日本教育工学会論文誌
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41 巻 , 4 号
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論文
  • 原田 勇希, 鈴木 誠
    2018 年 41 巻 4 号 p. 315-327
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    [早期公開] 公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,中学校理科に苦手意識を持ち,動機づけ,とりわけ期待信念が低下しやすい個人特性を明らかにすることである.先行研究の知見を受け,理科学習でのつまずき経験と関連する個人差変数として心的イメージ処理特性に,つまずきが期待信念に与える影響を調整する変数として能力観に着目して理科4分野の期待信念に及ぼす影響を検討した.その結果,空間イメージ処理に苦手さのある生徒は理科に苦手意識を持ちやすいことが明らかとなり,特に物理分野でこの傾向が顕著であった.また物理と化学分野では能力観によってその影響は緩衝され,拡大的能力観を保有していれば,空間イメージ処理に苦手さがあっても統制感が比較的維持される傾向にあった.さらに生物分野の統制感には物体イメージ処理の影響が強く,分野によって要求されるイメージ処理の特徴が異なることが示唆された.

  • 石川 奈保子, 向後 千春
    2018 年 41 巻 4 号 p. 329-343
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    [早期公開] 公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー

    本研究では,オンライン大学で学んでいる学生を対象に,自己調整学習およびつまずき対処方略の使用状況について明らかにするために調査を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)オンライン大学の学生のつまずき対処方略は,「学友に質問する」「教育コーチに質問する」「放置する」「自分で解決する」の四つの方略に分類された.(2)ゼミに所属している場合,学習の相談ができる学友がいる学生は,教育コーチや学友に援助要請することでつまずきを解消していた.一方,そういった学友がいない学生は,つまずいたときでも援助要請しない傾向があった.(3)学習の相談ができる学友がいる学生は,より多くの自己調整学習方略およびつまずき対処方略を使用していた.以上のことから,オンライン大学での学習継続においてメンターや学友との交流が重要であることが,自己調整学習方略使用の側面から裏づけられた.

  • 長濱 澄, 菅野 弘朗, 森田 裕介
    2018 年 41 巻 4 号 p. 345-362
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究では,オンライン学習を想定した映像コンテンツの高速提示において,学習スタイル別の情報処理プロセスと学習効果の関連性を明らかにすることを目的とした.FELDER の学習スタイル尺度によって分類されたVisual 群20名とVerbal 群20名に対し,講師映像,スライド,字幕から構成された映像コンテンツを1倍速と2倍速の提示条件で提示した.その結果,映像コンテンツの高速提示による認知負荷は,二重チャンネルモデルにおける聴覚チャンネルの情報処理量が増大したことによるものである可能性が示唆された.映像コンテンツの高速提示における教育実践上の配慮として,(1)F-ILS におけるVisual 型学習者のように,視覚チャンネルを中心に情報処理を行う学習者には,聴覚チャンネルにおける情報処理量が過度に大きくならない程度の再生速度で提示する,(2)F-ILS におけるVerbal 型学習者のように,聴覚チャンネルを中心に情報処理を行う学習者には,内容が簡略化された視覚テキストを提示することが挙げられる.

  • 川本 弥希, 渡辺 雄貴, 日高 一義
    2018 年 41 巻 4 号 p. 363-374
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    大学の授業設計において,学生の学習エンゲージメントの向上が注目されている.しかし,それら学習者の情意的な領域をどう捉え,評価すればいいのかの議論は十分に行われていない.そこで,学習エンゲージメントの形成へ影響を与える要因の抽出,及び関連する心理的概念の体系化を目的として,47名の日本の大学生を対象に,質的および量的調査を実施し,PARRISH のラーニングエクスペリエンス(LX)の形成に影響を与えている要因の分析を行った.その結果,PARRISHの定義にはない2つの外的要因,(1)他の授業の課題が忙しい等のその講義以外の要因や(2)友人など周囲の状況に影響を受けた等の講義品質以外の要因が抽出された.また,自律的動機,自己有用感,熟達目標,自己効力感の既存の心理尺度と,LX レベルに有意な正の相関関係があることがわかった.

  • 小山 理子, 溝上 慎一
    2018 年 41 巻 4 号 p. 375-383
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,大学生の一般的な「講義への取り組み方」を測定する尺度を開発し,信頼性と妥当性の検討を行い,「講義への取り組み方」が「アクティブラーニング外化」を媒介し,学習成果に与える影響について検討することであった.大学生1,854名を対象とした質問紙調査を行い,分析を行った結果,講義への取り組み方は,アクティブラーニングへの取り組み方を媒介し,学習成果のうち「資質・能力」と「深い学習」にポジティブな影響を与えることが明らかになった.本研究の結果は,講義への取り組み方が学習成果に及ぼす影響を改めて確認するものであり,資質・能力の獲得や学習の深化のためには,講義の質を見直すことが必要であることが示唆された.

