本研究は,2021年の少年法改正により罪を犯した特定少年(18・19歳)の実名報道が解禁されたことを受け,実名報道目的が,子どもに対する現代的偏見と特定少年の実名報道への支持の関連を媒介するというモデルを,2つの研究により検討した。この際,実名報道目的として,刑罰目的に関して作成された尺度・項目を参照・援用し,応報,一般予防,改善更生,隔離を用いた。研究1では,一般的な特定少年についての実名報道への支持を尋ねる一般レベル,研究2では,シナリオで描写される個別の特定少年についての実名報道への支持を尋ねる個別レベルで検討した。研究1(N=427)および研究2(N=446)の分析の結果,一般レベルでは,応報および隔離が子どもに対する現代的偏見と実名報道への支持の関連を媒介することが示された。他方,個別レベルでは,応報と隔離の2つに加え改善更生が子どもに対する現代的偏見と実名報道への支持の関連を媒介することが示された。得られた知見の相違を,提示される情報量の多寡および心理的距離の点から考察した。その結果,実名報道の支持というテーマは同じであってもレベルが違えば異なる態度や意識が関わっている可能性が示された。
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