日本教育工学会論文誌
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40 巻, Suppl. 号
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ショートレター
  • 青山 郁子
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 1-4
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,高校生のインターネット上でのコンタクトリスク行動に関連する防御・リスク要因を特定することを目的とした. 高校生200名を対象に, ネット上でのコンタクトリスク行動, 通信機器でのフィルタリング・ペアレンタルコントロールの有無,ネット使用における保護者による統制実践, 保護者によるモニタリング, 接続自由, 保護者との信頼関係, 学校での所属感, バーチャルな人間関係への親近感を測定し,関連を検討した. 結果は,コンタクトリスク行動とフィルタリングの有無で実質的な差は見られなかった. コンタクトリスク行動の予測に関しては,学校での所属感, バーチャルな人間関係への親近感, 接続自由が有意な説明変数であった.

  • -視線計測による検討-
    島田 英昭, 平野 友朗
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 5-8
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    メールを効果的に書くことは,学業やビジネスの効率化に役立つ.メールでは主にテキスト形式が用いられるため,レイアウトの操作に限界がある.本研究は,テキストメールの中で操作可能な行間と箇条書きに着目し,行間と箇条書きがメールの読解プロセスに与える影響を視線計測により心理実験的に調べた.大学生を対象に,案内,依頼,報告,催促に関するメールを読解することを求め,読解中の視線を計測した.その結果,行間と箇条書きが序盤の読解の安定と,終盤の見直しの促進に寄与していることが示唆された.

  • 宗村 広昭, 鹿住 大助, 小俣 光司
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 9-12
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    反転授業形態の講義を対象として,授業外学習用に準備された講義ビデオへのアクセスログを解析し,学生のビデオ視聴行動と成績との関係性を分析した.講義ビデオへのアクセス傾向を用いて階層クラスター分析を行った結果,クラスは3グループに分類された.講義の数日前から視聴する傾向が強いグループでは,当日に視聴する傾向が強いグループに比べ得点の平均値が高くバラつきも小さい傾向が伺えた.さらに不可の割合が低く秀・優の割合が高かった.また学年進行に伴う視聴行動の悪化傾向が認められ,悪化するグループは偏差値も下がる傾向が伺えた.しかし統計的に明確な有意差は認められず,成績は視聴行動のみでは説明できないと考えられた.

  • 姫野 完治
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 13-16
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,公立小学校教師1名を対象として,授業者の視線から撮影・記録した映像をもとに,授業中の教師の視線傾向や意図を継時的に振り返る授業リフレクションの試行と評価を行った.その結果,教師の視線に焦点を当てた授業リフレクションは,授業中に教師が無意識で行っている教授行動の意図の表出や,授業中の子どもの様子を教師自身の視線を通して対象化することに寄与するという特徴があることが明らかになった.また,教師の視線から撮影された映像に資料的価値が認められた一方で,その利用目的を明確にしておく必要性があるといった課題が示された.

  • 山口 眞希
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 17-20
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    小学校4年生を対象に,CM制作を通じたメディア・リテラシー学習プログラムを開発した.学習プログラムはメディア・リテラシー育成を目的としたNHK学校放送番組と協働学習を取り入れて構成し,実施した.メディア・リテラシー評価尺度調査の平均点による事前・事後・保持調査の比較から,本学習プログラムは,目的意識・相手意識を持って表現を工夫すること,自他の考えを統合して新たな価値を創造すること,情報の送り手としての責任を理解することといった「考えをメディアで表現する能力」の育成に有用であることが示唆された.

  • 大前 佑斗, 糟谷 理恵子, 吉野 華恵, 三井 貴子, 高橋 弘毅
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 21-24
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,留学経験が自発的活動およびキャリア形成に影響を与えるという仮説を立て,これを共分散構造分析により検証した.自発的活動として,ボランティア活動と知識取得活動,キャリアとして国際的活躍志望を設定した.仮説検証のため,高校生84名に対し質問紙調査を実施した.取得したデータを用いて仮説の検証を行った結果,留学経験からボランティア活動・知識取得活動・国際的活躍志望,知識取得活動から国際的活躍志望へと正の関連が認められた.以上より,留学は自発的活動を促進させ,キャリア形成に寄与する可能性が示唆された.

