日本教育工学会論文誌
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39 巻 , Suppl 号
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ショートレター
  • 泰山 裕, 三宅 貴久子, 小島 亜華里, 堀田 龍也, 黒上 晴夫
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 1-4
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本論文は,思考スキルの理解度と学力調査の正答率との関連を明らかにするものである.体系的な思考スキルの指導が行われている関西大学初等部の児童を対象に,児童の思考スキルに対する理解度と全国学力・学習状況調査の結果との相関分析を行った.その結果,理解度合計得点と学力調査の教科・種類毎の正答率および教科別正答率,種類別正答率との間に有意な正の相関がみられる一方,教科や問題の種類によって相関の有無や強さが異なることが明らかになった.さらに,学力調査問題の内容と思考スキルの関係について検討した結果,有意な相関がみられた問題にはその思考スキルを用いた回答が求められていることが確認できた.
  • 河崎 雅人, 渡邊 亘崇, 小池 守, 梅澤 実
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 5-8
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     「10作り学習」のために,トランプ教材「10作りゲーム」を考案し,本教材の有効性について検証した.単元「いくつといくつ」の授業終了後に,一学級に考案したトランプ教材による学習を2週間で6回させた.比較のために,同時期に他の一学級にプリント教材による学習を2週間で6回させた.調査問題1,2,3を用いて二つの学級の習熟状況を比較したところ,「□と○で10です」のような問題や繰り上がりのある足し算において,トランプ教材で学習を行った学級の一人当たりの誤答数は少ないなど,考案したトランプ教材「10作りゲーム」はプリント教材と比較して「10作り学習」により有効な教材であることが示唆された.
  • 姫野 完治
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 9-12
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,教職志望学生が恩師のライフヒストリーを研究することを主軸にした教職科目の開発を目的として,2014年度に試行した「教育工学演習Ⅰ」を通して,学生の教師発達イメージがどのように変容したのかを分析した.授業初回と最終回に描いてもらった「教師の成長・発達に対するイメージ」曲線の比較およびインタビューから,学生の教師発達イメージが直線的から曲線的なイメージへと変容すること,停滞期の位置付け方に変化が生じること等がわかった.また,ライフヒストリー研究を教員養成に取り入れる上での成果と課題を示した.
  • 三井 一希
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 13-16
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,タブレットPCとスクリーンキャストアプリを用いて,小学校の自習による授業時間で活用できる動画の開発を行い,それを活用した授業を実践した.その結果,動画を用いて自習を行った学級は,動画を用いずに直接担任教師が指導を行った他学級と比べても学習効果に有意な差は見られなかった.よって,自習においても動画を用いて未習内容の学習を行うことができ,教師が直接指導した時と同程度の学習効果が上げられる可能性を示唆できた.また,児童への質問紙調査の結果から,動画を使った自習は児童に好意的に受け入れられたことがわかった.
  • 木村 敦, 木村 あやの
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 17-20
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では, 学生による授業評価アンケートを匿名で実施した場合と記名で実施した場合とで評価結果に差異があるかどうかを検討した. 平成25~26年度の情報環境学専門科目 (小グループ演習を含む講義科目)2科目において, 匿名の授業評価アンケートに加えて記名の授業評価アンケートを履修者に実施し, 両アンケートに含まれる同一の評価項目4項目について評定値 (各5段階評定) を比較した. その結果, 全16項目中13項目については匿名条件と記名条件での差はみられなかった. 一方で, 3項目については条件間で有意差がみられたことから, 回答分布を比較して条件間の差異に関与する要因を議論した.
  • 深谷 達史, 福田 麻莉, 植阪 友理
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 21-24
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     統計学の概念を理解する上では,数式や言語的定義を学ぶことに加え,図を作成することが有効である.特に,協同的な学習場面で図の構築を求めることにより,内容の理解を一層促すことが可能になると想定される.そこで本研究では,大学の心理統計学の講義において,協同学習時に図の構築を促す働きかけを行った.さらにその効果を検証するため,最終テストの成績を用いて,授業中の図の構築が深い理解を促すかを検討した.心理統計法の授業において,50名の大学生を対象に,発展的な課題を協同的に解決する場面で図を作成するよう働きかけた.こうした活動を3回の授業で行い,個人ごとに図を構築できた頻度を計測し,最終テストとの相関係数を算出した.分析の結果,記憶を問うテスト,理解を問うテストの両方で,図を構築できた学生ほど,最終テストでも高い得点を示したことが明らかとなった.また,介入前に実施した中間テストの影響を統制しても,図の構築頻度と最終テストの成績との間には一定の関連が認められた.これらの結果から,図を介した協同学習が深い理解を促進する可能性が示唆された.
