日本教育工学会論文誌
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39 巻 , 3 号
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巻頭言
総説
論文
  • 姫野 完治, 益子 典文
    2015 年 39 巻 3 号 p. 139-152
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     教師の経験学習の特質を実証的に解明し,モデル化することを目的として,本研究では2つの調査研究を行った.研究Ⅰでは,教育行政職経験のある校長を対象として面接調査を行い,「経験から学習する状態」という視点で教師の学習を捉えられること,コミュニティにおける立ち位置の自覚と微修正が鍵となること等を見出した.その上で,教師の経験学習モデルを構築した.研究Ⅱでは,研究Ⅰで構築したモデルをふまえて,若手,中堅,ベテランの3名の教師のライフヒストリーを事例分析した.教師が経験から学習する状態になっているかどうかは,コミュニティ内の教師の立ち位置によって変動すること,教師の学習の状態を開く上で,学校外のコミュニティや勤務校の異動,自らの実践を対象化することが鍵になること等を明らかにするとともに,教師の経験学習モデルの妥当性と課題を示した.
    Editor’s picks

    2016年度論文賞受賞論文

  • 寺嶋 浩介
    2015 年 39 巻 3 号 p. 153-165
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,教員養成学部に所属する教科教育法担当の教員がどのような授業イメージをもって講義に取り組んでいるのかをモデル化しようとした.「信念」「知識・技術」により構成される授業イメージモデルの枠組みを設定したうえで,10名の教員を対象としてPAC分析による調査を実施し,モデル化した.そして,7名の教科専門担当教員への同様の調査によるモデルと比較することで,その独自性を明確にしようとした.結果,教科教育法担当教員は,信念においては,学習指導要領を基本としてその教科について考えていること,また自身の指導哲学を持っている傾向にあることがわかった.また,知識・技術においては,体験と省察を重視した教育方法を採用しようとしていること,などが明らかとなった.
  • 木原 俊行, 島田 希, 寺嶋 浩介
    2015 年 39 巻 3 号 p. 167-179
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,学校における実践研究の発展要因の構造に関するモデルを開発することを目的とするものである.そのために,4つの小中学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,実践研究の詳細について,聞き取り調査を実施した.得られたデータを,「専門的な学習共同体」の発展要因に関する先行知見を参照して整理し,また4校間で比較して,学校における実践研究の発展を促す要因の構造を暫定的にモデル化した.次いで,モデルの信頼性を検証するために,あらたに別の3つの小学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,同様の聞き取り調査を実施した.得られたデータを,再度「専門的な学習共同体」の発展に関する知見を用いて分析し,3校間で比較して共通項を導き出した.そして,それらとモデルの整合性を分析して,その信頼性を確認した.また,一部の要因を加えて,要因間の順序性や関係性を考慮し,モデルを精緻化した.
教育実践研究論文
  • 望月 紫帆, 西之園 晴夫, 坪井 良夫
    2015 年 39 巻 3 号 p. 181-190
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     教科専門性を採用している校種で,配属人数が少ない教科の,教職経験が短い教員が専門職の資質能力を日々高め続けるためには,教科を越えた学び合いが重要である.多様な教科間で学び合うしくみを導入している京都市立中学校の採用1年目教員の夏季研修において,異なる教科の教員同士で授業を設計し,模擬授業を行う様子に注目しながら2年間分の記録を分析したところ,知識の習得にむけて学習者が考える場面を選定し,その場面で採用する教育技術の選定を通して授業の方略を理解することによって,担当教科と異なる教科の内容に関わる設計に参加できるようになることが確認された.また,異教科の教員が他の専門領域の内容をふまえた授業展開について提案する場合,選定された場面での学習者の反応を多面的に予測することを助け,時間内に学習目標を達成するための方略の構築に貢献できることが明らかになった.
  • 梅澤 秋久
    2015 年 39 巻 3 号 p. 191-200
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,教師の専門職的アカウンタビリティにおける保護者との合意形成に向けた連携に着目し,その影響を明らかにすることを目的とした.その結果,次のような知見が得られた.  保護者への一方向的な「説明」レベルでは専門職的アカウンタビリティを十分に果たしているとはいえない.教師が保護者ニーズに応じる姿勢を有することは,教師自身が気づかない知見を得られることになると考えられる.また,教師は保護者ニーズに加え,専門性を生かした実践を再構築することで保護者との合意形成に向けた連携が可能になる.教師が専門性を高めるためには,同僚らとのアカウンタビリティに向けた相互的な専門職的アプローチが重要になると考えられる.