  • 多喜 翠, 堂坂 更夜香, 向後 千春
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 25-28
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    授業や研修のような対面式講義の活性化を図るための設計の一手法として,“マイクロフォーマット”という形式が提案されている(向後 2014).マイクロフォーマットとは,「様々な学習活動を組み合わせてユニット化したもの」である.本研究では,マイクロフォーマット形式で設計した研修を実施し,参加者の学習態度に及ぼす効果を検証した.その結果,様々な学習活動と適切な時間配分でデザインされたマイクロフォーマット形式の研修に対して,参加者は肯定的であるとともに,能動的学習を促し,学習意欲を喚起させることが示唆された.

  • 上淵 寿, 松村 大希, 敦澤 彩香
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 29-32
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では, 友人との学習を「意図的な協同学習」,「他者意識」,「雑談」に分類した質問紙を作成し, 動機づけ調整及び学習のパフォーマンスとの因果関係を共分散構造分析によって検討した. その結果, 意図的な協同学習は自律的調整方略を介して学習の持続性に正の影響を与え, 自律的調整方略を介さない場合は学習の持続性に負の影響を与えることが示された. また, 雑談と他者意識は成績重視方略を介して学習の持続性に負の影響を与えることが示された. ゆえに,友人との学習を行った後も動機づけを高めるための方略を使用することが学習の持続性につながり,動機づけを高めるための友人との学習は,必ずしも学習の持続性には直接はつながらないことが示された.

  • 安藤 明伸, 鳥村 理人, 川田 拓
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 33-36
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,スマートフォンの利用に関するルール作りについて啓発する保護者向けのシナリオ型教材を開発した.この教材は,親子のスマートフォンの利用に関するトラブルの中で生じる意思決定場面の選択肢を選びエンディングに進むもので,主人公が子供の立場と,親の立場で進むものの2つで構成される.試験的に,小学校教員108名を対象に本教材を利用した模擬研修を行った結果,「ルールの必要性の理解」,「家族でルールを作る為のきっかけ作り」の肯定的評価が高く,「子供の立場を理解できること」は,それよりも低い肯定的評価であった.また,シナリオを進める順序で子供と親の立場を入れかえて実施したところ,教材の肯定感に与える印象が異なった.このことから,先行実施したシナリオがバイアスとなることが示唆され,本教材の利用においては,目的に照らした実施順の検討が重要であることが示唆された.

  • 山本 良太
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 37-40
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,教室外の学習において生徒間のインタラクションを実現し学習意識を高めることを企図した,タブレット端末を活用したフィールドワークを対象に,生徒がどのような学習意識を持って学習に取り組んだのかを明らかにすることである.対象事例のフィールドワークに参加した生徒のレポートを分析した結果,生徒はタブレット端末を用いて互いの行動の確認や情報交換などのインタラクションを通して共通する学習課題に取り組む集団意識を持ち,学習に取り組んでいた.一方で,タブレット端末によって,学習とは関連しないインタラクションが促される可能性もあり,活用の際の留意点があることなどが分かった.

  • 三井 一希
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 41-44
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,児童が主体的・協働的に学習に関わることを目指して,授業の冒頭に教師自作の動画を視聴し,その動画視聴を活かして学習する授業をデザインした.小学校2学年の算数科において実践を行ったところ,考案した授業デザインで学習した学級は,そうではない学級と比べて単元テストの点数が有意に向上したことが確認された.また,質問紙調査の結果から,本授業デザインに基づく実践は,児童に好意的に受け入れられたことがわかった.

  • 辻 義人, 杉山 成
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 45-48
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    大学教育の質保証の手段として,アクティブラーニング(以下,AL)への注目が高まっている.AL形式の授業では,多方向的かつ学生の自主的な学びが重視された活動が行われている.本研究では,同一科目について,従来の座学形式と,AL形式で開講したとき,どのように履修者の自主学習への態度や行動,授業内容の理解度に違いが見られるのかに注目し,比較を行った.その結果,以下の2点が明らかになった.①AL形式において学習者の自学自習の意欲が高く,実際に自学自習が行われている.②両形式間において,最終的な理解度に差は見られない.しかし,AL形式の授業では,自学自習への動機づけが維持される効果が期待される.

  • -メディア・リテラシー教育未経験かつ教育歴20年以上の教師の場合-
    佐藤 和紀, 齋藤 玲, 堀田 龍也
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 49-52
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    佐藤ほか(2015)による,教師のメディア・リテラシーに対する意識の変容をねらったプログラムの効果検証は若手教師に限定されていた.本研究では,新たにベテラン教師(教師歴20年以上)を対象に効果検証を実施した.具体的には,プログラム前後の質問紙,および事後インタビューの観点から,その効果検証を行った.その結果,ベテラン教師においても,メディア・リテラシーに対する意識の変容が確認された.本論では,プログラムの適用範囲の拡大可能性およびベテラン教師に対する効果について議論する.