  • 阪東 哲也, 宮川 洋一, 森山 潤
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 25-28
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,大学生89名を対象に,情報モラル意識形成に対する情動制御水準の影響について検討した.調査の結果,情動制御水準のうち,「自己の情動評価」,「情動の調節」は,情報モラル意識形成に有意な影響力を示さなかった.しかし,「他者の情動評価」,「情動の利用」では,情動制御水準の主効果が認められ,いずれも高群の方が,情報モラル意識も高水準にあった.このことから,大学生の情報モラル意識の形成には,他者の情動に注意を向け理解しようとする意識,目標達成のために自分の情動を適切に調整・利用しようとする意識が,それぞれ重要な役割を果たすことが示唆された.
  • 佐藤 和紀, 齋藤 玲, 堀田 龍也
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 29-32
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,メディア・リテラシーに関する知識やその教育経験が十分ではない教師(以下,初心者教師と記す)を対象として,授業実践・リフレクションを実施した.初心者教師による授業設計から授業実践,授業評価,授業改善までの活動の後に質問紙調査を行ったところ,初心者教師のメディア・リテラシーに関する意識に変容がみられた.また授業実施後に設定された初心者教師によるリフレクションおよびインタビュー調査においてそれら変容を確認した.
  • 田村 修一
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 33-36
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,もし児童が「いじめ」の被害者・傍観者になった場合,その問題を解決するために友人・学級担任・養護教諭・スクールカウンセラー・保護者に対してどの程度,援助を求めるか(「被援助志向性」の程度)を明らかにすることであった.首都圏の公立A小学校4~6年生(140名)を対象に質問紙調査を実施した.その結果,(1)被害者・傍観者になった場合は共に,友人への「被援助志向性」は男子に比べ女子の方が有意に高い得点を示した.(2)被害者・傍観者になった場合は共に,スクールカウンセラーや保護者に対する「被援助志向性」は,高学年に比べ中学年が有意に高い得点を示した.(3)被害者になった場合,養護教諭への「被援助志向性」は男子に比べ女子が有意に高い得点を示した.また高学年に比べて中学年が有意に高い得点を示した.さらに,傍観者になった場合,養護教諭への「被援助志向性」は男子に比べて女子が有意に高い得点を示した.(4)一方,学級担任への「被援助志向性」については「学年」も「性別」も有意差が示されなかった.これらの結果に基づいて,いじめの予防と効果的な指導・援助方法を議論した.
  • 森 玲奈, 井上 史子
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 37-40
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,「学生による授業コンサルティング(SCOT)」に参入し1年以上継続して活動を行った大学生に対し,参入の動機と,そこでの学習経験を明らかにすることを目的とし,インタビュー調査を行った.参入動機は(1)大学および大学の授業への関心,(2)教授技術への関心,(3)正課外学習への期待,の3つに分類できた.学習内容については,(1)コミュニケーション,(2)同僚との関わり,(3)正課との関連,(4)批判的思考,(5)正課外らしさ,(6)視点の拡がり,(7)将来への接続,のカテゴリが生成された.さらに,参入動機によって異なった学習が生起している可能性が示唆された.
  • 植木 克美
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 41-44
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,教職経験が異なる熟年期の小学校教師2名を対象に,ライフストーリー的手法によって,①保護者対応の変容プロセスを明らかにし,②保護者対応における教師の成長と世代継承について検討した.分析の結果,若手期,中堅期から熟年期にかけて,保護者と教師の関係性が変容することがわかった.そして,保護者対応の困難な経験が,保護者対応の変容をもたらすひとつの“転機”になっていると考えられた.また,保護者対応における異世代間の学びは,教師である専門家間,さらに教師と保護者間でも成立していることを明らかにした.
