日本教育工学会論文誌
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40 巻 , 4 号
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論文
  • 保田 江美, 中原 淳
    2017 年 40 巻 4 号 p. 221-240
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,新人看護師の学習の場として病棟内の看護チームに着目し,看護チームのチームワークが新人看護師の臨床実践能力に及ぼす影響を明らかにすることである.本研究では,5病院の新人看護師とその実地指導者各314名を対象に質問紙調査を実施した.また,質問紙調査の結果を補完するため,中堅看護師と実地指導者計10名に面接調査を実施した.質問紙調査の結果,チームワーク構成要素のうち,1)チーム内で業務量をモニタリングし調整するメンバーの行動,2)対人関係を維持・強化するリーダーシップの発揮,3)メンバーへの的確な指示・指導を行うリーダーシップの発揮,4)チーム内の対人関係の良好さ,が新人看護師の臨床実践能力を高めることが明らかになった.また,新人看護師の臨床実践能力向上に資するチームワーク形成の基盤として,チーム内で発揮されるリーダーシップの重要性が示された.面接調査ではこれらの結果を補足する発話を得た.

  • 中村 駿, 浅田 匡
    2017 年 40 巻 4 号 p. 241-251
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    [早期公開] 公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,行為の中の省察を規定する要素として,教師の授業認知の特徴を明らかにすることを目的とする.方法として,CARTER et al.(1988)の写真スライド法を援用し,小学校社会科の授業に関する写真スライドを提示することで,小学校教師31名の認知内容を抽出した.授業において重要あるいは問題と考えられた場面に関して,注目箇所や意味形成を調査した結果,教職経験年数の多い教師群ほど,⑴特定の対象に注目するようになり,特に児童の情動を読み取る上で精度の高い情報源に注目する傾向があること,⑵以前の場面と関連付けながら授業を捉える傾向があること,⑶指導案から予測される児童の反応に基づいて授業を捉える傾向があること,の3点が明らかになった.しかし,生み出される状況の意味については教職経験に関わらず多様であり,教職経験とは異なる視点から検討する必要性が示唆された.以上を踏まえ,授業認知に基づく今後の省察研究への示唆を提示した.

  • 瀬戸崎 典夫, 鈴木 滉平, 岩崎 勤, 森田 裕介
    2017 年 40 巻 4 号 p. 253-263
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究は,TUIを有するタンジブル天体学習用AR教材を開発した.また,開発したタンジブル天体学習用AR教材の教育現場における教材としての適性およびインタフェースについて評価した.次に,協同作業における学習者特性を観点として教材を評価した.さらに,本教材を使った協調学習における発話を分析することで,本教材の利点および改善点を明らかにし,本教材を用いた授業実践に向けての示唆を得ることを目的とした.その結果,本教材は学習者の興味を引きつけるとともに,月の満ち欠けのしくみの理解を促し得ることが示された.また,学習意欲を高める上で有用であることが示唆された.さらに,協同作業に対する意識が低い被験者においても協調学習を支援する教材として有用である可能性が示された.発話分析の結果,TUIやARを実装することにより,仮想環境内で現実環境のオブジェクトを関連付けることでき,学習者間の知識共有に有用であることが明らかになった.

    Editor’s picks

    2017年度論文賞受賞論文

  • 小川 美奈恵, 森本 康彦, 北澤 武, 宮寺 庸造
    2017 年 40 巻 4 号 p. 265-275
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ICT活用指導力の向上のための学習モデルを開発することである.教育の情報化の進展に伴い,求められているICT活用指導力の向上のために,多様なICT活用について気づきを与えられる「間違い探し」動画教材の作成と閲覧による学習モデルを開発し,その効果を明らかにするために,教員養成課程に在籍する学生と,教職大学院の現職教員に対して実践,評価を行った.評価の結果,「間違い探し」動画教材作成・閲覧前後でICT活用に関するマインドマップの有意な上昇,ICT活用指導力チェックリストの領域Bの全項目で得点の有意な上昇が認められた.また,自由記述から,教員養成課程の学生における「間違い探し」動画教材作成・閲覧だけでなく,現職教員においても「間違い探し」動画教材の閲覧を行うことで,客観的に指導について考察でき,ICT活用に関する知識を身につけさせることが可能であることが示唆された.