  • -シンキングツールの活用を事例として-
    三宅 貴久子, 岸 磨貴子, 久保田 賢一, 李 克東
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 53-56
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,日中間の共同研究の取り組みをもとに,思考力育成のために活用されるシンキングツールが,中国の小学校において,どのように意味付けられ,実践されるようになったかを明らかにし,中国における思考力育成に対する教師の意識を検討することである.3年間のインタビューを含む観察データおよび教師の振り返りデータを分析した結果,中国人教師は,シンキングツールを自らの授業に合うように独自に活用することがわかり,その背景には,中国では結果としての成果物を重視することなども関連していることが分かった.

  • 解良 優基, 中谷 素之, 梅本 貴豊, 中西 満悠, 柳澤 香那子
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 57-60
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,大学生を対象として授業内容に対する利用価値認知に働きかける介入を行い,課題価値および自己効力感に与える影響について検討を行った.半期の授業内で3回の介入を受けた介入群は221名,対照群は144名であった.研究協力者には,半期の授業の開始時と終了時の2時点で質問紙に回答を求めた.プレ時点の各得点を共変量とした共分散分析の結果,興味価値と実践的利用価値において,介入群の方が対照群よりもそれぞれのポスト得点が高いことが示された.以上の結果に基づき,本研究における介入授業が大学生の学習動機づけに与える影響について考察した.

  • -ラーニングコモンズにおける学習支援内容に着目して-
    野中 陽一朗
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 61-64
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,主体的な学習態度として構成される「学習の質」,授業内学習時間,授業外学習時間,そして学生自身の自主的な学習時間として構成される「学習の量」の両側面から捉えた大学生の学習タイプの類型化を探索的に試みた.その結果,「学習の質」と「学習の量」の観点から大学生の学習タイプが5つに類型化された.大学生の学習タイプは,ラーニングコモンズを中心とした学習支援内容に対する評価に差異を及ぼすことを示した.主体的な学習型は,文献検索方法やデータの分析,学術的文章の読み方という学習支援内容に他の学習タイプよりも高い評価をした.本研究で対象とした学習支援内容の枠組みと限界を踏まえ,成果と今後の課題を示した.

  • 中山 実, 六浦 光一, 山本 洋雄
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 65-68
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    スライド提示と同期再生される音声情報がフルオンライン学習で及ぼす効果を,ノート記録とテスト得点との関係から検討した.スライド情報,音声情報と受講学生が記録したノート内容を比較分析し,受講学生はノート記録としてスライド情報よりも音声情報の内容を詳細に記述しようとしていることを確認した.また,テスト得点との相関分析から,音声情報の内容を反映したノート記録の指標とテスト得点に相関関係が確認された.これらの結果から,音声情報がノート記録やテスト得点である学習成果に効果を及ぼすことを確認した.

  • 標葉 靖子, 平井 啓
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 69-72
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    近年,博士人材のキャリアの多様化や学際的な研究ニーズの高まりから,大学院教育へのトランスファラブルスキル(TS)教育の実装が進められている.しかしながら,専門研究とTS教育との関係のあり方を議論するための知見はまだ十分に蓄積されていない.そこで本研究では,学際的大学院教育プログラムにおいてTSトレーニングによる専門研究での学びの深化を目指す授業として, 異分野コミュニケーションを活用したリサーチ・デザイン授業を開発・実施した.当該授業の受講学生の自己評価メモを分析した結果,研究の構造という切り口で互いの分野を説明しあう異分野コミュニケーションを通して学生が自身の専門をメタ的にとらえ直していること,またそうしたメタ視点の獲得が, TSトレーニングによる専門研究での学びの深化の一助となる可能性が示唆された.

  • 東海林 以展, 古川 雅子, 森田 和行, 森田 裕介
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 73-76
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,視覚障がい者がスクリーンリーダを用いた際のウェブアクセシビリティについて,ウェブからの情報取得よりも困難である入力フォームに着目し,JIS規格に準拠しただけのウェブアクセシビリティの問題点を改善した入力フォームの開発を行った.また,その有効性について検討を行った.普段からスクリーンリーダを使用してウェブを閲覧している視覚障がい者6名を被験者として実験を行った.その結果,「ページ全体の把握」,「ページ内の現在位置の把握」,「入力のしやすさ」の3つの要素について,ウェブページを作成する際にJIS規格に加える配慮設計の有効性が示唆された.