  • 森田 愛子, 小澤 郁美
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 45-48
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,読み手のニーズに合うような,簡易で科学的根拠が明確であり,十分な効果をもたらす速読トレーニングを開発し,その効果を実証することであった.本研究で実施したトレーニングは,いずれも,1日約5分のトレーニングを1週間行うものであった.視野のトレーニングについては,既に,1週間で約30%の読み速度上昇効果があることが実証されているが,先行研究のトレーニングを改定したところ,読み速度を約50%上昇させることができた.また,黙読時に頭の中で文章を音声化するという内声化を減少させるトレーニングを追加したところ,読み速度を約60%上昇させることに成功した.
  • 宮田 明子, 山本 朋弘, 堀田 龍也, 伊藤 三佐子, 片山 淳一, 鈴木 広則
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 49-52
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     校務支援システムを導入した小・中学校の教員を対象に,校務支援システムの運用前・1年後・2年後の3回において質問紙調査を実施し,校務の状況に関する教員の意識および校務支援システムの機能の必要性についての経年比較を行った.その結果,校務支援システムの運用前と比較して1年後・2年後に,教員は校務の状況が改善されたと感じること,校務支援システムの機能の必要性を高く感じることが示された.また,校務支援システムの利用年数が1年目の教員と比較して2年目以降の教員は,児童生徒の状況把握や帳票印刷の機能に対して,より高く必要性を感じていることが示された.
  • 中山 実, 六浦 光一, 山本 洋雄
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 53-56
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     ブレンディッド学習でノート記録活動がテスト得点に及ぼす影響を調べるために,ノート記録の特徴量とテスト得点の関係を検討した.ノート記録の評価指標として授業担当教員によるノート評定値と,教員の提示情報と学生のノート記録内容から定義した単語数割合,記録割合,不足距離,加筆距離との間の関係を分析し,相互の関係を明らかにした.これらのノート記録特徴量とテスト得点との重回帰分析の結果,ノート記録特徴などの変数を選択することでテスト得点の説明が可能であることを確認した.さらに,授業回ごとの特徴情報による説明可能性,ノート記録指導による効果を確認した.
  • 荒井 直美, 根本 淳子, 喜多 敏博, 鈴木 克明
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 57-60
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,医療機関の看護教育に携わる研修設計担当者を対象に,集合研修を見直す手法を開発し,その検証と評価を行ったものである.本研究では研修実態を調査し問題点を明らかにした上で,改善する手法として,フォーマットの設計に取り組んだ.そして,インストラクショナルデザイン(ID)初心者に対応できるようにMoodleへ実装し,研修改善支援ツールとして作成した.エキスパートレビューによる内容の妥当性を確保した後,形成的評価を実施し,本研究の成果を用いることによる有効性の可能性が示唆された.
  • 島田 英昭
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 61-64
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     説明文に挿入される挿絵は,理解支援だけではなく,読解初期の動機づけを高める効果がある.本研究は実験心理学的手法により,説明文におけるテキストと挿絵の関連性が,読解初期2秒間の間に動機づけを高めるかどうかを検討した.実験参加者(大学生,N=16)は,テキストと挿絵の関連性および挿絵の有無が操作された防災マニュアルの1ページを2秒間見た後,動機づけの程度を評価した.その結果,挿絵の有無に比較すると小さいが,テキストと挿絵の関連性の効果がみられた.また,関連性が強いほど動機づけが高かった.以上から,テキストと挿絵の関連性は読解初期2秒間の間に動機づけを高め,その効果は関連性の程度に依存することが明らかになった.
  • 安藤 明伸, 潟岡 冴子, 鈴木 哲朗, 橋渡 憲明, 佐藤 陽, 村松 浩幸
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 65-68
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     近年,SNSの使用に関わる問題が増加し,大きな課題となっている.情報教育の観点からも,中学生がSNS使用のメリット・デメリットを踏まえて,適切に活用できる判断力を持つことが重要であると考えられる.そこで本研究は,中学生を対象に,SNS使用に関わる判断力を育成するシナリオゲーム型教材の開発を目的とした.開発したシナリオゲーム型教材は,中学生を主人公に,SNSのトラブルをテーマにしたシナリオブックおよびカードで構成し,27種類の展開を設定してサイコロによる偶然性も組みこんだ.中学校2学年220名を対象に1時限の実践をした結果,SNS使用に関わる判断力の向上について,一定の教育的効果を確認できた.
