日本教育工学会論文誌
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最新号
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論文
  • 廣松 ちあき, 尾澤 重知
    2019 年 42 巻 4 号 p. 297-312
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/25
    ジャーナル フリー

    経験からの学びの深化には,内省が欠かせない.本研究は,組織業績達成の中核者として活躍しながらも,経験からの学びが十分とはいえない中堅社員を対象に,内省プロセスの把握を目的として半構造化インタビューを行いM-GTA によって分析した.その結果,その内省プロセスは,まず仕事の問題解決の経緯を振り返り,次いで他者からの働きかけにより,自己の内面的特徴を多角的に検討することが分かった.また,内面的特徴の吟味過程で,自分自身の仕事観・信念と,仕事上の理想状態が葛藤すると,問題の本質的課題を理解しながらも,課題解決に向けた行動に取り組めないことが分かった.さらに,中堅社員の業務環境や振り返りの捉え方が,内省を「問題解決の経緯の想起」にとどめ,内面的特徴を検討する「深い内省」を妨げている恐れがあることが分かった.最後に,中堅社員自身が行動変容に取り組むための,上司からのOJT による内省支援施策の重要性を考察した.

  • 岡田 有司, 鳥居 朋子
    2019 年 42 巻 4 号 p. 313-322
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,教学IR における教育情報マネジメントを「データ活用目的」「データ活用体制」「データベース構築」「データ分析・報告」の4つの側面から捉え,そのプロセスモデルについて検証した.また,それぞれの大学の特徴が教育情報マネジメントの諸側面にどのように影響を与えるのかについても検討した.全国の大学・短期大学を対象にWeb 調査を行い,248大学から回答を得た.データ分析の結果,「データ活用目的」が「データ活用体制」の整備につながり,それによって「データベース構築」が促され,「データ分析・報告」につながるという一連のプロセスが存在することが明らかになった.また,「データ活用目的」は「データ分析・報告」にも直接影響を与えていることが示された.大学の特徴に関する分析からは,大学の設置形態や大学規模,大学のミッションが,教育情報マネジメントの諸側面に影響を与えていることが明らかにされた.

  • 黒宮 寛之, 日高 一郎, 山本 義春
    2019 年 42 巻 4 号 p. 323-330
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/25
    ジャーナル フリー

    近年わが国では次期学習指導要領へのアクティブラーニングの導入に伴って,その一形態である研究型アクティブラーニングに注目が集まっている.本研究はある都内中等教育学校で蓄積されてきた生徒の研究論文要旨31年分をトピックモデルによって分析し,要旨に含まれるトピックの変化の傾向を明らかにした研究である.分析の結果,経年増加傾向にあったトピックとして「調査」「体験活動」および「地方行政」が,反対に経年減少傾向にあったトピックとして「感想」「人文学」「世界史」が抽出された.このことは調査対象校の研究型アクティブラーニングにおいて研究の実証性が求められるようになっていったことを示唆している.本研究によってトピックモデルを用いることで研究型アクティブラーニングの成果物の変化を定量的に明らかにすることができる可能性が示された.

教育実践研究論文
  • 天野 慧, 都竹 茂樹, 鈴木 克明, 平岡 斉士
    2019 年 42 巻 4 号 p. 331-343
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/25
    [早期公開] 公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

    社会人が新たなスキルを身につけることへの要請が高まる中,社会人向け学習機会では「受講証」の授与で終わる場合が多く,スキル習得が確認されないままになっている.一方で,スキル習得を確認して「修了証」を授与するには事後課題を導入する必要が生じ,講座終了後も修了を目指した学習意欲を維持する手立てが必要となる.本研究では,事後課題を伴う大学公開講座において,講座修了への意欲を維持・向上させるために,学習者個別の成果物に対するフィードバックを追加する改善を行い,効果を検証した.結果,修了率と講座の印象評価が向上した.さらに,アンケートの自由記述を調査したところ,情報付加型のフィードバックを盛り込むことや複数回のフィードバックを行うことが,講座修了への意欲を喚起させたことが示唆された.これらの結果を踏まえ,講座修了への意欲を向上させる工夫として,個別フィードバックを取り入れる デザイン原則を提案した.

資料
  • 稲垣 忠, 大森 裕二, 志野 奈美子, 阿波 弘真, 村上 壮, 菊地 尚樹
    2019 年 42 巻 4 号 p. 345-354
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/25
    [早期公開] 公開日: 2018/12/03
    ジャーナル フリー

    タブレット端末を小学校3年~6年生児童61名に1人1台貸与した.算数科を対象に児童の学習履歴に合わせて難易度の異なる問題を出題する適応学習を実践できるアプリケーションを提供し,授業,朝学習や放課後教室,家庭で活用を推進した.児童の学習履歴と単元テストの結果を対象に取り組み状況を分析した結果,次のことが明らかになった.1)学校と家庭双方での取り組みを推進した結果,20週以上に渡り継続的に利用され,学校では共通の問題に取り組み,家庭では習熟度に応じた問題に取り組む割合が高かった.2)単元テストの正答率と学習履歴との関連性を分析した結果,習熟度に応じて取り組む問題の正答率との関連が示唆された.3)下位群の児童では,教科書と同程度の問題を繰り返し取り組む児童に改善傾向がみられた一方,取り組み状況に偏りがある児童のスコアは低下していた.

  • 中村 康則, 向後 千春
    2019 年 42 巻 4 号 p. 355-367
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/25
    [早期公開] 公開日: 2019/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,通信教育課程で学ぶ社会人学生が学習場面において採用するセルフ・ハンディキャッピングを測定するための尺度を開発し,その尺度の信頼性と妥当性を検討することを目的とした.また,開発した尺度を用いて,社会人学生が採用するセルフ・ハンディキャッピングの統制可能性についても検討した.その結果,「時間不足」「老化」「能力不足」「体調不良」の4因子14項目からなる「通信教育課程で学ぶ社会人学生のためのセルフ・ハンディキャッピング尺度(SHS-ASCC: Self-Handicapping Scale for Adult Students in Correspondence Courses)」が開発され,尺度には一定の信頼性と妥当性が認められた.これら4因子の統制可能性を検討したところ,社会人学生は「時間不足」「老化」「能力不足」「体調不良」のセルフ・ハンディキャッピングを統制不能と捉えていることが示唆された.さらに,「老化」「能力不足」には性差がみられ,男性よりも女性が強く認識することが示された.

  • 福市 彩乃, 山本 佑実, 菅村 玄二
    2019 年 42 巻 4 号 p. 369-377
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/25
    [早期公開] 公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    正座が,通常の椅座位やあぐらと比べて,授業場面でどのような影響を与えるか検討した.研究1では,カウンターバランスしたうえで36名が同じ椅子に3種類の姿勢で座り,それぞれ5分ずつ論文を読んだり講義を聞いたりした.その結果,あぐら条件や椅坐位条件よりも正座条件で参加者の眠気が低かった(ps < .02).また,正座条件では肉体的疲労が高かった(p = .013)が,精神的疲労は他条件との差が見られなかった.研究2では,実際の大学の授業でそれぞれ同一の椅子に座った83名の参加者を正座群と椅坐位群にランダムに割り付けた.その結果,正座群で,正座中及び正座後10分後の両時点で正座前よりも眠気が低く(ps < .05),足の痛みが高かった(ps< .002).一方で,姿勢間には肉体的疲労度,精神的疲労度,ストループ課題及び文字流暢性課題の有意差はなかった.正座は足の痛みをもたらすものの,痛みでは説明されない眠気緩和効果をもたらした.

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