日本教育工学会論文誌
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42 巻, 3 号
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巻頭言
総説
  • 山内 祐平
    2019 年 42 巻 3 号 p. 191-200
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    [早期公開] 公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    急速な社会の変化に対応する学習のあり方としてアクティブラーニングが注目を集めている.本論文ではアクティブラーニングの歴史をまとめ,用語について定義した上で,教育方法や日本への受容過程について考察した.また,この10年間に教育工学会論文誌に掲載されたアクティブラーニングに関する研究の動向をレビューし,授業・評価・環境・支援の4領域にわたる研究が行われていることが明らかになった.これら既存の研究の課題をもとにアクティブラーニングの今後の展望について述べた.

展望
  • 福山 佑樹, 山田 政寛
    2019 年 42 巻 3 号 p. 201-210
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    高等教育を取り巻く状況が変化するに従って,アクティブラーニングという概念が注目されるようになった.アクティブラーニングとは非常に広範な活動を含む概念であり,それ故にその実践においては,目的が曖昧になることや,評価が難しくなるなどの課題がある.本稿では,日本教育工学会に採録された教育実践研究論文の中から,高等教育におけるアクティブラーニング実践研究を対象として,その特徴を「育成したい能力・知識」,「授業デザイン」,「評価」のそれぞれと三者のつながりという観点から検討する.そしてこれらの検討から浮かび上がる,今後の高等教育におけるアクティブラーニング実践研究に対する展望を述べる.

  • 大山 牧子, 松田 岳士
    2019 年 42 巻 3 号 p. 211-220
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    アクティブラーニングでは学習者の活動が多様であり,授業内・外,教室内・外のように,時間や空間の制約を越えて,他者と共に学習することが求められる.そのような特性の授業において学習者を効率的に支援するためには,情報の蓄積や共有を可能にするICT の活用が不可欠である.本稿では,アクティブラーニングにおいて,ICT がどのように機能・活用・研究されているのかを整理した上で,今後の研究動向を模索することを目的とする.具体的には,研究目的を3種(デバイス等の開発研究・ソフトウェア等の開発研究・デバイスやソフトウェアを活用した研究)に大別した上で,アクティブラーニングにおいて学習を深めるためのプロセスである,内化―外化を促すための学習活動(知識の獲得・協調活動・表出活動・リフレクション)について,それぞれICT が何を支援しているのかという観点で検討する.

論文
  • 坂井 裕紀, 福山 佑樹, 向後 千春
    2019 年 42 巻 3 号 p. 221-230
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    [早期公開] 公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    本研究では,学級の信頼をテーマにしたアクティブラーニング型授業のゲーミフィケーションを設計し,総合的な学習の時間に実施した.本授業実施前後において生徒の学級への信頼と授業の楽しさに与える効果を検討した結果,本授業を体験した生徒は,学級への信頼と授業の楽しさが高まることが示された.また,同時多母集団による交差遅延効果モデルを用いて検討した結果,進学コースによって異なるパスが示された.普通進学コースでは,ゲーミフィケーションは学級への信頼に対して正の影響を及ぼすことが示された.一方,特別進学コースでは,学級への信頼が授業の楽しさに対して正の影響を及ぼすことが示された.これらのことから,高等学校において総合的な学習の時間にアクティブラーニング型授業のゲーミフィケーションを実施する際には,進学コースを考慮した教授設計が効果的である可能性が示唆された.

  • 安斎 勇樹, 青木 翔子
    2019 年 42 巻 3 号 p. 231-242
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    [早期公開] 公開日: 2018/10/11
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,様々な領域でワークショップを行っている実践者(初心者~熟達者)を対象に,ファシリテーションにおいて認識されている困難さの実態について明らかにすることである.152名を対象とした質問紙調査と16名を対象としたインタビュー調査の結果,ワークショップのファシリテーションの主な困難さは(1)動機付け・場の空気作り,(2)適切な説明・教示,(3)コミュニケーションの支援,(4)参加者の状態把握,(5)不測の事態への対応,(6)プログラムの調整,に類型化することができた.また,ワークショップの実践領域の違いによって困難さの傾向は異なること,また熟達するにつれて困難さは軽減されていくが,初心者〜中堅には見えていなかった新たな困難さが認識されることが明らかになった.

