実験社会心理学研究
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47 巻 , 2 号
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原著論文
  • 三島 浩路
    2008 年 47 巻 2 号 p. 91-104
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,親しい友人から小学校高学年の頃に受けた「いじめ」が,その後の学校適応や友人関係などに与える影響を検討することを目的にしている。 高校生約2,000名を対象に,学校適応・友人関係,及び,親しい友人から小学校高学年の頃に受けた「いじめ」体験・小学校高学年当時の友人関係などに関する調査を行った。 その結果,親しい友人から小学校高学年の頃に受けた「いじめ」体験は,男子に比べて女子に多いことが示唆された。また,親しい友人からの「いじめ」を小学校高学年の頃に体験しなかった生徒に比べ,そうした「いじめ」を体験した生徒は,高校生になってからも学校不適応感をより強くもち,友人に対しても不安・懸念が強いことなどが示唆された。特に女子に関しては,中学生の頃,進学する高校などを考える進路選択の相談相手などにも,親しい友人から小学校高学年で受けた「いじめ」が関連することが示唆された。
  • 角野 充奈, 浦 光博
    2008 年 47 巻 2 号 p. 105-117
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    人々には,他者の言動に対応した属性を推論する傾向があり(対応推論),その傾向は,他者の言動が社会的に拘束されていると知っていても生じることが明らかにされている(対応バイアス)。対応バイアスは,容易には消失しないことから,非常に強固な現象であると捉えられているが,それゆえに,対応バイアスやその基礎となる対応推論を促進・抑制させる要因について検討した研究も存在する。本研究では,日本語における一人称代名詞「私」が明示,もしくは,省略された文章が,対応推論に及ぼす効果について,2つの研究で検討を行なった。研究1では,Jones & Harris(1967)の態度帰属の実験方法を踏襲し,書き手が立場を選択できない状況で書いた,日本語の一人称代名詞が明示された文章を読んだ場合に,省略された文章を読んだ場合よりも,対応推論が促進されることが示唆された。研究2では,日本語の一人称代名詞の有無に加え,書き手の真の態度を正確に判断するよう実験参加者に教示するか否かを状況操作して検討を行なった。その結果,正確な判断をするよう教示されずに一人称代名詞のある文章を読んだ場合に,最も対応推論が促進されることが示唆された。文化的背景に基づく要因と対応バイアスや対応推論との関連性,および,今後の研究の課題について考察した。
  • 吉田 琢哉, 高井 次郎
    2008 年 47 巻 2 号 p. 118-133
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    人はさまざまな状況の中で多様な自己を認知しており,この自己認知の多面性についてはこれまでさまざまな観点から検討が加えられてきた。しかし,そもそも状況の持つどのような要因によって自己認知が変容するのかについては,充分な実証研究がなされていない。さらに,この自己認知の多面性と精神的健康との関連については,自己概念の分化研究により一貫して負の関連が見られているが,自己の表象が分化していることが必ずしも精神的健康と負の関連を持つとは考えにくい。そこで本研究では,他者からの期待という視点を取り入れ,他者から期待される人物像が異なる状況間では,自己認知は期待に沿う方向に変容するのか,また,このような方向での自己認知の変容は状況特定的な自己評価ならびに精神的健康とどのような関連をもつのか,について検討した。その結果,他者からの期待は自己認知の変容を促す規定因の一つであることが示された。また精神的健康との間には関連は見られなかったものの,状況特定的な自己評価に対しては,状況ごとに期待されている方向への自己認知の変容が正の影響を及ぼしていた。またここでの自己認知の変容や期待認知の変容は,セルフ・モニタリングのうち,他者行動への感受性により規定されるものであった。これらの結果にもとづき,さらなる状況精査の必要性や,セルフ・モニタリングの位置づけなどが議論された。
  • 遠藤 由美
    2008 年 47 巻 2 号 p. 134-145
