実験社会心理学研究
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49 巻 , 1 号
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原著論文
  • 相馬 敏彦, 浦 光博
    2009 年 49 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,親密な関係における特別観が関係の相手に対する行動にどのような影響を及ぼすのかを検討した。大学生474名を対象とする調査研究を行った。親密な関係での特別観は関係内での協調的な志向性を高め,他方非協調的な志向性を抑制することが示された。さらに,特別観が協調的・非協調的志向性に及ぼす影響は,相互依存諸変数(代替肢の質,満足度,投資量,コミットメント)が志向性に及ぼす影響と独立したものであることも示された。これらの結果より,親密な関係に対して強い特別観をもつ者は非協調的な行動がとれないことが示唆された。親密な関係における特別観がその当事者に不適応を生じさせる可能性について議論した。
  • 宮本 匠, 渥美 公秀
    2009 年 49 巻 1 号 p. 17-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    災害復興には,「目標」の共有が大切といわれる(室崎,2007)。しかし,実際に地域において,それらはどのように生まれ,存在し,共有されていくのだろうか。災害復興における「目標」は,人々がどのように災害を経験するのかということと深く結びついている。本研究は,2004年10月23日に発生した新潟県中越地震における川口町木沢集落の復興過程についての長期的なフィールドワークをもとになされたものである。中越地震の被災地の多くは,山間に散らばる小さな中山間地集落である。地震は,折からの過疎化・高齢化をさらに加速させた。これら困難な課題が山積した被災地において,人々はどのようにして肯定的な未来に向かって歩みを進めることが出来るのか。本論では,被災者と外部支援者が新しい現実についてのナラティブを恊働構築することで創造的な復興をめざす,災害復興へのナラティブ・アプローチを提案した。本研究は,グループ・ダイナミックスの観点から,災害復興に対して外部支援者の立場を利用して新しいナラティブを生成するというアクションリサーチの試みである。
  • 尾関 美喜, 吉田 俊和
    2009 年 49 巻 1 号 p. 32-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,社会的アイデンティティ形成の相互作用モデルに基づいて,集団アイデンティティを個人レベルと集団レベルに分けてとらえるとともに,集団アイデンティティを成員性と誇りの二側面でとらえた。そして,成員性,誇り,成員性の集団内平均が集団内における迷惑行為の迷惑度認知に及ぼす影響を検討した。HLMによる分析の結果は以下に示すとおりであった。1)規範などによって抑制可能である集団活動に影響を及ぼす迷惑行為については,成員性の強い成員ほど迷惑度を高く認知した。2)集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為については,成員性の集団内平均が高い集団では,誇りの個人差に起因する迷惑度認知の差はみられなかった。3)成員性の集団内平均が低い集団では,誇りの高い成員ほど迷惑度を高く認知していた。
  • 黒川 雅幸, 吉田 俊和
    2009 年 49 巻 1 号 p. 45-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小学校5・6年生を対象に,授業の班活動における仲間の効果と個人の集団透過性の効果を明らかにすることであった。個人の集団透過性とは,仲間集団以外の学級成員と相互作用することに対する態度を示す概念である。分散分析の結果,仲間が同じ班にいる場合はいない場合よりも,学習活動は明るく,優しい雰囲気のもとで行われ,さらに班成員から受けるサポートは多いことが示された。女子では,同じ班に仲間がいる場合はいない場合よりも,学習活動は規律ある雰囲気のもとで行われ,授業への集中や活動への意欲的な態度は高いことが示されたのに対して,男子ではそのような結果はみられなかった。個人の集団透過性が高い児童の方が低い児童よりも,明るく,優しい雰囲気のもとで学習活動を行っており,班成員から受けるサポートは多いことが示された。さらに,個人の集団透過性が高い児童の方が低い児童よりも,規律ある雰囲気のもとで学習活動を行っており,授業への集中や授業への意欲的な態度も高いことが示された。
  • 脇本 竜太郎
    2009 年 49 巻 1 号 p. 58-71