  • 酒井 博之, 辻 靖彦, 稲葉 利江子
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 69-72
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     高等教育におけるICT活用の実態について,2013年度に実施された全国の高等教育機関に対する悉皆調査のデータをもとに,大学の規模による回答傾向について検討した.その結果,「組織戦略」「ICT活用教育実施状況」「支援体制」のカテゴリから抽出した5つの調査項目において,その傾向は規模により異なり,大規模大学では積極的な回答が多く,逆に小規模大学で消極的な回答が多いことが明らかとなった.さらに,アクションプラン等への記述に関して,実施に向けた影響力や機能してきたかの回答傾向や,LMS導入と学内支援組織の存在との関連から,特に小規模大学に対するICT活用教育推進に向けた支援の必要性について提起した.
  • 前田 康裕, 益子 典文
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 73-76
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     熊本市教育委員会は,熊本市教師塾「きらり」を平成24年度から開講した.その目的は,教員の授業力向上と学び続ける教員としての資質の育成である.本研修プログラムは「①師範による指導授業」「②塾生による研究授業」「③特別講師による公開授業」「④仲間とともに学ぶ実技講座」で構成されており,塾生からは「①師範による指導授業」の評価が最も高かった.「①師範による指導授業」に関しては,授業研究会における師範の発話と塾生のレポートを分析した結果,塾生全体が先輩教師の個別の教育技術を超えた教師独自の指導理念を受け止める構えが構成されており,教育技術と理念とが一体となって学ばれたため満足度が高くなっていると考えられる.
  • 佐藤 満明, 柄本 健太郎, 向後 千春
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 77-80
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     eラーニングでは,動画教材の中に何らかの工夫を施すことで学習者の学習意欲を向上させることが重要である.そこで,本研究では大学生と一般社会人52名を対象に,動画教材にクイズを挿入することで,ARCSモデルに基づく学習意欲のどの側面が向上するのかを実験的に検討した.その結果,クイズ挿入によって「自信」と「満足感」が有意に向上したが,「注意」と「関連性」では有意な向上は見られなかった.このことから,クイズの出題と解答が,学習意欲の中でも受講者の「自信」と「満足感」の側面を向上させる効果があることが示唆された.
  • 伊藤 崇達
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 81-84
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,親の自律的動機づけ,動機づけ支援と子の自律的動機づけ,自己調整学習方略の使用に関する因果モデルの検証を目的とした.大学生とその親を対象に調査を行い,質問紙への回答を求めた.パス解析による検証の結果,親の自律的動機づけから子の自律的動機づけに対して正のパスが示され,自律性支援から子の自律的動機づけに対して正のパスが示された.一方,自己抑制支援はメタ認知的方略に対して正のパスを示した.また,子の自律的動機づけからメタ認知的方略を介して反復方略に対して正のパスが示された.これらの結果から,親による動機づけ支援において自律性支援と自己抑制支援とではそれぞれ独自の重要性があることが示唆された.
  • 瀬戸崎 典夫, 吉冨 諒, 岩崎 勤, 全 炳徳
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 85-88
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,遠隔地での学習者に長崎にいるような実感を与え,主体的な学習を促す次世代型平和教育教材の開発を目的とした.そこで,全天球パノラマVR教材を開発し,教育的利用の観点から評価した.その結果,臨場感の高さや印象の強さなどの理由から,実感を高める教材としての有用性が示された.実感を与える効果については,地理的な情報把握や,原爆投下を自分とは切り離した事象として捉える学習者にとって有用であることが示唆された.さらに,本教材のインタフェースが主体的な学習を促す一助となり得ることが示された.一方,コンテンツの充実や発達段階を考慮した授業設計の考案など,改善すべき点が明らかになった.
  • 酒井 郷平, 塩田 真吾, 江口 清貴
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 89-92
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     従来の情報モラル教育では,主にトラブル事例の紹介とルールづくりの啓発を扱う場合が多く,子どもたちに「当事者としての問題の自覚」を促すことが課題となっている.例えば,「ネット上で悪口を書かない」という指導では,何がネット上での悪口なのかを子どもたちが,具体的に想像することができず,自分は加害者ではないと考えてしまう可能性がある.そこで,本研究では中学生を対象とし,ネットワークにおけるコミュニケーションについてトラブルにつながる可能性のある行動の自覚を促すことを目的とした情報モラル授業の開発・実践を行った.実践後,質問紙調査や感想の分析を行ったところ授業を通して,トラブルにつながる行動を自覚できたことが明らかとなった.