  • 山内 香奈, 菊地 史倫
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 77-80
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    鉄道輸送障害時の旅客案内サービスの改善に向け,車掌が状況に即した臨機応変なアナウンスができるようになる適応的熟達を促す訓練手法を提案した.本手法は適応的熟達を促す鍵となるメタ認知に,①輸送障害時のアナウンス業務という課題についてのメタ認知的知識の教授,②アナウンス文を構成する方略についてのメタ認知的知識の教授,③方略の使用に関するメタ認知的活動の支援,の3段階で働きかける.本手法を車掌訓練に試用し,その前後に受講者に質問紙調査とアナウンス実技試験を行った.その結果,訓練は方略や受講者の課題についてのメタ認知的知識の主観的理解度や,案内の臨機応変さを高めるのに有用であることが示された.

  • 網岡 敬之, 森 裕生, 江木 啓訓, 尾澤 重知
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 81-84
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    学生の学習成果を評価する方法として,授業で用いる手書きワークシートを定量化し,学生の全体的な特徴を検討した.定量的な指標として,デジタル化したファイルサイズに着目する.平均ファイルサイズをもとに学生のグループを分け,形成的な特徴を把握するためファイルサイズの推移のクラスタ分析を行ったほか,グループごとに授業評価アンケートや学期末レポートとの関連の検討を行った.その結果,ファイルサイズの上位群には学期を通した推移に特徴的なクラスタが確認できた.また,ワークシートのファイルサイズが大きいほど,授業への自己評価やレポートといった学習成果が優れている可能性があることがわかった.

  • 杉山 いおり, 渡辺 雄貴, 加藤 浩, 西原 明法
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 85-88
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本論文では,企業内eラーニングにおける社会人に対して適切な学習支援を行うためにコース不合格可能性が高い学習者を早期発見することを目的として,LMSに蓄積された学習ログから最終学習状態を推定し,その評価を行った.滞在可能期間が8週間のコースを対象として,4週目終了時点の学習ログに4種類の機械学習手法を適用させることで最終学習状態の推定をし,その精度の比較および評価を行った.4つの機械学習手法のうち3つで7割を超える正確度で推定することができた.この結果から,学習時期中盤までの学習ログを用いた最終学習状態推定の有用性が示され,学習時期後半の学習支援をより適切に行うことが可能になった.

  • 大塚 一徳, 宮谷 真人
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 89-92
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    モバイル端末は,高齢者にとって生涯学習のツールとして大きな可能性がある.本研究では高齢者の内的認知要因としてワーキングメモリ容量個人差をとりあげ,タッチインタフェースの基本であるシングルタップ方法(タッチペン,指,マウスによるクリック)との関連を相関分析によって検討した.高齢者197名に対して,シングルタップ課題とワーキングメモリスパン課題を実施した.その結果,ワーキングメモリとタッチペンタップ時間とマウスによるクリック時間に有意な負の相関がみられ,シングルタップにワーキングメモリ容量個人差が影響することが示唆された.タッチペン,指,マウスによるクリックの順にタップ時間が有意に短かった.

  • 長濱 澄, 森田 裕介
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 93-96
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,外国語でのオンライン学習時における映像教材の提示モダリティと英語字幕に関する実験を実施し,両者の関連性を明らかにした.実験では, MOOC上の3種類の映像コンテンツを,音声情報のみ(聴覚条件),視覚情報のみ(視覚条件),音声情報と視覚情報(マルチメディア条件)の3条件で提示した.また,オリジナルの英語字幕を全ての条件で提示した.理解度テストの結果,視覚条件における得点が,他の条件に比べて有意に高かった.また,映像教材の提示モダリティによって,英語字幕の活用方略が異なることが示唆された.一方,提示モダリティに対する主観評価から,マルチメディア条件が最も支持されたことが明らかになった.

  • 小宮 聖司, 米谷 雄介, 永岡 慶三
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 97-100
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    大学教育における機械設計製図は機械工学に関する基幹的な科目である.本科目では学生に多様な知識や技術の習得が要求され,学生ごとに進度が異なることから,教員の個別指導が重要である.個別指導改善には,個別指導の事例を映像として蓄積し,教員間で共有することが有効であるが機械設計製図では指導内容が多岐に渡り,かつ映像が膨大であることから振り返りの実施が困難である.本課題に対し本稿で提案するシステムは,個別指導情報から個別指導映像の検索を可能にする.個別指導情報の記録に際しては,RFIDラベルを学習成果物に付与し,情報登録における煩雑さを軽減している.本稿では,開発したシステムの概要として,開発の目的,設計,機能を紹介し,今後の展開に言及した.