  • 大浦 弘樹, 池尻 良平, 伏木田 稚子, 安斎 勇樹, 山内 祐平
    2018 年 41 巻 4 号 p. 385-402
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    [早期公開] 公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    一般の人々に大学の公開オンライン講座を提供するMOOC(Massive Open Online Course)が急速に拡大している.MOOC は講義動画を中心とした学習コンテンツで構成され,受講者は掲示板上で他の受講者と交流できるが,なかには講師による直接の指導や他の受講者との対面学習を希望する受講者もいる.本研究では,日本史がテーマの一般向けMOOC で,講師の指導のもと他の受講者と議論を通した対面学習を希望する受講者に対し,MOOC コンテンツを事前学習に位置づけ,グループ演習中心の対面学習と連動させた反転学習の実践データから反転学習の効果を評価した.具体的には,修了合否と知識の活用力としての歴史的思考力に対する反転学習の効果を,受講者属性やオンライン学習行動による効果も踏まえ,それぞれの効果の大きさを比較して検証した.その結果,修了合否に対しては反転学習の有意な効果は確認されず,動画視聴と掲示板活動の効果がより大きく,高齢者や非大卒の受講者に修了率がやや低い傾向が示唆された.一方,歴史的思考力に対しては本講座の修了者を対象に反転学習のより大きな効果が示され,動画視聴と掲示板活動の効果は小さく,年齢や学歴の効果も限定的であった.

  • 小野田 亮介, 河北 拓也, 秋田 喜代美
    2018 年 41 巻 4 号 p. 403-413
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,付箋により意見を分類しながら共有すること(付箋分類介入)が議論プロセスに与える影響をシャイネスとの関連に着目して明らかにすることである.大学生32名を対象とし,シャイネス低群と高群のペアを,意見を書きながら共有する対照条件と,付箋を用いて意見を分類しながら共有する実験条件に半数ずつ割り当てた.条件間で発話傾向を比較した結果,対照条件に比べ,実験条件において「主張」や議論の方向性を決める「方針」の発話数が増加し,「つぶやき」の発話数が減少する傾向が認められた.議論プロセスの分析から,実験条件では,付箋を介して思考プロセスを共有していたのに対し,それができない対照条件では,つぶやきによって思考プロセスを共有する傾向にある可能性が示唆された.また,付箋分類介入はシャイネスの高さを補償し,既出意見と異なる新たな意見を提示する「新規アイデア」の発話を促していたことが示された.

教育実践研究論文
  • 森 裕生, 網岡 敬之, 江木 啓訓, 尾澤 重知
    2018 年 41 巻 4 号 p. 415-426
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    大学教育における学期を通した振り返り活動を促進するために,学生個人の各授業回と学期末の理解度の自己評価点の「ずれ」に着目し,「ずれ」の理由を記述させることで振り返りを促す「時系列自己評価グラフ」を開発した.本研究では大学授業2実践を対象に,学生が作成した時系列自己評価グラフを質的に分析した.その結果,(1)全体として学期末の自己評価点が各授業回の自己評価点より10点程度低い「ずれ」が生じること,(2)学生は「ずれ」を認識することで,学期を通して学習内容を関連付けた振り返りや,理解不足だった内容についての振り返りを行ったことなどが明らかになった.

  • 菊島 正浩, 寺本 妙子, 柴原 宜幸
    2018 年 41 巻 4 号 p. 427-437
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学生を対象として批判的思考力(スキル・知識)と態度の育成を目的とする教育プログラムの実践・評価を試みた.プログラムは,領域普遍的な批判的思考の獲得を目的とした第1ステップ(教材テキストを使用した演習)と学問領域への転移を目的とした第2ステップ(創作論文を使用した学術論文の批判的講読演習)から構成された.また,いずれのステップにおいても,批判的思考の態度育成を目的として,少人数によるグループワークを導入した.事前・事後・フォローアップの効果測定の結果,参加者には批判的思考力の育成効果を示唆する変化が認められ,態度の育成にも一定の効果が示唆された.

  • 古田 紫帆
    2018 年 41 巻 4 号 p. 439-448
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    教員は,日々の実践の中で「主体的・対話的で深い学び」を開発したり,そのための技術を高めたりすることが期待されている.しかしながら,このような学習の経験が十分でない場合や,技術の向上に十分な時間をかけることが困難な場合が多い.そこで本稿では,限られた時間の中で授業を再設計したり技術を高めたりするために,即時的相互通信機能(インスタントメッセンジャーアプリ)の利用により,授業中に即応的な授業認知を複数人で共有し,再設計する方法を追求する.ここではある一つの大学の教職科目を対象として即時的相互通信機能を用いた授業研究を実践し,そのプロセスを分析した.複数の視点を活かすためには,授業中の限られた時間においても,授業担当者の意図の確認や授業中の事象の解釈の根拠を共有することが必要であり,これを意識することによって,授業中の認知に基づく効率的な再設計を促進することが示された.