  • 渡辺 友美, 吉冨 友恭, 萱場 祐一
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 93-96
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     生物多様性の保全という課題に対し,効果的な普及啓発の実施が求められている.博物館等の展示施設は地域に根ざした生涯学習の拠点となっており,生物多様性に関する情報発信の場としての役割が期待されている.しかしながら本主題を扱う既存展示の実態は分かっておらず,効果的な情報発信検討のための基礎的情報が不足している.そこで本研究では国内の展示施設を対象に,本主題を扱う常設展示の調査を行った.その結果約半数の施設が生物多様性を扱っていること,そこでは生物多様性のあるべき姿と危機を見せる展示が多いこと,展示として扱われにくい観点があることが明らかとなり,以後の展示制作に必要な視点が見出された.
  • 舘野 泰一, 森永 雄太
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 97-100
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,大学における産学連携型PBL(Project-Based-Learning)授業において,質問を活用した振り返り手法を導入し,その効果について検証した.具体的には,「質問会議」(清宮 2008)と呼ばれる手法を用いて,グループワークの進め方に関する振り返りを行った.本研究では,この手法が,グループワークの進め方の改善に役立ったかについて検証した.分析に用いたデータは,1.学生が記入したアンケート,2.アクション・ラーニング・コーチ(ALC)が記入したワークシート,3.振り返り中のプロトコルデータである.分析の結果,質問を活用した振り返りは,グループワークの改善に役立つことが示唆された.
  • 魚崎 祐子
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 101-104
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     大学生148名を対象とし,配布資料の有無による授業中のノートテイキングおよび授業後の講義内容説明に与える影響を検討した.2つのクラスに対して一方にはスライドを資料として配布し,一方には配布せずに同一内容の講義を行った.その結果,配布資料なし群は配布資料あり群に比べて,ノートテイキング量が多かったが,スライドを書き写すことによる違いだと考えられた.また,授業後に講義内容の説明を求めた際,配布資料の有無による情報量の違いはなかった.ただし,配布資料あり群は囲みや矢印などの書き込みを言語化して自分の言葉で説明するのに対し,配布資料なし群はスライドの内容に自ら補足した情報を多く用いると考えられた.
  • 中野 博幸, 久保田 善彦, 小松 祐貴, 大崎 貢
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 105-108
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     全身を映すのに必要な鏡の大きさに関する課題の理解を促すため,拡張現実とKinectを用いたシミュレーション教材を開発した.Kinectにより学習者の骨格を認識し,コンピュータのカメラ画像上に骨格をリアルタイムで表示することができる.また,学習者の思考に応じてキー入力により様々な補助線を重畳表示することにより,理解を支援する.開発した教材を使って,中学校1年生に授業を試行し,主観評価と理解度調査を行った.その結果,生徒は教材について非常に好意的であった.授業によって形式的な理解は促進したが,多くは論理的な理解には至らなかった.今回の授業から,合同や相似などの数学の学習と関連させた授業デザインとそれに合わせて教材を改善する必要性が明らかになった.
  • 前田 菜摘, 浅田 匡
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 109-112
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     これまで,教師の思考過程を記述するモデルは情報処理に基づくものが有力であった.しかし,従来の意思決定モデルだけでは教室状況の曖昧さや多義性に対処する教師の思考を十分に記述することはできない.そこで本研究では,Weickのセンスメーキングの考え方を用い,状況の多義性が淘汰されるプロセスとして教師の思考過程を捉え,従来とは異なる視点から事例を記述することを試みた.2名の小学校教師に対し,実際の実践について再生刺激法を用いたインタビューを行ったところ,それぞれの教師の思考過程においてセンスメーキングのモデルの特徴が見られ,教師の授業中の思考過程がセンスメーキングプロセスとして記述し得る可能性が示された.
