日本教育工学会論文誌
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41 巻 , 1 号
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論文
  • 田中 孝治, 水島 和憲, 仲林 清, 池田 満
    2017 年 41 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    [早期公開] 公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    多様化する仕事に適応できるように,企業の人材育成には,日常的に自ら育つ環境づくりが重要である.本研究では,分析過程が残る特徴と分析過程でストーリーラインが記述される特徴を持つ質的データ分析手法SCAT を用いることで,新入社員の学び方の学びとその指導にあたった指導員の支援方法の表出化を試みた.本研究では,新入社員研修で用いる週報を新入社員と指導員とが対話する学習環境として捉え,週報に5週間に渡って記述された新入社員の振り返りとその振り返りに対する指導員のコメントを分析対象とした.分析結果から,指導員が,経験の積み重ねによる知識構築のプロセスである経験学習サイクルに沿って,実習員の学び方の学びを支援することで,実習員の学び方の学びが深化していることが読み取れた.本研究では,週報の分析から得られた結果を基に,学び方の学びの経験学習サイクルを転回する実習員と指導員の相互作用モデルを作成した.

  • 須田 昂宏
    2017 年 41 巻 1 号 p. 13-28
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    [早期公開] 公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    本論文では,大学授業の実態把握のためのツールとして,リアクションペーパーの記述内容に基づく学生の学びの可視化手法を開発した.「学びの具体性の保持」と「分析手続きの定式化」を重視し,中道らの「中間項」を参考とした.「中間項」は元のテキストデータを原文の具体性を保ちつつ構造化されたデータに変換するというものであり,学習を「直接的な学習対象」と「間接的な学習対象」からなるものとして捉えるマルトンの学習論に依拠する形でリアクションペーパーの記述内容を構造化されたデータに変換し,クロス集計表に整理し,コレスポンデンス分析とバブルチャートを適用することによって,「学生」と「学びの類型」の関連構造や「授業トピック」と「学びの類型」の関連構造を可視化することを可能にした.さらにはこれを多様な授業に試験的に適用することで,各授業固有の学びの特徴が明らかになると同時に,本可視化手法の有効性が示された.

  • 赤松 大輔
    2017 年 41 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学新入生の学習観の規定要因が何であるか,学習観と学習方略の間に相互的な規定関係があるかについて,学習方略の過去の使用,学習方略に対する有効性の認知,達成目標といった要因を取り上げて検討した.4月(T1)と7月(T2)の2度にわたり調査を行い,T1では大学1年生791名,T2では大学1年生351名を対象とした.まず,現在の学習観が規定されるプロセスを明らかにするために,過去の学習方略使用と現在の学習観の間に現在の有効性の認知を媒介したモデルを構築し,パス解析を行った.その結果,T1とT2の両時点で,達成目標とともに,学習方略が学習観を規定していることが明らかになった.次に,2時点のデータを統合し,パス解析を行った.その結果,伝統志向は反復作業方略と,活用志向は深い処理方略および音声記憶方略と関連し合うように,学習観と学習方略の間には有効性の認知を介して相互に規定し合う関連があることが明らかになった.

  • 渡邉 文枝, 向後 千春
    2017 年 41 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    [早期公開] 公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,MOOCに代表されるオンライン講座におけるドロップアウト率の低減を図るための示唆を得るために,JMOOCの講座における学習者のeラーニング指向性と相互評価指向性(相互評価への信頼感,相互評価の有用感)が学習継続意欲と講座評価に及ぼす影響について検討した.その結果,eラーニング指向性は,相互評価の有用感と学習継続意欲,講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.相互評価指向性においては,相互評価への信頼感から講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.相互評価の有用感は相互評価への信頼感と学習継続意欲,講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.また,相互評価の有用感は,学習継続意欲と講座評価に対して最も大きな正の影響力を示した.これらのことから,eラーニング指向性と相互評価指向性は学習継続意欲と講座評価に寄与することが示唆された.

  • 池尻 良平, 大浦 弘樹, 伏木田 稚子, 安斎 勇樹, 山内 祐平
    2017 年 41 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    ジャーナル フリー

    MOOC(大規模公開オンライン講座)の普及によって遠隔地であっても無料で大学の講義を受講できるようになっている.しかし,講座の学問領域において何が学習されているかを実証的に評価している研究は少ない.そこで本研究では,MOOC の歴史学講座の受講による学習効果を評価した.講義内容を視聴し課題に取り組んだ実質的な受講者を分析した結果,歴史領域の知識の獲得を要する各週課題の平均得点率はどれも80%以上,歴史的思考力を要する講義課題の平均得点率は68%であることが確認された.一方,事前事後の質問紙・テストで測定した歴史的思考力は事前に比べて事後で有意に向上したものの,効果量としては小さいということが示された.これらの結果を踏まえ,講義映像と掲示板で構成されるMOOC に対し,より歴史的思考力を育成する方法として,対面学習と組み合わせたり,CSCL 研究の知見を踏まえた機能を追加したりする改善方法も示した.