教育実践研究論文
  • 尾崎 剛, 広瀬 啓雄, 市川 博, 山本 芳人
    2019 年 42 巻 3 号 p. 243-253
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    プロジェクト基盤学習(PBL)は,担当する教員の経験やノウハウに基づいて実施されることが多い.そこで本論文は,社会人基礎力の修得を目的としたPBL の継続的改善の方法について考察した.具体的には,PBL 授業の成功要因と学習成果を構造化し,その関係を重回帰分析により可視化する.この結果から,学習成果の向上有効な要因を見つけ出し,授業改善策を作成する.本研究では,諏訪東京理科大学経営情報学部で実施されるPBL 科目を対象として改善策を策定・実施した.改善策の実施により成功要因の充足度が変化し,それに伴い学習成果の修得度が変化したことを確かめた.これによりPBL の成功要因と学習成果を可視化することによるPBL 授業改善により,継続的改善が可能であることが示された.

  • 日本人学生を想定した授業デザインと学生の取り組みの個人差
    田口 真奈, 後藤 崇志, 毛利 隆夫
    2019 年 42 巻 3 号 p. 255-269
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,京都大学において我が国で初めてグローバルMOOC を全面的に用いて反転授業を行った実践を2年間にわたって調査した.教員へのインタビュー調査と参与観察により,日本人学生を対象として実践された反転授業の授業デザインの特徴を明らかにした.さらに学習者へのインタビュー調査に基づく定性的手法による仮説生成と,MOOC の受講データと質問紙調査を組み合わせた定量的手法による仮説検証により,グローバルMOOC を活用した反転授業に学生がどのように取り組んだかを明らかにした.その結果,授業者が意図しなければ,学生は自発的には掲示板を利用しないこと,英語への抵抗感は反転授業やMOOC の成績と関連しないこと,講義ビデオ視聴や,課題への取り組みについては学生の個人差があることが明らかとなった.反転授業の成績との関連から「わかっているから内容をスキップする」というような視聴態度の学生は,そういった態度を持たない学生に比べて成績が低いという傾向が見られた.

資料
  • 西森 年寿, 加藤 浩, 八重 樫文, 望月 俊男, 安藤 拓生, 奥林 泰一郎
    2019 年 42 巻 3 号 p. 271-281
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学の多人数の授業でのグループワークを支援するグループウェアを開発した.このグループウェアは学生が各自のスマートフォン等を用いて利用するシステムである.出席者の情報を用いたグループの編成ができる;学生の属性(学年やある議題に対する賛成・反対など)が同じものを集めたり,散らばらせたりするような,複雑な条件でのグループ編成ができる;グループ内・グループ間で意見や成果物の共有・交流ができる,という3つの要件を満たすように設計された.授業で利用する4つの事例を通して,これらのシステム要件が実用可能なレベルで実現できていることを確認した.また,主観評価の結果,有効性が高く認識されていた.

  • 小学5年生社会科の調べ学習における事例的検討
    児玉 佳一
    2019 年 42 巻 3 号 p. 283-296
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究はグループ学習中における教師のモニタリングとサポートの特徴について,小学校5年生1学級における社会科の調べ学習の授業観察および教師への再生刺激インタビューにより事例的に検討した.教師にはウェアラブルカメラを装着してもらい,教師の視野からの授業映像の収集を行った.分析の結果,単元の前半では児童の学習への参加状況や学習者像を掴むために俯瞰的なモニタリングを行っていることが示された.内容面へのモニタリングは,「進行表」というツールを基に行っており,サポートについても進行表を媒介して行っていた.また,軌道に乗せたいという想いから,数多くまたは長めの教師から関与するサポートを提供していた.単元の後半では,リソースの配分に意識を向けて,グループ間差を捉えようとモニタリングを行っていた.また,軌道に乗ってきたという心的余裕から,サポートをしながら他グループへのモニタリングを行う様子も見られた.

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