  • 吉村 春美, 中原 淳
    2017 年 40 巻 4 号 p. 277-289
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,学校の様々な課題に共通する学校改善を目指したミドルリーダーの行動プロセスを明らかにすることである.本研究では,小・中学校に勤務するミドルリーダー15名に対して半構造化インタビューを行い,M-GTA(木下 2003)を用いて分析を行った.分析の結果,学校改善を目指したミドルリーダーの行動プロセスとして,17の概念,6つのカテゴリーが生成され,概念間及びカテゴリー間の関係が図にまとめられた.また,ミドルリーダーから教員に対する「関係性の醸成」,校長に対する「実践のビジョンへの結合」という働きかけの重要性が示唆された.今後は,本研究知見をミドルリーダー育成の内容や方法に反映することが求められる.

  • 長濱 澄, 森田 裕介
    2017 年 40 巻 4 号 p. 291-300
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究では,オンライン学習環境を想定した映像コンテンツの高速提示と学習効果の関連性を明らかにすることを目的とした.1倍速,1.5倍速,2倍速の提示速度の異なる映像コンテンツを3種類作成し,大学生75名に提示した.作成した映像コンテンツは高等学校における情報科の宣言的知識を扱ったものであった.学習の前後に実施した理解度テストの得点から,学習効果を検証した.また,3種類の提示速度に対する主観評価を,質問紙を用いて調査した.理解度テストの分析結果から,提示速度の相違は,学習効果に影響を与えないということが明らかになった.一方,質問紙調査の結果から,映像コンテンツを利用した学習に適した提示速度として,1.5倍速が最も支持されているのに対し,2倍速に対する主観評価は肯定的ではないことが明らかになった.これらのことから,ある条件によっては,一定時間に,これまでの1.5倍から2倍の学習ができる可能性が示唆された.

  • 山本 良太, 中谷 良規, 明賀 豪, 巳波 弘佳, 飯田 健司, 厚木 勝之, 山内 祐平
    2017 年 40 巻 4 号 p. 301-314
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ラーニングコモンズにおいて正課外の主体的な学習活動へと参加する学生を対象として,その活動への参加プロセスを明らかにすることである.対象事例大学において取り組まれているプロジェクトと呼ばれる学生の主体的な学習活動に参加する13名の学生を対象に実施したインタビューを分析した.分析の結果,①ラーニングコモンズの学習環境と結びついたプロジェクトへの参加,②活動過程を通した参加度の高まり,③プロジェクトへの参加に伴う不安,という参加のプロセスが見られた.ラーニングコモンズの多くは正課教育と結びついた図書館の改善を企図したものが多く,本研究の結果をそのままラーニングコモンズ一般に適応することはできないが,主体的な学習活動を促す際の知見となる.

  • 石川 奈保子, 向後 千春
    2017 年 40 巻 4 号 p. 315-324
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    [早期公開] 公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,eラーニング制大学通信教育課程(オンライン大学)の基礎教育科目の受講生を対象に,「大学通信教育課程の社会人学生の自己調整学習方略尺度」による2波のパネル調査を行った.その結果,以下のことが明らかになった.(1) 大学通信教育課程の社会人学生の自己調整学習方略として,「Ⅰ学習方法を振り返る」「Ⅱ学習を工夫する」「Ⅲ大学の友人にたずねる」「Ⅳ学習計画を立てる」「Ⅴ自分にご褒美を与える」の5因子が抽出された.(2) 学習方略因子間の因果関係として,以下の2点が示された.学習方略使用状況は約半年後も大きくは変わらない.共分散構造分析により,「Ⅰ学習方法を振り返る」から「Ⅲ大学の友人にたずねる」「Ⅳ学習計画を立てる」へ,「Ⅳ学習計画を立てる」から「Ⅱ学習を工夫する」「Ⅴ自分にご褒美を与える」への影響が確認された.以上のことから,大学通信教育課程の社会人学生には,まず,「Ⅰ学習方法を振り返る」方略を使用するよう促すことで,自己調整学習のサイクルに誘導できる可能性があることが示唆された.

教育実践研究論文
  • 今野 貴之
    2017 年 40 巻 4 号 p. 325-336
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    [早期公開] 公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,国際交流学習を実践する教師と交流相手や授業実践を支援する組織,コミュニティなどの連携者の間に生じるズレを明らかにすることを目的とする.日本の私立K小学校とインド・ビハール州のNGOが運営するN学校との国際交流学習を事例とし,その事例における教師と連携者のつながりを文脈横断論の理論的枠組みから捉える.事例に関わる会議メモ・メール・スケジュール調整の経緯,および,教師へのインタビューを定性的に分析した.分析の結果,教師は「大学生との経験の違いによるズレ」と「学校外の活動参加へのズレ」の2つを認識したことがわかった.前者のズレに対して教師は,連携者がK小学校の活動にアクセスできるような手段的横断の環境をつくり連携者の役割を再構築させること,後者のズレに対しては教室と学校外の活動を行き来する状況間移動をするなかで,学校外の活動参加の意味を連携者とともにつくりズレを調整していたことがわかった.