  • 今野 貴之
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 101-104
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本稿では,1人1台タブレット端末環境における学校放送番組活用のための教師の手立てを明らかにすることを目的とした.学校放送番組の「未来広告ジャパン!」を用いて授業実践を行った大阪の私立K小学校5年生を事例とした.事例の分析の結果,教師の手立てとして,学校における番組利用のルールと,集団の活動におけるタブレット端末利用のルールを設定していることがわかった.また,これらの手立てはタブレット端末の家庭への持ち帰りと,探究的な学習の時間的制約が影響していることが考察された.

  • 中橋 雄, 中川 一史, 佐藤 幸江, 青山 由紀
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 105-108
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,開発中の国語科学習者用デジタル教科書のマーカー機能と授業支援システムの転送提示機能を活用して言葉を検討させる授業における教師の指導方略の構成要素を抽出することを目的としたものである.小学校・6年生・国語「『鳥獣戯画』を読む」の単元における授業実践を参与観察・ビデオ記録し,教室内の現象(発話と振る舞い)を書き起こし,学習者用デジタル教科書活用場面における教師の指導方略の構成要素をコード化して抽出した.本実践における55件の活用場面をオープンコーディングした結果,4カテゴリー14項目の指導方略の構成要素を抽出するとともに,その構造を明らかにすることができた.

  • 稲垣 俊介, 和田 裕一, 堀田 龍也
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 109-112
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    高校生のインターネット依存傾向と学校生活スキルの関連性について検討した.インターネット依存傾向尺度(鶴田ほか 2014)の下位尺度得点を説明変数,学校生活スキル尺度(飯田ほか 2009)の総合点を目的変数とした重回帰モデルの多母集団同時分析を行った.男子は「長時間利用」,女子は「メール不安」の得点がそれぞれ高いと学校生活スキル得点が低い傾向にあることが見出された.男子はメール以外の用途でのインターネット利用,女子はメールによるコミュニケーションが学校生活スキルに負の影響を及ぼすことが示唆された.これらの知見を踏まえ,高校生のインターネット利用や依存傾向の予防に対する指導のあり方について考察した.

  • 関 陽介, 松浦 健二, 佐野 雅彦, 上田 哲史, 立井 宏明
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 113-116
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    Web検索やファイル編集作業に対して,統合的に作業記録する常駐のツールと,後日それを活用して過去作業の関連作業を支援するビューワを提案する.過去に実施した知的作業の想起が促されることで,現在の作業効率が高まることや相対的な成果物の充実などが期待される.

  • 松山 由美子, 堀田 博史, 佐藤 朝美, 奥林 泰一郎, 松河 秀哉, 中村 恵, 森田 健宏, 深見 俊崇
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 117-120
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,今後のわが国の保育現場での幼児向けアプリ活用につながるような評価規準の作成につながる保育者のアプリの評価観点について検討した.既存の幼児向けアプリについて,幼稚園教育要領に示された保育のねらいや内容に即した評価項目を設定し,保育の視点で評価可能な評価者による評価を試みた.その結果,実際の保育と関連づけて遊びやアプリを評価する3つの評価観点を示すことができた.その評価観点は,実生活と関連した力の獲得,創造性があり試行錯誤できる遊びの促進,一人ではなく大人や友達と楽しめる共同・協同性の3点であった.

  • 登本 洋子, 伊藤 史織, 後藤 芳文, 堀田 龍也
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 121-124
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    意見や主張を支えるための根拠を保証するための情報,すなわちデータを整理し選出する能力が,探究的な学習時においてとりわけ必要とされる.しかしながら中学生はその能力が必ずしも高いとはいえない.そこで本研究では,収集したデータから根拠として成立するかどうかを学習者自身が整理し分析決定するまでの過程を手助けするためのワークシート「証拠収集シート」を開発し,中学校で実際に運用し,その評価を行った.その結果,ワークシートのおおよその効果自体は確認されたものの,中学生が根拠を整理するうえでの細かな課題点が同時に確認された.