教育システム開発論文
  • 板垣 翔大, 安藤 明伸, 安孫子 啓, 堀田 龍也
    2017 年 41 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,かんな掛け動作の学習を支援するための授業用システムを開発し,中学校技術・家庭科技術分野の授業で利用し,評価を行った.本システムは,生徒がかんな掛け動作練習用アプリケーションおよび専用かんなを用いて練習を行うと,練習データを収集・蓄積し,そのデータを授業者に指導参考情報として提示するものである.本システムを用いた授業実践からは,生徒のかんな掛け動作が,練習前後で有意に向上することが示された.また,生徒を対象とした質問紙調査からは,学習者用端末部が生徒の興味・関心を喚起するものであることや,生徒の集中度に影響を与える点で改善の余地があることがわかった.授業者を対象としたインタビューから,指導参考情報提示部が効率的な机間指導にも役立つという感想が得られた.

教育実践研究論文
  • 渡邉 文枝, 向後 千春
    2017 年 41 巻 1 号 p. 77-87
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    [早期公開] 公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,eラーニング指向性質問紙短縮版を作成し,その信頼性と妥当性を検討するとともに,学習者のeラーニング指向性の変化とeラーニング指向性の項目間の因果関係を検討することであった.調査対象はJMOOCの講座における学習者であり,調査時期は最初の単元の受講開始前と最後の単元の受講終了時であった.分析の結果,eラーニング指向性質問紙短縮版は1因子構造であり,一定の信頼性と因子的妥当性が確認された.また,eラーニング受講経験の有無によるeラーニング指向性の変化を検討した結果,eラーニング未経験者は,eラーニングの講座を修了することにより,eラーニング指向性が向上する可能性が示唆された.eラーニング指向性の項目間の因果関係においては,交差遅延効果モデルによる分析の結果,「孤独」が重要な要因になっていることが示唆された.

資料
  • 深見 友紀子, 佐藤 和紀, 森谷 直美, 中平 勝子, 堀田 龍也
    2017 年 41 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    ジャーナル フリー

    小学校第5学年児童がタブレット端末を家庭に持ち帰り,約3週間にわたってリコーダー演奏に関するビデオを視聴し,卒業式での演奏に向けた練習に取り組んだ.その期間中,児童にはビデオ視聴回数の記録,3回の演奏録画が課された.実践終了後,録画された映像に対して音楽の専門家3名が総合評価(10点満点)と項目別評価(5点満点)を行った結果,児童の集団としての演奏技能が伸び,特に,実践開始時点において中位だった児童(中位群)にすべての項目で進歩が見られた.下位群には3回目に総合点で平均を上回った児童も存在したが,わずかしか伸びない児童もいた.上位群も全般的に伸びが小さかった.技能が伸びにくい児童に対する個別指導の必要性,ビデオ教材の改良等の課題が残ったものの,一般の音楽レッスンの形態を適用した一人1台端末を活用した家庭学習は,音楽科にとっては,授業時数不足という現状を打開する一方法であることが示された.

  • 荒井 俊行, 野嶋 栄一郎
    2017 年 41 巻 1 号 p. 97-108
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2017/05/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学生がボランティア活動を通じて得たい参加成果志向の構成要因を明らかにし,参加志向動機・不参加志向動機に及ぼす影響を検討することによって,大学生のボランティア活動の推進やボランティア教育のあり方に繋がる知見を得ることを目的とした.大学生に対して質問紙調査を行った結果,参加成果志向では,自己成長・キャリア開発・精神的高揚・ヘルス安寧・評価承認の5因子が見出された. また, 大学生のボランティア活動参加に対して,参加成果志向は,参加志向動機・不参加志向動機を規定する要因であることが明らかとなった. 特に,自己成長・精神的高揚は,内発的な参加志向動機を高めることが示された. ボランティア活動の推進やボランティア教育の実効性を高めるには,参加成果志向を的確に捉え,これらに適切に応える方策をとる必要があることが示唆された.

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