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    関係者に対し共通した効果をもたらすような状況を共有状況と呼ぶ。人は時に,そのような共有状況が他者よりも自分に対してより強く影響すると判断する。本研究では,このような判断バイアスが自己中心性に由来するものか,もしそうであるなら,それは比較判断過程においてどのように作用するかを検討した。研究1では,大学生を対象とした試験に関する共有状況についての実験において,直接法による自己の相対順位判断で判断バイアスが認められ,他者にとっての有利・不利よりも自分への影響に注目する傾向がみられた。研究2においては,自己・他者への影響の絶対判断ではどちらも同程度とみなし均衡していたが,直接相対判断では自分により大きく影響するという判断バイアスが認められた。また,自己と他者に対して各状況の影響があると判断した後に直接法により相対順位への影響を判断する場合は,バイアスの大きさは縮小するが,なおも有意な効果が認められた。このような結果に対して,共有状況についての社会的比較判断をおこなう際に,自己中心性がはたしている役割の観点から考察が加えられた。
  • 八ッ塚 一郎
    2008 年 47 巻 2 号 p. 146-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    阪神・淡路大震災(1995)を契機として発生し分離・変容を遂げた,被災地におけるひとつのボランティア活動の系譜を報告した。さらに,社会的表象論を援用してこの事例を検討し,震災を契機とする社会変動の構図と,それに対してボランティア実践が持つ意義とを考察した。①阪神大震災地元NGO救援連絡会議,②震災・活動記録室,③震災しみん情報室,④震災・まちのアーカイブ,⑤市民活動センター神戸,という一連の団体は,被災地における情報の交換や伝達,記録資料の保存など,記録に関わるボランティアとしてその活動を展開してきた。被災者の支援と被災体験の継承を企図して開始された記録活動は,復興に伴う被災地域の変化のなかで一時その目的を喪失し停滞に陥った。その後,団体の分裂と目的の特化により,活力を回復し現在に至っている。震災復興という状況における,記録活動,および,その変遷の意味を検討した。あわせて,社会変動へとつながる実践活動のあり方についても考察を行った。
資料論文
  • 脇本 竜太郎
    2008 年 47 巻 2 号 p. 160-168
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    自尊心の高低と援助要請に関しては,正の関係を想定する脆弱性仮説と負の関係を想定する認知的一貫性仮説・自尊心脅威モデルという対立する仮説が提案され,双方を支持する知見が蓄積されている。本研究では,そのような知見を整理する1つの視点として自尊心の不安定性を取り上げ,自尊心の高低と不安定性が青年の被援助志向性および援助要請に及ぼす影響について,対人ストレスイベントの頻度・日間変動を統制した上で検討した。援助要請についてはさらに,家族・非家族という対象ごとの検討も行った。 48名の大学生・大学院生が1週間の日誌法による調査に回答した。階層的重回帰分析の結果,自尊心の高低と被援助志向性・援助要請の関係は,自尊心の不安定性により調節されていた。具体的には,自尊心が不安定である場合は高さと被援助志向性,援助要請の回数は負の関係を,特に自尊心が安定している場合は正の関係を持つことが示された。また,対象別の援助要請の分析では,上記のような関係が非家族への援助要請数でのみ認められた。自尊心の高低と同時に不安定性を検討することの意義・有用性および今後の研究に対する示唆について議論した。
  • 堀田 結孝, 山岸 俊男
    2008 年 47 巻 2 号 p. 169-177
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    最後通告ゲームにおいて,相手の責任や意図とは無関係に生じる不公正分配の拒否が,不公正結果に対する嫌悪によって生じる行動であるかを検討するために,137名を対象とした最後通告ゲームと独裁者ゲームを実施した。参加者は,最後通告ゲームで受け手の役割に割り当てられ,不公正分配の提案を受け入れるか拒否するかを決定した。最後通告ゲームでは,提案者が意図的に不公正分配を行う“意図あり条件”と,提案者の意図とは無関係に不公正分配が生じる“意図なし条件”の2つの条件が個人間要因として操作された。更に,参加者は最後通告ゲーム終了後,独裁者ゲームに分配者として参加し,別の相手へ分配する金額を決定した。実験の結果,意図なし条件でも拒否者が観測され,また意図なし条件での拒否者は受け入れ者よりも,独裁者ゲームで公正分配を行う傾向にあった。実験結果は,相手の意図とは無関係に生じた不公正分配の拒否が,純粋に公正結果を追求する動機に基づく行動である可能性を示唆している。
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