本研究では, 環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果を検討した。分析のためのパラダイムとして, 期待理論の一つである組織論的期待理論 (坂下, 1985) と, Schulerモデル (1980) を選択した。さらに, それらをもとに環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果を表す新しい期待モデルを構築し, その妥当性の検証も行った。
環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果について, 仮説4をたてた。仮説4を導くために役割知覚を使って前提というべき仮説1, 2, 3をたてた。以下に示すこれらの仮説を検証するために, 調査を行った。
仮説1環境不確実性が高くなるほど, 役割知覚は減少するであろう。
仮説2環境不確実性は, 役割知覚を媒介して職務満足感を減少させるであろう。
仮説3意思決定過程への参加は役割知覚を増大させるであろう。
仮説4環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果は次のようなものであろう。
(1) 環境不確実性の大きい場合も小さい場合も, 意思決定過程へ参加することは職務満足感を増大させるであろう。
(意思決定過程への参加は職務満足感に対して正の主効果を持つであろう。)
(2) 環境不確実性が大きい場合に意思決定過程へ参加するよりも, 環境不確実性が小さい場合に意思決定過程へ参加するほうが, 職務満足感は大きいであろう。
(環境不確実性は職務満足感に対して負の主効果を持つであろう。) (3) 環境不確実性が大きくなるほど, 意思決定過程への参加が職務満足感を高める効果はより大きくなるであろう。
(意思決定過程への参加と環境不確実性は職務満足感に対して正の交互作用効果を持つであろう。)
調査の結果, 四つの仮説はほぼ支持された。
新モデルについては, 環境不確実性が役割知覚, (E→P) 期待, (P→0) 期待を媒介して職務満足感を増すという新しいルートについて証明された。
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