  • 小谷 章夫, 小谷 真央
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 125-128
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    バランスよく配色できるセンスを養うことはデザイン教育における重要な専門教育のひとつである.本研究では,学習者に自ら配色したデザインが実際に商品化されたような現実感を与える作品評価環境をプロジェクションマッピングの導入によって構築した.従来の授業で行っている配色した2次元の画像データをPCモニターに投影して作品評価する方法ならびに2次元の画像データを3次元モデルにマッピングしたCG画面での作品評価方法と新たに構築したプロジェクションマッピングによる作品評価方法を相互に比較した結果,プロジェクションマッピングによる作品評価方法に優れた効果があることを確認した.一方で,PCモニターとプロジェクションマッピングでは色が違って見えるため評価が少し変わってしまう問題が明らかになった.

  • 臼井 昭子, 佐藤 克美
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 129-132
    発行日: 2017/04/01
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    美術科では言語活動を取り入れた鑑賞学習が重視されてきている.一方で,作品提示機器が充実していないなどの課題を抱えている.そこでインタラクティブな機能を持つ鑑賞用教材“D-FLIP Paintings”を開発した.本稿では,それを用いた鑑賞学習が意見の交流を喚起し新しい気付きをもたらすかについて明らかにするため,高校生6名2グループを対象に鑑賞の学習を行った.そして,生徒の発話を可視化した共起ネットワーク図や発話回数等を分析・考察したところ,インタラクティブな機能が意見の交流を活性化し新しい気付きをもたらした可能性があることがわかった.

  • 上田 勇仁
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 133-136
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    プロジェクト学習など実習型式の授業において,リフレクションの重要性がこれまで指摘されてきたが,毎回の授業の終了後に実施する個人のリフレクションを検証した研究は少ない.本研究では,(1)プロジェクト学習における個人のリフレクションにどのような特徴があるのか明らかにし,(2)PBLの各学習活動が個人のリフレクションにどのような影響を与えるのか検証する.その結果,個人のリフレクションの特徴として「報告」「解釈」「計画」「応用」の傾向が明らかになり,各授業の学習活動のうち発表活動を設定した授業回においては,「応用」に関する記述数の頻度が向上することが確認された.

  • 松田 岳士, 山田 政寛, 合田 美子, 加藤 浩, 宮川 裕之
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 137-140
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,自己調整学習が求められるeラーニングにおいて学習計画を立てる習慣の確立を支援する「セルフ・レギュレータ」の試作版を開発し,その形成的評価を行なった.セルフ・レギュレータは,学習者が学習開始前に自らの受講計画を登録しなければコンテンツを受講できないシステムであり,自分自身へのリマインドメール送信,一回限りのスケジュール変更などが可能である.また,フェーディングを考慮した機能も設計されている.大学の授業で実施した試作版の形成的評価では,視認性や操作性には大きな問題がなかったものの,リマインドメールのタイミングやコンテンツ受講回数など機能面で追加の開発を求めるニーズが示唆された.

  • 稲垣 忠, 土屋 利恵子, 住谷 徹, 中垣 眞紀
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 141-144
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    家庭での自主学習の成果物をクラウド上に保存し,学習履歴を確認したり,他の児童の記録を参照したりできる学習環境を構築した.小学校6年児童を対象に教室で自主学習の成果を記録・参照した場合と,端末を家庭に持ち帰り,自宅で記録・参照した場合とを比較した.その結果,自主学習の学習動機や実施教科,学習方略に明確な変容はみられなかったが,カメラの特性をいかした多様な成果物が記録された.また,端末を持ち帰ることで他の児童の学びを家庭でじっくり閲覧できることは肯定的に評価され,児童が主体的に取り組む意欲や,他の児童と自主学習を共有することへの積極的な態度の涵養につながったことが確認された.

  • 脇本 健弘, 稲垣 忠, 寺嶋 浩介, 中橋 雄, 島田 希, 堀田 龍也, 坂口 真
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 145-148
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,「ICT研修ファシリテーター養成講座」を開発し,その評価を行った.「ICT研修ファシリテーター講座」とは,主として若手・中堅教師が,将来学校内や教育センター等の機関において,デジタル教材を用いたICT活用に関する教員研修を実施できるようになることを目指した講座である.質問紙による調査の結果,受講生はICT活用に関する知識,教員研修を企画・運営するスキルを身につけたことが示唆された.また,受講生の研修を企画するスキルや運営するスキルを向上させるためには,受講生自身が実際に研修を企画・運営し,それらに関してフィードバックを受けられるようにすることが有効であると示唆された.