  • 青山 郁子, 高橋 舞
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 113-116
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究は, 大学生のインターネット依存傾向,ネット上での攻撃性を,「他者の能力を批判的に評価・軽視する傾向に付随して得られる習慣的に生じる有能さの感情」である仮想的有能感の視点から検討したものである. 大学生176名(男性56名, 女性120名, M=19.51歳, SD=.80)を対象に, 仮想的有能感, 自尊感情, インターネット行動尺度(攻撃的言動, 没入的関与, 依存的関与)を測った. その後, 仮想的有能感と自尊感情それぞれの尺度の高低から4群に分類し, インターネット行動について群間差が見られるかどうか検討した. 結果は, ネット上での攻撃的言動では有意差が見られなかった. 没入的・依存的関与ではともに, 自尊型< 仮想・萎縮型となった. 依存的関与に関しては自尊型と全能型の間にも有意差がみられた.
  • 脇本 健弘, 堀田 龍也
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 117-120
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,教師によるタブレット端末付属のカメラ機能を用いた「セルフリフレクション」に関する調査を行った.学校の状況が変化し,教師が一人でも学べることが重要となり,その支援が求められる.そこで,本研究ではその支援ツールとしてタブレット端末付属のカメラ機能に注目する.教師が実際にカメラ機能をどのように利用するのか明らかになっていない現状をふまえ,本研究では,小学校教師にカメラ機能を用いて「セルフリフレクション」を行ってもらい,その様子を調査することで,カメラ機能を「セルフリフレクション」のツールとして用いた際に,何を対象とするのが有効なのか検討した.
  • 野口 聡
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 121-124
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,中学校の理科で行うミニ説明方式(森田 2004)において,各生徒が科学概念をどのように理解しているのかを記述させ,それに基づいた生徒同士の発話を促す発問を行うことが,科学概念の理解にどのような影響を与えるかを検証した.そのために手法を加えたミニ説明方式の実践を行い,生徒の科学概念の理解を評価した.その結果,ミニ説明方式に対話の場面を設定し,さらに授業者の発問を加える手法によって,生徒の科学概念の理解が促されることが示唆された.しかし科学概念の理解の効果が見られたのは,授業者の発問によって説明問題の質を高めることができた生徒のみにとどまる.
  • 松村 敦, 森 円花, 宇陀 則彦
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 125-128
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     絵本の読み聞かせを効果的に行うための読み方の1つとして,登場人物の演じ分けが子どもに与える影響について検討した.具体的には,物語理解と物語の印象の2つの側面における子どもへの影響を実験的に明らかにすることを目的とした. 5,6歳児23名に対して,登場人物を大げさに演じ分けて読み聞かせる演じ分け群と演じ分けをしない統制群の2グループに分けて,物語理解度を測るテスト,物語の印象を聞く質問を行った.実験の結果,演じ分けによって物語理解には影響がなかった.ただし,登場人物の心情を問う項目については,統制群の方が高いという傾向が示された.また,物語の印象では,演じ分け群の方が印象が偏る傾向がみられた.
  • 後藤 貴裕
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 129-132
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,観点別評価を用いた形成的アセスメントが,高校生が開発型プロジェクトを遂行するのに有効であると考え,生徒による評価活動を意図的に位置づけた単元を設計して実践した.実践記録および生徒の作品や活動記録から,高校生においても形成的アセスメントの考え方および開発型プロジェクトにおけるその役割を理解できたと推測できる示唆を得ることができた.生徒が開発の過程における評価活動をどのように捉え認識しているか考察し,高校生の開発型プロジェクトにおける形成的アセスメントの役割やその特性について仮説生成を行った.
  • 岡田 佳子
    2016 年 39 巻 Suppl 号 p. 133-136
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
     ソーシャルスキル教育実践のための教員研修プログラムを実施し,プログラムの評価を行うことを目的として受講者の感想をテキストマイニングの手法を用いて分析した.結果より,今回実施した研修プログラムはソーシャルスキル教育未経験の教員が,ソーシャルスキル教育の必要性や体験的な学習の有効性を認識したり,ソーシャルスキルの基本的な考え方や授業設計の枠組みを理解したりすること,および,実践への意欲を持つことにはある程度有効であった.一方,授業実践の方法理解については十分な効果が得られなかった.プログラムの目標を達成するためには身近な具体例や実際の体験を通した理解が重要であることが示唆された.
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