  • 杉浦 真由美, 向後 千春
    2017 年 40 巻 4 号 p. 337-347
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    [早期公開] 公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,プリセプターの資質に応じたプリセプターを育成するために,新人看護師が支援を求める場面を教材化し,ビデオ,講義,ロールプレイ,リフレクションを組み合わせた研修コースを開発した.開発の準備として,新人看護師を支援するプリセプターに求められる資質について調査した結果,「全体的な支援」「指導力」「職務への支援」「新人看護師への態度」の4因子25項目が抽出された.さらに,新人看護師が支援を求める場面には,「行動」「感情」「態度」の3つの側面があることが示された.開発したコースを使った研修の前後でプリセプターの自信度に変化がみられるのか検討した結果,研修前にプリセプターの自信度が低い群においても自信度に有意な上昇がみられた.これは新人看護師ならびにプリセプターの経験を教材化し,研修ではビデオ,講義,ロールプレイ,リフレクションを組み合わせたことによってプリセプターの役割が明確にイメージでき,自信度の上昇につながったと考えられる.

  • 深見 俊崇
    2017 年 40 巻 4 号 p. 349-356
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

     わが国においてこれまで十分取り組まれてこなかった学習評価を体系的に学ぶ講義科目であるX大学教育学部「初等教育実践基礎Ⅳ」を事例として,教員志望学生の学習評価に関する力量向上に本講義がいかに寄与するかを質問紙調査と評価イメージを中心に検討した.  講義前後の質問紙調査の結果から,すべての項目で事後の上昇が認められ,本講義の成果が確認できた.しかし,21世紀型スキルに代表される「今後求められる評価の理解と実践」に関する「実践」の観点が他と比較して低く,単元案の作成でも課題が見られたことから,教材のデザインや工夫のあり方が浮き彫りとなった.  また,受講者の評価イメージに関しては,講義前後で「固定」から「変動」への統計的に有意な変化が確認された.このことから,本講義が教員志望学生の学習評価に関する認識の転換にもつながっていたことが明らかとなった.

資料
  • 足立 真乙, 中山 実, 梶井 芳明
    2017 年 40 巻 4 号 p. 357-365
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究では要約と構造化の要素が含まれるライティング活動としてのハンドアウトの評価観点を授業実践での調査から明らかにした.学生が作成したハンドアウトの評価は,量的な評定尺度と質的な自由記述コメント,書き込み方略から検討した.ハンドアウトに対する評定を因子分析し,印象評価でまとまり,簡潔さ,内容評価で分かりやすさ,構造化の4因子が抽出された.この4因子とハンドアウトの有用度評定との関連を示す因果モデルを作成し,4因子が有用度を高めることを確認した.自由記述コメント,書き込み方略について有用度との関係を対応分析で調べたところ,有用度に応じた自由記述コメント,書き込み方略があることが示された.

  • 西村 洋一
    2017 年 40 巻 4 号 p. 367-377
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ソーシャルメディア利用におけるプライバシー設定が利用者にどのように行われ,どのような要因がそれに関わっているのかを検討することである.特に,ソーシャルメディアの1つに位置づけられ,若者の利用が活発であるLINEを取り上げ,310人の大学生を対象に調査を実施した.結果は以下のとおりである.広範囲に情報が開示される懸念の少ないLINEの利用において,プライバシー設定は既存の他者とつながるための部分については弱い設定とし,未知の他者とつながる可能性のある設定や利用行動はあまり多くは見られなかった.また,プライバシー設定や利用行動と関わる要因として,知覚された規範や効用認知が有意な関連を示したが,インターネット上のプライバシー懸念は強くは関連していなかった.これらの結果を踏まえ,ソーシャルメディアの特徴を捉えながらプライバシーの扱いについて知見を深め,応用していくことの必要性などについて考察を行った.

  • 畑野 快, 斎藤 有吾
    2017 年 40 巻 4 号 p. 379-386
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,項目反応理論を用いて主体的な学修態度尺度の項目を傾き母数パラメータ,位置母数パラメータ,情報量の観点から検討することであった.分析対象者は,国立・私立大学に在籍する大学生735名(51.4%は女性)であった.第一に,ポリコック相関係数を用いた因子分析により主体的な学修態度尺度の一次元性が確認された.第二に,項目反応理論によって主体的な学修態度尺度の各項目における傾き母数パラメータ,位置母数パラメータ,項目反応曲線,項目情報曲線を確認した.第三に,主体的な学修態度尺度のテスト情報曲線を算出した.最後に,主体的な学修態度尺度の項目特性について議論した.

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