  • 大杉 成喜, 小林 秀雄
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 149-152
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    知的障害と肢体不自由を併せもつ児童生徒が学習に利用できる教材制作環境を提案する.近年,安価で精度の高い視線入力デバイスがリリースされた.この視線入力装置(視線マウス)を利用し,これまで特別支援学校で教材制作に利用されてきたMicrosoft PowerPointに外部装置を制御するマクロ機能を加え,開発した出力装置(スイッチボックス)からスイッチ・トイ等を制御する教材制作環境を開発した.制作された教材は,障害の重い児童生徒が視線入力により選択し,外部機器を操作することができた.またその場での改編も容易であった

  • 竹生 久美子, 辻 靖彦
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 153-156
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究はeラーニングにおける学習行動と成績との関連性を明らかにすることを目的としている.本論文では通信課程と通学課程で開講する福祉系eラーニング科目の受講者611名を対象に(1)両課程の学習行動の違い,(2)学習行動と正答率の関連,(3)受講ペースの分類と正答率の関連,を調べた.その結果,社会人を主とする通信生は通学生と比べて集中的に受講しており,かつ受講済要件達成後の学習量が有意に多い傾向が見られた.これより通信生は自律的に学習している可能性が窺える.一方,通学生は長期間,習慣的に受講する傾向が見られ,かつ低成績の通学生は小テストの受験回数が多く,締め切り直前にまとめて受講する傾向が見られた.

  • 斎藤 有吾, 小野 和宏, 松下 佳代
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 157-160
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    近年,大学教育では,学習成果の直接的指標と間接的指標との関連が活発に議論されている.本研究では,ある歯学系のコースのパフォーマンス評価を事例とし,教員の評価と学生の自己評価 (直接評価) と,学生の学生調査用アンケート項目への自己報告 (間接評価) との関連を検討し,そこからそれぞれの評価が担うべき役割と射程を議論する.

  • 三保 紀裕, 本田 周二, 森 朋子, 溝上 慎一
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 161-164
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,反転授業をアクティブラーニングの一形態として捉えた上で,授業における予習の仕方と対面授業でのアクティブラーニングの関連について検討を行った.反転授業を採り入れた3大学7授業に協力を頂き,プレ・ポスト調査を実施した.結果,アクティブラーニングを通じた認知プロセスの外化が生じている度合いが高い授業では,深い学習アプローチや学習意欲の上昇がみられ,予習の仕方にも内容理解を深めるような形での変化が生じていた.内容理解を深めるための予習の仕方が,授業内でのアクティブラーニングをより活発なものとする役割を担っているようであった.このことは,反転授業における予習の仕方の重要性を示す結果であった.

  • 福山 佑樹, 小原 優貴, 脇本 健弘
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 165-168
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,教員にとって自身が学生時代に体験しておらずイメージしづらいことが想定されるアクティブラーニング手法を動画によってイメージ可能な状態で学ぶための動画教材「映像で見るアクティブラーニング」の制作を行った.動画教材は2つのパートに分かれており,前半パートではテロップとCGにより手法の手順を学び,後半パートでは実際の授業風景により学生の様子をイメージさせる構造を特徴としている.評価の結果,ピアレビューの準備に関する知識とポスターセッションとジグソーメソッドの全項目に有意差が確認され,視聴したアクティブラーニング手法を試したいという意欲が獲得されたことが示唆された.

  • 時任 隼平
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 169-172
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,アクティブラーニング型授業において受講生がスチューデント・アシスタント(SA)に求める能力を明らかにする事である.Z大学で行われているプロジェクト学習を事例として取り上げ,18名の受講生を対象にインタビュー調査を実施した. その結果, SAは受講生から「議論の支援」や「プロジェクト学習に関する知識・技術」,「学生という立場」といった特性が求められており,加えて「自力/他力の拘り」や「変動する役割と人間関係」の影響を受け活動状況が不安定な中で適切に支援する「タイミングの見極め」を求められている事が明らかとなった.

  • 村松 浩幸, 原山 千秋, 原山 康則
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 173-176
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,中学校技術・家庭科技術分野を対象に,ゴールベースシナリオ(GBS)理論を用いて,栽培技術におけるトレードオフの理解を促すことのできるシナリオゲーム教材の開発を目的とした.開発教材は,GBSに基づき,主人公が社長から高収量・高品質かつ環境負荷の少ないミニトマトの栽培を目指すというストーリーで各構成要素を設定し,開発をした.開発した教材を用いて中学校1・2年生203名を対象にした授業実践において評価をした.事前の質問紙および事後ワークシートの記入結果から,開発した教材は,生徒らにトレードオフの理解を促せたことが確認できた.また,事後の質問紙調査の結果から,設定したGBSの構成要素が有効に働いたことが確認できた.以上のことから,目的とした教材が開発できたことが確認された.