  • 深見 俊崇
    2015 年 39 巻 3 号 p. 201-208
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,島根大学教育学部で1年次に実施されている学校教育実習Ⅰの事前事後指導にあたる学校教育実践研究Ⅰを事例として,教員志望学生の授業観察力量を向上させるためにいかなるカリキュラムデザインが必要となるかを明らかにするものである.学校教育実践研究Ⅰ受講者の自己評価アンケートの結果を基に,学校教育実践研究Ⅰにおける3年間のカリキュラムデザインの再構成が受講者にどのように反映されるか,また反映されないかを分析していく. 2011年から2013年の3年間にわたるカリキュラムデザインの再構成によって,VTRを活用した事前指導の成果が認められ,授業を1時間の流れ,次時とのつながりという一連の流れで捉える受講者も増加した.だが,授業観察に必要な用語を用いた授業記録・授業協議については3年間共通して課題が認められた.また,授業観察において,授業や教師へ視点が焦点化することで,児童・生徒に対する意識が弱まる点が示唆された.
  • 北澤 武, 森本 康彦
    2015 年 39 巻 3 号 p. 209-220
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,教職実践演習において,ICTを活用したカリキュラムをデザインし,この授業実践によって教職実践演習の到達目標の項目に,受講生がどのような認識を示したかを分析することが目的である.研究1では,2013年度の教職実践演習を対象に,教職eポートフォリオを導入して外部講師の講話の内容を振り返ったり,授業担当者が小学校算数・理科の授業動画を作成し,授業リフレクションシステム(森本・北澤 2014)を活用しながら授業内容について相互評価する学習活動を行ったりした.しかし,分析の結果,「教科基礎力」と「学習指導力」に関する事項が低い傾向であることが分かった.そこで,研究2では,2014年度の教職実践演習を対象に,受講生が授業の一場面を動画に作成し,授業リフレクションシステムで相互評価を行うカリキュラムにデザインを変更した.この結果,「教科基礎力」と「学習指導力」に関する項目に有意な向上が認められた.
  • 遠藤 育男, 益川 弘如
    2015 年 39 巻 3 号 p. 221-233
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     授業研究の質向上のため,客観的なエビデンスを基に議論できるよう,研修体制を考慮しつつ3年間にわたって授業研究デザインを改善し実施した.今回は,毎年同じ6年生算数組み合わせを対象とし,前年度のエビデンスを活用し授業改善を進めた.1年目は授業後時間をかけて発話分析し,各班の学習プロセス比較図と一定期間後の定着度を調べた回顧記述調査を長期休業での研修で提示し,エビデンスを基に議論する重要性を共有した.2年目は観察者を学習者1人1人に割り当て,視点を持って発話を観察記録することで事後研修の質を高め,長期休業の研修に向けた分析負担を減らした.3年目は定着度の予測活動を導入することで,長期休業の研修を組み合わせなくても定着を意識した議論を引き出せた.前年度までのエビデンスを活用しつつ各年度研修を改善した結果,分析負担を減らしても,精度の高い学習成果の予測を基に観察吟味ができる授業研究が実現できた.
  • 谷塚 光典, 東原 義訓, 喜多 敏博, 戸田 真志, 鈴木 克明
    2015 年 39 巻 3 号 p. 235-248
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     自己評価機能と学生間の相互コメント機能を有する教職eポートフォリオ・システムを開発した.そして,開発した教職eポートフォリオ活用の効果を明らかにするために,教育実習を終えた大学生を対象にアンケート調査を行った.その結果,教育実習生は,教職eポートフォリオを活用して自己評価することを通して,教育実習を客観的に振り返ることができることを感じたり,自己課題を明確にしたりしていた.また,教育実習生間の相互コメントを通して,教育実習を改めて振り返り,教育実習生間で相互コメントすることの意義を実感していることがわかった.そして,教職eポートフォリオの効果について尋ねたところ,自分の受けた教育の振り返り,目指すべき教師像の明確化,自らの資質・力量の現状理解等には効果がある一方で,これからの教職課程の見通しを持つことには寄与していないことが明らかになった.
資料
  • 小柳 和喜雄
    2015 年 39 巻 3 号 p. 249-258
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/28
    ジャーナル フリー
     メンタリングという言葉は,日本の現職研修でも取り扱われるようになってきた.しかし本学会の研究成果が,どのような位置づけにあるのかは明確にはされてこなかった.そこで本資料では、本学会の研究の現在までの成果を位置づけ,どのような研究が知見として蓄積されつつあり,どのような貢献がさらに求められているかをより視覚化することを目的とした.研究の手続きとしては,国際的な研究の動きを俯瞰し,教育におけるメンタリング研究の関連マップを描いた.次に現職研修に焦点化し,そこでのメンタリング研究の事例はどのようなものか,本学会の知見はどこに位置づくかを検討した.結果,1)学校の組織的な取組と関わるメンタリングの方法に関する研究や2)自治体でのメンタリングの取組を支援する研究,などについてはまだ研究の蓄積が限られていることが明らかになった.また,この点は,国際的な動向とは研究の分布が異なることが明らかになった.
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