日本教育工学会論文誌
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39 巻, 2 号
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論文
  • -目標志向性,学習観,動機づけ,学習方略,学習課題成績に着目して-
    山本 美紀, 植野 真臣
    2015 年 39 巻 2 号 p. 67-81
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,構成主義的学習観に基づく評価を学習者に実践させることによって,学習観の変容が誘発される可能性を示す.具体的には,ルーブリックを活用した実験的な授業を行い,その活用方法が学習者に与える影響をクローズエンドな課題,オープンエンドな課題を用いて実証的に分析する.その結果,(1) 学習課題によって学習者の目標志向性が変化して学習観の変容を抑制する場合があるが,ルーブリックを用いることにより,課題によらず学習観の変容を直接的に誘発できる,(2) オープンエンドな課題では,構成主義的学習観への変容によって,認知方略およびメタ認知方略を含む自己調整方略の使用が促進され,学習課題の成績が向上する,(3) オープンエンドな課題では,学習者がルーブリックの作成に参加することによって構成主義的学習に対する内発的価値を高め,動機づけを向上させる,ことが明らかになった.
    Editor's pick

    2016年度論文賞受賞論文

  • 時任 隼平, 橋爪 孝夫, 小田 隆治, 杉原 真晃
    2015 年 39 巻 2 号 p. 83-95
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,過疎地域においてサービス・ラーニングが地域に受け入れられる要因と,受け入れ方の特徴を明らかにする事である.山形大学が9年間継続して過疎地域で展開しているサービス・ラーニングを取り上げ,住民が学生を受け入れる要因と受け入れの際の重要事項を調査した.具体的には,受け入れ担当の地域住民を対象に質問紙調査と半構造化インタビューを実施した.その結果,住民の地域に対する持続願望はサービス・ラーニングの受け入れに有意な正の影響を与えており,学生を受け入れる事によって地域にかつて存在した行事や住民間の交流が一時的に復活し,それらが住民の地域に対する持続願望に繋がっている事が明らかになった.また,サービス・ラーニングは既存の地域活動と融合する形で受け入れられ,住民が学生に対して教育的意識を持って接している事が明らかとなった.
教育実践研究論文
  • 稲垣 忠, 佐藤 靖泰
    2015 年 39 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    家庭で事前に学習内容に関するビデオを視聴し,授業では学習事項の確認の後,発展的な問題に取り組む「反転授業」の試みが広まりつつある.本研究では,小学校6年算数科「比例と反比例」の単元において反転授業を実施した.家庭における児童の視聴ログ,作成されたノート,事前・事後テストの結果をもとに家庭学習の影響を分析した.その結果,以下の4点が明らかになった.1)反転授業を実施した結果,下位群の児童にも一定の知識の定着が確認された.2)家庭におけるビデオ視聴の際,上位群は視聴時間で下位群を上回り,小刻みに停止しながら視聴する割合が高い.下位群は十分な視聴ができていない.3)上位群は十分なノートを作成していた一方,下位群は解き方や自己評価に関する記述が少ない.4)下位群の児童の中で学習後に上位に改善された児童は,家庭・授業時間ともノートの記述内容が充実していた.
資料
  • 近藤 勲, 烏 美娜, 生田 孝至, 南部 昌敏, 赤堀 侃司, 永野 和男, 小柳 和喜雄, 山西 潤一
    2015 年 39 巻 2 号 p. 107-116
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    日本と中国との教育工学分野の研究協力・交流35年間の経緯と現状を直接関わった立場並びに関係者の証言や残存資料などをもとにまとめた。この研究協力・交流の歴史には,両国の社会状況を反映しながら変遷した経緯があり,時の区切りごとに形態と内容に顕著な特徴が見られる。その時代区分は,1980年を起点に今日までを3期に大別できる。第1期は1980~1990年代中頃であり,第2期は1990年代中頃から「日中教育工学研究交流フォーラム」(以後,「日中フォーラム」という)が企画された2005年までである。第3期は「日中フォーラム」が本学会と中国教育技術協会の共催で定期開催されるようになった2005年以降である。本稿では,各期の社会情勢と関連付けながら,運営形態とその内容について分析・検証し,成果と課題の抽出を試みた。この結果をもとに両国の教育改革に伴う国際化の潮流の中で2国間に特化した研究協力・交流体制の展開は,今後検討を要するであろうと予測した。
寄書
  • -ICTでしかねらえない学習や発達の成果とは何か?-
    水内 豊和
    2015 年 39 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    特別支援教育において,タブレットパソコンなどを用いた教育実践が行われてきている.特別な教育ニーズをもつ児童生徒の教育においてICT機器を活用することは,アプリ開発の盛況さとあいまって加速化している.障害児者とその家族にとって,ICTのハードとソフトが手に届きやすくなることは,発達障害児者の学習や余暇の選択肢が増えるという点でよろこばしいことであるが,一方でエビデンスが不十分なままに十把一絡げにICTを使用することは学習によいと喧伝される傾向には少々危惧を抱いている.そこで本論では,特別支援の必要な対象児・者に対して,ICTを利用することのメリットとデメリットを考えてみる.最新のICT機器やすぐに使えるアプリ・ソフトウェアなどの紹介ではなく,もっとその根本であるはずのこと,つまり前提としてその対象児に対してICTを使うことの妥当性は確かか,使うことの効果の評価はどう考えるべきなのかということについて,いくつか事例を挙げながら述べる.
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