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,存在論的恐怖と愛着不安・回避傾向が成功・失敗についての自己の帰属と親友からの帰属の推測に及ぼす影響について検討した。近年,対人関係が存在論的恐怖を緩衝する効果を持つことが明らかにされている。そして,Wakimoto(2006)は存在論的恐怖が顕現化すると日本人は関係維持のため謙遜的態度を強めることを報告している。これに,日本人が他者による謙遜の打消しや肯定的言及など支援的反応を期待するという知見を併せて考えると,存在論的恐怖は自己卑下と共に他者からの支援的反応の期待を高めると考えられる。また,このような影響は愛着不安・回避傾向により調節されると考えられる。これら予測を現実の成功・失敗についての原因帰属を用いて検討した。大学生52名が実験操作の後に過去の実際の成功・失敗について自分自身の帰属と親友がどのように帰属してくれるかの推測について回答した。その結果,MS操作により自己卑下的帰属が強まる条件では,親友からの支援的な帰属の期待も強まることが示された。一方,親友からの支援的な帰属の期待が必ずしも自己卑下的帰属の高まりを伴わないことも示された。これら結果を近しい他者を通した関係による存在論的恐怖管理の様態及び互恵的関係の形成における存在論的恐怖の影響という点から論じた。
  • 原田 春美, 小西 美智子, 寺岡 佐和, 浦 光博
    2009 年 49 巻 1 号 p. 72-83
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,支援という枠組みにおける保健師と精神障害者や彼らにとっての重要他者との相互作用について,保健師が用いた人間関係形成の方法に焦点をあて,その特徴とプロセスを明らかにすることであった。対象は市町村に所属する保健師12名であった。データ収集は半構成的面接法を用いた。分析は,面接内容の逐語録をデータとし,Modified Grounded Theory Approachを用いて質的・帰納的に行った。分析の結果抽出された29の概念から,【温かで人間的な関係の結び方】【冷静で客観的な関係の結び方】【他者との関係の取り持ち方】【適切な心的距離で関係を維持する方法】という4つのカテゴリが生成された。支援場面における相互作用は,保健師が精神障害者と良好な関係を形成し,その関係が途絶えることの無いように適度な距離を保ちながら,さらに精神障害者と彼らを取り巻く地域の人々との関係形成とその維持を支援しようとするプロセスであった。同時に,その関係性の中で,個々の精神障害者のための支援の仕組みを作り,精神障害者が主体的にその仕組みを活用しながら地域で暮らし続けることを目指すものであった。
資料論文
  • 江口 圭一, 戸梶 亜紀彦
    2009 年 49 巻 1 号 p. 84-92
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,使用が簡便な労働価値観測定尺度短縮版の開発を目的として行ったものである。開発にはこれまでに蓄積された全データ(n=720,平均年齢41. 4歳±13. 3,18~74歳)を使用した。労働価値観測定尺度の原版(38項目版)の探索的因子分析の結果に基づき,因子負荷量が高い3項目が短縮版の項目として選択された。短縮版の下位尺度はいずれも高い内的一貫性を示した(α=.814~.878)。いずれの下位尺度についても,労働価値観測定尺度の原版(38項目版)と短縮版の間に高い相関係数が示され(r=.906~.976),基準関連妥当性は支持された。また,検証的因子分析でもモデルの高い適合度が示され(GFI=.929, AGFI=.902, CFI=.953, RMSEA=.056),因子的妥当性が支持された。以上の結果から,短縮版はより少ない項目数で38項目版と同様の構成概念を測定できることが示唆された。
  • 柳澤 邦昭, 西村 太志
    2009 年 49 巻 1 号 p. 93-103
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,他者との相互作用場面における他者選択について自尊心の差異が及ぼす影響を杉浦(2003)の説得納得ゲームを用いて検討を行った。特に説得者の自尊心の差異でゲーム中に相互作用する納得者の選択様相が異なるかどうかに着目して検討した。105名の大学生がゲームに参加した。分析の結果,以下のことが示された。(1)説得者の自尊心の差異に関わらず,ゲーム開始直後のセッション(セッション1)より,後のセッション(セッション2)で説得者は多くの相互作用対象他者を選んでいた。(2)また,セッション1では説得者側,納得者側ともに相互作用した人数と相互作用満足度に正の相関があった。(3)さらに,セッション1において他者との相互作用満足度が低い場合,高自尊心者はセッション2で低自尊心者を相互作用対象他者として選択することが示された。以上の結果から,自尊心の差異により他者との相互作用場面における他者選択様相の異なる側面が伺えた。特に,高自尊心者は一時的に状態自尊心が低下している場合に,自尊心の回復を促進することを目的として低自尊心者を選択していると示唆される。
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