  • 香西 佳美, 田口 真奈
    2018 年 41 巻 4 号 p. 449-460
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,大学教員の授業力量のうち重要な要素のひとつであるTPACK に焦点をあて,MOOCでの授業実践の経験を通じて大学教員がどのようにTPACK を形成しているのかを明らかにすることを目的とする.具体的には,MOOC での授業実践を経験した大学教員に対するインタビューにより,大学教員の授業力量がどのように変化したのかをTPACK フレームワークを用いて検討した.その結果,単一要素の知識ではなく複合的な知識を形成していることが明らかになった.これは,教員と専門家スタッフの双方が主体的な実践者として関与することで,互いに学び合う関係が構築されていたというMOOC 実践の特徴によるものであることが示唆された.さらに,MOOC での実践を普段の授業と関連づけることでTPACK 形成が促進され,普段の授業との違いが大きいほどより広範なTPACK が形成される可能性が示唆された.

  • 江藤 真美子, 山田 政寛
    2018 年 41 巻 4 号 p. 461-475
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校の保健の授業において,避難所生活に着目した健康教育として防災教育と健康教育をつなぐヘルスリテラシー教育を行い,その効果について検討を行った.具体的には,事前に避難所で問題となる病気や衛生面・ストレスなど健康問題に関わることについて調べ,それをもとにゲーミフィケーションと知識構成型ジグソー法の要素を取り入れた協調学習を行い,避難所での健康問題について予防・解決していく方法を発表し,どのグループが一番効果的な方法であるかを投票で決定した.そして,その発表内容をもとに普段から活動している児童委員会ごとの別のグループに再構成し,普段の活動に取り入れながら児童委員会として避難所でどのように活動していくかを発表した.授業の実施前後で知識・思考力の変化を調査した結果,知識の向上とヘルスリテラシーが身に付いたことが示された.

資料
  • 中村 駿, 浅田 匡
    2017 年 41 巻 4 号 p. 477-487
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2018/03/16
    [早期公開] 公開日: 2017/11/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,オン・ゴーイング法を用いて熟練教師が重要であると認知した授業事象を抽出し,授業者に当時の認知および思考内容についてインタビューすることによって,授業者の行為の中の省察の内実を探るとともに,授業認知と行為の中の省察の関係について明らかにすることを目的とする.初任者教師に授業を依頼し,インタビューを分析した結果,(1)自身の教授行為に没頭し,省察が生起しうる事象を見逃していること,(2)一時点的な事象の認知を基に行為の中の省察を生起させていること,(3)予想外の場面として認知して自身の行為枠組みを疑問視するものの,その場ではフレーム実験を試みないこともあること,の3点が明らかになった.また,熟練教師と初任者教師の授業認知の違いから,授業者の行為の中の省察を保証するためには,①教授行為における認知負荷,②授業認知の意味単位,③授業認知と行為を媒介する要素,の3点について考慮する必要性が示唆された.

  • 河崎 雅人, 梅澤 実
    2018 年 41 巻 4 号 p. 489-500
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,LTD 話し合い学習法を援用した算数科教育法の授業実践について報告し,LTD記録用紙とアンケート調査から予習状況の改善・関心の変化・理解の深まりについて検討することである.LTD 話し合い学習法はアクティブ・ラーニングを可能にする学習法の一つで,学生の読む力,考える力,話す力を育む学習モデルであり,思考過程と対人関係に関する心理学の知見に裏打ちされた効果的な学習法である.LTD 話し合い学習法を援用するにあたり,予習用LTD過程プラン・ミーティング用LTD 過程プランを算数科教育法の目的に沿って変更するとともに,予習内容や予習ノートの書き方についても統一する等の工夫をした.その結果,LTD 話し合い学習法を援用した本学習法は「予習の必要性に気付かせること」や「自分の考えをまとめる力」「内容を理解する力」の育成に有効であることが示唆された.

  • 山森 光陽, 伊藤 崇, 中本 敬子, 萩原 康仁, 徳岡 大, 大内 善広
    2018 年 41 巻 4 号 p. 501-510
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    児童の授業参加や課題従事行動を,観察対象学級の児童全員について即時的・経時的に把握するために,身体の揺れ,すなわち身体が1秒間に繰り返し運動する回数(周波数)を指標とすることが有効と考えられる.本研究は,授業参加や課題従事行動を加速度計で計測された3軸加速度から求めた周波数で把握できるようにするために,授業中の児童の様々な行動と,それらの行動に伴う身体の揺れの周波数との対応を示すことを目的として実施された.小学校第3,5学年を対象に授業を模した活動を実施し,一般的な授業に近い形で様々な行動を起こさせ,各々の動きに伴う身体の揺れを加速度計で即時的・経時的に計測し,それらの周波数を求めた.行動の種別ごとに,各々の児童がとり得る周波数の最大値の範囲を一般化極値分布に当てはめて検討した結果,当該行動をとっているかを判断するための周波数の範囲が示された.さらに,課題従事とは見なせない児童の行動の周波数はほぼ0Hz であるか2.5Hz を上回るかのいずれかになることも示唆された.

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