行なうことにより促進されるという結果が得られた。又, あいまいな情報を一旦ある方向で解釈すると, 後からそれ以外の解釈を行なうことが困難であるということを示す結果も得られた。
  • 水田 恵三
    1987 年 27 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 客体的自覚と自己評価の関係について, 以下の2つの仮説を立て, 検証することを目的とした。この場合の自己評価は, 理想的自己と現実的自己の差を指している。
    仮説I自己意識が高い人は, 低い人に比べて, 理想的自己と現実的自己の差 (D得点) が大きい。
    仮説II客体的自覚の状態にある人は, 理想的自己と現実的自己の差が大きくなる。
    仮説Iに関しては, Fenigstein, et al (1975) による自己意識尺度と, Martire (1956) によるI-Rテスト (Ideal-Real Self Discrepancy Test) における理想的自己と現実的自己の差尺度を用い, 自己意識の高低とD得点の差の大小を比較した (調査対象者607名, 全員男子大学生)。その結果, 自己意識の高い人と低い人の間で, D得点に有意差は見出せなかった。しかし, 自己に関する2項目のD得点の合計と自己意識の間には有意な相関が認められた。
    仮説IIに関しては, 被験者を客体的自覚の状態に導く手段として, 鏡とビデオ (実験1, 被験者は男子大学生20名) と自分の声を聞かせる (実験2, 被験者は男子大学生20名) を用いた。実験2において, D得点が有意に上昇するという結果が示された。
  • 宮本 正一
    1987 年 27 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1. 本研究は遅延選択反応課題の作業遂行過程において, 観察者の存在が被験者の自己呈示行動にいかなる影響を及ぼすかを検討しようとするものである。
    2. 大学生67名が, 前半・後半とも一人で課題を遂行する単独群と, 後半だけは一人の観察者が存在する条件下で課題を行なう被観察群とに分けられた。
    3. 課題は漢字1文字と数字1文字との対を4組記憶し, ある遅延時間後に, 呈示された漢字に対する数字を答えるという, 遅延選択反応課題である。選択反応後, 被験者は自分の反応に対する自信度を表明し, さらに反応の正誤をCRT上に表示するかどうかの選択をせまられた。
    4. その結果, 観察者の存在は正反応数などには影響を与えなかったが, 自信度の回答時間を長くさせた。また公的自意識傾向を低下させた。
    5. これらの結果は社会的促進の動因理論と情報処理自己呈示モデルから考察され, 公的自意識得点の低下は積極的自己呈示の技巧から解釈された。
  • 斎藤 友里子, 佐々木 薫
    1987 年 27 巻 1 号 p. 79-87
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    公正原理の採択に影響を及ぼす要因として (1) 分配される資源量, (2) 集団の志向, (3) 被分配者のインプット・必要度の分布及び必要発生の責任帰属, (4) 分配者の一般的公正観を取り上げ, 仮想場面を用いて検討した。なお, (2) に関してはDeutsch (1975) の仮説を採用し, 連帯性志向・経済志向・世話志向集団ではそれぞれ平等・衡平・必要の各原理が優勢となるであろうと予測した。Deutsch仮説に加えて, 複数志向の並存状況についても検討を行った。(1) ~ (4) の要因を操作することにより15通りの仮想場面を構成し, 大学生111名に資源分配の仕方・一般的公正観などを回答させた。結果の大要は以下のとおり。(1) 資源量の増加にともない必要原理の採択が増えるという予測は支持されなかったが, 平等原理採択の増加と衡平原理採択の減少とが見いだされた。(2) 経済志向・世話志向集団ではDeutsch仮説が支持されたが, 連帯性志向集団では衡平原理が優勢となり仮説は支持されなかった。また, 2種の志向の並存状況では, 予想どおり, 並存する志向によって誘発される2原理が多く採択される傾向がみられた。(3) 分配者は必要度に関して, 予測どおり, その大きさのみではなく正当性 (必要発生の責任帰属の方向) をも考慮していた。(4) 分配者の一般的公正観は個々の分配場面において予想されたほど大きな影響を持たなかった。
  • 渕上 克義
    1987 年 27 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study was to investigate how subordinates evaluate powerholders who used much and severe power in terms of coercive and legitimate power. Subjects, thirty-two female undergraduates, who played subordinate role were asked to engage in doing the Sociograms as a working task. While performing the task, half of them were supervised by the power holders who exercised much severe power (High Power Condition). Half of them were supervised by the powerholders who exercised less power (Low Power Condition).
    Results showed, as predicted, that the severity of power (coercive, legitimate) used by powerholders had significant impact on subordinates' evaluation to powerholders. Compared to the low power condition, subordinates in the high power condition showed less familiarity to powerholders both in the first half and the second half, and began to claim longer social distance to them in the second half.
  • 三井 宏隆
    1987 年 27 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 1987/08/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 27 巻 1 号 p. 110a
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 27 巻 1 号 p. 110b
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
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