  • 鎌田 明美, 村川 雅弘, 泰山 裕, 白水 始
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 177-180
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    汎用的能力の育成が叫ばれている中,その評価のあり方が問われてくる.本研究は,汎用的能力の基礎的な力である思考力を評価する重要性を踏まえ,思考過程可視化システムの開発を試みた.今回は,文部科学省の研究開発学校である先進校の生徒を対象に,相手が誰かわからない者同士で数学科の問題を解かせ,iPadと手書き入力アプリを活用することで,建設的相互作用による学習者同士の思考過程が可視化できるシステムを開発した.学習者が互いに問題解決に至る段階的な思考過程を辿れる,相手が不明であることから躊躇なくメッセージ交換され瞬時に互いの理解が促進される,共感しながら理解を促進し問題解決に向かえる,利点が見出された.

  • 深見 俊崇
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 181-184
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,教員志望学生のカリキュラム開発力量の向上に資するプログラムとして「カリキュラム開発プロジェクト」を構想・実践し,2013年度と2014年度の成果と課題を検討した.  両年度共に「カリキュラム開発とデザイン」,「地域を題材としたカリキュラム開発」,「児童・生徒の学習経験のデザインと新たな環境への対応」の3つの観点で事後の上昇が認められ,教員志望学生のカリキュラム開発力量の向上が認められた.2013年度については教育実習の経験やフィールドワークの実践,2014年度については参加者1人1人が模擬授業の実践を行ったことがそれぞれの年度における変化の差異として確認できた.

  • 齋藤 玲, 和田 裕一
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 185-188
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    インターネット技術の発展に伴う情報機器やその関連コンテンツの普及が人間の認知や行動を変えているという見方がある.しかしながら,その見方を議論するまでの知見の蓄積は不十分である.そこで本稿では,この見方を,個人のインターネットを含めた各種メディアの利用傾向とテキストの読みとの関係から検討した.具体的には,メディア利用傾向がテキストの課題成績や読み時間に及ぼす影響について,相関分析と重回帰分析から検討した.その結果,日常的なSNSの接触頻度が高いほど,テキストの課題成績が低くなることが見出された.この結果は,インターネットの利用傾向の違いがテキストの読みのあり方に影響を及ぼしている可能性を示唆した.

  • 江木 啓訓, 林 一雅, 辻澤 隆彦
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 189-192
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    学習管理システム(LMS)の全学的な利活用を進めている大学において,全教員を対象として実施したアンケート調査の結果について分析する.LMSを用いた教育の改善や効率化の組織的な取り組みが進められているが,利用者である教員の意識が必ずしも明らかにされているとはいえない.本稿では,2006年度からLMSを全学の教育基盤システムとして運用している理工系の大学を対象として,授業資料の公開に利用している教員,課題回収やオンラインテストなどの実施に活用している教員と,LMSを利用していない教員とを比較した.教員の利活用の状況および目的,今後利活用したい機能と課題に関する意識の違いを明らかにした.

  • 田尻 圭佑, 瀬戸崎 典夫
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 193-196
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,仮想空間内における教員の介入による指導が可能な,没入型天体教材の開発を目的とした.さらに,学習者の身体動作にともなった視点移動および,3次元ジェスチャ操作の観点から,本教材の有用性について評価した.その結果,川崎ら(2010)の研究と同様に,学習者の身体動作にともなった視点移動は,方位や方角が認知しやすい可能性が示唆された.また,仮想空間内に講師の手が表示されることで,理解が促されると被験者全員が回答した.

  • 中田 英利子, 森田 泰介
    2017 年 40 巻 Suppl. 号 p. 197-200
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,学生による授業評価への回答に関わる認知過程を明らかにすることである.シラバスどおりに進められた授業について,大学生156名にシラバスどおりに授業が進められたか否かを評定する際に想起した事象などを記述させた.その結果,授業評価の実施月の授業内容のみを想起する者が多いこと,授業内容とシラバスの内容とを想起した者はシラバスどおりに授業が進められたかについて正確に判断するが,何も想起しなかった者は不正確に判断することが示された.この結果から,全授業の内容とシラバスとを照合して評価するという授業評価の前提が成立しない場合が存在する可能性が示唆された.

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